犬の献血ドナーって知ってますか?

犬の献血ドナーって知ってますか?

犬が病気や事故に遭ってしまった時、献血で助かることがあるってご存知でしたか?しかし人間と違って、公的な血液バンクが存在しないのが現状です。これは飼い主さんに知っておいてほしい「犬の献血」のお話です。

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記事の監修

日本獣医生命科学大学卒業。北海道の大学病院で獣医師として勤務。一般診療をメインに行いながら、大学にて麻酔の研究も並行して行う。「動物と飼い主さんに寄り添った治療」を目標に掲げ、日々診療に励んでいます。

わんちゃんの血液が足りていません

複数の犬

犬の献血って?

人間と同じく、病気や怪我をしてしまった犬も、献血で助けられる場合があります。
しかし人間と違って、犬には公的な血液バンクが認められておりません。
血液は長期保存ができないので、輸血用の血液を一定量安定的に確保するためには「献血ドナー」や「供血犬」の存在が必要になってくるのです。

手術などで輸血を必要とする場合、あらかじめ動物病院で飼われているわんちゃんか、献血ドナー登録されているわんちゃんから採血し用意しておかなくてはなりません。特に事故などで緊急の手術の場合、一分一秒を争います。そんな時のために犬の献血ドナーはとても重要なのです。

現状はどうやって血液を保存しているのか

先ほども述べましたとおり、人間のような公的な血液バンクは存在しておりませんので、各病院ごとで確保しておく必要があります。病院によっては「供血犬」と呼ばれる輸血するための犬を飼っており、輸血が必要な犬が運び込まれた時に供血犬から血を採取して輸血をします。
供血犬がいない場合は「献血ドナー」の登録犬から定期的に採血をお願いしたり、必要になった時に連絡をして輸血をお願いするというケースが多いようです。

病院によっては供血犬を飼っていなかったり、献血ドナーを用意していないところもあります。そういった場合は飼い主さんが自ら献血をしてくれる犬を探さなくてはなりません。輸血が必要なほど弱っている愛犬を前に、そのような心の余裕はなかなかできるものではありません。 事前にかかりつけの動物病院に供血犬はいるのか、献血ドナー登録を募集しているのかを知っておくと安心です。

犬に血液型はあるの?

人間にはA型・B型・AB型・O型の4種類がありますが、犬の血液型はなんと13種類以上あると言われています。
人間の「ABO式」とは違い、「DEA式」と呼ばれる分類方法でその内容はとても複雑です。
ということは、なかなか合う型を見つけにくいのでは…と思われそうですが、犬の血液はいくつかの血液型を併存させているため、輸血自体はそんなに難しいことはありません。輸血は緊急で行われることもおおく、詳細な検査には時間もかかるので血液型のみ判定してから輸血をおこなう場合も多いです。
ただし稀少な血液型もありますので、愛犬の血液型を知っておくのもいいかもしれません。その際、過去に輸血したことがあるかどうかも記録しておくとよいでしょう。
血液型は動物病院で調べることができます。少量の採血で所要時間は10分~20分ほど。
健康診断や去勢、避妊手術の採血時に一緒に調べるのがおすすめです。

献血ドナーになるにはどうしたらいいの?

大型犬

献血ドナーになる条件

どんな犬でも献血ドナーになれるわけではなく、一定の条件が必要です。

献血が可能な犬

  • 1~7歳
  • 交配経験のないオスまたは妊娠出産経験のない避妊済みのメス
  • 体重が10kg以上(※これは病院によってまちまちです)
  • フィラリア予防、ワクチン接種、ノミ・ダニ予防済みである
  • 麻酔をかけずに採血のできる温厚な性格(可能であれば)
  • 大型犬が望ましい(体が大きいぶん、採血できる血液量も多いため)
  • 病気のない健康な犬
  • 特殊な薬をのんでいない

献血ができない犬

  • 秋田犬(赤血球細胞内のカリウム濃度が他の犬種より濃いためだそうです)
  • 過去に輸血経験のある犬
  • 過去に血液で感染する病気にかかったり、その疑いがある犬
  • 全身性の感染性皮膚疾患のある犬

献血ドナー登録の流れ

ドナー登録に公的機関はありませんので、各病院での登録になります。基本的にはドナー登録の際に必要になる検査(血液検査、レントゲン、尿検査、フィラリア等感染症検査、血液型の検査など)は無料で行われることが多いです。登録前に一通りの検査をしてもらえることで、供給する血液の安全性や愛犬の健康状態も知ることができるので安心です。

来院予約をする

献血ドナーを募集している病院へ連絡を入れて、来院予約をします。
かかりつけの病院があれば、獣医さんにドナー登録をする旨を伝えておきましょう。

健康診断

当日は身体検査と血液検査をして献血が可能かどうかを調べます。
問題がなければ献血をします。

献血

採血量は体重によって違います。
動物は血液の3分の1を失うと危険です。1回の採血は4分の1程度でおよそ200ml~400ml。もちろんわんちゃんの大きさによります。
時間は15分~30分くらいかかります。

帰宅

採血後に異変がないかを獣医さんが確認して、問題がなければそのまま帰宅できます。
病院によっては、その後も大丈夫かどうか電話をくれるところもあるようです。
ドナー登録のお礼として、年1回の健康診断を無料で受けられたり、栄養価の高いドッグフードやドッグタグなどをもらえることもあります。感謝状を出してくれるところもあるそうです。

これでドナー登録は完了です。緊急時に輸血をお願いされたり、定期的に献血をお願いされたりと、病院によって献血方法は異なります。 実際に輸血が必要になった際、採血に応じると、次回の混合ワクチンやフィラリア検査が無料になったり、トリミング1回分が無料で受けられたりと病院によってお礼は様々です。

供血犬の存在

かかりつけの動物病院で複数の大型犬が飼われていませんか?彼らの多くは「供血犬」として暮らしています。
「供血犬」とは、病院に輸血が必要な犬が運び込まれた時に、血を分けてくれる犬のこと。
1度採血をすると3~4週間は輸血ができないため、複数飼われているのです。どの犬も供血犬としての役割を持って飼われてはいますが、そのおかげで助かる命も数多くあることを理解してほしいと思います。動物病院でも無理な献血は絶対にしません。
「献血ドナー」はあくまで飼い主さんの善意によるものですから、いざという時にはこの「供血犬」の存在が必要になるのです。大事な愛犬の血液で命が助かったわんちゃんがいることを思うと嬉しくなりますね。
ですが、動物愛護の観点からすると、この制度に批判的な意見もあります。

まとめ

複数の犬

「犬 献血ドナー」でネット検索をしてみてください。たくさんの動物病院が献血ドナーを募集しているのが分かります。
米国では営利・非営利と形態に差はありますが、こうした血液バンクの民間企業が何社か運営されています。

海外では犬のための献血車が街を走っている地域もあるんだとか。
人間のように公的な機関ができれば、スムーズな献血が可能になるはずですが、実際はまだまだ難しいようです。
日本では存在があまり知られていない「献血ドナー」ですが、そのうちドッグランや公園で気軽に献血ができるようになったら素敵だな、と思います。

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ユーザーのコメント

  • 投稿者

    女性 匿名

    もしもの時に備えて、愛犬の血液を保存する技術できたらと願っています。
  • 投稿者

    女性 匿名

    ウチもわが子の献血ストックが出来れるようになってほしい
  • 投稿者

    50代以上 女性 匿名

    大学病院の獣医課に登録してます
    先代犬が輸血してもらった事があるの で今いる子は助けられるならと思い供血犬して登録する事にしました。先日も輸血して来ました。
  • 投稿者

    50代以上 女性 匿名

    獣医大学で献血犬として飼われている子達2歳、3歳で引退で里親さん探しをしていると聞いた事があります。里親になるには条件があるみたいですが病気や、事故等で輸血を必要としているワンちゃん達の為に働いていた子達…引退後引き取る事ができたらいいなと思っています。
  • 投稿者

    40代 男性 匿名

    愛犬の柴犬が悪性リンパ種になり、その合併症が原因で出血か酷くなり、更に赤血球が急激に減少して輸血が必要になりました。柴犬を二頭飼っていたので、もう片方の子から輸血しましたが、それでも足りずに困り果てました。日本の制度は明らかに現実に即していないので、日頃から同じ犬種同士の飼い主さん達と緊急時を想定して相談しておく事を強くお勧めします。それが唯一、現実的な対応策です。
  • 投稿者

    女性 miya

    愛犬が輸血をしたことがあるので、献血ドナー犬がいるのは知っていました。動物病院で飼われていることも多く、ほとんどは中型犬以上のわんちゃんです。ですが、常にその子から血液を貰うわけにはいかないので、輸血に協力をしてくれる犬を募集しているそうです。

    以前通っていた動物病院は外科手術で有名なところだったので、健康な大型犬が来た時は窓口でそういった協力の依頼をしているのを聞き、犬にも献血があるんだ、と驚きました。まさかその後に愛犬が輸血を必要とする事態になるなど思いもしなかったので、その重要さが身に染みてわかりました。

    犬の輸血はその犬からは一度しかできません。抗体ができてしまうので、何度も輸血が必要になる場合は違う犬からの協力を求めなくてはなりません。ドナーをできる限り確保しておきたいのもわかります。

    愛犬に血をくれたレトリーバーは、愛犬の下のゲージで横になって点滴を受けていました。助けてくれてありがとうと感謝の気持ちでいっぱいになりました。わんちゃんもわんちゃんを助けてあげられるんですね。
  • 投稿者

    女性 シュナ

    何かの犬の病気を知ったときに、犬の献血や血液型についてしりました。人間と違い、血液型の種類がとても多いことに驚きました。今3歳のシュナウザーを飼っていますが、血液型について知ったのは本当に最近です。去勢の手術ももう済んでいますが、そのときは知りませんでした。こちらの記事でその際に血液型を調べられると知り、もっと早く知っていればと感じました。血統書にも血液型の記載はありませんし、次回病院で確認してみようと思いますが、犬の献血の認識がなかったので私は愛犬の血液型も知りません。小型犬なので、体重的に献血ドナーになるのは難しいかもしれませんが、もしものときなどに愛犬の血液型を飼い主が知っておくことは必要だと思います。犬の長寿化も医療もとても進んでいると思います。今後、血統書や何かに血液型の記載などが必須になってくれたらいいなあと少し感じています。
  • 投稿者

    40代 女性 匿名

    輸血なんて他人事でした。
    ゴメンなさい。

    今ほんとうにも輸血を受けるにも、いただける条件が限られていることがよく分かります。

    輸血を受けられなくてだてないことが、とても歯痒いです。
  • 投稿者

    女性 コロ

    供血犬にうちの愛犬もお世話になりました。
    急性膵炎その他もろもろの炎症が起き、命に関わる事態に陥った時、輸血という判断になり急遽動物病院内で飼われていた大型犬に血液を分けてもらいました。
    そのかいあって元気に退院できとても感謝しました。
    日本では犬の血液は保存できないので、献血ドナーは本当に大事です。ただ供血犬になるには条件も多いので、確保するのは大変なのかもしれません。
  • 投稿者

    女性 ゴン吉

    お世話になって初めて犬の輸血の大変さに気が付きました。
    血液型も多いので輸血できる血液と輸血できない血液もあります。輸血が必要になる事態は緊急の時のはずです。そんな時に供血犬から探すとなると本当に大変です。日本は小型犬の方が人気が高いので、供血犬になれる子は多くはありません。
    いつか、自分の犬の血液を少しずつ保存できる技術が整い、いざという時に使えるようにできれば安心ですね。
  • 投稿者

    女性 匿名

    テレビでも少し紹介されていましたがこの現実がより広く認識されることを願っています。
    我が家にも犬がいますが小型犬なのでお役に立てないことが非常に残念です…。
  • 投稿者

    50代以上 女性 匿名

    動物病院より緊急に手術しなければならない子がいるので献血して欲しいと連絡がありました。ドナー登録はしていません。ラブラドールの1歳4ヶ月。お役にたてばと直ぐ病院に行きました。処置室ではおとなしくしておりました。首の横をほんの少し毛を刈られ(少し毛を刈らせて下さいと言われました。)そこから採血を試まれましたが、直ぐに手術になったようで
    うちの子を預からせて下さいと言われました。
    30分後に迎えに行った所、大人しくしてましたと看護士さんから言われただけで、聞かなければどれ位献血したのかも分からない。
    元気だったので、そのまま帰宅してハーネスを外すと先程とは全然違う首の付け根にトランプくらいの剃毛が…一言あるべきと思いましたが、それ以上に真っ赤になっている事に不安が募ります。
    案の定次の週末の夕方には傷口から濡れ始め病院に連絡しても
    院長不在でたぶんバリカン負けだと思うので明日お薬だけ取りに来てくと言われました。近くなのでお薬頂きたいとお願いしても
    受付が終わりなのでと言われ人間用のお薬も塗らないでくれとの事。深夜から傷口がパンパンに腫れ感染症の心配をしながら翌日迄
    冷やしました。その間うちの子は身の置き所が無い程狭い所に入っつたり部屋を徘徊したり....
    ボランティア行為で我が子が苦しんでいるのを見て後悔の念しかありませでした。
    翌日、病院側は申し訳ないと言うばかりで、そもそもこんなに大きく剃る必要があるのか?との問いかけにも沈黙。結局傷口洗浄でまた少し周りの毛を切られ、抗生物質の飲み薬と軟膏を無料で治療します。(当然です。)と言われ、我が子は抗生剤でお腹がゆるくなり
    あと10日も薬を飲むそうな...。
    今回輸血の必要性を感じてボランティアで快諾しましたが、それは
    こちら側の安全が保証されてはじめて成り立つものです。
    元気な子が病気になってどうするのか!
    ネットで色々調べると、きちんとマニュアル化された病院もあるようで、たまたまかも知れません。
    しかし、この様なアクシデントがある以上、献血の安全性が確保されるよう統一したマニュアルがない限りボランティアは増えません。添付の写真は献血の直ぐ後です。
    獣医師の方いらしたら、こんなに剃毛必要なのか?教えて欲しいです。我が家の子はラブにしては、毛量は少なく柔らかなコートです。
    匿名の投稿画像
  • 投稿者

    30代 女性 匿名

    私は以前、チワワを飼っていました。残念ながら血液の病気にかかってしまい、輸血が必要だったのですがドナーが見つからず発症して2ヶ月で亡くなってしまいました。かかりつけの病院は輸血ができなかったので輸血のできる病院へ行きました。その病院はあまり行きたくありませんでした。チワワと一緒に飼っていたポメがその病院で亡くなってしまったので良い印象はなかったのです。案の定、輸血協力をしてくれるワンちゃんを探してくれる様子もなくでした。人間のようにバンクがあれば助かっていたかも知れません。輸血に協力してくれるワンちゃんもいる中、残念な気持ちでいっぱいです。
  • 投稿者

    女性 ささにしき

    たまにSNSなどで犬の献血急募のお知らせが掲載されています。犬種が特定されていることも多く、きっと珍しい血液型なんだうな、などと想像していましたが、犬の血液型はたくさんあるのですね。手術や病気をした際に安心して利用できる血液がないと困りますもんね。動物病院によってはそれようの大型犬を飼われているところもあると聞きます。
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