犬が吠えるのには理由がある
犬の吠える行動は、少し前まで狩猟や牧畜、番犬などの役目として人に必要とされてきました。特に侵入者を知らせる、獲物を追い詰めるなどの仕事を担ってきた犬種は、吠えやすいという傾向があるようです。そこで、吠える犬種と言われている有名犬種名を以下に挙げてみました。
犬種 | 犬種名 |
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【小型犬】 | パピヨン、ポメラニアン、チワワなど |
【牧畜犬】 | ボーダーコリー、シェットランドシープドッグなど |
【狩猟犬】 | テリア系、ビーグル、ダックスフンドなど |
【日本犬】 | 柴犬などの日本犬 |
このように、犬にはもともと「吠える性質」があるということを理解した上で、無駄吠え対策をしていきましょう。また、犬の性格やオス・メスなどの性別、原因によっても吠えやすさや対処法が異なるので、まずは飼い犬の吠える理由を明確にすることが大切です。
犬が人に吠える理由
要求している
犬は飼い主さんに自分の要求を知らせるため、散歩や食事などの決まった時間になると吠えることがあります。犬は損得勘定によって行動が増減すると考えられていて、このような犬の要求に飼い主さんが応えてしまうと、吠えることで散歩に行ける、食事がもらえるといったことを学習し、結果的に吠えることが多くなってしまいます。
怖がっている
家に来た来客に吠える場合は怖がっていることが主な原因となり、不安から吠えることが多いと言われています。
犬は見慣れない人や物音に対して、怖いという恐怖心を抱いているので、その恐怖心や警戒心を解くような対策を行いましょう。また、こういった不安や恐怖を感じる状態が続くことは犬にとってストレスにつながるので注意が必要です。
散歩中など人が通ると吠える場合は、犬が怖がっていて相手が近づかないよう威嚇する意味で吠えるという行動をとることがあります。これは子犬のときにあまり外に出さなかったことが原因で、家族以外の人に慣れておらず、人見知りしていることが考えられます。
このように社会性が養われずに成長した犬は、状況によっては咬みつくことも考えられるので十分に注意する必要があります。
監修ドッグトレーナーによる補足
幼少期に人と触れ合う時間が少なかった子は初対面の人に警戒心を持つようになる可能性が高まります。一度警戒心を持つようになるとそこから自信をつけていくには時間がかかる場合もありますが諦めてはいけません。
散歩中人に話しかけられることがあればすかさず飼い主さんがおやつをあげましょう。公園などで飼い主さん同士の集まりに入ってみて定期的におやつをあげてもらうのも効果的です。
また、ご友人がお家に来る場合などでもおやつをあげてもらうと良いですよ。その際には“家族以外の人からしかもらえない特別なおやつ”も準備しましょう。
うれしい
犬が吠える理由には警戒心や恐怖心といったこと以外にも、外出していた飼い主さんが帰宅したことがうれしくて興奮することで吠えることがあります。これは、留守中の寂しい気持ちや飼い主さんが帰ってきた喜びなどの気持ちを吠えて伝えていると言われています。
監修ドッグトレーナーによる補足
帰宅したときに愛犬が寄ってきてくれるのはとっても嬉しいことですね。それでも、興奮しすぎておしっこを漏らしてしまうような子や、人と離れることに不安を感じる子の場合には“落ち着いてから相手をする”ようにしましょう。
外出や帰宅が一種のイベントのようになってしまうとこういった問題は習慣化されて直りにくくなってしまいます。
信頼関係が築けていない
犬が吠える理由は要求や威嚇など、様々な原因があります。そういったとき、なぜ犬がそういった行動を取るのかを飼い主さん側が理解できているかどうかが重要になります。
理由が分からないままだと、犬の気持ちを無視し、飼い主さん側の意見を押しつけることにつながります。その結果として信頼関係が築けず、犬が「唸る・咬む・吠える」といった行動を見せるようになるので注意しましょう。
犬が他の犬に吠える理由
警戒している
他の犬に対して吠える理由は、攻撃の前兆であったり気に入らない相手を追い払うためだったりと、様々な理由から警戒していることが原因となっています。恐怖から転じることも多く、他の犬の存在に慣れていないことも原因の一つに挙げられます。
比較的、他の犬とのコミュニケーションを身につけやすいと言われている子犬のころに、散歩に行く機会が少なく他の犬との関わりを持てなかった犬に多い傾向があります。こういった場合、他の犬との接し方が分からず、怖いという気持ちから吠えてしまうことが多くなると言われています。
犬は自分の身やテリトリー、おもちゃなどの大切なものを守ろうとすることや、いつもと違う状況を飼い主さんに伝えるたりするために吠えることもあります。
遊びたい
社交的な犬の場合、他の犬と会えたことがうれしくて一緒に遊びたいという気持ちから吠えることがあります。このようなタイプの犬は、自由に行動できないリードが原因で吠え続けることがあるようなので、他の犬から無理に引き離さずに向かいたい方向に連れて行ってあげましょう。その際に、他の犬が吠えたり、唸ったり、あるいは飼い主さんの後ろに隠れようとする場合には近づくのを控えましょう。
またこのタイプの犬は、外で出会う他の犬にばかりに気を取られてしまう傾向があるので気をつけましょう。
犬が環境音に吠える理由
救急車やパトカーのサイレンに吠える場合
音に反応し、特定の条件で犬が本能的に「遠吠え」をすることがあります。犬は、本来群れで行動する習性を持つため遠吠えは、仲間との大切なコミュニケーションツールとして使われていました。
救急車やパトカーのサイレンの音は犬の遠吠えの周波数と似ているとされており、それらの音が聞こえると犬は遠くにいる仲間へ自分の居場所や起こっていることを知らせるため、遠くに聞こえるような声で吠えることがあります。
インターホンの音に吠える場合
インターホンの音が鳴ると吠えだす犬も多いです。これは人が苦手(又は好きな場合でも)な犬が、インターホンの音と来客を結びつけることで起こります。犬がインターホンで吠えることを学習した結果、吠えることが習慣化してしまう「吠えグセ」がついてしまっていることがあります。
また、インターホンが鳴ると飼い主さんが動くことを学習しており、吠えることで構ってもらえると勘違いしているケースもあるようです。
犬が吠えるときは仕草によっても意味が異なる
尻尾を振りながら吠える場合
犬が尻尾を振ると、大抵の飼い主さんは喜んでいると考えがちです。しかし実際には「興奮している」ことが多く、その状態のときに犬に手を出して噛まれてしまうなどのトラブルが起こることがあるので注意が必要です。
また、犬は以下のような尻尾の振り方や振る速さで気持ちや行動を表しています。
- 微かに振る
- 大きく振る
- 小刻みに早く振る
- 尻尾が下がったまま振る
このように、尻尾の振り方にも様々なタイプがあります。微かに振るときは「リラックス」、大きく振るときは「興奮」、尻尾が下がったまま振るときは「萎縮」、小刻みに早く振るときは「警戒」など、振り方には犬の気持ちが現れています。
監修ドッグトレーナーによる補足
尾の動きはあくまで一つのサインであり、犬の感情を尾の動きだけで測ることは出来ません。なぜなら犬は相手に誤解のないように自分の気持ちを受け取ってもらうために体全体を使って表現をするためです。
ですがいきなり全体を俯瞰して観察し、読み取るのは簡単なことではありませんので、まずはサインとして分かりやすい“尾”や“体の体勢”などを観察して今どんな感情なのかについて考えるところから始めてみましょう。
姿勢を低くして吠える
犬は、お尻をあげ頭を低くしてお辞儀のようなポーズをとりながら吠えることがあります。このポーズは「プレイバウ」と呼ばれており、相手を遊びに誘っている気持ちが表れています。
一方で、この姿勢をとりながら低く唸るような声を出しているときは、相手に対し敵意を向けているのでケンカにならないよう注意してください。
その他、腹痛などを訴えているときに同じような姿勢をとることがあります。日々のコミュニケーションの中で、飼い犬の様子に普段と違うところがないか観察し、注意して様子をみてあげましょう。
吠える犬のしつけ・トレーニング
無視する
大切な犬が食事や抱っこなど、様々な要求や興奮で吠えるときは、その吠えに対して無視するようにしてください。犬が吠えている間はお預けにし、吠えるのをやめたときに始めて要求に応えるようにします。こうしたトレーニングを繰り返すことで犬は吠えるのをやめるようになるでしょう。
しかし、今まで吠えることで要求を叶えてきた犬は、なかなかあきらめずに吠え続けることがあります。そのような場合は、飼い主さんはその場から一旦離れ、吠えても意味がないことを犬に気づかせてあげるとよいでしょう。
社会性を身につける
子犬のときに社会性が養われていない場合、見慣れない相手に対して怖がり警戒して吠えるようになるかもしれません。まずは犬に落ち着くことを指示し、警戒心を取り除く必要があります。飼い主さんは、この恐怖心をうれしいという気持ちに変えるトレーニングを行いましょう。
吠え防止の方法は、愛犬が相手の犬を気になるかならないか程度距離を取り、慣らしていくことから始めます。一定の距離で他の犬を見ても吠えないでいられたときは、すかさずお気に入りのエサやおやつなどを与えて褒めてあげるようにしましょう。
ポイントは必ず飼い犬が安心できる距離をとり、普段から少しずつ他の犬に慣れさせていくことが大切です。このように「吠えなかったら褒める」しつけを繰り返して、犬に学習させていきます。
しかし、あまり改善が見られない場合、しつけ教室やしつけのプロに頼るのもひとつです。暮らしている環境や性格によって吠える意味は異なるので、自分の犬が吠える原因を探しながら焦らず対応していきましょう。
成犬が吠えるのはしつけで直る?
子犬に比べ、成犬が吠えるのをしつけで直すのは難しいですが、不可能ではありません。成犬になってから吠えるのは、生活習慣で身についてしまったことが主な原因になっていることが多いです。
特に、要求吠えの場合には飼い主さんが犬の要求に応えてきたことが原因となっているので、要求には対応せずに、様々な物事をこちらから始めて終わるように意識して生活してみましょう。
犬が突然吠えるようになった時のしつけ方
信頼関係を築く
犬と人間の違いを理解しつつ、犬に信頼してもらうためにはどうすればよいのかを考え、しつけというコミュニケーションを行っていきましょう。
まずは、犬が吠えるといった行動をとったとき、なぜそのような行動をとるのか「犬の気持ち」を理解することが重要です。犬を強制的に従わせるのではなく、穏やかに接してあげることが信頼関係を深めるのに役立ちます。
安心させる
過去の経験がトラウマとなって吠えている犬の場合、その原因を取り除いて安心させてあげる必要があるでしょう。過去に散歩中、他の犬に会ったときに吠えられてしまい、怖い思いをしたため他の犬との接し方が分からず恐怖心から吠えてしまうことがあります。
また、飼い主さんに怒鳴られたことがある場合も、トラウマになってしまう犬もいるようなので注意が必要です。
その他、犬が高齢になると認知症などの病気が原因となって突然吠えることがあります。このような場合、何をしても鳴きやまないという特徴があります。病気が原因の場合はしつけでは対処できないので、獣医さんと相談をして薬を使った治療や生活環境を見直す対策を取りましょう。
監修ドッグトレーナーによる補足
子犬の頃に他の犬に慣れさせようとドッグランに行ってみたものの、追いかけられたことをきっかけに犬嫌いになってしまうケースがあります。
そのため、ある程度他の犬に慣れるまではパピー教室や幼稚園で経験を積むことをおすすめします。また、一度怖いという印象を持つようになってからでも幼稚園などで自身を付ける練習を積むことで遊べるようにまでなる犬もいます。
犬の吠える行為が起こすトラブル
夜中に吠える
早朝や夜中に犬が吠えることが原因で、近所とのトラブルにつながる可能性があります。特に犬を飼っていない家庭では、犬の吠える声をうるさいと感じる人がいます。
また、ペット可のアパートやマンションであっても、時間帯によっては犬が吠えると迷惑になるので注意してください。飼い主さんが気にならない鳴き声であっても近所迷惑になっている可能性があることを認識しておきましょう。
近所迷惑になる
苦情を直接言いにくる近所の方もいるとは思いますが、あまりにも犬が吠える場合は保健所や警察に通報されることがあります。
「犬は吠えるもの」ですが、その状況を放置すると近所とのトラブルに発展してしまうので気をつけてください。飼い犬が吠える場合は、飼い主さんが責任を持って近所から苦情がでる前に適切な対応を心がけましょう。
飼い主さんのストレスになる
犬が吠えることは、近所とのトラブルだけでなく、飼い主さん自身にストレスを与えることがあります。飼い犬が吠えるのが続き、イライラして眠れなくなってしまうことや、近所とのトラブルにつながるなど、悩みからノイローゼ気味になってしまったというケースもあると言います。
犬の「吠え」に関する豆知識
幽霊に向かって吠えている?
犬には人間と同じ聴覚や嗅覚、視覚などの五感のほか、物を感じるための感覚が備わっていることが分かっています。それを第六感と言い、犬は人間には見えないUV波(紫外線)を色として視覚化できている可能性あるそうです。
諸説ありますが、幽霊の持つエネルギーがこのUV波と同じ波長であるという説があります。そのため、何かをじっと見つめ何もないのに吠えると、幽霊が見えることで吠えていると言われることがあります。
犬の吠えは地震の前兆?
犬は電磁波の変化を感知する能力があり、予知能力があるとも言われています。地震が起きる前に、そわそわして動き回り、いつも以上に吠える、怯えるような行動を見せることがあるようです。
そのような異常行動は、地震発生前の地殻変動によって起こる磁場の変化を犬は感じとり、それを飼い主さんに教えようとしているとも言われています。
まとめ
犬が吠える理由は、育ってきた環境や性格によって様々なことが考えられます。飼い主さんは犬に吠えるのをやめさせたいと思ったら、まずは吠えている原因を知ることから始め、犬の気持ちを理解した上で、しつけや正しいトレーニングを行うことが大切です。
犬が吠えるのをやめて飼い主さんのストレスがなくなるよう、焦らず時間をかけて直していきましょう。