保護犬のシーズー「イチ」との出会いと共に過ごした6年間

保護犬のシーズー「イチ」との出会いと共に過ごした6年間

交番の前に捨てられていた保護犬のシーズー。イチと名付けたその保護犬は、推定6歳の女の子でした。酷い皮膚病とボロボロの歯、声帯も傷がついていて、虐待されていたかもしれないイチ。人間に心を開いていなかった保護犬が、私を認めてくれてからの楽しい毎日と、その後の闘病の日々、そしてお別れ。私と愛犬の6年間のお話です。

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交番に捨てられていた保護犬イチとの出会い

イチとの出会い

ある晴れた日に買い物へ行こうと自転車を走らせていた私。近所の交番の前を通ると1匹の犬が繋がれていました。犬と目があった時に違和感を感じました。犬はビニール紐を首に巻いてフェンスに繋がれていたのです。

どうしてもその犬が気になった私は交番に入り「すみません。外に繋がれている犬はどうしたのでしょうか?」と恐る恐る聞きました。

交番の方のお話によると、夜のうちにフェンスに繋がれていて、飼い主も見つからない。1週間ほど預かって、飼い主が見つからなければ保健所へ連れて行くとのこと。「では飼い主が現れなかった場合、保健所に連れて行く前に連絡をください。私が引き取ります」そう言って連絡先を書いていきました。

1週間後、もう一度交番へ行くと飼い主はみつからないとのこと。本当に良いのですか?と聞かれました。もちろんです!!と答えて、6ヵ月以内に飼い主が見つかれば返さなくてはならないことなど説明していただき、うちに迎えることになりました。

私が一人暮らしを初めてから一番最初に出会った犬。名前はイチと決めました。

虐待されていた保護犬イチ

心を開いていないイチ

イチは私が触っても無反応でした。怒りもしなければ喜びもしない。ワンワンと吠えるようなこともなく、とても大人しい犬でした。

まずは動物病院で事のいきさつを話し、身体の状態を診てもらうことに。なんとイチは全身かさぶただらけの酷い皮膚病になっていました。内臓は特に問題ありませんでしたが、歯がボロボロで声帯も傷がついている。もしかしたら虐待されていたのかもしれないと先生はおっしゃっていました。年齢はおそらく6歳前後だろうけれど、歯の状態は老犬並みとのこと。

イチが何もしても反応しないのは、人間に心を開いていないからだろうと言われました。皮膚病と心に傷を持ったイチとの生活が始まりました。

保護犬イチが心を許してくれるまで

心を閉ざしたイチ

皮膚病はシーズーに多い脂漏性皮膚炎とのことで、投薬と毎日のシャンプーが必要と言われました。シャンプーも大人しくさせてくれるので困ったことは何もなく、おかげで2ヵ月くらいで無事完治しました。

しかしイチの心はふさぎ込んだまま。私が近寄るとスッと逃げるし、触っても怒りはしないけれども、喜んで尻尾を振るようなことは全くありませんでした。

私は焦らず、イチが心を許してくれる日を待ちました。毎日話しかけて、少し頭を撫でて、イチの嫌がる事はしない。「大丈夫だよ、怖くないよ。何も嫌な事なんてしないよ」毎日毎日話しかけました。

保護犬イチが心を開いてくれた日

心を開いてくれたイチ

半年ほど経ったある日、ソファで寝ているイチの横に腰をおろすと、いつもは逃げてしまうイチが私をチラッと見て逃げずにそのまま寝ています。おや?っと思い、そっと顔を近づけるとペロリと口元を舐めてくれました。

初めてイチが心を開いてくれた。私と一緒に暮らすことを認めてくれた日でした。嬉しくて嬉しくて涙が止まらない私を、イチはペロペロと舐めてくれました。

イチが心を開いてからは毎日楽しい日々が続きました。楽しそうに散歩をするイチ。かすれてほとんど聞こえないような声でお話するイチ。私が帰ると尻尾を振ってお出迎えもしてくれるようになりました。毎日同じ布団で寝て起きる。こんな日々が続くのだろうと思っていました。

クッシング症候群の闘病

投薬される犬

毎日の投薬

何年かが過ぎイチが12歳になったころ、イチの食欲がなくなってきて抜け毛が目立つようになりました。病院へ連れて行くと「クッシング症候群」との診断。

薬で症状を抑えることはできるけれど完治はしないし、薬も身体に合うかどうか試してみないと分からないと言われましたが、完治はしなくても少しでも長くイチと一緒に居たい。そう思っての投薬が始まりました。

毎日薬を飲ませなければならないのは可哀想でしたが、それもイチのため。嫌がるイチになんとかむりやり薬を飲ませていました。

食べてくれるならなんでも良い

イチの症状は進行しているようには見えませんでしたが、日に日に食べられるものが少なくなり水もなかなか飲んでくれなくなりました。

先生の指示で注射器に流動食を入れ口の中に強制的に流し込むと、イチが苦しそうに咳をしながら私の目を見つめます。「なんでお母さんはこんなに嫌な事をするの?」そう言われているような気がして泣きながら謝りました。

そして注射器での給餌は止め、イチの食べたいものだけ、食べられる量だけ、イチの嫌がる事はしない。イチの好きなようにしてあげようと決めました。それからは、おかゆや牛乳に浸したパン。イチが何度も欲しがっていたケーキもあげました。食べてくれるのなら何でも良い。その一心でした。

イチとのお別れ

眠るシーズー

何日か前から食事も取らなくなっていたイチ。覚悟はしていましたがその日は突然やってきました。私の仕事は夜遅くまでかかることも多く、その日も家に着いたのは22:00を過ぎていました。

私が帰るとイチはベッドの上で痙攣を起こし苦しそうにしています。慌てて抱き上げかかりつけの病院に電話をするも繋がらず。かたっぱしから動物病院に電話をしてもなかなか繋がりません。

イチは私が抱くと落ち着いた様子でした。ベッドに戻すとまた痙攣が始まるのでイチを抱いたまま診てくれる病院を必死で探しました。0:00を過ぎた頃、やっと1件の病院に電話が繋がりました。
病気のこと、今の状態などを話すと先生は「来てもらっても何もしてあげられる事はありません。一緒に居てあげたほうが良い」と言いました。

イチを抱きながらベッドに横になり色んな話しをしました。「帰ってくるの待っててくれたんだね」「大好きだよ」「うちの子になってくれてありがとう」

日々の疲れもあってかほんの少しウトウトしてしまい、ハッと気付いて起きると、私に抱かれたままイチの身体は冷たくなっていました。イチの顔はとても穏やかで辛い闘病など感じさせず、にっこり笑顔で眠っているようでした。

イチを感じた夜のこと

枕元にきたイチ

イチを見送って10年近くが経とうとしています。夢でも良いから会いたいと願っていますが、イチは会いに来てくれません。しかし、一度だけイチを感じたことがありました。

イチが亡くなって1週間が過ぎた頃、ベッドで寝ていると私の枕がグーっと沈んだんです。イチはいつも私の枕元で寝ていたので、イチが歩くと枕が沈むのです。「ああ。一緒に居てくれてるんだ。」と安心したのを今でも鮮明に覚えています。もしかしたら気のせいかもしれません。ただ寝ぼけていただけかも。でもやっぱりあの枕の沈む感覚はイチに間違いないと、今でもそう思うのです。

おわりに

笑うシーズー

私は今、愛犬2匹と暮らしています。1匹は16歳のおじいちゃんで主人が独身時代から飼っていた犬です。ヨボヨボで歩くのもやっとですが、私を信頼してくれて介護をさせてくれます。

よく「見送るのが辛いから犬はもう飼えない」という声を聞きます。もちろん見送るのはとても辛い。私もその痛みは忘れられません。でも思うのです。イチはそんな私をどう思うだろうか。イチとの別れが辛かったからもう犬は飼わないなんて言ったら「私のせいにしないで!!」と怒るでしょう。

それよりも「イチとの時間が楽しく幸せだったから、また犬を迎えたよ。」そう言ったらきっとイチは喜んでくれるんじゃないかなと思うのです。だから私は幸せな時間を共に過ごすため、今日も犬たちと一緒に思いっきり遊びます。

イチ。ありがとうね。大好きだよ。

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ユーザーのコメント

  • 投稿者

    50代以上 女性 匿名

    イチちゃんは幸せだったと思います。最期まで看取れたこと、本当に良かった。
    うちにもシーズーの女の子がいます。うちは多分この子が最初で最後の子になると思いますが、大切に最後まで寄り添っていきたいと思っています。
    お話、読ませて頂いて良かったです。
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