1.強引に治療を行おうとする
動物病院を訪れると、ビクビクしてしまう犬は数多くいることと思います。なかには「病院に連れて行かれるー!」と気づいた途端、逃げ惑う子もいたりするそうですね。そんな犬が苦手な動物病院ですが、動物病院の犬への対応の仕方によっては、さらに犬が怖がったり不安を感じたりしてしまうこともあります。
例えば、強引に治療を行われることが多いと、犬は「こわいよぉ~」と感じ、動物病院に対して苦手意識が強くなってしまいます。無理やり強く前足を掴んで注射をする、数人で強引に押さえる、なるべく痛みを感じないようにするといった気遣いをしてくれない、などの強引な対応は犬が怖がりやすいといえます。
必要な医療行為を行うために、ときには強引さも必要といえますが、いつも無理やりされるとさすがに怖くなってしまうのも当然といえますよね。また、病院のスタッフにも犬の扱いが上手い人とそうではない人がいることもありますし、犬の性格や精神面を考慮した扱いをしてくれる病院の方がいいですよね。
2.あまり話さず治療を行う
無口な対応で黙々と治療する。そういった対応の獣医がいると、職人気質な凄腕の獣医!って感じがして頼もしく感じる人もいるのではないでしょうか。しかし、おそらく犬からすれば無口で注射や治療を行う獣医の姿は、何を考えているのか分からずに不安を感じやすいと思います。
私は今までにいくつもの動物病院を訪れたことがありますが、その中でも愛犬に「すぐ終わるからね~」「もうすこしだから我慢しよっ」「偉かったね~」と、優しく話しかけながら治療を行ってくれる獣医師がいる病院で、一番愛犬が落ち着きやすかったです。
犬によっては無口な獣医の方が落ち着く場合もあるかもしれませんが、お安心させるように話しかけながら治療を行ってくれる方が、犬が安心しやすく苦手に感じにくくなると私は思います。
3.飼い主のいないところに連れて行かれる
治療などをするときは飼い主の離れた場所で行う。そういった動物病院も犬が苦手に感じやすいと思います。なぜなら、不安な場所で自分を守ってくれる飼い主と離れると余計に不安を感じたり緊張したりするからです。
愛犬が動物病院に苦手意識を強く持っているのでしたら、なるべく飼い主と離れずに治療を行える病院や、飼い主と協力しながら治療・診察などを行ってくれる病院を選ぶと少しは苦手意識を改善させてあげることができると思いますよ。
4.診察のときに助手がたくさんいる
動物病院で診察をしてもらう時、特に何をするわけでもないのに5人くらい助手が立ちながら愛犬の様子を見ている時ってありませんか?病院側からすると、助手を育てるために見学をさせているのかもしれませんが、たくさんの見知らぬ人にジーっと見つめられる、というシチュエーションは犬が恐怖や緊張を感じやすい行為となるので、病院に対する苦手意識が強くなってしまうと思います。
個人的には獣医1人と助手1人、もしくは2人程度がちょうどいい人数だと感じています。
5.飼い主に対して高圧的
こちらはあまり出会わない特徴となりますが、動物病院の中には犬だけでなく飼い主に対しても高圧的な態度で接してくる病院があったりします。例えば私が以前経験したものだと、常に怒るような口調で話したり、命令口調で愛犬に無理やり言うことを聞かせるように私に指示したりする獣医師がいました。
犬自身に高圧的な態度で接するだけでも犬が苦手に感じやすくなるといえますが、犬のリーダーである飼い主に対しても威圧的な態度を見せる場合、「僕を守ってくれる飼い主が危険にさらされている」と感じて、さらに病院やその獣医師に対して嫌な気持ちが強くなってしまうと思います。
もしそういった病院や獣医師に出会った場合は、愛犬だけでなく飼い主にも悪影響が出ることがあると思いますので、早いうちにお世話になるのを止めることをおススメします。
まとめ
動物病院の対応の仕方によって、愛犬の病院への苦手意識度は大きく左右されます。一昔前と比べると近年では動物病院が数多くありますので、病院に対して少しでも気になることがあるのでしたら、いろいろな病院に行って愛犬が落ち着きやすい病院を見つけてあげることをおススメします。
嫌なことは強く長く記憶に残ります。その犬のためとは言え、犬がされて嬉しいことではない医療行為を行う私たち獣医師も出来るだけ「病院=嫌なことが起きる場所」にならないように努力する必要があります。それはその犬のためになるだけではなく、病院に犬を連れてくる飼い主さんにも、私たち病院スタッフ自身にも大きなメリットがあります。最近は、適切な医療行為や高度な医療を提供できるだけではなく動物に優しい病院が良い動物病院であるという意識も、獣医師の間でかなり高まっています。動物に優しいとは、動物の肉体のみならず心理面への影響もケアする、「動物の福祉」を尊重する、「ロー・ストレス・ハンドリング」という言葉で表現されることもあり、出来るだけ動物のストレスを少なくするために動物病院は何をするべきかというテーマの研究も多く行われています。
そのような点に配慮している動物病院について、統一された規格や基準は今のところないのですが、公益社団法人 日本動物病院協会(JAHA)は、動物の福祉に貢献することを理念の一つとして掲げており、JAHAの認定病院はその点において一定の水準を満たしている病院であることが期待できると思います。またJAHAは、犬が動物病院を好きになるようなしつけと犬に好かれる動物病院を普及させようとしています。JAHA認定病院でもそうではなくても、犬の気持ちに寄り添った素晴らしい対応をする動物病院はたくさんありますので、飼い主さんの価値観や犬の性格、通いやすさ、獣医療の質などから判断して、かかりつけの病院を決めていただければと思います。その犬の健康を長期間管理するという観点からは、診療内容ごとに複数の病院を使い分けるのはお勧めできませんが、納得できるかかりつけ病院を見つけるという目的で複数の病院を受診することは問題ないと思います。
「動物の福祉」については、世界小動物獣医師会(WSAVA)がガイドラインを発表しており、その中に動物が医療を受ける際に守られるべき動物の福祉についての記載もあります。
なお、猫については国際猫医学会(ISFM)が「キャット・フレンドリー・クリニック(CFC)」という国際基準の規格を設けており、日本にもCFC認定を受けた動物病院が多数あります。
《参考》
世界小動物獣医師会(WSAVA) 動物の福祉に関するガイドライン(Animal Welfare Guidelines)
国際猫医学会(ISFM)のキャット・フレンドリー・クリニックについてのサイト
ユーザーのコメント
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50代以上 女性 匿名
確かにその通りだと思いました
手のかからないおとなしい犬にはオヤツをあげたりしてるみたいですけど、予防注射の時うちのヤンチャなチワワには、「コラっ!大人しくしろ!」とイライラしてエリザベスもつけ損ね、あげく、飼い主さんは下がってて!と助手の奥さんにリードを引き上げさせ、首吊りの状態で注射をするなど、こちらが大丈夫?と感じる様なお医者様には不安を感じます。たかが予防接種ならまだしも大きな病気の時にはどうなるか不安ですし、
そもそもセカンドオピニオンの若いお医者がずらりの医院では全く対応が違い、「大丈夫だよ〜」を優しく5〜6回呪文の様に笑顔でささやきながらの注射だと借りてきた猫の様におとなしくなり、最後には「こちらのチワワ君は人の気持ちを読む、賢い子です。ヤンチャでも悪さでも無いです。むしろ頭がとても賢いワンちゃんなんです!」とキッパリ発言には驚きましたー。
それ以来、そちらの医院では、賢いねー!と言われるのを理解してか、ワンちゃん共に飼い主への対応の優しさか全くお利口です。犬本来は基本最初から悪さな犬など無くて接する人で悪くなる賢い生き物ですから犬本来の従順さを引き出してくれるお医者さんを選ぶべきです。
そうすれば、犬も飼い主も病院に行くのが苦痛では無く〇〇先生待ってるよー!と行くのが楽しみになるのでは無いでしょうか。頑固一徹の先生も一生懸命でしょうし悪くは無いですがうちの様にワンちゃんの良さを引き出してくれるセカンドオピニオンを探しておくのも有りかな?と思います
動物に医療行為を行う際に最も大事なことの一つに、病院スタッフ、飼い主さん、犬の全員の安全を確保することがあります。犬によっては飼い主さんが一緒にいると病院スタッフに威嚇や攻撃をするけれども飼い主さんと離れ離れになると大人しく医療行為を受け入れてくれる子もいます。また、病院の設備や狭さによっては安全に飼い主さんに一緒にいてもらえない場合もあります。このような場合には、全員の安全と適切な医療行為を行うために、飼い主さんに犬とは別の場所で待っていてもらうことをお願いすることになります。何をしているのか、を隠そうとする姿勢の病院には信頼を寄せられないとは思いますが、飼い主さんが「一緒にいたい」と希望するのに断られる場合でも、病院側がその理由をきちんと説明してくれる場合にはご理解頂きたいと思います。