犬のやけど(火傷)とは?
やけどは「熱いものを触ってしまい、皮膚が赤くなる」というだけではありません。他にも様々な要因でやけどを引き起こすことがあります。
やけど(熱傷)の定義
- 低温火傷:低温の熱源に長時間さらされることで起こるも。
- 化学熱傷:火傷は化学物質や化学物質に接触することで起こる。
- 電気熱傷:感電など、電流によるやけどです。
- 気道熱傷:火災時などに高温の空気や煙を吸ってしまい、肺や器官がやけどすること。
犬によくみられるやけどは温熱熱傷と低温熱傷ですが、その他のやけども日常生活の中で起こり得ます。日ごろから事故防止を心がけましょう。
犬のやけどは低温で起こることもある
低温火傷とは、体温よりも少し暖かい温度(40℃~55℃)に長時間触れていることによりおこる火傷のことを言います。具体的には、44℃で4時間~10時間、50℃で約3分、60℃で約5秒で低温火傷を発症します。
低温火傷はじわじわと皮膚の内部にやけどが進行していきますので、見つかった時には、温熱火傷よりも治りが悪い状況になっていることも多いのです。
そのうえ、犬は全身が被毛で覆われているので、皮膚に熱が伝わりにくく、かつ飼い主も気づきづらいというデメリットがあります。ですから、低温火傷は犬にとって特に要注意なやけどの一つなのです。
犬がやけどをする原因
犬がやけどを負ってしまう原因は、家の中だけでなく、屋外にもあるので要注意です。
ホットカーペットや湯たんぽの長時間の使用
ホットカーペットや電気毛布、床暖房、こたつなどは、長時間同じ姿勢でい続けると低温火傷を発症する恐れがあります。特に、体毛が薄いお腹部分は低温火傷のリスクが高い部位です。
また湯たんぽやカイロなども、長時間同じ部位を温め続けると低温火傷を発症する可能性があります。冬は暖を取るために暖房器具などを用いることが多いので犬への配慮を忘れないでくださいね。
老犬や寝たきりの犬、脳血管障害や糖尿病の犬は、特に熱さに鈍感なので、十分注意が必要です。
ヒーターやストーブへの接触
ヒーターやストーブを好む犬は珍しくありません。特にチワワやパピヨンなどの暖かい地域が原産の犬種は、ヒーターなどで暖まった場所が大好きです。
ストーブやヒーターの前に、ずーっと居座り続けることも多く、中にはどんどん近づいてしまう犬もいます。犬は被毛があるため、人間より熱さに鈍感です。
ですから、人間が熱いと感じる場所でも、犬には平気だったりします。飼い主が気づかないままでいると、低温火傷を発症したり、場合によっては被毛が焦げる可能性もあります。
シャンプー後のドライヤー
ドライヤーをかけるときに、犬の体の近くで温風を当て続けたり、同じ場所を長い時間かけて乾かそうとすると低温火傷を発症することがあります。長毛の犬は乾かすのに時間がかかるので、特に気を付けましょう。
調理時の熱湯や油を犬がかぶる
熱湯や熱い油をかぶったり、ポットのお湯をひっくり返したりしてしまうと、熱源の温度やかぶった量にもよりますが、大きな火傷になりかねません。好奇心旺盛な子犬や、若い犬は特に注意をしてください。
犬が電気コードをかじることによる感電
特に好奇心旺盛な子犬の場合、電化製品をいじったり、電気コードを噛んだりする傾向のある犬がいます。感電すると唇や口の中が火傷するほか、体に電流が流れ、肺水腫や心不全を起こすことがあるので注意が必要です。
夏の熱いアスファルトや砂浜の上での散歩
夏のアスファルトや砂浜の表面温度は何度になるかご存じですか?実は50℃~60℃以上にもなるのです。
人間は靴を履いて歩くので気づきにくいかもしれませんが、夏のアスファルトや砂浜は本当に熱くて、場所によっては歩けない程です。
犬の場合は裸足で、しかも地面につくのは被毛がない肉球部分ですから、人間でいうと素足で歩くことと同じことです。60℃以上になった地面を素足で歩いたらやけどすることは明白ですよね。
さらに、犬や動物の多くは痛みに強く、我慢してしまう傾向があります。その為、飼い主が気づいたころには肉球がすでにやけどを負っていることが多いのです。
お散歩中のやけどというと、伸縮リードの摩擦が原因のやけどがあります。伸縮リードはぐんと伸びるので犬が自由に遊びまわれるメリットもありますが、人間の足や、犬自身の体にリードが絡まった状態で引っ張ってしまうと摩擦でやけどを負ってしまいます。
筆者もこれを経験したことがあるのですが、結構痛いです。伸縮性リードの取り扱いには十分注意してくださいね。
犬のやけどの症状
やけどの症状は3段階の重症度に分けられます。
- 第一度熱傷:皮膚に赤みが少し見られる
- 第二度熱傷(浅達性):皮膚が赤く腫れ、水疱ができる
- 第二度熱傷(深達性):皮膚がむける、軽度のケロイドが形成される
- 第三度熱傷:皮膚の下の血管や筋肉などが破壊された状態
目やのど以外の体表部分で、面積の小さいやけどであれば、早急な処置で早い回復が期待できます。しかし、体表であっても広範囲のやけどの場合は、化膿したり感染症などの全身症状を引き起こす場合もあるのです。
【やけどの症状は犬の仕草にも現れる】
犬が火傷をした際には、下記のような仕草が見られます。
- 患部をかばうように動く(散歩中であれば歩き方が変化する など)
- 触ると嫌がる、痛がって鳴く、怒る
- 患部をしつこくなめ続ける
- 焦げたにおいがする
これらの仕草が見られた場合は、愛犬がやけどをしているかもしれません。少し前述しましたが、犬は体が被毛に覆われていて、飼い主もやけどに気づきにくいです。
また、肉球などはあえて見ようとしない限り、目に入らない部位でもあります。やけどかな?と思ったら、痛がる部位をしっかり見てあげましょう。
犬がやけどをしたときの対処法
やけどしたら、とりあえず冷やして、消毒液をつけて絆創膏を貼っておく・・というのは実は正しいやけどの対処法ではありません。
誤った対処をしてしまうと、逆にやけどが悪化してしまうこともあります。
やけどした部位を流水ですぐに冷やす
体表のやけどで、皮膚がやや赤くなり被毛がすこし抜けている程度であれば、とりあえず流水で1~2分ほど冷やすか、水で濡らしたガーゼを20~30分傷の上にかぶせて様子を見てください。(その間は時々ガーゼを取り替える)。
流水をあてるときには、患部の真上からあてると痛いので、斜めからか、上の方からあててください。患部が広く、シャワーで流水をあてるときは、低体温症にも注意が必要です。
また、保冷剤や氷水は、凍傷や患部が悪化する可能性があるので使用を避けてください。皮膚がむけたり、水膨れを起こしている場合は、犬はとても痛がり、患部を冷やそうとすると噛みついてくることもあります。
エリザベスカラーをつけたり、バスタオルを厚めに巻いたり(首が絞まらないように注意)して対策を行ってくださいね。一人で難しい場合には家族に手伝ってもらうと良いです。
やけどを負ったあとに十分な処置をしていないと、患部が壊死したり化膿したりすることがあります。やけどを負ったら、応急処置を施し、必ず動物病院を受診しましょう
自己判断で消毒液や薬を塗布しない
患部に自己判断で軟膏や消毒液を塗布することは控えてください。消毒液は、かえって状態を悪化させることもあります。
また、やけどの治療は獣医師がやけどの状態を確認し、適切な治療を行うのですが、軟膏などが塗ってあると、正しい状態を確認できなくなってしまいます。やけどを負った際は、何も付けずに患部を冷やし、動物病院を受診しましょう。
動物病院を受診して適切な治療を受ける
やけどが軽度の場合は、まずは患部を冷やします。次に、皮膚の抵抗力が低下し、細菌感染を起こさないように軟膏を塗布したり、抗生物質を投与したりします。
傷の治療は、損傷の大きさや広さによって変化しますが、患部を乾燥させて治したり、逆に包帯を巻いて乾燥させないようにして治したりします。
全身に重いやけどを負った際は、一刻も早く治療を行わないと命にもかかわりますので、至急動物病院に連れていきましょう。その際、まず動物病院に電話をして、受け入れ準備をしておいてもらうのが良いです。
電話ではやけどの状態を的確に伝え、病院からの指示があればそれに従ってください。重いやけどの場合、壊死した組織を取り除いたりする手術を行うこともあります。
やけどが治るまで患部を汚さないようにする
患部が汚れると、傷の悪化や、傷の治りが遅くなってしまいます。包帯やエリザベスカラーを用いて対策しましょう。犬が患部をなめたり、かいたりすることも防げるので効果的ですよ。
また、治療中は犬が痛がらない程度に運動は可能ですが、肉球をやけどした場合はなるべく運動は控えましょう。
犬のやけどを防ぐための対策
やけどはきちんと対策を行っていれば防げる外傷です。具体的にどのような対策ができるのか、屋内でできる対策と、屋外での対策について合わせてご紹介いたします。
台所に入れないようにする
可能であれば、ゲートを設置しましょう。難しい場合は、調理中や食事中はゲージやサークルの中で待ってもらうようにしましょう。
ストーブガードを利用する
ストーブガードを用いて接触を防ぎます。時折、ストーブガード自体が熱くなっていないか確認してください。
湯たんぽやカイロを直接肌に当てない
湯たんぽなどは布に巻いて使用しましょう。
外出時はホットカーペットの電源を切る
飼い主が外出の際に、寒いからとホットカーペットの電源を入れっぱなしにしておくことは控えましょう。外出中に愛犬が低温火傷になってしまうかもしれません。
ホットカーペットは飼い主が犬の行動を把握できる時だけ使用し、長時間同じ姿勢でいないように注意しておきましょう。
ドライヤーの当て方を工夫する
ドライヤーを使用するときは、愛犬の体から離し、連続で同じ部位に当てないようにしましょう。
自分の手をドライヤーと愛犬の間に入れて毛をかき上げるように乾かしてあげると、低温火傷の予防にもなり、乾くのも早くなって効果的です。
電気コードにはカバーをつける
電気コードはコード自体にかぶせるカバーなどで感電対策しましょう。また、使っていない電化製品は常にコードを抜いておくと安心です。
夏のお散歩は朝方に行く
前述しましたが、夏のアスファルトや砂浜はカンカンに熱くなっていますので、肉球をやけどするリスクがとても高いです。ですから、夏のお散歩は極力朝方に行きましょう。
夕方は涼しくなってきますが、まだ地面が熱いこともありますから、可能であれば朝をおススメします。どうしても朝方に行けないときは、お散歩前に手で地面を触ってみて、熱くないか確認してみてからお散歩に行ってくださいね。
靴を履かせるのもいいですが、お座りなどをしたときに、ほかの部位をやけどしてしまう可能性もあるのでおススメできません。さらに、日中のお散歩は熱中症の危険もありますので控えることが無難です。
火のそばではリードを離さない
レジャーでバーベキューなど火を使う場合は、リードで犬を常に制御できるようにしておくと良いです。レジャーでは犬への配慮がおろそかになりやすくなってしまうのでやけどのリスクが高いのです。
犬と自由に過ごしたいときは、火や危険なものから離れた場所で遊びましょう。
【事故事例】愛犬がやけどした時の状況
2015年12月23日。愛犬ノアは、当時1歳2か月になろうというマルチーズ×トイプードルMixの女の子。いつも元気いっぱいなノアは、その日も公園を元気に走り回っていました。
夜、人間用の夕食を作っているキッチンにノアが入ってきました。
その時丁度揚げ物をしていたので、私は気をつけていたのですが、あり得ないことに、揚げ終わった油を満たしたフライパンがひっくり返り、そこにいたノアが油をかぶってしまったのです。
ノアは悲鳴を上げて、キッチンから逃げ出しましたが、私は必死でノアをつかまえると、急いでお風呂場に走りシャワーで水をかけて冷やしました。
ショックのあまり、手が震えてなかなかうまく動かせまんでしたが、それどころではありません。フライパンいっぱいの油がかかった箇所を、とにかく冷やしました。
幸い頭は無事でしたが、濡れた毛の間から左半身が赤いのが見えたので、とにかく水をかけ続けました。あとでわかったことですが、すぐに水で冷やしたことが、ノアの命運を分けたそうです。
やけどしたら、とにかくすぐ水で冷やすこと!これだけは覚えておいてください!
【事故事例】愛犬がやけどしたときの治療方針の検討と経過
救急病院
病院に連れて行こうとしましたが、かかりつけの獣医さんはもう診療時間が終わっていました。私が水で冷やしている間、パートナーが夜間対応の病院をスマホで調べ、タクシーを呼んでくれました。
真冬に水でびしょ濡れになって震えるノアを毛布でしっかりくるみ、パートナーが病院に行き、家で準備しておくことがあるかもしれないので、私は待機することに。
待っている間、人生で最悪の気分でした。熱い油をかぶったせいで、ショック死するかもしれない。飼い主の不注意で、ノアを死なせてしまうかもしれない……。とにかく無事を祈り続けました。
タクシーで病院に向かってから1時間余りで、ノアは帰宅しました。病院での処置を聞くと、冷却したあと、食器用洗剤で油を洗っただけとのこと。
私は『えっ⁉ それだけ⁉』と思わず驚きましたが担当医は「痛がっていないし、皮膚が赤くなっているだけだから、様子を見ましょう」と言ったそうです。
『熱した油をかぶったのに、痛くないわけないでしょう?』と不安でした。ノアは落ち着かない様子で、少しパニックになっているように見えました。私たちは眠れない夜を過ごしました。
かかりつけ医
翌朝、すぐにかかりつけの動物病院へ。救急病院で受けた処置の内容を書いた紹介状のようなものをもらっていたので、受付で渡しました。
しばらくすると、先生が深刻な顔で「どうぞ」と呼んでくれました。その表情を見て、「やっぱり深刻な事態だ!先生はわかってくれている」と、ある意味安堵したのを覚えています。
ここから本格的な治療が始まりました。まず、毛を刈って患部を特定します。
私たちの話を聞きながら、先生はバリカンで毛を刈りました。左肩から左前脚の上半分、左わき腹、左後ろ足が黄色っぽく変色していて、私はノアに申し訳なくて、見ていられないほどでした。
うなだれる私たちに、先生は「やけどの特効薬があります!」と言って、患部に塗り、処置をしてくれました。処置は、人間のやけどと同じ湿潤療法です。
患部が乾かないように、薬を塗った上にサランラップをかぶせ、さらにガーゼで保護して包帯を巻きます。処置しながら、先生は予想される経過を話してくれました。
- 人間はすぐに水ぶくれなどができるが、犬のやけどは日が経つにつれ進行する
- 1週間ほどでやけどの進行程度がわかる
- 重症の場合は、患部の皮膚が壊死し、脱落する
- 皮膚が再生しない場合、皮膚移植の手術をする
- いちばん恐いのは感染症。命の危険がある
上記を踏まえて、先生と治療方針を話し合いました。とにかく患部を清潔に保ち、常に薬の効果があるよう、毎日通院するのに加え、家でも夜に包帯を換えて、薬を塗ることにしました。
つまり、家で病院と同じ処置をするのです。ちゃんとできるか不安でしたが、ノアの命を守るため、私たちは最も手厚い方法を選びました。
最後に感染症を防ぐための抗生物質と、痛み止めの注射を打ってもらい、その日の処置は終了しました。
夜から、家での包帯交換も開始です。慣れない包帯巻きに悪戦苦闘しつつ、何とかやり遂げました。医師のいない自宅で傷を見るのは、正直怖かったですが、でも自分の不注意でノアをこんな目にあわせたのだからと、とにかく必死でした。
その後の経過
ノアは病院で包帯を巻いたクリスマスイブから、人間のベッドの上でずっと寝ていました。体中が痛むので、ふかふかのところでしか横になれないようでした。
室温は保っていたのですが、寒気と痛みで時折震えます。そんなときは毛布をかぶせると、震えが止まりました。でも、しばらくすると、今度はハアハアしだすので、毛布をどけて水を飲ませてやります。1日中これをくり返していました。
起き上がるのは、外で排泄するときと、食事のときだけ。幸い食欲が落ちることはなかったので、いつもより少し多めに食べさせました。全身でやけどと闘っているから、エネルギーを消耗するだろうと思ってのことです。
そして毎日欠かさず、通院と家での包帯交換を行いました。患部は日に日に症状が進行し、包帯をとるときガーゼがぐっしょり濡れているほど、体液が滲みだしていました。
このとき、悪臭がする場合は、感染症にかかっていると先生から言われていたので、臭いには注意です。皮膚は最初より少し白っぽくなり、6日目の夜にはもうはがれかかっている感じがしました。
【事故事例】愛犬のやけどの治療経過
1週間後
先生の見立てどおり、7日目の朝に病院で包帯をとると、皮膚がベロンとめくれてしまいました。まさに「脱落する」という感じです。患部の肉がむき出しになり、目を逸らしたくなるような痛々しい姿になりました。
でも、飼い主がここで逃げてはいけません。私も先生と一緒に患部をつぶさに見て、どの部分がどこまで壊死しているのか、把握するようにしました。
「患部の観察はとても重要です!」
家で包帯を換える際もちゃんと見て、翌日先生に状態を伝えるようにしました。皮膚が脱落したここからが、本当の治療です。この後の対応で、感染症で命を落とすか、治癒に向かうかが決まります。
管理の徹底が大事
治療の主体は、あくまで飼い主です。いくら病院で処置してもらっても、家での管理がずさんだと、何の効果もありません。それどころか、悪化させる危険もあります。
家での看護で大事な点をまとめます。
- 犬が包帯をかじらないよう、服を着せる
- 服で覆われない箇所で、犬の口が届く患部があれば、エリザベスカラーをする
- 犬のたてる音に注意する(容態の把握となめ防止のため)
- 散歩に行くときは、砂や泥が包帯の中に入らないよう注意する
- 足に包帯をしているとき、おしっこを踏んでしまったら、すぐに包帯を換える
- 湿潤状態を保つため、患部が露出しないようにする
とにかく犬の様子に気をつけることが大事です。患部をなめてしまうと、口から雑菌が入り、感染症にかかる恐れがあり、加えて治りも遅くなります。
上に挙げたことはどれも単純なことですが、かかりつけの獣医さんによると、徹底できる飼い主さんは少ないそうです。かわいそうだからとカラーや包帯を外してしまった結果、患部が悪化してしまうケースも多いとか。
確かに包帯を巻いてカラーをした姿は痛々しいものです。だけど、傷が悪化して苦しむのは犬自身です!あくまでも完治のために、患部の管理徹底を優先したほうがいいです。
1か月後
この頃になると傷口も落ち着き、回復に向かいます。やけどで壊死した組織を修復するため、「肉芽組織」が出てきます。文字通り肉の芽のようなもので、患部がボコボコした感じになります。
一見グロテスクなのですが、肉芽が集まって、新しい組織になっていきます。患部の細胞が動いているため、犬自身はかゆみを感じるようなので、包帯交換のとき、犬が足でかかないように注意しましょう!
かいてしまうと傷口が荒れてぐちゃぐちゃになり、せっかくの回復が無駄になります……。
肉芽組織が出てくる頃、傷の外縁部に薄皮が張ってきます。皮膚が再生し始めているのです。まだ非常に弱い皮なので、ここも大事に保護してあげる必要があります。
これまで毎日、抗生物質と痛み止めの注射をしていたのですが、抗生剤の影響で、注射の痕がしこりになってきました。そこで、飲み薬を処方してもらい、家で飲ませることになりました。
3か月後
左後ろ足の包帯がとれました。比較的患部が浅い場合は、この頃にほぼ回復します。包帯がとれる=完治ではなく、ある程度回復して感染症の心配がなくなったら、湿潤療法から乾燥に切り替えるのです。
患部はやがてかさぶたになります。この時も、犬がしきりになめるようなら、カラーなどで口が届かないようにしましょう。
ノアの場合、足の包帯が直接地面に触れないよう、外に出るときはビニールや靴でカバーしていました。やっと包帯がとれて自分の足で歩けることが、とても嬉しそうに見えました。
最も重症だった左肩は、まだ肉がむき出しになっています。傷口は徐々に狭まっていますが、まだまだ処置が必要です。
5か月後
毎日通院と家での包帯交換を続けた結果、ようやく全ての患部が上皮化し、ついに包帯を外す日がやってきました!
当初は皮膚移植を予想したのですが、1日2回の包帯交換が効を奏して、手術なしで回復しました。筋肉まで壊死していると思われましたが、最初に水で冷やしたことで、そこまでには至らなかったのです。
でもやはり、ここで完治ではありません。まだ皮膚の厚さが十分ではないので、何らかの方法で保護する必要があります。
そこで、実際に包帯を外す前に術後服を探しましたが、術後服として販売されているものは、開腹手術を想定したもので、肩が露出するデザインばかりです。
肩まで覆う服を調べまくった結果、アルファアイコン社の「ドッグガード」を着せることにしました。もともと犬のアウトドア洋品ですが、そのため通気性がよく、体を保護する服なので、傷の保護にもピッタリです。
獣医さんにも見てもらい、OKをもらいました。
実際に着せてみると、ノアが患部をかいても、きっちりガードしてくれます。お腹までカバーする形になっているので、服のすきまからなめることもありませんでした。
ここまでくれば、本人も元気な時と同じような生活を送るようになり、遊ぶこともできるようになりました。
まだ体に違和感があるらしく、ソファなど高さのあるところに飛び乗ることはできませんが、気持ちもずいぶん明るくなったようです。通院も、毎日から週1回に減りました。
まとめ
犬のやけどと闘うには「治す!」という熱意が大切
ドッグガード着用から2か月後、ついに服を着せなくてもいいぐらい皮膚が厚くなりました。ようやく完治です!皮膚のひきつれや知覚過敏などの後遺症もなく、ノア自身何の問題もなく体を動かせるようになりました。
ただ、やけどがひどかった左肩の一部ほか数か所は、毛根まで壊死していたので、毛が生えないままです。幸いノアはマルチーズ寄りの被毛なので、周囲の毛を伸ばせば、パッと見にはわからなくなりました。
最後に、先述した傷の管理のほか、今回の闘病で特に大事だった点をまとめます。
薬
先生が「やけどの特効薬」と言って処方してくださったのは、一般の製薬会社の薬ではありません。元東大教授の青木先生(故人)が開発した「MA」というシリーズの軟膏です。
知る人ぞ知る薬ですが、効果はバツグンでした。
ティートゥリーを中心にした成分で、殺菌効果に加えて、傷の再生を補助する作用があります。やけどだけでなく、創傷ほか外傷全般に効きます。もちろん個体差で回復度は違ってきますが、試しに私自身、自分の傷に塗ってみたのですが、すぐに治りました!
現在「アイラ工房」で作っておられますが、薬についてはネット販売などはしていません。必要な場合は、獣医さんに相談してみてください。
1日2回の包帯交換
飼い主さんによっては、毎日の通院ができない場合もあると思います。
そんなときでも、朝晩に包帯を換えて薬を塗り直すことによって、傷が常に清潔に保たれ、感染症のリスクを減らすことができます。
そのためには、家でも病院と同じ処置ができるよう、包帯やガーゼ、薬を多めにそろえておくといいです。何かの拍子に包帯がずれたりしても、すぐに処置できます。
絶対治す!という熱意
精神論のようですが、熱意が最も大事と言っても過言ではありません。毎日通院して先生とお話するうち、いろいろな飼い主さんのことを聞きましたが、熱意のある飼い主のほうが、回復率が高いとのことでした。
なぜなら、飼い主自身が愛犬のケガや病気と向き合って、主体的に治療するからです。そこから工夫が生まれますし、医師とのコミュニケーションも有益なものになります。
まだまだ書きたいことはありますが、きりがないので、ここまでにしますね。
ノアは幸運なことに、今は元気いっぱいで、もうじき2歳の誕生日を迎えます。今回は飼い主の不注意で、とんでもない思いをさせてしまったことを深く反省していますが、どのご家庭でも、不慮の事故というのは起きる可能性はゼロではないと思いますので、どうかご注意ください。
みなさんが愛犬と健康で楽しい毎日を送ることをお祈りしています!
ユーザーのコメント
40代 女性 SUSU
ノアちゃんが無事回復されたこと、本当に良かったですね。
今回の記事は、治療方法も含め大変興味深く拝見させて頂きました。
救急病院、かかりつけの病院共に、日頃から信頼のおける先生を見つけておくことも愛犬を守る上で大変重要なことなんだと改めて思いました。実はこれが結構大変な問題だったりするのですが、諦めないでお散歩仲間の方など日頃から情報を得ておくことが大切ですね。
キッチンでの事故は家庭犬であれば誰しも起こりうることだと思います。
我が家もヒヤッとしたことは何度もあります。
愛犬がパピーの頃は、キッチンの出入り口にペットゲートを設置していました。油がかかる危険性はもちろん、包丁やネギ類など口に入れたら危険な食材を落としてしまう可能性もあるため、キッチンは立ち入り禁止を徹底させようと思い、ゲートを設置してここからは入ってはいけないというしつけを頑張って行っていました。
この方法でうまくいくワンコもたくさんいると思うのですが、我が家の愛犬はキッチンに入れない理由が理解出来ない、又は納得がいかないのか、ゲートをカリカリと壊そうと躍起になり、ゲートを閉めている方がかえって目を離せない状況になることが多かったため、思いきってはずすことにしました。
ここで厳しくしつけを徹底させる方針もあるとは思うのですが、ワンコの立場になってみると、ただそばにいたいだけなのに、ゲートという境界線を引かれることが悲しかったのかもしれないなと思い、お互いに納得した上で待ってもらえるように愛犬に合った方法を取ることにしました。
現在、通常時はキッチンにゲートはありません。「ご飯を作るね。」と声をかけるとキッチンまで付いてくることもありますが、キッチンの入り口の方で寝ていることが多く、中まで入ってくることはありません。
食材を落としてしまったとしても特に気にする様子もなく、ガスが付いてる際はガスの下に来ないようお願いをしています。近づいてきても「ガス付いているから離れてくれる?」と話すと出ていってくれるようになりました。
理由も分からずに立ち入り禁止にするよりも、入らない方がいい時があると理解してもらった方が良かったようです。
ただ、揚げ物をする際だけは、飼い主側も多少緊張して調理しているため、その緊張が伝わってしまうのか、心配そうに見に来てしまうことが多いようです。もしライターさんのように油が入ったフライパンを落としてしまったら、真下にいることはなくてもびっくりして飛んできてしまう可能性があるため、ホームセンター等に売られているワイヤーネットの大判を入り口に設置し、簡易的なゲートを置くようにしています。
この際、「揚げ物をするからね。危ないから終わるまではゲートを置くからね。」と一声かけてから置くようにしています。
始めは言っている意味は分からなかったと思います。ただ、回を重ねていくにつれて、この言葉の後は少しの間、キッチンに入れなくなるが、短時間のみでまたいつものように戻るんだということ理解してくれたようで、今では納得して待っていてくれるようになりました。
このワイヤーネットのゲートは、キッチンの入り口の両端に取り付けた壁付きフックに掛けているだけで、調理が終われば簡単に取り外すことが出来、普段から大がかりなゲートがあり見た目が気になる方にもお薦めです。
20代 女性 サン
行きつけの病院も診察時間が終わってしまったら診察できないでもしかしたら命に関わると思います。なので、一軒の病院だけではなく何件か調べておこうと思います。
進行は人間はすぐ水膨れなどができるけど犬の場合は一週間で進行程度がわかります。
重症の場合は患部の皮膚が壊死して脱落してしまうそうです。
皮膚が再生しないのもあります。その場合には皮膚移植の手術をすると知って恐ろしく感じました。一番怖いのは命に関わる感染症です。
感染症にかかるのがわかるのは、悪臭するらしいので臭いには注意です
40代 女性 おーちゃんママ
30代 女性 まる
女性 すぬさん
でも今はもう治って元気に成長している写真を拝見して安心しました。
誰でもパニックになりますよね。
記事にもありますが、まずは火傷やケガをさせない環境作りは飼い主さんの大事な役割です。
うちの子は大丈夫~というのは絶対にありません。
ただ、うちの子が我が家にやってきたとき、そこそこ高さのあるゲージでお留守番させていたのに帰ってきたら玄関にお迎えに来てくれてたんですよ。
「えええええ??」と目を疑いましたが、どうやらその(そこそこ高い)はずのゲージを難なく飛び越えた我が子。しかもまだ一歳にもなっていない時です。
まさか飛び越えることは絶対に出来ないだろうと思っていました。
その日はいたずらをせずにお利口さんにお留守番してくれていましたが、その時に痛感したのは、「ワンコは想定外の行動をする」ことがあるでした。
その時はゲージの上に飛び越え防止用の網を設置しました。(ちょっと可哀想でしたが安全を確保する為)
ゲージをしているから大丈夫っていうのもないような気がします。
まずはゲージをする事を前提で危険な場所(家ではキッチンや玄関先)に極力入らないように設置してあげること、あとは、手の届きそうな場所、ワンコの目に入る所に危険なものを置かない。これは飼い主さんの大切な役割です。
うちも火傷ではなかったのですが、体調不良で時間外に思わぬ発症した時、本当に大パニックになりました。かかりつけの病院はもちろん連絡つかないし、時間外可の救急動物病院はとてつもなく遠くにありすぐに行けないこと。
行ったとしても長時間待たされる、高額な費用がかかるとも聞きました。
そういう時間外に緊急事態が起こったときはどういう風に動けばいいのか、どう対応するのがいいのか、人間と同様に応急処置が出来るように・・・等、日頃から考えておく・学んでおくことも大切な愛犬を守る為、必須なのかもしれませんね。
女性 まお