ドッグレスキュー!暴れん坊のジローと飼い主さんを救え!④

ドッグレスキュー!暴れん坊のジローと飼い主さんを救え!④

『ドッグレスキュー』と言っても、僕の仕事は獣医さんの様に、犬の病気や怪我を救いに行くんじゃありません。ワンコや飼い主さんの「心のお悩み」を救いに行くこんです。今回は本気咬のジローのお話。第4話!

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攻防

白柴

正に烈火の如く攻め立ててくるジロー。牙を剥き出し、目が血走り、リードで吊られているにも関わらず怯む様子も全くありません。

散歩も久しく体力満タン!フラストレーションも満タン。雄犬として、また柴犬の最大の特性、熊にも挑む「勇猛果敢」な気性。

(こりゃ完全にスイッチが入ってるなぁ…。さぁどうする…)

数分間、暴れるジローと僕の間で膠着状態が。

(よし。派手に立ち回っても飼い主さんの恐怖心を煽るだけだし、とりあえずイーブンに持ち込むか。俺も一歩も引かないよジロー♪)

僕自身が恐怖心をジローに悟られると今後やり難くなる。かといって傷を負わす訳にもいかず、反撃してねじ伏せればジローの心の傷はより深くなる。とにかく一歩も引かないことだけに徹しようと決めました。

この日はあいにくの曇り空で、前日まで降った雨が朝方に雨が上がっていましたが、ウッドデッキを濡らして、時折小雨が降っていたのですが、後にこの天気も影響してしまうんです…。

ハプニング

ミックス老犬

膠着状態が何分続いたんでしょう。前足が浮き吊るさせた状態のジローが辛そうに見えました。

(このままじゃダメだな…)

と思い始めた矢先の出来事です。

(え?え?マジで!こりゃマズイ…)

ジローの首輪がスルスルと上に滑り始めます。

(抜けたらマズい!)

考える暇もなくスポンッ!

(げっ!)

目にも留まらぬ一瞬で僕に向かって飛びかかって来ました。とっさに右手を出してガードしましたが、遅かった〜。

(グッ!今度は人差し指か!)

指先に金槌で叩かれたような衝撃が走ります。

(うーん…)

僕はジローの両耳の後ろの皮を両手で掴み、ガードしました。

(お前の敵じゃないんだよ。落ち着けジロー)

僕の顔の前20cmのところでジローが哮り狂います。
ガウガウ!グー!ガウガウ!!

さすがにこの距離で見るとすごい迫力ですよ。

飼い主さんに
「押さえておきますからジローのマズルを縛ってもらえますか!」
「は、はい!」
すかさず近くにあった紐かリードだったかを持って駆け付けて下さり、マズルを縛ろうと試みて頂きました。

しかし、何回やっても上手くいかない。ずっと顔を上下左右に抵抗するジロー。
外れては結び外れては結び。

その間、荒れ狂うジローは左右に首を振りながら僕の両二の腕を前歯でガジガジ噛み続けます。
小雨と血で手が滑り、ジローを完全にホールドが出来ません。

(こりゃひじょーにマズい状況だなぁ。どうする。考えろ。考えろ。)

飼い主さんも僕を助けようと必死です。

(動きを止めないと…。よし。仕方ないか!)

僕はとっさに左の二の腕内側を差し出してジローに噛み付かせました。

ガブリッ!
(ツッ…!!よし!このまま胴体を抑えれば…)

左腕にジローを噛み付かせ、右手でジローの胴体をガッチリ抱きかかえたんです。
ヘッドロックのように。

「合図を出しますのでジローに首輪とリードを着けて下さい!」
「はい!」

僕はそのままジローの様子を観察します。ジローの上下の牙が左腕にガッツリ刺さっています。

(ジロー。よーしもう大丈夫だよ。落ち着こうなぁ。)

そう心の中で話しかけると、スーッとジローの噛む力が抜けてきました。

(咬む力が優しくなってきた!)

「今です!」
飼い主さんはすかさず首輪とリードを僕とジローの間に差し込み装着してくれて

「ジローを離してその柱にリードを!」
「はい!」
「せーの!」

パッと離れたジローを固定してやっと落ち着きました。その行為にまた逆上したジローでしたが、固定しているのでどうすることもできません。まだギラついた眼差しで僕を睨んでいましたけどね。

僕も平静を装っていましたがかなり動揺していたのでしょう。ハッと気が付けばウッドデッキの床が真っ赤に染まってました。それにしても飼い主さんが機転を利かせて頂いたお陰です。

慮ること

白柴パピー

その日はさすがにそのまま中止になりました。飼い主さんに申し訳ない気持ちでめちゃくちゃ凹んでましたけどね。

愛犬のあんな姿を見せてしまった…。僕も醜態を見せてしまったし…。かなりショッキングな光景でしたから。でも僕の傷が癒えたらまたトレーニングを再開するお約束を頂けたことが救いでした。

世の中、「咬む犬」は処分する、排除するという安直な答えしか出さない方が多い中、何とか元の穏やかな愛犬に戻そうと必死で立ち向かっておられるんです。

その夜、僕は電話で飼い主さんに言いました。

必ずジローは改善できます。助けて欲しがってます。僕もやれるだけのことは全力でお手伝いしますから決して諦めたりしないでください。飼い主さんが変わればジローの認識が変われば必ず…」

「はい。もちろんです。またドライブに行ったり遊びに行ったり家族で楽しくジローを囲んで楽しみたいです。」

「よかったです。傷が癒えたら必ず行きますからね。このままじゃジローが可哀想すぎますよね。」

「はい。お待ちしてますよ。」

「それまでは決して焦らずにジローと接して下さい。確かに怖さはあるでしょう。でも1ミリずつでいいので前に進めましょう。逃げずに立ち向かってください。ジローのために。先ずはどんな形でもいいので散歩に行けるようになると良いですね♪事件以来、テリトリー外を警戒し過ぎてますもんね。疑心暗鬼なジローとの信頼関係を埋めていきましょうね。

「はい!頑張ります!」

そして電話の切り際にその間の諸々のアドバイスをさせて頂きました。

手に戯れるパピー

その日から3週間後。僕の傷も癒え、またジローに会う機会が訪れます。

その時僕は飼い主さんご家族の絆や愛、ご家族のご努力に僕は驚愕したんです…。

次回完結へつづく…。

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ユーザーのコメント

  • 投稿者

    40代 男性 イロハ

    わんぱぱさま。
    いつもドキドキ、ワクワクしながら読んでます。

    クーッ! まだ引っ張りますかぁ(笑)
    ワン◯ースよりも楽しみに待ってます。
  • 投稿者

    40代 女性 匿名

    ハラハラドキドキです。
    ジローの気持ちが助かりますように!
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