セラピードッグは自分の仕事を喜んでやっている?

セラピードッグは自分の仕事を喜んでやっている?

病院や介護施設などで人々の気持ちを和ませる役目を務めているセラピードッグたち。彼らはセラピーという仕事が好きなのでしょうか?気になる研究結果をご紹介します。

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記事の監修

日本獣医生命科学大学卒業。北海道の大学病院で獣医師として勤務。一般診療をメインに行いながら、大学にて麻酔の研究も並行して行う。「動物と飼い主さんに寄り添った治療」を目標に掲げ、日々診療に励んでいます。

セラピードッグの仕事に対する気持ちを調査

男の子の患者さんを訪問するセラピードッグ

病院の入院患者さん、介護施設のシニアの方々、自然災害の被災者たち、落ち込んだり傷ついたりした人々の心を癒しストレスを和らげるために、セラピードッグと呼ばれるたくさんの犬たちが働いています。

けれども人間のストレスを和らげる彼ら犬たちの心はどうなのでしょうか?仕事に対してストレスを感じたりしていないのでしょうか?

アメリカのワシントンD.C.の動物福祉団体アメリカン・ヒューメインの研究チームが、働くセラピードッグたちのストレスレベルを調査した研究結果を発表しました。

調査はこのように行われた

ガン患者さんにハグされるセラピードッグ

調査の対象となったのはアメリカ国内の5箇所の病院(それぞれに全く違う地域)で主にガン患者を訪問している26匹の犬たちです。これは過去に行われたセラピードッグに関するリサーチの中でも最大規模のものです。

犬のストレスレベルを調べるために、唾液中のコルチゾールの量が測定されました。コルチゾールはストレスを感じた時に増加しますが「ボールを追いかけて興奮した」など良いタイプのストレスでも、嫌な経験など悪いタイプのストレスでも同じように増加します。

そのため、もうひとつの指標として患者を訪問中の犬の様子が録画され、ストレスを示すシグナルの有無や強弱も観察されました。

犬の唾液は病院に出かける前に家庭で、そしてセラピーセッションの最中に採取され、それぞれのコルチゾールレベルが測定されました。

セラピードッグたちは仕事にストレスを感じていない!

子供と遊ぶセラピードッグ

さて、気になる結果です。

セラピー前とセラピーセッション中の犬の唾液のコルチゾールレベルには特に変化がありませんでした。このことから、犬たちはセラピーの仕事にストレスを感じてはいないことがわかりました!

ここまでは2017年に発表されたウィーン大学の研究者による「セラピードッグの福祉に関する研究」の結果と一致しています。
もうひとつ、セラピーセッション中の犬が発しているシグナルの観察からは何がわかったでしょうか?

犬たちは患者さんから話しかけられたり、おもちゃで一緒に遊んだりした時に、より楽しそうでハッピーな様子を見せていたそうです。

セラピードッグにもお気に入りのセッション内容があるようですが、仕事をすることで犬たちも楽しんでいることがわかりました。

研究からわかった今後の課題

車椅子の女性と向き合うセラピードッグ

セラピーのセッション内容によって、犬にも特にお気に入りのものがあるというのは、考えてみれば当たり前の気がしますね。犬たちの様子を録画したビデオからは、さらに興味深い傾向も伺えたそうです。

セラピーセッション中にストレスを感じているシグナルを多く見せた犬は、同時にフレンドリーでハッピーなシグナルも多く見せていました。つまりその時に行われているセッションの内容に対してはっきりと好き嫌いを示す犬がいるということですね。

セラピードッグだけでなく、介助犬や探知犬など働く犬の育成をする際に重要なのは適性のある犬を選ぶことです。

研究者はセラピードッグのトレーナーや資格認証をする人々に対して

「犬がその仕事を受け入れることができるかどうかでなく、その仕事に熱心になれるかどうかを判断して欲しい」

と述べています。

普通の家庭犬も訓練を受けてセラピードッグになることはできます。けれども大切なのはただ単に「できる」のではなく「喜んでできる」ということです。自分の愛犬をセラピードッグとして訓練したいと思っている飼い主さんたちにも、この点をよく考えるように呼びかけられています。

まとめ

笑顔のチワワ

人間のために働いてくれるセラピードッグたち。アメリカの動物福祉団体の研究から犬たちはセラピードッグとしての仕事にストレスを感じておらず、楽しんでいる場合もあることがわかりました。ホッとする研究結果ですね。

さらに犬によってセラピーセッションの内容に好き嫌いがあることもわかりました。これはセラピードッグ育成の際に適性を見極めることの重要さを改めて知らせることになりました。

人間が犬によって癒されるだけでなく、犬と人間の関係はお互いにハッピーなものであるように努めていたいものですね。

《参考》
https://www.appliedanimalbehaviour.com/article/S0168-1591(17)30330-1/fulltext?cc=y%3D&code=applan-site

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