エンリッチメント給餌について飼い主への調査
コングやフードパズルなど、遊びと給餌をひとつにした方法はエンリッチメント給餌と呼ばれ、ドッグトレーナーや行動学者など犬の専門家が推奨しています。
エンリッチメント給餌は単なる退屈しのぎや遊びにとどまらず、脳への刺激や問題行動の軽減などが推奨されている理由ですが、実際にどのくらいの飼い主がエンリッチメント給餌を行なっているのかなどについての研究は今までありませんでした。
このたびイギリスのリンカーン大学獣医学の研究者チームが、エンリッチメント給餌についてのアンケート調査を行い、その結果が発表されました。
85%の人が何らかのエンリッチメント給餌を行なっている
アンケート調査への参加者は、ソーシャルメディアを通じて募集されました。
アンケートの質問項目は全部で54で、飼い主や犬の基本情報の他に、普段犬ににどんな食べ物をどんなふうに与えているか、エンリッチメント給餌を行なっている場合はその種類と方法、エンリッチメント給餌を行なっているいる理由や利点、エンリッチメント給餌を行なっていない場合はその理由などが含まれました。
エンリッチメント給餌の例として挙げられたのは、コングなど食べ物を中に入れるタイプの玩具、床や庭にフードをばら撒いて与える、スニッフィングマット、早食い防止フードボウル、リッキングマット、デンタルチューなど噛むおやつ、空き箱などを使った自家製エンリッチメントなどです。
最終的に1750名からの回答が分析されました。回答者のうちエンリッチメント給餌を行なっていると回答した人は85.1%にのぼりました。
最も多く使用された給餌方法は、コング83%、骨やデンタルチューなど噛むおやつ72.9%、コング以外の食べ物を入れる玩具69.3%で、エンリッチメント給餌を行なっている回数は、1日1回が17.2%、1日1回以上が45.2%、週に2〜3回が27.5%だったようです。
何がエンリッチメント給餌の障壁になっているのだろうか?
エンリッチメント給餌についての、より掘り下げた質問にはどのような回答があったのでしょうか。
エンリッチメント給餌を行なっていないと答えた人の傾向は、男性、50歳以上である割合が高く、飼っている犬はワーキンググループの犬種、7歳以上である割合が高いこともわかりました。
また、エンリッチメント給餌を行なっていないと答えた人の犬は、食に対する関心が低い、運動要求が低い、他の犬に対する恐怖、トレーニングが困難という傾向があったようです。
またエンリッチメント給餌を行なっていない、または時々しか行わない理由は「時間がかかる」「犬が興味を示さないと思う」「エンリッチメント給餌を知らなかった」「エンリッチメント給餌の利点を知らなかった」「エンリッチメント給餌の利点を信じない」「高価すぎる」などがありました。
また、ワーキンググループの犬種で実際に仕事をしている犬については「犬は仕事の内容で満足しているのでエンリッチメントの必要がない」という記述回答も見られました。
エンリッチメント給餌を行なっている理由は、「愛犬が退屈しないよう」「愛犬を楽しませるため」などが最も多く、次にトレーナーやソーシャルメディアが勧めていたからというものが多くなっていました。反対に獣医師からのアドバイスでという人は5.3%と非常に低い割合でした。
ソーシャルメディアが勧めていたからという理由は、エンリッチメント給餌を行なっている飼い主の年齢が比較的若いことと関連していると考えられます。
また過去の研究ではエンリッチメント給餌は、認知機能障害などに対して健康効果があると示されているにもかかわらず、獣医師からエンリッチメント給餌のアドバイスを受けて始めたという回答が少ないことに研究者がは注目しています。
飼い主が感じているエンリッチメント給餌の利点は、精神的な刺激、問題行動のコントロール、満腹感を高める、おねだり行動が減るなどがありました。
まとめ
犬へのエンリッチメント給餌についてのアンケート調査の結果をご紹介しました。
エンリッチメント給餌は単なる退屈しのぎというだけでなく、自分で問題を解決して食べ物を得るということで、犬が自信をつけ不安や恐怖の軽減につながるという大きな利点があります。また早食い防止という観点から、誤嚥や肥満の予防という利点もあります。
この調査結果からは、エンリッチメント給餌について今後の情報提供や教育についてのヒントが得られました。空き箱などリサイクル素材を使った手作りエンリッチメントの情報や、健康上の利点を強調するなどの対応で、エンリッチメント給餌をより多く広められる可能性があります。
《参考URL》
https://bvajournals.onlinelibrary.wiley.com/doi/pdf/10.1002/vetr.3169
ユーザーのコメント
50代以上 女性 マロママ
我が家の犬はフェッチ(ボールの持来)もできるようになりました。
超小型犬は愛玩犬だからと言って、知的好奇心を満たすことをしないで、ただ猫可愛がりするだけでは勿体無いことだと思います。