犬には、立ち耳の種類と垂れ耳の種類がいます。
三角のピンと立った耳も、顔の横にたるんと垂れた耳も可愛いですが、その形の違いはどこからきたのでしょうか?
ここからはその理由についてご説明し、更に犬種によって異なる様々な耳の形についてもご紹介します。
立ち耳の犬、垂れ耳の犬
犬には、耳がピンと立った形のものも、頰に向けて耳の穴を塞ぐように垂れているものがいます。
この違いはどのような理由によるものなのでしょうか。
オオカミの耳
犬の祖先と考えられているオオカミは、耳が上に向かって立っています。
この形は周囲の音を集めることに優れています。
イヌ科動物の聴覚は非常に良く、聴覚からも多くの情報を収集しています。
立ち耳から垂れ耳へ
オオカミと同じように耳が立った犬たちは、より原種に近い犬種に多く見られます。
柴犬や秋田犬のような日本犬は原種に近いため、耳が立っていますね。
一方で垂れ耳の犬には古くから家庭犬として、人とともに生活をしてきた犬種が多いとされています。
耳の形は軟骨によって保たれています。犬が家畜化されていく過程で耳が垂れた犬が現れ、人が様々な犬種を作っていく中で、耳も様々な形のものが固定されていきました。
耳の形の種類
立ち耳の例
- プリックイヤー
先端の尖った、一般的な立ち耳のこと。日本犬に見られるのがこの形です。
一部犬種では断耳して意図的に立ち耳にする場合もあります。
これは、古くは猟や護衛などの仕事中にで怪我をしないようにという工夫でしたが、近年ではほとんどが見栄えのためだけにされていて、ヨーロッパでは禁止されていますし、日本やアメリカでも是非が問われています。
自然のプリックイヤーはジャーマンシェパードや日本犬などで、断耳によるプリックイヤーはドーベルマンやグレートデンなどで見られます。
- バタフライイヤー
やや左右に広がった大きな立ち耳のこと。
蝶が羽を広げたような形に見えるため、こう呼ばれます。
飾り毛も特徴で、パピヨンに代表される耳の形です。(パピヨンという犬種名はフランス語で「蝶」という意味です。)
- バットイヤー
左右の耳が離れ、耳の付け根の幅も広く先端が丸みのある立ち耳。
コウモリの羽のような形をしているため、バットイヤーと呼ばれます。
フレンチブルドッグの耳がこの形に分類されます。
- キャンドルフレームイヤー
蝋燭の火のように、付け根が広めで先は尖った、鋭い印象を受ける立ち耳のこと。
ピンシャーに代表されます。
半立ち耳の例
- コックドイヤー
立った耳が途中から折れている形。立ち耳と垂れ耳の間とされる、半立ち耳のことです。
コリーやシェルティに見られます。コリーやシェルティで生まれ持った耳が完全な立ち耳の場合、テーピングで先端が折れるように矯正することもあります。
- ローズイヤー
ローズイヤーは、立ち耳ではあるが耳が後ろに向かって寝ていたり折りたたまれている耳のこと。 耳の内側が見え、バラの花のような形に見えます。イタリアングレーハウンドやボルゾイを含むサイトハウンドの大部分やブルドッグがこの耳の形です。
- ボタンイヤー
コックドイヤーよりも根元から折れ、先の折れている部分の面積が大きい耳。
頭側に向けて耳の先が垂れて耳の穴を覆っていて、垂れ耳にかなり近い印象です。パグの耳がこの耳の例です。
垂れ耳の例
- ドロップイヤー
一般的な犬の垂れ耳の形をドロップイヤーと呼びます。
レトリバー種や、ビーグルなどが代表として挙げられます。
- フォールドイヤー
垂れ耳の中でも、特に耳が大きく耳にカーテンのドレープ様のひだがあったり、耳の先端が縦方向に巻いているもの。 ブラッドハウンドの耳がこの形の代表例です。
- ペンダントイヤー
垂れ耳の中でも、特に大きく垂れ下がった耳の形。フォールドイヤーは縦のひだがあるのに対し、ペンダントイヤーと呼ばれる耳は平坦に垂れ下がっています。
扇風機の羽のように大きな垂れ耳が特徴的な、バセットハウンドに代表されます。
耳の手入れ
耳の手入れは、日常的に行うべきケアのひとつです。
特に垂れ耳の犬は耳の中に湿気がこもりやすく、雑菌が繁殖しがち。
そのため、耳に関する病気になることも少なくないのです。
柔らかいガーゼやコットンと水、イヤークリーナーで、耳の見える範囲の表面を優しく拭き取る、必要に応じてイヤークリーナーを用いた耳の中の洗浄などを、適切な頻度で行いましょう。方法や頻度は耳の状態や汚れやすさによっても変わりますので、かかりつけの獣医師に聞くと良いでしょう。
耳垢の量や色がいつもと違う、耳の臭いや赤み、痒がる様子などが見られた場合は、外耳炎やダニの感染などの病気であることが考えられるので、すぐに動物病院を受診しましょう。耳の痒みはアトピー性皮膚炎と関連していることも多いそうです。
まとめ
犬の耳の形について、ご紹介して参りました。どの耳の形もユニークで可愛らしいですね。
また、耳の形には様々な種類があり、垂れ耳の方が外耳炎を起こしやすいですが、立ち耳でも耳の病気になることはあります。
耳の病気も早期発見早期治療がとても大事です。何か異常が起きた際には気付いてあげられるようにしましょう。
野生動物を家畜化していくと、性質とともに外見にも様々な変化が現れ、その変化の多くはネオテニー(幼形成熟)だと説明されています。ネオテニーとは、幼い時の特徴を残したまま大人になる進化形態で、外見では短い口吻(鼻、マズル)、大きな目、広い額などがその「幼い時の特徴」だと考えられています。垂れた耳もネオテニーによるものなのかもしれません。
ギンギツネを使ったロシアの有名な研究では、おとなしい個体を選択繁殖した結果人になつくギンギツネが誕生しましたが、キツネの変化は性質だけではなく、まだら模様の毛、垂れ耳、巻き上がったしっぽ、などという外見にも変化が起きました。