絶滅犬種とは
絶滅犬種とは、飼育環境や使役目的の変化によって純血種が絶滅した犬種のことを指します。
絶滅した理由はさまざまで、圧倒的な人気がある犬種でも時代の流れや文化の変化などによって少しずつ数を減らし、最後にはその種が絶えてしまうこともあります。
畜犬団体(ケネルクラブ)、国際畜犬連盟(FCI)、愛犬団体などが純血犬の頭数調査などから絶滅の判定を行っています。
絶滅犬種10選!
1,クライズデール・テリア(旧犬種名ペイズリーテリア)
毛並がシルクのように美しく、スカイテリアをショードッグ用に品種改良されて生まれたのがクライズデール・テリアです。
スコットランドが原産で当時の小型犬の中でも一番小さいサイズといわれていました。性格はおとなしく社交的であり、貴婦人達のペットとして主に鑑賞用として使役されていたようです。
しかし、品種改良の影響で弱化してしまい遺伝的な疾患を持つ個体が増えたことから、人気は急落していき、第二次世界大戦の最中に絶滅が確認されました。現在は、同じように美しい毛並を持つヨークシャテリアにその血が受け継がれています。
2,サザン・ハウンド
イギリスのイングランドが原産であるサザンハウンドは、その誕生時期や生い立ちなどが謎に包まれている犬種です。
身分の高い人がシカ狩りをするために使役されていたサザン・ハウンドは、とても重量感のあるハウンド犬で、雄シカとも対等に渡り合えるほど力が強かったようです。性格は忠誠心があり飼い主の指示以外では動かない頑固な一面も持ち合わせていました。
しかし、19世紀にシカの頭数減少によりシカ狩りが制限されたことから、代わりにキツネ狩りの需要が高まったことが原因でその数は激減していきました。愛好家たちが繁殖を継続しましたが、人気は衰える一方で1800年代に絶滅しました。
その後、サザン・ハウンドは需要が高くなったキツネ狩りに適した犬種になるよう品種改良され、現在のイングリッシュ・フォックスハウンドの姿になったようです。
3,チズム
数多くの犬種の中でも遥か昔から生息していたとされているチズム。生態など全てが謎に包まれていますが、紀元前3000年ごろに描かれた古代エジプトの壁画の中にも、チズムと思われる犬が確認できることから、この頃よりさらに前から存在していたとされています。
狩猟犬として幅広い種類の獲物を狩っていたことや、王族や貴族だけでなく貧しい人も飼育することを許された為、広い地域でとても重要な存在として人々と共に生活していました。このことから、現在の様々な犬種の先祖となり、グレイハウンドやファラオ・ハウンドなどがその血を受け継いでいます。
4,イングリッシュ・ウォーター・スパニエル
原産国のイングランドでは、ワーキングドッグとして人々の人気を集めていました。泳ぎが得意で少しの間であれば潜水もできる特性を活かし、漁に出た船が水中へ落とした網を拾って戻したり、猟師が撃ち落とした鳥を回収するなど仕事のパートナーとして活躍していました。
しかし、19世紀に作出されたカーリーコーテッド・レトリーバーによりその人気を奪われてしまい、次第に頭数が減少し1893年に絶滅となりました。
大型犬に匹敵するラージサイズと、中型犬ほどのスモールサイズがあり、性格はとても温厚で大人しく、飼い主に従順犬種でした。この性格は現在最古のレトリーバーといわれているカーリーコーテッド・レトリーバーにも受け継がれています。
5,ターンスピット
ターンスピットはイギリス生まれの犬種で、16世紀から19世紀にかけて肉を焼くための回し車を回転させるために使役されていました。
規模の大きい厨房では、何頭ものターンスピットが交代で回し車を走らせ、長時間に渡り無理やり働かされていたという記録もあります。
数多くのターンスピットが使役されていましたが、産業革命によってスモークジャックという自動で回転する肉焼き機が開発され、普及されるとともにその数は激減し絶滅にまで至ってしまいました。
6,タルボット・ハウンド
イギリスのイングランド原産の犬種であり、そのルーツは11世紀にノルマン人がイングランドへ持ち込んだノルマン・ハウンドという犬種を品種改良して作出されたといわれています。
体形も大型犬並みで、知的で主人に忠実であることから貴族のシカ狩り用として使役されており、その存在はとても高貴なもので名家の家紋に刻まれるほどでした。
しかし、シカ狩りの人気が衰えるとともに頭数が減っていき、18世紀の終盤から19世紀初頭ごろにかけて絶滅したとされています。
現在でもタルボッド・ハウンドは人気が高くシンボルとして使われることも多くあります。
7,ハパ・ドッグ
名前の由来は「小型の愛玩犬」とされており、その名の通り体つきは小さく古代愛玩犬種の一種とされています。
身分の高い人のペットとして飼われていましたが、第二次世界大戦の戦禍に巻き込まれたこととや中国政府が施行した”飼い犬撲殺令”などによってその姿は減少し、20世紀初頭ごろに絶滅しました。
イギリスのトリング動物博物館に剥製が展示されており、今でもハパ・ドッグの姿を見ることが出来ます。
8,ホワイト・イングリッシュ・テリア
イギリスのイングランド原産であるホワイト・イングリッシュ・テリアは、当初ネズミ狩りなどの狩猟犬として使役されていましたが、その純白の毛並からショードッグとして人気を博しました。
人気は衰えることなく、その後約100年ほど続き重要なドッグショーには必ず出場する犬種とまでなりました。
しかし、人気であるがゆえに乱繁殖が行われるようになり、生まれつき青い目の個体や耳が聞こえない個体が生まれるようになってしまい、少しずつ姿を減らしていき、1927年に絶滅してしまいました。
9,ツウィード・ウォーター・スパニエル
見た目は現在のゴールデンレトリバーに似ていますが、被毛は水をはじくため油っぽい手触りをしています。
主に、ツウィード川付近で飼い主が撃ち落した鳥を回収することを仕事としていました。
品種改良によって誕生したゴールデンレトリバーが、次第に仕事を任されるようになり、ツウィード・ウォーター・スパニエルの数は減少していき、1900年ごろに絶滅しました。
10,ミニチュア・ブルドッグ
オールド・イングリッシュ・ブルドッグを番犬や愛玩犬として飼育できるよう、品種改良されて作出されたのがこのミニチュア・ブルドッグです。
忍耐強く、温厚な性格から人気がありましたが、輸出先のフランスでフレンチ・ブルドッグが作出されコウモリ耳という珍しい特徴から、人気を奪われてしまいました。
その後、人気が復活することなく1930年代に絶滅してしまいます。
まとめ
いかがでしたでしょうか?今回ご紹介した以外にも絶滅してしまった犬種は数多くあります。
絶滅した理由は、人気に影響した乱繁殖や使役目的であったシカ狩りなどの衰退と様々ですが、どれも人間の勝手な都合であることを忘れてはいけません。
現在確認できる犬種を、これまでの歴史のように人間の都合なんかで絶滅させたくはありませんよね。
また絶滅した犬種の血を受け継いでいる犬種も存在していることも、しっかりと理解しておきたいものです。