犬のしつけで一番重要なコマンドは?
犬のしつけとは、犬と人間の両方が人間社会の中で安全かつ快適に生きていくために犬に教えておくべきものだと思います。しつけには「人や物への社会化」や「甘噛みへの対処」「トイレトレーニング」など、様々なものがありますが、教えておくべき基本動作として「おすわり」「ふせ」「待て」「おいで」「ついて」の5つのコマンドが挙げられます。
中でも「おすわり」が最も使用頻度が高く、重要だという考え方があります。「うちの子、おすわりはできる!」と言う飼い主さんはたくさんいます。ほとんどの飼い主さんがそう言うのではないかと思います。しかし、本当に役立つ「おすわり」というのは、いつでも・どこでも・どんな状況でもできる「おすわり」のことを言います。犬がおすわりをしたくない状況であっても「おすわり」をすることなのです。
ごはんの前だけできる、おやつが目の前にあればできるという、一定の状況下でしか「おすわり」ができない場合は、「おすわり」はただの芸になっているか、「おすわりをするからおやつをくれ」と犬が主張していることになり、おすわりをしたとしても飼い主のコマンドに従っていることにはなりません。そのような状態では、「おすわり」が持つ様々な効果を十分に発揮できていないと考えられます。
監修ドッグトレーナーによる補足
難しい内容と共に非常に大切な内容です。例えば私たちでも練習と同じようなパフォーマンスを緊張する本番で発揮できるか?
あなたも悔しい思いをした事があるのではないでしょうか。犬も同じです。その時に出来た事が、別の時にも同じように出来るとは限らないのです。
「おすわり」が犬にとって重要な理由
「おすわり」は多くの家庭で教えているしつけだと思います。しかし、「おすわり」が持つ素晴らしい効果についてはあまり知られていないようです。ここでは犬のしつけにおいて、「おすわり」がなぜ重要なのかを説明していきたいと思います。
しつけの基礎になる
前述した通り、犬のしつけの基本動作として「おすわり」のほかに、「ふせ」「待て」「おいで」「ついて」などがあります。また、犬のしつけでは吠えや甘噛み、引っ張りの改善などにも取り組むでしょう。
そうした中でその基礎となるのが「おすわり」という行動なのです。ふせるときにも立った状態からふせさせるよりも座った状態からふせさせる方が自然ですし、待て&おいでを教えるときにも、座った姿勢で行うことが多いでしょう。また、体が動いていると犬は頭を使って冷静に考えることができないことが多いため、座らせることで落ち着かせて興奮をしずめて冷静に考えさせるということにも役立ちます。
監修ドッグトレーナーによる補足
基礎こそ肝心。土台がしっかりするからこそ揺るがない。だからおすわりに意味があるのです。「おすわり」は単なる一芸ではなく、あなたとの生活の第一歩と言ってもいいかもしれません。
問題行動を防ぐことができる
犬の問題行動として多く挙げられるのが「吠え」や「散歩での引っ張り」です。これらについても「おすわり」を徹底して教えておくことが役立つと考えられています。犬は体の構造上座った状態では、大きな声で吠えにくいとされています。
また、座っているよりも立っている方が興奮しやすいため、吠えてしまいそうな状況のときに座って落ち着かせるというのは非常に有効なしつけとなっています。様々なしつけに応用するためには「おすわり」をいつでもどこでもできるようにしておくことが大切です。
吠えや興奮状態を抑えるために「おすわり」では効果が十分ではない場合、「ふせ」をさせると効果が高まることもあるでしょう。
監修ドッグトレーナーによる補足
両立しない行動をさせて問題行動を改善するのを「対立行動法」と呼びます。何も叱るだけが改善策ではありません。むしろこちらの方法が効果的である事が多いのです。
脱走や事故を防ぐことができる
あらゆる状況下で「おすわり」ができるように教えておくことで、散歩中にリードが外れてしまったり、玄関や庭から犬が脱走してしまったりしたときなどにも大変役立ちます。犬は追いかけたり捕まえようとしたりするほど逃げていく傾向にあるため、動いている犬を捕まえるのはとても大変です。そうしたとき、遠くからでも「おすわり」の指示が聞けるようにしておくことで、犬を座らせ飼い主さんが行くまでそのままの状態でいさせることができれば、簡単に捕まえることができるでしょう。
また、道路の反対側に行ってしまった犬や車道でうろうろしている犬なども、「おすわり」の指示で動きを止めることができれば、安全を確保することができるのです。
監修ドッグトレーナーによる補足
普段の練習が鍵となります。特に「犬との距離」は重要。犬と離れた距離でも練習していますか?距離が離れれば離れるほど、難しくなる傾向があります。日常の中で練習を積み重ねましょう。
「おすわり」の基本的な教え方
- ①おやつやフードを一粒手に握り、犬の鼻先に持っていきにおいを嗅がせます。
- ②犬がそのにおいに興味を持ったら、鼻先から耳と耳の間のあたりに向けてゆっくり手を動かします。(犬が諦めてしまわない程度のスピードで動かしてください。)
- ③犬が鼻先を上に向けていくことでお尻が下がり「おすわり」の姿勢になった瞬間に手の中の食べ物を与え、しっかりと褒めてあげてください。
- ④食べ物で誘導すればすぐにできるようになったら、まず「おすわり」と言ってから手で誘導をしてコマンドを覚えさせましょう。(「おすわり」を言うタイミングは、犬が座った直後、という方法もあります。)
- ⑤手に食べ物を握らない状態で同じように誘導をし、「おすわり」ができたら、ポケットなどからおやつまたはフードを出してごほうびとして与えてください。
これは最も基本的な「おすわり」の教え方の一つですが、なかなか思うようにできないこともあると思います。犬の性格や体格によっては別のアプローチが適している場合もあるので、根気強くやってもまったくできないという場合には、ドッグトレーナーなどプロに相談してみましょう。
一定の状況でおすわりができるようになったら、家の外で、散歩中に、公園で、犬と飼い主が離れた状況など、いつでもどこでもおすわりができるように練習していきます。この時、いきなり人通りや騒音が多かったり他の犬が通ったりするような難しい状況ではなく、まずは誰も通らない静かな場所ではじめ、少しずつ難しい場所や犬と飼い主との距離を伸ばした状態での練習にしていきます。
また、「おすわり」のコマンドについては「おすわり」でも「すわれ」でも英語で「sit」でも構いません。どんなコマンドでもOKですが、家族の誰が指示をする場合でも同じコマンドを使わなければなりません。
また、「おすわりしようね」「すわりなさい」など、話し言葉などに変えてしまうとコマンドとして長すぎますし、犬はうまく聞き取れない場合があるので注意しましょう。コマンドは犬が聞き取りやすいようシンプルで短いものがベストです。
監修ドッグトレーナーによる補足
教える時は周囲の環境にも気を配りましょう。騒がしい、動くものがたくさん、目新しい刺激がある、これらは出来る限り排除するとスムーズに進みやすくなります。ご自宅がいい練習の場所になるケースが多いですね。
まとめ
「おすわり」そのものができるようになることはとても大切ですが、それ以上に「おすわり」などのしつけを成功させるために犬としっかり向き合い、気持ちを通わせながらひとつのことに取り組むということもとても重要なのです。犬を危険から守るために大事なコマンドが「待て」や「ストップ」、「ふせ」である人もいると思いますが、どのコマンドを使うのかよりも、どんな状況でも飼い主のコマンドに従うことができる、必要に応じて飼い主が犬の行動をコントロールできる関係づくりが重要なのです。
しつけは最高のコミュニケーションとなって、犬と飼い主さんの信頼関係をより強くしてくれるでしょう。アイコンタクトを取って、コマンドにしっかりと従ってくれる愛犬はさらに愛おしい存在になること間違いなしです。しつけの第一歩として、また関係性づくりの一貫として、まずは「おすわり」を極めてみてはいかがでしょうか?
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20代 男性 匿名