動物保護センターにいた、とても怖がりな犬
その犬は長い期間保護センターに収容されていました。どのくらいの期間放浪犬として暮らしていたのか、また、もしかしたら家庭犬として暮らしてその家を出て行ってしまったのかは分かりませんが迷子犬としてセンターに収容されました。
聞いた話では、収容場所付近の家で外飼いされている犬のご飯を、時々食べに来ていたようです。首輪や鑑札、迷子札など何も付いていませんでした。それで、迷子犬ではないかと収容されたのです。
センターでは、全く攻撃性はなく食欲もあって、元気に過ごしていたようでした。ただ、繋がれている近くを通ると少し距離を取り、上目遣いに通り過ぎるのを待っているような犬でした。
収容されている期間、人懐っこい他の犬とは、正反対の性格みたいでした。それでも手を差し出すと恐々舐めてくるようなかわいい所もあったのです。
我が家で引き取るまで
中型の雑種で、体の大きさだけでは育てやすい犬でしたが、なかなか怖がりで慣れるまでにはかなりの時間がかかりそうでした。それで暫くは譲渡されなかったのですが、そういう性格でも構わないからと、一家庭に譲渡されたのです。
でも、その譲渡先を10日くらいで逃げ出してしまいました。そして、また放浪犬として1か月くらい過ごしていたのです。せっかく安住の家が見つかったと思っていたのですが、何かが合わなかったのでしょう。それから、また、センターに保護されて収容されました。そこで、今度はセンターからボランティア団体へと移ったのです。
一連の出来事をコミュニティサイトで知った私は、センターにいた時からとても気になっていましたので、我が家に譲渡してもらうために、団体の譲渡会に出向いたのです。
譲渡会場には、その他にもいろいろな犬達がいましたが、私はその犬だけしか見ませんでした。ケージ越しに差し出した手をすぐに舐めてくれましたので、何も迷わず譲渡してもらったのです。
現在の生活
我が家へ来てからは、先住犬もいましたので相性が心配でしたが、一日目から仲良くなっていました。我が家に慣れるまでは脱走が心配でしたので、外への散歩は1週間くらいは行かずに排泄は庭で済ませていました。
それからの散歩は、まず自分の匂いを付けさせたっかので、家の近くだけを歩いて、少しづつ距離を長く散歩していました。1か月くらい経ったとき、朝の散歩中に突然車が道路の横から出てきて、それにお互いびっくりして、持っていたリード2本を離してしまいました。
慌てて呼び止めたのですが、とってもびっくりして怖かったのでしょう、家の前を通り過ぎて住宅街に走って行ってしまったのです。それから、半日あちらこちら捜し歩きましたが、見つかりませんでした。暑い夏の日でしたので、熱中症にでもならないかと心配でした。暗くなってからも散歩の道のりや住宅街を捜し歩きましたが、何も手掛かりはなかったのです。
真夜中、もう一度探しに行こうと思った矢先、真っ暗な通りの向こうから黒い影がこちらに近づいてきました。間違いなく、いなくなった我が家の犬です。私は声を出したらまた走り去るかもしれないと思いながらも、思わず名前を呼んでしまい、その声にまたまたびっくりして、家の前を通り過ぎて行ったのです。
ただ、自分から帰ってきたから静かに待っていればまた戻てくるだろうと思いました。それから30分くらい経った時、また通りの先から今度は走って庭に入ってきたのです。私はその様子を駐車場の車の中からじっと見ていました。そして家の中から静かに玄関を開けてもらい、何事もなかったかのように部屋に入って行ったのでした。深夜3時過ぎの事でした。
我が家に引き取ってからすでに6年以上経ちますが、このような出来事は1度だけです。今ではすっかりシニア犬になりましたが怖がりでビビリな性格は変わっていません。ただ、人を上目づかいで見るようなことはしなくなりました。初めて会う人には、自分から近寄って行くようになりました。
保護犬ってかわいい
成犬を引き取る事を躊躇する方の中には、性格とか正確な年齢が分からないから・・・など言われる方が中にはいらっしゃいます。もちろん、子犬から育てたいと考える事もいいと思います。ただ、経験を通して言えることは、成犬でも愛情をもって接すればなついてくれるし、性格もほぼ出来上がっている分、注意することとか分かりやすく逆に育てやすいと思います。
全国には犬や猫の保護センターやボランティア運営の保護シェルターなど、たくさんあります。譲渡までとはいかなくても、一度足を運んでみるだけでもいいのではと思います。案外家庭に合った犬が見つかるかもしれません。