動物介在読書プログラムとは?
動物介在読書プログラムとは、主に子供たちが犬に本を読み聞かせることで読書能力を高めたり、様々な精神的不安を取り除いたりする効果があるとされているユニークな取り組みです。
1999年に米国NPO法人「インターマウンテン・セラピー・アニマルズ」が、“R.E.A.D.(The Reading Education Assistance Dogs)プログラム”として行った取り組みがはじまりだとされています。
約20年の間に「インターマウンテン・セラピー・アニマルズ」による“R.E.A.D.”以外にも、多くの団体が様々なメソッドで、取り組みを行うようになっており、その活動はアメリカ・カナダ・イギリス・フランスなど世界中に広まっていきました。
“R.E.A.D.”は図書館などでAAA(動物介在活動)として行われる場合と、学校でAAT(動物介在療法)として行われることがあります。
AAA(動物介在活動)では、犬とのふれあいの場所になったり、読書のきっかけ作りになったりして役立てられており、AAT(動物介在療法)としては学習障害などによって読解力が弱い子供や読書を苦手としている子供、また英語を母語としない子供が対象となって行われています。
動物介在読書プログラムの効果
“R.E.A.D.”のメソッドにより、犬に読み聞かせをするという行動が、その子供たちにどのような効果をもたらすのかということについては、南アフリカ共和国ステレンボッシュ大学のMarieanna C. leRoux教授を中心としたチームが、読書能力に問題を抱える子供を対象に調査・分析を行い2014年に論文を発表しています。
調査対象となったのは、南アフリカ共和国で実施されている「ESSI読書・筆記試験」での得点が低かった7歳から13歳の児童102名。
そして彼らは4つのグループに分けられ、10週間の読み聞かせプログラムに取り組みました。
そのグループは以下の通り。
セラピー犬に読み聞かせをする「犬グループ」
【第二群】
大人に読み聞かせをする「大人グループ」
【第三群】
クマのぬいぐるみに読み聞かせをする「テディベアグループ」
【第四群】
何の指導も行わない「コントロールグループ」
それぞれを対象にして読み聞かせを行い、読書速度・正確性・理解力の3項目を評価の指標として読書プログラム開始前・10週間の読書プログラム終了直後・読書プログラム終了から8週後の3度のタイミングで、データが収集され分析が行われました。
読書プログラム開始前には、グループによる能力差がなかったのに対し、読書プログラム直後・終了8週後の調査時には、「犬グループ」のみが他のグループに対して、3項目すべてで高い結果をあらわしていることがわかりました。
日本における動物介在読書プログラムの実績
1999年にアメリカでスタートした動物介在読書プログラムですが、2016年からはJAHA(動物病院協会)ボランティアチームと、三鷹市立図書館が連携して日本で初めて公立図書館での取り組みが始まりました。
「わん!だふる読書体験」と称したこの取り組みは、JAHA認定セラピー犬を相手に読み聞かせを行う前に、犬との正しい接し方を学ぶ「ふれあい教室」も行われました。
会場は仕切りで区切られ、犬と子供が1対1になれる空間をつくったことで子供たちも、失敗の不安を感じることなく、ポジティブに読み聞かせを行うことができたという結果が得られたそうです。
動物介在読書プログラムに関するまとめ
動物介在読書プログラムでは、様々な効果が得られるということが分かっていますが、なぜ犬への読み聞かせで、子供の読書能力が向上するのでしょうか?
leRoux教授の論文によると、読書を困難としている子供は「失敗をする不安からよりミスを重ねて他の生徒からからかわれてしまう」と考えられ、その影響は読書そのものだけにとどまらず、学校や授業自体の欠席につながったり、課題を終えるのが遅いという傾向にもつながったりすると指摘されています。
読書がうまくできないということが、当人の精神面に大きな負担となり、学習態度や能力にも影響を及ぼすと考えられているのです。
そうした子供にとって、犬はどのような読み聞かせであってもただ黙って耳を傾け、失敗に対し笑ったり責めたりすることはありません。
その結果、読むことに対する不安やストレスが軽減されて、やる気を引き出し、自信へとつながった結果、読書速度・正確性・理解力での高評価が得られたのではないかと考えられています。