犬の社会化は子犬のためだけじゃない
子犬を家族に迎えた人のためのガイドなどでも、最近は「社会化」という言葉がよく登場するようになり、一般的によく知られるようになってきた感があります。
けれども、社会化は子犬のためだけのものではありません。
成犬の保護犬を家族に迎えた場合なども、社会化がスムーズに行くかどうかは、その後の人と犬両方の幸せに大きく影響します。
また社会化と言うと、犬対人間または、犬対犬の良い関係を作っていくことを思い浮かべる人が多いのですが、それだけではなく、犬が周囲の環境に慣れていくことを助けるという意味があります。
新しい環境の騒音や、今まで見たことがなかった風景にうまく順応できるように手を貸してやることが、脱走や迷子を防ぐためにも大切です。
けれど、その社会化の前に、必須事項として頭に置いておかなくてはいけないことがあります。
反対にこれが身につけば、犬との付き合いがずっと楽になるというポイントを以下に挙げていきます。
犬のボディランゲージに注目しよう
犬は言葉で以前の経験や境遇を語ることはできませんが、仕草や姿勢などのボディランゲージで様々な情報を伝えてくれています。
例えば、上の写真のチワワの姿勢です。
もし新しく家族に迎えた保護犬にリードを付けて外に出たときに、こんなふうに尻尾が下がり、耳も倒れ、頭を下げて背中を丸くするような姿勢になったときは、周囲の環境に怯えています。
もしかしたら、以前は外を散歩したことがないのかもしれないし、その場所特有の騒音に怖気付いているのかもしれません。
保護犬を馴染みのない環境に置いたり、新しい経験をさせたりするときには、犬のペースに合わせることが大切です。
生き物が新しいことを学ぶときには、恐怖や不安のないリラックスした状態でなくてはなりません。
そしてそれを知るために犬のボディーランゲージに不快、不安、恐怖がないか注目してください。
不快、不安、恐怖のボディランゲージ
次の仕草は、犬が不快、不安、恐怖を感じているというボディランゲージです。
- 尻尾が下がって脚の間に入っている
- 耳が後ろに倒れている
- 自分の唇や鼻を舐める
- あくびをする
- 体をブルブルさせる
- 背中を丸めて縮こまる
- 隠れようとする
- キュンキュン鳴く
- 首の後ろ又は背中の毛を逆立てる
このような仕草が現れているときに、「社会化が大切!」と知らない人や犬に会わせたり、新しい経験をさせたりしようとすると、犬が完全に心を閉ざしてしまうことさえあります。
犬の性質や過去の経験によっては、不快なことに対して、以下のようなもっと強い態度に出る場合もあります。
- 吠える
- 鼻にしわを寄せて歯を剝き出す
- うなる
これらは攻撃性の現れではなく、犬が真剣に「それは本当に嫌です。無理です。」と訴えていると考えましょう。
どんな犬でもそうですが、迎えたばかりの保護犬の場合は、特に犬が不快感を伝えているときには犬の意思を尊重することが大切です。
上に挙げた犬のボディランゲージは、ほんの一部です。
可能であれば、犬のサインやシグナルと呼ばれるボディランゲージに精通した、ポジティブ強化のドッグトレーナーに最初は指導してもらうのが理想ですが、もしそれが無理でも、犬のボディランゲージが写真と言葉で解説されている、きちんとした書籍を1冊で良いので最初から最後までしっかりと読まれることを強くお勧めします。
インターネットの情報は断片的になりがちなので、あくまでもヒントとして活用し、書籍やセミナーで総合的に勉強することが大切です。
保護犬の社会化のためのポイント
犬が初めての人や犬に会ったり、新しい経験に遭遇したりしたときに、不快や恐怖のサインが見られず興味がありそうなときには、次のポイントに注意して社会化を進めます。
新しい経験をポジティブなものにする
初めての人に会うときには、相手に犬が嫌がることをしないようにお願いします。
そのとき、犬を笑顔で褒めて犬が好きな場所を撫でてやります。
初めての犬に会うときは、相手の犬が嫌がっていないことが大切です。
どちらも上手に挨拶できたら、やっぱり笑顔でたくさん褒めます。
新しい場所や初めて見るものから逃げずにいたときには、笑顔で褒めてトリーツを与えて、その場所や経験がポジティブなものになるよう、印象付けます。
新しい経験は手短に
例えば初めて会うフレンドリーな犬に挨拶をするとき、犬がお互いに礼儀正しく匂いを嗅いだら、笑顔で褒めて、30秒以内でその場を離れます。
相手の犬が完全に離れたら、トリーツを与えてもかまいません。
新しい経験は最初は手短にすることで、ポジティブに終えることができます。
最初は欲張らず、少しずつ、だいじなポイントです。
新しい経験は低い難易度からスタート
犬のストレス値が、常に限界を越えないように保つことが大切です。
散歩をするにも、最初は静かな住宅地や人通りの少ない時間帯を選び自信を付けさせます。
そうして犬の自信度が上がり、ストレスの許容量が増えていけば、少しずつ公園や人通りの多い場所などに連れて行きます。
まとめ
保護犬の社会化を進める前に知っておきたいことをご紹介しました。
犬のボディランゲージを読み取り、不安や恐怖を感じている犬に無理強いをしないこと、新しい経験は常にポジティブになるよう心を配ること、これらは保護犬だけでなく、全ての犬にとって必要なことですが、保護犬では一層心に留めておきたいことです。
それでも、一筋縄では行かないのが生き物との付き合いです。
何かが起こったときにも決して犬を怒鳴ったりしないでください。ストレスを感じている犬に大きな声をあげるのは、さらにストレスを増すだけです。
具体的なノウハウは、トレーナーや書籍からしっかり勉強することが必要ですが、これらのことを知っておくと、いざという時のヒントになるのではないかと思います。