嗅覚を使った、新しい犬の仕事
誰もが知っている通り、犬は並外れて優れた嗅覚を持っています。その嗅覚で警察の捜査や爆発物や麻薬の探知などを行い私たち人間を大きく助けてくれています。
嗅覚を使った仕事の中でも新しいものでは、訓練を受けた犬がガンや糖尿病といった人間の病気を匂いで探知することも知られています。
そしてこのたび農作物の病気を嗅ぎ分けて早期発見するように訓練された犬たちについて調べられ、その能力と有効性についての論文が発表されました。
論文を発表したのはアメリカのフロリダ国際大学の研究者です。農作物への深刻な問題の解決策として、犬たちの仕事は大きく期待されています。
アボカドの樹木に広がる伝染病
この新しいタイプの探知犬に課せられた任務は、アボカドの樹木に広がる伝染病を早期に発見することです。
研究を行ったフロリダ国際大学の地元フロリダはアボカドのメジャーな生産地です。その地で現在、アボカドの木が伝染病『Laurel wilt病(ゲッケイジュ萎凋病)』によって大きな被害を受けています。
アジアからの外来種であるキクイムシ類の昆虫によって運ばれたラファエレア属のカビが原因と考えられるこの病気は、感染から木が枯れるまでが早く、また外から見て症状がわかる時期には病原体が根を通じて隣接する樹木にまで広がっているので、感染を抑えることは非常にむずかしくなります。そのため早期発見することが何よりも重要なのですが、コストなども含めてなかなか決定的な方法が見つからずにいました。
苦労の末に、樹木の病気が外見に現れる以前に病気の原因となるカビを探知すれば感染抑制策になるのではないかという結論に達し、そのカビを匂いで探すための2匹のダッチシェパードと1匹のベルジアンマリノアに対する訓練がスタートされました。
農作物を守る犬たちの探知能力
研究者は犬たちの嗅覚を「1〜2ppt(一兆分率)の薄い匂いも探知することができる」と評しています。
今回の研究のための調査の過程では、病気の原因とであるカビを匂いで探知するトレーニングが1年間かけて3匹合計で229回行われ、間違いはそのうちたったの12件でした。
正しく探知できた件数の数だけではなく、フロリダの高温多湿の厳しい気象条件の下での高い探知率が観察されたことも評価されています。
この結果を受けて、研究者たちは犬による探知作業は十分に信頼に足るもので、農作物を守るために有効であると結論付けました。
フロリダよりもさらに大規模なアボカドの生産地であるカリフォルニアやメキシコではまだこの病気は起こっていないようですが、アメリカ国内でこの病気が発生している場所はどんどん広がっておりも、強く警戒されています。この病気による経済的な損失は非常に大きいので、探知犬の有効性が証明されたことは農産業の未来にとって大きな進歩だと言われています。
まとめ
フロリダで深刻な問題になっているアボカドの病気の原因を、犬が嗅覚で探知し早期発見するという話題をご紹介しました。
学術的にも裏付けが取れ有効性が確認されたので、このような農作物の病気の探知犬の訓練が進んでいくと思われます。また、今回の研究で使われたカビと近縁の種類のカビとの嗅ぎ分けを犬が出来るかどうか、という研究が引き続き行われているとのことです。
今回はアボカドが対象になっていますが、今後他の農作物の病気についても犬たちの協力が期待できるかもしれないですね。
「犬は人間の最良の友」というのは古くから言われている言葉ですが、心のつながりだけでなく、実際に生活を支えたり助けたりしてくれる犬という生き物と人間の関係はなんと深いのだろうと改めて実感させられる話題でした。
《参考》
https://www.sciencedaily.com/releases/2018/06/180608200052.htm