ドッグレスキュー!暴れん坊のジローと飼い主さんを救え!⑤(終)

ドッグレスキュー!暴れん坊のジローと飼い主さんを救え!⑤(終)

『ドッグレスキュー』と言っても、僕の仕事は獣医さんの様に、犬の病気や怪我を救いに行くんじゃありません。ワンコや飼い主さんの「心のお悩み」を救いに行くこんです。今回は本気咬のジローのお話。最終話!

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久々の訪問

伏せる柴犬

前回訪問より約ひと月。前回のお恥ずかしいアクシデントの余韻は引きずるまいと、いつものニュートラルなエネルギーを保ちつつジロー宅へ向かいました。

この1ヶ月間、僕は飼い主さんとは一切連絡は取らなかったです。

  • 1つは諸々のアドバイスを実践して頂いていると信じていたから。
  • 1つは僕が気にして「どうですか?」と連絡を入れると余計なノイズが入ってしまうのではないかという事。
  • 1つは純粋にいつも通りの時間の流れ、日常生活の中でジローと向き合って欲しかった事。
  • 1つは何かあればご連絡頂けるだろう。

まぁこんな想いがあったからなんですけどね。

飼い主さんとジローの変化

ジロー宅の近所まで来ると、ある事に気が付きました。以前のようなジローの吠えが聞こえません。

(あれ〜?)

ピーンポーン♪

インターホン越しに元気な声で
「はーい!」

「わんぱぱです!」

「はい!どーぞ!」

「失礼します!」

いつものやりとりですが、どことなく覇気が感じられました。

ワンワンワンワン!ワンワン!
(お!ジローも元気そうだ♪)

リビングに入るとひと月前と少し空気感が違う。ウッドデッキのジローを一瞥。

「ご無沙汰してすみません。」

「とんでもありません。」

「頑張られたみたいですね♪」

「まぁ…。」

「ジローの表情を見れば分かりますよ♪」

飼い主さんの表情にも自信が見て取れましたしね。

進展♪

1ヶ月ぶりに見るジローの顔からは険しさが薄れ、時折眼光が鋭くなるんですが以前とはまるで違う。ご主人の動きを目で追い尻尾を緩やかに振っている。

(飼い主さんを見る眼が変わってる♪克服するのに頑張られたんだなぁ。すごいな…。)

今回は僕もジローに刺激を与えたくないので接近せず、オヤツのやりとりでコミニケーションを取りました。

室内でサッシを開けたままでリードを固定されたジローにおやつを投げ、マズルでキャッチさせたり探索させたり♪ジローも嬉しそうに付き合ってくれています。

「顔つきがまるで変わりましたね♪」

「はい♪あれから毎日ジローとコミニケーションを取る様にしていました。」

「ほー♪素晴らしい!」

「触れる様にもなったんですよ♪」

「えー!そうなんですね」

「ちょっと見てて下さい!」

そう仰るとおやつを持って颯爽とウッドデッキに出られ

ジロー!おすわり!」

するとジローは尻尾をフリフリぺたんとお座りします。

そしてジローの目の前の床におやつを数個、横並びに並べ

「待て!」

ジローももじもじしながら待っています!

「よし!」

慌てて追いてあるおやつをパクつくジロー。

「よし♪お利口だね〜」

とジローの頭をなでなでされたんです。

何も知らずに見ると当たり前の光景ですが、僕は思わず「おー!すげ〜!」と叫んでいました(笑)

すると奥様が

「じゃ、私も♪」

とジローの前にしゃがみ込み、同じように見せてくれたのです。

なんか感動してしまいましてね。
(よくぞここまで♪)

「いやー参りました。信頼関係がここまで回復しているとは…。もうすぐ散歩に行けますね!」

「…。散歩はまださすがに腰が引けて…。」

「ここまで頑張られたんですから大丈夫ですよ。タイミングを見計らってやってみましょう。ただし、散歩に行くぞ!オーラはダメですけどね。さりげなくスーッとジロー主導で外に出て行くようにしましょう!」

「…。」

「まぁ、焦らずゆっくりでいきましょう♪ここまで頑張られたんですから。とにかく今まで通り皆さんでコミニケーションを取りましょう!方法はお任せします。」

「はい♪」

犬は飼い主を映す鏡。飼い主さんが克服すれば、ジローのエネルギーがどんどん陰から陽へ変わります。

後に数回訪問させて頂きましたが、その様子がどんどん変化していく過程を見せつけられました。飼い主さんのジローに対する想いは間違ってはいなかったんですね。

そして約1ヶ月後にまた朗報が届きましたよ♪

久々の散歩♪

白柴アップ

ある日の朝、メールが届きました。

(ジローの飼い主さんからだ♪)

原文「本日散歩に行けました! 帰ってからリード外しに苦労しましたが…。ひとまず前進です。」

動画と共に送られて来ました♪ そこに映るジローは楽しげに外気の浮遊臭や地面や草木の匂いを嗅ぎ、意気揚々と闊歩する姿でした。

(おー♪すげー♪)

通いなれた道を確かめながらグイグイ飼い主さんを引っ張りながら進んで行きます。正に水を得た魚ならぬ「自然を得た犬」。

程なく再訪問の機会があり、その時は僕も散歩同伴させて頂きました♪
ジローは「さぁ行くよ行くよー♪早くおいでー♪」と言っているように後ろから付いていく僕に視線をくれながらご機嫌な様子でした。

行き交う人や犬にも悪い反応は全くなく、楽しみながら跳ねるように歩くんです。

「ジロー楽しそうですね〜」

すると横で奥様が

「元々、ジローは散歩が大好きでしたからね。またこの姿が見れて本当に良かったです♪諦めずに良かったです。ありがとうございました。」

「いえいえ。僕は何もできませんでしたから。ただ僕の意見をご理解頂けたことに感謝の気持ちと敬意を表したいと思います!まだ十数年ジローと暮らす訳ですからもっともっと絆を深めて下さいね。ジローに幸せな生涯を過ごさせてあげてください!」

「もちろんですよ!」

心強いお言葉を頂き、楽しい一時間を過ごせました。

(お前も頑張ったよなジロー♪パパもママもお兄ちゃんもお姉ちゃんもお前が大好きなんだよな。安心して良いと思うよ♪)

帰り際にはジローが僕にこんな満面の笑みを見せてくれましたよ♪

(また会えるよなジロー♪)

笑顔の白柴

でも僕の出る幕が無くなるのが嬉しいんですよ。それが僕の仕事なんですよ。

愛犬家それぞれのライフスタイルがあり、犬もそれぞれ。それぞれの想いで犬と暮らすことを選択した方々に僕ごときが偉そうに、こうしなさいあーしなさいと押し付けるつもりは毛頭ありません。

1匹でも犬が幸せに、一人でも飼い主さんが幸せになれる、ハピドグライフのお手伝いができることが僕の喜びなんです。

飼い主さんの意識が変わり、悩むより愛犬と楽しく円滑に過ごすことがその群れの結束が強くなります。飼い主さんが自信を持って群れのルールを作り、欲求を満たし、統率する意識を持ってくれることが愛犬の幸せに繋がるんですよね。

さいごに

笑顔の柴犬

今回のドッグレスキュー長編にお付き合い頂き、本当にありがとうございました。

ジローに、そして飼い主さんに出逢えて改めてこの仕事をしていて良かったと思えました。そして飼い主さんに敬意を表する意味でもこの記事を書かせて頂きました。

今まで数え切れない程のレッドゾーン犬と関わり、危険な場面にも多々遭遇して来ましたが、「今回の群れ(ご家族)」はとても印象に残りましたね。

『本気咬み』に関して言えば、それこそ半年から数年掛けて改善するケースが多い中、これだけの短期で飼い主さんが恐怖を克服した前例は記憶にありません。

僕が常々口にする「飼い主さんが変われば犬は変わります!」を正に実践して頂け結果です。

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ユーザーのコメント

  • 投稿者

    40代 男性 ポン太

    他人事だと思えずハラハラしながら読ませて頂きました。
    うちには2歳になったばかりの柴犬ポン太がいます。ポン太が1歳になる頃、本気噛みすることが度々ありました。自分たちだけでは手に負えなくなり専門の先生にみてもらい時間をかけて原因を探し、対処法を教えてもらいました。今ではポン太に近づくのを怖がっていた妻もポン太と外だけでなく家の中でも楽しそうに遊んでいます。私の手は傷跡だらけでかなり苦労はしましたがその分ポン太との絆も深くなったように思います。本気噛みの問題が起きた時は飼い主さんだけでなく犬自身も苦しんでいるんだなと思います。それを解決するための手助けをしてくれるわんぱぱ先生や私たちが会った先生には本当に感謝しています。
    ポン太の投稿画像
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