はじめに
私は夫と2人暮らしで、子供はいません。長らく猫と暮らしていた我が家ですが夫婦共々動物が好きなので、犬も飼いたいという話になりました。ペット可の賃貸マンションぐらしなので小型犬を検討していました。
そんなある日、私たちは地元の動物園に遊びに行ったところ、偶然にもその駐車場の近くで保護犬の譲渡会が開催されていました。そこで私たちは動物園に来たはずでしたが急遽予定を変更して、譲渡会を覗いてみることにしました。
この時私は、犬を迎える選択肢としてペットショップで購入すること以外に譲渡会もあることに気が付いたのです。
元迷子犬「ウーノ」について
譲渡会場に入ると、そこにはたくさんの犬たちがゲージに入って並んでいました。そのほとんどがチワワやトイプードルなどの小型犬で、中型犬以上の大きさの犬は2匹ほどしかいませんでした。
ぐるりと1つ1つのゲージを見て回っていたところ、1匹の犬が気になって足を止めました。
その子にはシッポと片目が無かった
その子は茶色のミニチュアダックスフンドで、片目の眼球に委縮が見られました。もう片方の目も玉虫色に濁っていたため、目が見えてないのかなと思いました。
そのためか、他の犬たちがワイワイと元気よく吠えたり愛想を振りまく中でその子だけぼんやりと空を見つめ、ゲージの隅っこでじっとしていました。私の中で犬という動物は元気が良く愛想を振りまくイメージだったので、空虚な様子のその子が気になってしまいました。
譲渡会のスタッフの方に許可をもらい、その子を抱っこさせてもらいました。抱き上げて気付いたのですが、その子にはシッポがありませんでした。コーギーやドーベルマンなどの特定の犬種では断尾をすることもありますが、ダックスフンドではあまり一般的ではないため大変驚きました。
私に抱かれたその子はうんともすんとも言わず、なすがままの状態でした。見た目にも視力にもハンディがあり愛想のないその様子に、この子は他の子と違って貰い手が見つかり辛いだろうなと感じました。
迷子になっても、現れなかった飼い主
スタッフさんの話によるとその子は元迷子犬で、道をウロウロと放浪していたところを地域の型が見つけ通報し、保健所が保護したそうです。保護した時その子は首輪を着けておらず、ハーネスだけ着けた状態だったので飼い主が分からなかったそうです。
そうして3ヶ月保健所で飼い主の問い合わせを待っていましたが現れることはなく、保護期限が切れてしまったため命を守るべく保護ボランティア団体へと引き継がれたそうです。
なぜ首輪や鑑札を着けていないのか、なぜ飼い主が現れないのか、それは飼い主がその子を捨てたのと同じだと私は大変憤慨しました。
私はその時、この子を迎え入れようと決めたのです。
里親に必要なのは根気強さ
殺処分されてしまうペットを救うため、譲渡会でペットを迎え入れることは良いことだと思います。しかし、保護犬を迎えることは楽なことばかりではありません。かわいそうだから、という理由だけで保護犬を迎え入れてしまいがちですが、実際は大変なことも多いのだと私は実感しました。
心を閉ざした子
人間に虐待を受けていた子や飼育環境が酷かった子などは、何かしらのトラウマを持っていることも少なくありません。そういった子はたとえ優しい人間に対しても歯をむいて威嚇したり人間を避けたりすることもあります。中にはトイレトレーニングすらできていない子もいます。
そして、飼い主にしっかりとしたしつけを受けなかった子はやって良いことと悪いことの区別がつかず、吠え癖や噛み癖が酷い攻撃的な子もいます。
譲渡会に子犬はほとんどおらず、既に成犬であることがほとんどです。閉じてしまった心を開放することや成犬からしつけを入れることは簡単なことではありません。里親になるということは全てのことに長い時間と根気強さが必要です。
ハンディや疾患がある子
ペットショップで売られている子たちは見た目も良く血統書の付いた子がほとんどですが、
保護犬にはうちの子になったダックスのように見た目にハンディがあったり、障害や疾患を抱えた子がたくさんいます。病気や障害にはこれから通院や手術が必要になるかもしれませんので、費用の面でもある程度余裕を持たないと大変なことになってしまいます。
うちの子は家に迎え入れてからの1年間はほぼ通院生活でした。元々の体質の弱さに加え生活環境が変わったストレスによりアレルギー性疾患が悪化し、血混じりの酷い下痢や全身の脱毛に毎日頭を悩ませていました。この子はこのまま死んでしまうのではないかと毎日不安との戦いでした。
保険にも入っていないため費用も高額で、合計10万円はゆうに超えていたと思います。我が家は決してお金持ちではないためとても痛い出費でしたが、この子が元気で幸せになってくれるならと様々な生活費を節約して通院費にあてがっていました。
受け入れから2年経った現在
酷いアレルギー症状も1年間の通院とドッグフードの改善でほぼ治まり、今では下痢もせず全身の毛も生えそろって通院生活は終わりを迎えました。
あんなによそよそしく空虚だった様子も、1年経った頃には甘える様子を見せたり一緒に寝たがるようになりました。そして2年経った今では、ようやく笑顔のような表情も見せてくれるようになりました。
まわりの人や譲渡会のスタッフの方から「表情が穏やかになった」と言っていただくことも増えました。少しずつこの子が心を開いてくれているのだと嬉しく思い、2年経ってようやく私もほっとしたところです。大変なことや不安に思うことがたくさんありましたが、この子を迎え入れて本当に良かったと強く思います。
まとめ
私は譲渡会で迎え入れたその子に「ウーノ」という名前を付けました。「UNO」はイタリア語で「1」という意味です。目が1つしかないけれど、1番星のようにキラキラしていてほしい、これからは1番に愛されてほしい、そんな意味を込めて名付けました。
これから保護犬の里親になることをご検討中の方もいらっしゃるかと思います。しかし、保護犬には様々な問題を抱えた子が多く、ペットショップにいるような子を想像してしまうと飼い主さんが辛くなってしまうこともあると思います。
しかし、どんな子でもゆっくりと時間をかけて根気強く付き合ってあげれば、その先には「出会えてよかった」と幸せに思える日が来ると私は思います。これから里親になろうとする飼い主さんにはぜひ、その子に穏やかで大きな愛を持って接してあげてほしいなと思います。