犬猫は飼わないと誓っていたが…
犬猫保護施設の責任者となった私は「犬猫は飼わない!」と心に決めていました。「犬猫が幸せになるための橋渡し役」に徹する道を選んだのです。自分の 目、声、手、意識や体、愛情と時間、その全てを保護犬猫達に向けていきたいと思ったのですが…。
種別を越えた相棒
相棒との出会い
「動物保護管理所」に、乳飲み子犬が3匹捨てられました。段ボールを開けた瞬間、まだ目が開いたばかりだというのに、力強い目でこちらを見据える子犬、これが後に相棒となる「カムカム」との出会いでした。
私が勤務する施設には、カムカムと同じ乳飲み子犬や子猫が常に居て、私は日々授乳や身の回りのお世話をしてたのですが、子猫達が鳴きだすとカムカムは私より真っ先に子猫のケージに向かい、自分も子犬なのに、まるで子猫や子犬をあやしているようにも見えました。
その時はまだ「オスなのに母性が強いのかな?」と軽く受止めていました。
子犬は直ぐに譲渡が決まるのに、なぜかカムカムには「番犬にしたい」「外で飼う」「子犬なら何でも良い」「オスだから去勢しない」という、大切な命を託せない譲渡希望者ばかりで、当然譲渡はお断りし続けてきた結果…生後6ヶ月になっても、1才になっても、良縁に繋がることがありませんでした。
2年後の気付き
カムカムの譲渡は、2才になっても決まりませんでした。「早く良縁に辿り着いてくれると良いな。こんな母性の強いオス珍しいのにな~。」この2年間、そう願い続けてきました。
ですが…カムカムは母性が強いわけではなかった事に気付いたんです!
カムカムは、私が犬猫のお世話をする姿を、24時間ずっと見て育ちました。子犬子猫の接し方、「群れ」のまとめ方、全てが私の動きに似ていたのです!この2年間、私の役に立ちたい、サポートしたい、私を守りたい…カムカムは、その一心だったのです。
私の強い信念を崩した相棒
2011年1月13日、保護して2年後、カムカムを家族として迎え入れました。いいえ、私の保護活動の相棒でもあり、施設の犬達をまとめるのがカムカムの仕事です。
保護施設での活動は、助けられなかった命、介護と看取り、精神的にも疲れ果ててまう事が度々あります。そんなときに助けてくれてるのがカムカムの存在です。
相棒の支え
ある時、生後わずか一時間で母猫と引き離すしかなかった子猫がいました。この時期は老犬介護も重なり、24時間体制での3時間おきの授乳と、老犬の床擦れ防止で2~3時間置きの体位交換。私の体と心は、限界に来ていました。
どちらかを死なせてまうのではないかと…自信すら失っていました。
その弱さが、相棒カムカムに伝わったのでしょうか。カムカムは、一晩中子猫のキャリーの側を離れなかったんです。
自分が産まれたときから、私と二人三脚のつもりで、施設の犬猫のお世話してきたカムカムにとっては、その行為が当たり前なのでしょうね。
「私と同じ事をしているだけ」カムカムは、ごくごく普通の「犬」です。なのに、なぜここまで頑張ろうとしてるの?なぜ、24時間ずっと気を張っていられるの?
精神的に弱気になってた私は、そんなカムカムの姿を目の当たりにして自分の弱さを恥じました。カムカムの強さをもらいました。
無事、老犬介護も最期は温かい気持ちで看取る事も出来ました。子猫も育て上げましたが、全てはカムカムの精神的支えがあってのことでした。
共に生きる動物には、「ペット」「家族」「子供」色んな呼び方がありますが、私にとってのカムカムは、犬でも人間でもない「相棒」という呼び名が、一番しっくりときます。
まとめ
数年前は「カムカムは普通の家庭犬になってた方が幸せだったのでは?」かわいそうだな…と、考える事も多々ありました。海や山、家族でキャンプに行ったり、ドッグランに遊びに行ったり、家族旅行したり、ゆっくり眠れたり、みんなの愛情を独り占めできるのに…と。
私は、ほぼ24時間体制で施設に滞在しています。正直気が抜けない365日です。もちろん相棒であるカムカムも同じ生活なので、緊張感の365日だと思います。ですが、「幸せ」はみんな基準が違ってて、私と共に歩んでいく犬生を選択したのは、カムカム本人だったんだろうな…と、思えるようになったんです。
殺処分寸前の命と共に向き合う人生を選択したのは、私自身です。それが、私らしい生き方、後悔の無い人生だと思えたから。きっとカムカム自身も、そうだったんだろうな…と思えるようになりました。
老犬を看取る時、いつも側で見守ってくれてるカムカム。私の最高の相棒です。