麻酔ってどんなもの?
全身麻酔と局所麻酔
麻酔には二種類あり、全身に麻酔をかける全身麻酔と、身体の一部に麻酔をかける局所麻酔があります。通常麻酔といえば、動物病院では全身麻酔のことを指します。全身麻酔に使用する薬には吸入麻酔薬と注射麻酔薬の二種類があります。
吸入麻酔薬は肺胞から麻酔性ガスを吸わせて全身麻酔をかける方法です。もし吸入麻酔薬だけで麻酔をかける場合マスクを使用することが多いですが犬はマスクを我慢してつけることは難しいため吸入麻酔薬を使用する直前に導入薬といって注射麻酔薬を使用します。吸入麻酔薬は気化器という機械でコントロールすることができ、リアルタイムに麻酔の濃度をコントロールできます。
注射麻酔薬は注射だけで麻酔がかかった状態に動物をすることができます。この注射麻酔薬は、上記で述べたように導入薬として、基本的には吸入麻酔薬と組み合わせて使用することが多いです。もちろん注射麻酔薬のみで麻酔をかける方法もありますが、普通の動物病院では一般的ではありません。
メリットとデメリット
メリットとデメリットは人間の麻酔と似ている部分があります。まず犬が痛みを感じなくなるため、手術や痛みをともなう処置を行うことができます。そして吸入麻酔の場合は安全性が高く、覚醒がはやいというメリットがあります。
デメリットとしては麻酔から目覚めなかったり、副作用を起こすことが必ずしもないとは言い切れない点です。とくにクッシング症候群や心臓病、腎臓病などの病気を持っている場合や、ブルドッグやペキニーズ、パグなどの短頭種といわれる犬種などの場合は呼吸器の構造上麻酔のリスクが高い犬種ですので他の犬種よりもリスクは高くなります。
全身麻酔が必要なのはなぜ?
病気の治療
病院で適切な処置と正確な検査を受けるためには、犬にはじっと大人しくしてもらわなければなりません。しかし犬に「大人しくしてね」と言っても怖がったり怒ったりして暴れてしまうことがあります。そうすると処置が雑になったり、検査がうまくいかなかったり、必要以上に時間がかかったりと困ったことになってしまいます。また、怪我をしている犬に処置や検査などをすると痛みから暴れることもあり、危険です。麻酔もしくは鎮静 を利用することで犬への負担を軽減することができます。
公衆衛生上の問題
処置や検査は苦しんでいる犬に犬がさらに嫌がることをするため、犬が攻撃的になる可能性もあります。診察する側である獣医さんや、おさえている看護師さん、付き添いの飼い主さんなどに噛み付くかもしれません。犬の扱いになれている獣医さんであっても、攻撃的になった犬には噛まれてしまったり、ひっかかれてしまったりすることはあります。そういったときに麻酔薬や鎮静薬を使い攻撃をうけないようにすることがあります。
犬に噛まれると感染症などの公衆衛生上の問題になってしまったり、一度攻撃をくわえて嫌なことがおさまったことを覚えると、家でも攻撃的になってしまうことがあります。そのため麻酔薬や鎮静薬を使って事前に攻撃されないようにすることがあるのです。
ストレスや恐怖を軽減する
病院にくる犬は大なり小なりストレスを抱えています。ストレスが少ない犬は大丈夫かもしれませんが、大きなストレスになり恐怖を覚えトラウマになってしまう犬もいます。そしてトラウマから攻撃的になることもあります。ストレスは心臓や呼吸にとって悪影響であり、病気を悪化させることもあります。犬に大人しくしてもらい、犬にも恐怖を与えないように麻酔薬や鎮静薬を使うのです。
鎮静は簡単な処置の場合に使用する
鎮静には弱い鎮静から強い鎮静まであり、さまざまな用途で犬に使用します。鎮静は犬の意識を完全に失わせるわけではなく、朦朧とした状態にします。そのため強い刺激を与えた場合には犬が動く可能性があります。しかし大きく動くことはありません。怖がったり、怒ったり、暴れたりする犬を落ち着かせるのにも効果的です。短時間で終わる検査や簡単な処置などの場合は、麻酔よりも鎮静のほうが適していることもあります。
犬の性格から検査などが不安な場合は事前に病院に連絡して、相談しておくと良いでしょう。弱めの鎮静剤などを使ってもらえる場合もあるので無理はせずに相談してください。
まとめ
麻酔には2種類あります。全身麻酔と局所麻酔です。全身麻酔の方法も2種類あります。吸入麻酔と注射麻酔があり多くは注射麻酔薬と吸入麻酔薬を併用して麻酔をかけることが多いです。
犬が全身麻酔をするのは大きくわけて3つの場合です。病気の治療のために必要な場合、公衆衛生上問題がある可能性がある場合、犬のストレスや恐怖といった負担が大きい場合です。こういった場合は全身麻酔をかけたほうが安全であったり、犬の負担が少なくてすみます。