高齢者がペットを飼うということ
少子高齢化社会の現在、単身やご夫婦でペットを飼っていらっしゃるご高齢の方も多くなりました。
お子さんと離れて暮らす高齢者や、ご家族を持たない単身の高齢者にとって、ペットは、生き甲斐となっている事も多いのではないでしょうか?
ですが、高齢者が新たにペットを飼うという事は、ペットの種類によっては、今後十年以上に渡り、自分以外の世話をするという労力も伴う話です。
「こんな事もあるかもしれないよね…。」と、誰でも想像しやすいお話しを、下に用意してみました。
ペットを飼っていた高齢者の体験談
犬を飼い始めた当初は、飼い主自身も至って健康で、犬の散歩も問題ありませんでした。
飼い主にとって孫同然の愛犬の為に、毎日身の回りの世話をしていましたが、飼い主は、やがて70代になり、足腰の衰えを感じ始めていました。
犬はまだ元気の良い盛りです。
飼い主は、犬の散歩を「つらい」と思う事も増えてきましたが、愛犬に外で排泄する癖を付けさせていたため、多少の無理をしても犬の散歩は欠かせません。
それから数年経ったある日、犬の散歩に出かけようとしていたところ、庭先の僅かな段差につまずき、飼い主の高齢者は転倒してしまいました。
脚の付け根に酷い痛みを感じて起き上がれずにいると、幸いにも、家の前を通り掛かった人に助けられ、そのまま救急車で病院に搬送されました。
診断結果は、股関節の複雑骨折で、翌日手術を受け、2か月近く入院生活を送ることになりました。
その後は通院にて数か月にわたってリハビリを受けなければなりませんが、70代半ばを迎えていた単身の高齢者にとって、不自由な脚で通院することへの不安や、今後の事も考えて、住んでいた住居を引き払い、高齢者施設への入所を決意しました。
けれども、施設に犬は連れていけません…。
既に老犬に近い年齢の愛犬を頼める身寄りや友人は無く、やむなく保護団体に愛犬を託す事にしました。
お話しはここまでです。
実はこれ、全くの作り話ではなく、実際にご近所で起こった出来事に、一部アレンジを加えただけの、限りなくノンフィクションに近いお話しです。
これに似たケースで、60匹もの犬を自宅で飼育していた高齢女性が交通事故でけがをして入院することになり、飼われていた犬達は動物愛護団体に保護されましたが、60匹という数の多さから、「早急に里親に名乗りを上げてくれる人を求めている」という情報が流れました。
こちらは、独りで60匹もの犬を飼育していた、非常に稀なケースでしたが、ケガや病気、体力的な問題で、ペットの世話が困難になる事があるという点では、高齢者がペットを飼う上で、現実的に起こり得る事例だと言えます。
今後、ますます高齢化社会の進む中で、高齢者のみの世帯でペットを飼うケースは増えていくと思われますが、10年先、長ければ20年先までペットの世話が出来るかどうか、ペットを飼い始める前に考えなくてはならない事なのかもしれません。
高齢者がペットを飼うとき考えるべきこと
ペットに寂しさを紛らわされたり、ペットに癒しを求める状況は、動物好きなら誰でも理解できますし、例えば、離れて暮らす自分の親がそのような状況であれば、ペットを飼わせてあげたいとも思います。
世話が難しくなったらどうするか?
例えば、犬なら10年~20年の寿命がありますが、80歳の高齢者に、仔犬の時から犬が死ぬまで世話をする事が可能でしょうか?70歳ではどうでしょうか?60歳なら?
この様に、高齢者ご自身または、身内の方などが、犬の平均寿命と人間の健康寿命を照らし合わせて考えてみる必要がありそうです。
また、何らかの理由によりペットの世話が困難になった時、ペットを誰に頼むのかという事も考えておかなければならないでしょう。
高齢者はペットを飼うべきではないのか?
それでは、ご高齢者の方は、ペットを飼う事を諦めなければならないのでしょうか?
いいえ。そんな事はありません。
むしろ、ペットを生き甲斐とする事や、精神的健康の為にも、動物好きなご高齢者から、ペットと共に暮らす喜びを取り上げるべきではないと思います。
ですが、ここでもやはり申し上げなくてはならない事は、ご自身で世話が難しくなった時、ペットをどうするのか決めておかなければ、それはただの「無責任な飼い主」になってしまいます。
離れていてもご家族のサポートが受けられるのか、身近にペットを託せる人がいるのか、それらの問題を解決していれば、高齢の方でも、ペットを飼い始める事は出来るでしょう。
高齢者に適したペットか?
もし、ご高齢者の飼い主さんが、ペットの世話が困難になった時に、サポートしてくれる人がいらっしゃるとしても、主に日常的に世話をするご高齢者ご自身に扱いきれないペットは、そもそも飼うべきではないでしょう。
例えば、力の強い大型犬や、小型犬であっても、多くの運動量を必要とする犬種もそのひとつです。
高齢者の安全面や、犬の健康面からも、このような犬種は避けるべきでしょう。
また、性格的に他人やよその犬に警戒心をむき出しにするタイプの犬は、ご高齢者をご近所付き合いし難い状況に陥りやすくする事もありますので、出来れば、社交的で誰からも可愛がられるタイプの犬などを選ばれると良いでしょう。
高齢者のペット飼育をサポートするサービス
ペットを飼われる高齢者世帯の増加に伴い、関東圏などを中心に、ご高齢者等のペットの飼育をサポートをするサービスも生まれているようです。
ペットの飼育が難しくなったら…。
「愛犬のお散歩屋さん」
東京都武蔵野市に本部を置く、「愛犬のお散歩屋さん」は、全国約70のフランチャイズチェーンを展開する、有料の会員制サービス。
高齢者の飼育する犬の散歩や、猫の餌やり、糞の始末などのサービスを行う。
「高齢者のペット飼育支援獣医師ネットワーク」
東京都足立区の獣医師らによるNPO法人「高齢者のペット飼育支援獣医師ネットワーク」は、現在、東京、神奈川等の関東を中心に、活動している。
高齢者の飼育する、犬の散歩、日常の世話、健康チェック等を行う。
現在は、無料でサービスを行っているが、今後、会費制にし、活動範囲を関西にも広げていきたい考え。
この様に、高齢者のペット飼育を支援するサービスは、今後、徐々に増えていくものと思われますが、現時点で、皆さんのお住いの地域で、このようなサービスが提供されているか、一度お調べになってみる事をお勧め致します。
まとめ
ますます高齢化社会の進むことが懸念される現在の日本では、高齢者のみの世帯でペットを飼うという状況も増えていくでしょう。
国の環境省によると、「ペットを飼う前に、自身の年齢と、動物の寿命を考えるように。」としていますが、既に飼われているペットの飼育が高齢者のみでは困難になってきたら、「お散歩代行」や、「ペットの飼育支援」等のサービスを上手に利用することで、高齢者とペットの生活がより良いものになるのではないでしょうか?
可能であれば、高齢を理由に、ペットと共に暮らす喜びを奪われることのない世の中にしていきたいものですね。
ユーザーのコメント
30代 女性 ミニー
30代 女性 芽衣子
40代 女性 TIKI
30代 女性 きなこ
40代 女性 ととりこさまんさ
女性 mocmoc
大人しめの小型犬なら祖母にも世話ができるし、毎日の生活にハリが出るのではないかと思い勧めていたのですが、やはり気になるところは自身と犬の寿命でした。どちらかに何かあった時すぐに対応することができません。
小型犬の寿命は年々伸びる傾向にあります。今までは10年生きたら立派だと言われていたけれど、今では15年、20年と長生きしてくれます。
そうなった時、70代後半の祖母ではとても世話が続けられなかったと思います。
里親募集のサイトでは条件として高齢者には譲渡できない、とするものも増えてきました。それに一人暮らしをしている人には、若い人でもお断りするという記述も目にしました。
犬を迎え入れるということは、その時から命を預かるわけですから、責任を取れる万全の環境でないとならないんだと思いました。
現在通っている動物病院には高齢のおばあちゃんが同じく高齢のわんちゃんを連れて通院しています。いつも獣医さんに「私が先か、この子が先か、悲しいけれどできればこの子が先だとありがたいわね。その後に私が追うようだわ」と話されているのを耳にします。とても厳しいことを言っているようですが、このおばあちゃんはとても責任感があるのだと感動しました。もし逆だった場合、このわんちゃんはどうなってしまうんだろうと考えた時にとても苦しく思いました。
今でも元気に通院されていますが、獣医さんがとても人情深い方なので、もしもの時は動物病院で一時預かりをしてくれるようになっているそうです。
30代 女性 ひまわり
女性 Poi
思います。私も「一体何歳まで一緒に暮らしていけるかなあ」と考えたことがありますが、ある程度の高齢で犬を飼う場合は、将来のことまで考えておかないと、犬も可哀そうだと思います。ただ、自分は何歳まで生きるかなんて予想できないので難しい問題ではあると思います。切ない問題ですね・・・。
40代 女性 てと
50代以上 女性 匿名
そこは、もう少し、寛容に考えて、譲渡条件を広げても良いと思います。
40代 女性 ハニーママ
とにかく外国のように、自宅で生活するような体制で老後を送れるケアホームをもっと増やし、独居老人として悲しい最後を遂げずに済むような、先進国としての対応が国の政策としてなされていくことを熱望します。税金はどんどん上がっていくのに、国民の老後の保証は下がって、ただお荷物のような扱いを受ける世の中。それでは悲し過ぎます。若い世代も明日は我が身なのです!
女性 A
ね。子犬の頃から飼うという場合は、飼い主さんにも犬にもかなりの負担になると
思います。ご家族が周りにいる環境であればきっと違いますね。
50代以上 女性 匿名
75歳を過ぎて犬を貰い受け、トイレのしつけをしていない(外で排泄する)、食事の時に食べ物を欲しがる、歯を磨いてないから臭いなど困っています。
ただ可愛がる、自分の寂しさを埋めるために飼わないでほしいと思います。
私は正直生き物を飼うのは苦手なのですが、命あるものを粗末にするわけにもいかず渋々預かっています。
幸いおとなしい犬で必死に新しい主人にかわいがられようとする姿がいじらしいです。
今後ペット可の施設を探すようですが、すでに入院する前に認知の症状で自分のことで必死で餌をあげるのも忘れていることがあったようで一緒に入所しても大丈夫かと心配になっています。
何かあったら誰かがどうにかしてくれると考えず、きちんと命あるものに責任を持ってもらいたいと思います。
50代以上 男性 ピース君
現在、私は70才で夫婦で生活してます 愛犬は16才のチワワで目が見えなく(白内障)、歩行もヨロヨロ(何とか自力で)歩き、食事もほとんどドッグフードは食べません(食べても3~4日で食べ無くなる) 色々な食べ物(鶏肉・ナゲット・その他食べる物なら、なんでも与えています=毎日点滴だけの延命治療はしたくない)
犬が小さい時(1才以下)から、私に1番なつき、ここ1年間ほどは毎日のように、私の足元にヨロヨロ近づき、朝は庭まで抱っこしトイレ、夜は寝る前に抱っこして寝かせて欲しい?など、介護状態です
そんな私が居なくなったら、犬の面倒は? 代理の人? サポート業者の人? 食べて生きる事は出来ても犬の気持ちは???
そう思うと、この犬が絶対最後(あと1~2年だとしたら、私が72才)と決めています
でも、時々抱っこしてる時、この犬がいなくなったらと想像するたびに、寂しくなり?涙がとまりません
本当に、犬が可愛いなら、飼い主自身の寂しさは、どうでもいい事(発言したい事)ではないでしょうか?