犬の幸福度調査の結果
ドッグフードで有名な日本ヒルズコルゲート株式会社と、ペットの健康情報を配信するPetwellというウェブサイトが共同で行った「日本のペットの幸福度調査」の結果が発表されました。
403名の犬オーナーを対象とした回答結果をまとめると・・・
飼い主が考える犬の幸せ
10点満点のうち平均7。殆どの飼い主が自分の犬はそこそこ幸せと考えている。
遊び
半数近くの飼い主が、1日のうち1時間以内、残り半数はそれ以上の時間を犬との遊びに費やしている。
おやつをあげるタイミング
1位「ねだられた時」2位「寂しい思いをさせた時」。
ちなみに47.2%の飼い主が「しつけのトレーニングの時」におやつを使っている。
犬のしつけ
約7割の飼い主が「甘い」「どちらかというと甘い」と思っている。
「どちらかと言えば厳しい」「厳しい」は全体の13%程度。
ペットの健康
ワクチンなど病気予防、食事、運動、定期検診など健康に関する複数の項目に気を使っている飼い主は多く、総じて健康に対する意識は高い。
ペットの肥満度
3分の1の飼い主が、愛犬を肥満または肥満予備軍と認識している。
犬の食と健康が守られる幸せ
この調査結果を受けて、獣医師であり動物行動学者でもある入交真巳先生がコメントしているように、「健康でいることがペットの幸せにつながる」のは間違いないと思います。
犬は自分が口にするものを選べません。
また、病気にならないよう気をつけるといった感覚もありません。
食べるものを選び、健康に気を使うのは飼い主として最低限の責任と言えます。
そして、今はひと昔前に比べて、犬の食や健康に関する知識は知ろうとさえすれば、いくらでも情報を得られますし、良質のフードやおやつ、サプリもたくさん出回っていて、必要とあればいつでも手に入ります。いわば一番簡単に、犬達に約束してあげられる幸せと言えるかもしれません。
もう一つの大切な幸せとは?
では、それ以外で飼い主が与えてあげられる、犬にとっての幸せとは、何だろう?
たくさんの愛犬家が共感する犬の十戒の中に大きなヒントがあるように思います。
今さらのような感じがするかもしれませんが、改めて下記に犬の十戒を記してみました。
- 私の生涯は10年から15年くらい。共に暮らす時、そのことを忘れないで。
- あなたが私に求めていることを理解するのに時間をください
- 私を信頼してください。それが私の幸せなのです
- 私を叱り続けたり、罰として閉じ込めたりしないでください。
- 私に話しかけて下さい。言葉は分らなくてもあなたの気持ちは理解できるのです
- あなたが私にどのように接したか、私が覚えていることに気付いてください
- 私を叩く前に思い出して。私には簡単にあなたの手の骨を砕く牙を持っているのに、そうはしないのだということを。
- 私が言うことを聞かないと、怒って叱る前に、原因を考えて。適切でない食餌のせい、長時間太陽にさらされているせい、または年をとって弱ってきているせいかも。
- 年を取ったら世話をしてください。あなたもまた年を取るのです。
- 旅立つ時、共にいてください。「耐えられない」「そばにいたくない」なんて言わないで。あなたがそばにいてくれれば心安らかにいられるのです。私があなたを愛していることを忘れないで。
これら10のメッセージは、私には全て同じことを言っているように感じるのです。
すなわち「理解」と「尊重」ということ。
犬を理解すること、尊重すること
犬は、人間の言葉を理解し、喜びも悲しみも感じる生き物ですが、人間とは異なる行動原理で生きています。その彼らがあえて人間世界に取り込まれて生きて行く中では、彼らはもう野生むき出しで生きることは許されません。
人間が真に犬という生き物の心に近づき、彼らに分るように、そしてできるだけストレスを感じないように、人間達の中で生きられるように教えてあげることが、今の時代を生きる犬にとっての幸せにつながるのではないかと思います。
犬が、
「この人の言っていること、わかる!」
「この人には自分の言ってることが伝わってる!」
そう感じられるのなら、どんなときでも飼い主のそばで安心し満足していられるのではないでしょうか。
理解あるところに尊重は生まれる
まず「理解」。
それには彼らがどういう時に喜びを感じ、何をストレスと感じ、どんな表現方法を用いているのか、を知ること。
特に表現方法は「犬のことば」とか「ドッグサイン」または「カーミングシグナル」などと呼ばれる犬同士のコミュニケーション手段ですが、人間に対しても同様の表現をしています。
これらを理解し、適切に応じてあげるだけでも、彼らの心に近づくことができ、彼らもまた飼い主の心に近づけることになります。
犬の発している表現を、とっても分りやすく解説している本があるのでぜひ読んでみてください。
『いぬ語会話帖』ヴィベケ・リーセ著
いぬ語会話帖: 犬の言葉をシンプルに理解するためのフォトブック
人間の価値観
可愛いからおやつをあげたくなるのは人間の心理。犬もおやつは大好き。我が家の犬も食いしん坊なので、相手が初対面であれ、いつもおやつをくれる人のところには近寄っていきます。でも、その人が撫でようとして手を出すと、サッとよける。また別の日にその人が来ると、おやつをくれたことを覚えていて近寄って行くけれど、やはり撫でられる段になると、サッとよける。彼らにとって、その人は単なる「おやつをくれる人」なだけ。好きかもしれないけど信頼はしていない。
相手が飼い主でもこれは、似たような側面があると思うのです。
飼い主としては「ねだられたから」「寂しい思いをさせたから」と理由があっても、犬にとっては、「食べたい→くれた」。次にまた食べたければねだればいい、と覚えただけ。また「留守番→飼い主が帰ってきた(これだけで十分嬉しい)→おやつをくれた」が繰り返されると「留守番→飼い主が帰ってきたからおやつが出て来るはず。ねだる→くれた」と、飼い主そっちのけで関心はおやつに集中してしまう。これ、私自身の失敗です。この場面だけ切り取ると、そこに果たして信頼関係があるのかは疑問。あまり意味がないことのように感じます。
しつけで犬の幸せに一歩近づく
しつけというと、堅苦しいですが、言ってみればこれはコミュニケーションの手段でもあると思います。しつけでは、よく、して欲しいことを犬がしたらおやつをあげる、して欲しくないことをしたらおやつはあげないという方法を用います。
犬には善悪の観念はないので、あることをしたら良いことが起きた(おやつをもらえた)、別なことをしてみた(あるいは何もしなかった)けど良いことは起きなかった。この単純な繰り返しで、物事を覚えていきます。
犬にとっての報酬は、その犬が喜ぶことならおもちゃで遊んであげたり、声をかけて撫でてあげるだけでもいい。中でもおやつが一番わかりやすく伝わりやすく、おやつに関する質問への回答に関して、入交先生が「人も動物も、仕事をした報酬でごはんをもらうほうが、ただごはんをもらうより好き。そのほうが脳も活性化して覚えもいい」とコメントしているように、、多くの飼い主さんがおやつを使ってしつけをしています。
しつけの調査では七割りの飼い主が「甘い」「どちらかというと甘い」と感じているようですが、このやり方なら「甘い」も「厳しい」も関係ありません。犬にとっては遊び、頭を使うゲームにもなり、コミュニケーションにもなるのです。
私たちの心が安定していること
犬は本当に飼い主の気持ちを敏感に汲み取ります。地震の時、我が家の犬は震度5でもケロッとしていました。でも、私が慌てて抱き上げ、家の中と外を行ったり来たりする間に、途中から震え始めました。
私の恐怖心が伝わったのだと思います。
また、嬉しいことがあって、鼻歌まじりで掃除していた時、ふと愛犬と目が合ったら、シッポを降り始め、私に向かって「遊ぼう」のプレイバウをしました。特に何でもない時には、目が合ったからといってそんな様子は見せません。
ひどく体調を崩して気分も落ち込みがちだった時には、愛犬もやせてしまいました。毎日、同じ分量のごはんをあげていたというのに。
それではっきり分ったのです。
本当に犬を幸せにしたければ、自分自身の心が安定していて健康で幸せでなければ、と。
まとめ
犬にとっての幸せは、すべて飼い主しだい。
おやつを食べる愛犬の幸せそうな姿を見ると自分も幸せな気分になるから、と与え続けていれば健康を害して、結果、不幸にしてしまう。しつけなんてしないで好きなようにさせてやりたい、と思っても、犬としては何を頼りにしたらよいか分らず、かえってストレスだらけになる。人が人の基準でよかれと思ってすることが、犬の幸せを阻害しているとしたら、こんな悲しいことはありません。
冒頭に掲げた「ペットの幸福度調査」で殆どの飼い主が自分の犬はそこそこ幸せと答えていることと、その他の設問の答を比べてみると、どことなく「これだけしてあげているのだから、幸せに違いない」という気持ちが見え隠れするのはうがった見方でしょうか?
犬との付き合い方は、10年、20年前に比べればずっと犬の気持ちに近づいたものになっているとは思います。でも、一方で、おやつといい犬の服といいおもちゃといい、どこか過剰になっている面も感じられなくはない。まるで幸せの代替え品という気がします。
もっとシンプルでいいんじゃないかな、と思うのです。
彼らは犬の姿をした子どもじゃない。あくまで犬という動物。動物としての幸せが何か、まずその習性や行動を理解すること。理解したら、それに沿った対応をしてあげること。
それには多少、飼い主側も勉強が必要です。
勉強とは言っても、そう難しく考えることはなく、大好きな相棒のことをもっとよく知りたいという気持ちがあれば、知ること自体が楽しくなります。
そして、実はこれが一番、大事なことかも。
飼い主自身がいつも愛犬といることをハッピーと感じて笑っていること。
愛犬の犬としての学ぶ力、感じる力、表現する力を信頼して、一緒に過ごすことを楽しむ・・・これに尽きるのではないかと思います。
ユーザーのコメント
20代 女性 匿名
隣でスヤスヤ寝ている今年で15歳になった愛犬をみて、最後まで、ずっと幸せであってほしい、最後も幸せだと思えるように、わたしも愛犬といられる幸せを感じながら、ずっとずっと大切にしていきたいと思いました。
40代 男性 ビーグルパパ
女性 Ludy
かれこれもう10年一緒に暮らしてます。基本的にどこに行くのもワンコ中心で考えています。いつも元気でいてくれることに感謝していますし、分離不安症ではない程度に寄り添ってくれています。飼い主の私たちにいつも幸せを感じさせてくれます。
でも、
ワンコは満ち足りた暮らしで幸せと感じてくれているのか?
私たち飼い主だけが幸せと感じているだけなのか?
自問自答することがままあります。
これだけ科学が発達した今、ワンコ語翻訳機なんてできないのかしら。
ワンコの気持ちを直接聞いてみたです。
夢の夢の話ですね。
ただ、いつも我が家にきて心が満ち足りているのか? 楽しく毎日が暮らせてるのか? それこそ幸福感を感じてくれているのか? 考えてあげるのが、いつか、ワンコの幸せに近づくと思ってます。