犬の耳が聞こえなくなる原因とは?
遺伝
耳が聞こえない、聞こえにくいなど犬の聴覚障害の原因としてまず考えられるのは遺伝によるものです。遺伝性、先天性の聴覚障害は被毛の色を決定する遺伝子と非常に深く関係しているとされています。濃い色の被毛に白斑が浮かぶパイボールド遺伝子を持つ犬(ダルメシアンやブルドッグ、イングリッシュセッターなど)や黒斑点のある灰青色の被毛のマール遺伝子を持つ犬(シェットランドシープドックやコリーなど)などがそれに当たります。
老化
遺伝による先天性の聴覚障害ではなく、後天性の聴覚障害で最も多い原因は老化によるものと考えられています。人間も年齢を重ねると耳が聞こえにくくなりますが、それと同様に犬も加齢によって耳が聞こえにくくなるとされています。知覚の中で犬にとって重要な視覚・聴覚・嗅覚の中でも、聴覚が最も早く衰えやすいと言われており名前を呼んでも振り向かなくなったり、雷や花火など苦手だった大きな音にもあまり反応しなくなったりすることで気がつくことが多いようです。
耳や脳、神経の疾患
加齢を除いた後天性の聴覚障害としては外耳炎や内耳炎・中耳炎といった耳の炎症や、頭部外傷・腫瘍などによる脳神経の異常など疾患が原因となるものが考えられます。また、原因となる疾患が見つからない原因不明の難聴や聴覚障害もあります。
耳が聞こえない犬とのコミュニケーション方法
ボディランゲージや表情
犬は耳が聞こえない場合でも人間よりは苦労しないと考えられています。もちろんさまざまな点で聴覚に頼れないため不安を感じることなどはありますが、飼い主や他の犬とコミュニケーションを取るときにはボディランゲージや表情を利用することができるためです。元々動物は吠え声などよりもそのボディランゲージや表情、動き方によって意思疎通を図ることが多いため声が聞こえないということ自体はコミュニケーションにおいてそれほど問題ではありません。
ハンドサイン
耳が聞こえないと困ると思われるのが「お座り」「待て」などの口頭指示が出せないということ。しかしそれらの指示は同様の意味を持つハンドサイン(手の合図)が口頭指示の代わりになるので心配ありません。トレーニングにおいて犬は言葉の指示よりも飼い主の動きやハンドサインを読み取り行動することの方が得意なため、しつけ・トレーニングの面においても耳が聞こえないことはハンドサインなどで十分にカバーすることができるでしょう。
スキンシップ
「かわいいね」「いいこだね」など犬をほめたりかわいがる言葉は、その意味がわからないとしても声のトーンや表情から飼い主の気持ちはしっかりと伝わっています。犬への愛情を伝える方法がはそうした言葉だけでなく、なでたりマッサージをしたりというスキンシップでも気持ちを伝えることができます。耳が聞こえないからこそ他の感覚が研ぎ澄まされることも少なくないので、手や表情に気持ちを込めてたっぷりスキンシップを取るようにしましょう。
耳が聞こえない犬の生活の質を上げるポイント
急に体に触って驚かせない
耳が聞こえない犬は周囲の人や犬の動きなどを音で察知することができません。そのため、死角から突然あらわれたり急に触られたりするととてもびっくりしてしまいます。そのようなことをくり返していると周囲に対して過敏になりとても怖がりになってしまうことも少なくありません。耳の聞こえない犬と暮らすときは急な動きやスキンシップで驚かせてしまわないように、犬の視界にゆっくり入り存在を認知させてから触れ合うなど配慮してあげましょう。
不安やストレスを和らげる
上記のように犬は耳が聞こえないとその不安から怖がりになってしまうことがあります。また、怖いという気持ちから周囲に対して攻撃的になってしまったり動くことを嫌がるようになってしまうことも。犬が生活に不安を感じないように配慮してあげるとともに、たっぷり運動をさせたりマッサージでリラックスさせたりとその犬が好きなことで少なからず感じてしまう不安やストレスを軽減してあげるといいと思います。
視覚による指示や合図を教えておく
生まれつき耳が聞こえない場合はもちろん、老化などによって耳が聞こえにくくなることも想定して「お座り」「待て」「おいで」などの基本的なしつけのときには言葉の指示だけでなく、ハンドサイン(手の合図)もあわせて教えておくといいでしょう。そうすることで犬は耳が聞こえなくなったとしても飼い主の指示を理解することができ、不安も減ると考えられています。
耳が聞こえない犬との上手な付き合い方まとめ
耳が聞こえない犬と暮らすときには犬を驚かせてしまわないように配慮したり、不安やストレスを和らげるためにその犬に合ったコミュニケーションを増やすなどの配慮をしてあげるといいと思います。そうすることで犬は耳が聞こえないとしても大きな負担を感じることなく自然な暮らしができるでしょう。
ただし、耳が聞こえないからといって腫れ物に触るように犬の好きなように生活をさせる必要はありません。犬はボディランゲージや表情などさまざまな方法で相手の気持ちを読み取ったり伝えたりすることが得意ですし、聴覚以外の感覚がより優れたものになる可能性も少なくありません。耳が聞こえない犬と暮らし上手に付き合っていくためには犬の気持ちをしっかりと考えて行動してあげることが大切ですが、それはどのような犬と暮らすとしても同じことが言えるのかもしれませんね。