犬の耳の病気とは その症状と原因、治療法について

【獣医師監修】犬の耳の病気とは その症状と原因、治療法について

犬の耳に発生する病気と言えば、かゆみや赤みなどを特徴とする症状のイメージが多い傾向があります。もちろん発生頻度として高いのはそういった炎症が耳に起こっている状態ですが、他にも注意しておくべき病気もあります。今回は、犬の耳に炎症が起きた時の状態を中心に、愛犬の耳に発生するかもしれない病気について解説します。

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記事の監修

山口大学農学部獣医学科卒業。山口県内の複数の動物病院勤務を経て、ふくふく動物病院開業。得意分野は皮膚病です。飼い主さまとペットの笑顔につながる診療を心がけています。

犬の耳の病気について

耳をピンと立てた犬の後ろ姿

犬の耳に発生した病気に関わる動物病院での診察件数は多く、ペット保険会社大手であるアニコム損保に加入している飼い主さんが保険請求した件数統計では、疾患別に分けると「第3位」となっています。

参照元:アニコム 家庭どうぶつ白書 どうぶつの疾患統計
https://www.anicom-page.com/hakusho/book/pdf/book_201812_3_1.pdf

皮膚疾患とは分けてランキングしていることを思えば、耳の病気を抱える犬がとても多いことがわかります。

犬の耳の中は人と違って、鼓膜までの外耳道と呼ばれる通路がL字型のような構造になっています。人はまっすぐ1直線になっていることを思えば、その構造によって犬の耳の穴は蒸れやすく、穴を塞いでしまうような耳毛も生えやすいため、病気が発生しやすいと言えるわけですね。

また、人なら自分の耳に違和感があれば「言葉」で誰かに伝えることができます。ところが、犬たちは私たちと言葉ではコミュニケーションが取れません。

  • どのくらいかゆい、痛いのか
  • どこに違和感があるのか
  • いつからどのように酷くなっているのか

などがわかりづらいため、飼い主さんは「意図せず」耳の病気を放置してしまいがちです。

放置すればするほど治療は長引いて治らず、また炎症が広範囲に広がって悪化することで原因を探りにくくなるという悪循環に陥ることも!

耳の病気を早く見つけて治してあげるためには、愛犬の仕草や行動の変化を見極めてあげることが重要になります。

犬の耳の病気の種類

獣医師に耳をのぞかれる犬

愛犬の耳の変化に気づいてあげるためには、どんな病気が発生することがあるのかを知らなければなかなか気づけませんよね。

まずは、犬に発生することがある耳の病気について知ってみましょう!

外耳炎

動物病院へ耳の病気として犬が来院する理由で最も多いのが、鼓膜までの外耳道に炎症が起きてしまっているパターンです。

外から見える範囲も含めて赤くなり、腫れ・かゆみ・痛みといった犬にとっては辛い症状が現れます。中には眠らないままずっと掻いている子も!

炎症の程度が酷くなると中耳炎や内耳炎へとつながるため、素早い対処が必要です。
また、外耳炎にしないために「耳の中の環境を整える」ということが大きな予防になります。

中耳炎

耳の炎症が鼓膜よりも奥になると中耳炎という状態になります。

外耳炎や外傷などによって鼓膜が破れ、鼓室と呼ばれる入ってきた音を増幅させる空間に、炎症による膿や水のようなものが溜まってしまいます。
外耳炎よりも炎症の程度が酷い場合が多く、臭いの酷い耳だれが奥から漏れ出てくることも。

耳の根元を中心に痛みがあるので、触られることを嫌がる子も多いのが特徴。
外耳炎と間違えることもある状態ですが、
「頭を触っただけなのに何だか怒りっぽい…」「食欲や元気がない」
という訴えも飼い主さんから伝えられることがあります。

内耳炎・前庭障害

中耳よりもさらに奥、内耳と呼ばれる蝸牛や三半規管がある場所に炎症が及んでしまうと、内耳炎という状態になります。

内耳とは、耳に入ってきた音を脳に伝えたり、三半規管につながる前庭神経によって体が平衡感覚を保てるように働いている器官のこと。
ここが炎症により障害を受けると、難聴になったり、体のバランスが保てずずっとめまいに襲われているような状況に陥ってしまいます。

内耳炎が原因で前庭障害になることもあれば、原因不明のまま現れることもあり、その場合は「特発性前庭疾患(特発性前庭障害)」と呼ばれます。「特発性」とは「原因がはっきりしない」という意味ですね。
特発性前庭疾患は特に老犬に多く見られ、「急にふらふらとして立てなくなった!」とびっくりされる飼い主さんが多いのが特徴です。

耳血腫

耳の1番外側になるひらひらとしている耳介と呼ばれる部分は、軟骨とそれを覆う皮膚で構成されています。
耳を激しく振ったり掻いたりすると、この耳介に打撲や摩擦のような衝撃が加わってしまうことが!すると、耳介の中の血管が切れて血が溜まり、耳のひらひらとしている部分が水ぶくれのようにぷっくりと腫れあがってしまうのですが、これを耳血腫と呼んでいます。

元々は外耳炎などのかゆみを引き起こす原因があって、「かゆい~!」と犬が気にしすぎてしまうことから起こりやすいとも言われています。

また、特に刺激がなくても自分の免疫が関わって耳血腫になることも。その場合は全身を対象にして検査が必要になることもあります。

腫瘍

老犬になってくると腫瘍のリスクは上がっていきますが、耳の中に発生する可能性も考えておかなければいけません。
見える範囲にできれば腫瘍がどんなものなのかという検査や、小さいうちに取り切るための切除も容易ですが、気づかぬうちに見えない部分にできることもあります。
耳の奥にできると、先ほどお話した前庭疾患の原因になることも。

また、悪性腫瘍だった場合は早期に見つけられなければ愛犬の今後に関わることもあります。

また、いぼのようなものであっても、耳の穴を塞ぐようにできてしまえば、耳垢が外に出る隙間がなくなり、常に外耳炎に悩まされる事態にもなりかねません!
普段から「耳の中にできものはないかな?」とよく観察することが大切です。

犬の耳の病気の症状

かゆそうな犬

「犬の耳に病気が起きているかどうかはどうやったらわかるの?」
という飼い主さんのために、こんな変化があれば要注意!というポイントをいくつかお話します。

耳垢の変化

最もわかりやすい変化は耳垢の異常です。
耳に炎症が起きる原因はたくさんありますが、耳の中で細菌やマラセチア(酵母菌)、耳ダニの感染があると、耳垢の量の増加や色の変化が見られます。

また、炎症が増して酷くなると耳から液体が流れ出る耳だれが見られることも。

  • 黒い、もしくは茶色い耳垢が増える
  • 膿のような耳だれが出る
  • 耳垢の臭いが増して顔を近づけなくても臭い(悪臭)

といった状態に変化すれば、外耳炎などを引き起こしている可能性が高くなります。

元々耳の分泌腺が活発で、耳垢が多く出やすい子もいます。
その場合は、次の皮膚表面の変化も一緒に確認してみてくださいね。

耳の皮膚表面の変化

耳に炎症が起きると、皮膚表面に変化が見られることがほとんどです。

  • 部分的もしくは全体的に皮膚が赤い
  • 耳道が腫れて狭くなっている

といったことがないか、耳垢の変化と一緒によく観察してみてください。

また、

  • 耳が水ぶくれのように腫れる(耳血腫)
  • 耳道にいぼのようなできものが見える

といった時にも早めに動物病院で相談しましょう。

耳血腫は放置することで耳の軟骨が変形していびつな形になり、皮膚も硬く厚くなります。
いぼが耳道を塞いでしまい外耳炎になりやすくなってしまうように、耳の皮膚が硬くなって耳道を狭めることも、慢性の外耳炎に愛犬が苦しむことにつながってしまいます。
治療開始は早い方が愛犬のためと心に記しておいてくださいね。

愛犬の行動の変化

外耳に炎症が起きると、まず愛犬を圧倒的に悩ませるのは「かゆい」という症状です。
人が蚊に刺されて虫刺されができると、思わず掻きむしってしまったり、夜も気になって眠れなくなったりしますよね。

犬たちにとっても同じことで、かゆみが強く耳が気になると、

  • 顔の側面を床に擦り付ける
  • 耳をピクピクと動かす回数が多い
  • 首のあたり(耳に近い所)を足で掻く
  • 頭をぶるぶると振る

といった行動の変化を見せてくれます。

さらに痛みや体のバランス(平衡感覚)に影響が及んでしまうと、

  • 耳の周囲を触られると嫌がる、怒る
  • 食欲や元気の喪失
  • 頭を一方に傾ける
  • 首がねじれたような姿勢のまま治らない(斜頸)
  • まっすぐに歩けない、ふらふらと歩く、倒れる
  • 眼が揺れる(眼振)

などの日常生活をうまく送れない、飼い主さんとのコミュニケーションに変化が出るというダメージが出ることも!

外耳炎の放置によって症状が進み、ここまで影響を及ぼす可能性もあるため、長くかかっても治療を継続するということが大切です。

犬の耳の病気の原因

耳を立てて注目している犬たち

犬の耳に病気が起こる原因を知れば、病気自体の発生を予防することにもつながります。

外部寄生虫

ブリーダーやペットショップなど多頭での密集環境で感染しやすいのが「耳ダニ」です。
強いかゆみと特徴的な黒い耳垢が特徴で、耳ダニを駆除しなければ症状は治まりません。
子犬を迎え入れて耳垢が多いなと感じれば、せひ獣医さんに相談してみてください。

細菌感染・マラセチアの増殖

元々耳の中が蒸れやすい構造を持つ犬ですが、それをさらに悪化させて細菌やマラセチアという酵母様真菌(カビ)の増殖を促してしまうことがあります。

  • シャンプー時や水遊びで耳の中に水が入る
  • 耳毛を放置して耳道を塞ぐことで湿気がこもり、耳垢が溜まる
  • ケンカや自分で耳を引っ掻くことで傷ができ細菌感染する

マラセチア自体は皮膚にあるのが当たり前の常在菌ですが、過剰に増えると耳で炎症を引き起こしてしまいます。

また、傷の治りかけであるかさぶたの時には、かゆみに襲われて人も気にしてしまうことがありますよね。
同じような状況で、犬も耳を引っ掻いて傷ができてかさぶたになると、せっかくの治りかけの時にまた掻き壊すという悪循環ができてしまうこともあるため注意が必要です。

外耳炎の放置

外耳炎のかゆみや痛みを放置すると、中耳炎や内耳炎に波及してしまう可能性があるということを考えておかなければいけません。
また、頭を振ったり自分で耳を激しく掻いて刺激を与えてしまうことで、耳血腫の原因にも。

アレルギー

外耳炎の原因として、元々がアレルギー体質であることが原因の1つにあげられます。
特定の食べ物のタンパク質に反応する食物アレルギー、環境中のダニやカビ、草などに反応するアトピー性皮膚炎が、日常に関わるアレルギーの代表的なもの。

こういったアレルギー性皮膚炎に誘発されて起こる外耳炎はかなり多く、皮膚のバリア機能も壊れやすくなっているため細菌感染が起こりやすいのも特徴です。

特にアトピー性皮膚炎はかゆみのコントロールが難しいため、病院での治療と同時に、かゆさを増幅させてしまうストレスを減らすことが大切です。

犬の耳の病気の治療法

薬を選んでいる人

犬の耳に病気が発生したら、「素早く」「確実に」治療することが何よりも重要です!
自己判断での耳掃除や投薬、冷やす・温めるといった対処方法が悪化を招く可能性があるため注意しましょう。

耳の洗浄

耳の中に耳垢が溜まっているなら、まずはそれを洗浄してきれいにしなければいけません。
汚れたままでは細菌やマラセチアの温床になり、投薬治療も思ったような効果が発揮されません。

家庭で行う耳掃除とは異なり、病院では外からは見えない奥の方まできちんと洗浄します。
そして、洗浄と同時に、耳道を覆う耳毛の処理も行って、耳の通気を良くします。

耳の状態に合わせて洗浄間隔は変わりますが、重度の場合は数日間隔での洗浄が必要になるほど耳垢が溜まってしまうことも。
その場合、耳洗浄自体の1回の料金は数千円でも、通院回数が増えるほど費用がかさんでいくため、飼い主さんのお財布事情と愛犬の通院ストレスのためにも、早期の治療開始が大切です。

監修獣医師による補足

外耳炎の状態がひどい場合は鼓膜が破れている場合もあります。このような場合には耳道洗浄は禁忌です。鼓膜の奥には中耳や内耳がありこの部分に洗浄液や液体の外用薬が入ると神経症状を起こすことがあります。耳道洗浄は慎重に行いましょう。

獣医師:平松育子

点耳薬や内服薬による内科治療

耳の皮膚表面の炎症を抑えるには、点耳薬を使用します。

点耳薬の中には、

  • 細菌感染に対する抗生剤
  • かゆみや腫れを抑えるステロイド
  • カビに対する抗真菌剤

などの症状に応じた薬効成分が入っています。

軽度の外耳炎であれば点耳薬だけで治まることもありますが、炎症が耳の奥まで進んでいたり、点耳だけではかゆみのコントロールができない時には飲み薬を使うことも多くあります。
また、アトピー性皮膚炎の子にとっては、かゆみのコントロールのための投薬は避けて通ることが難しいものです。

ステロイドに対して忌避感を持たれる飼い主さんもいますが、愛犬にとって激しいかゆみにストレスを抱えたり、耳の皮膚を掻き壊してしまうリスクを考えれば使う必要があります。

きちんとした用量で投薬方法を間違えなければ、ステロイドは炎症をさっと鎮めてくれる重要なお薬です。獣医師ときちんと話し合った上でお薬を使ってくださいね。

血腫を取り除く吸引処置

耳血腫ができてしまった子に関しては、耳に溜まった液体を注射器で抜く処置を行います。
溜まるスピードは犬によって個体差がありますが、中には毎日に近い間隔で最初は通院しなければならないことも。

吸引処置後はステロイドを入れて、耳を包帯で巻き圧迫しておきますが、犬にとってはかなり嫌なもの。
「何だこれは!」と嫌がってすぐに取ってしまったり、逆に気にしてしまうこともあります。

最近では溜まった液体を抜かずに、免疫をあげるインターフェロンというお薬を腫れた部分に直接注射器で入れる治療方法を取られる場合もあります。

外科手術

耳の炎症が酷く、耳道が狭くなって耳の環境が改善できない場合には、外耳道を切開して耳の汚れを出しやすくするための「外耳道切開手術」を行うことがあります。
目的としては犬の生活の質(QOL)を上げること。
これによって「耳の症状が和らいで楽になったみたい」と言う飼い主さんもいます。

また、耳血腫でも痛みが強く耳を触れなかったり、状態がなかなか改善できない時には外科処置が必要になることも。
その場合は全身麻酔をかけて、耳に溜まる液体が排泄されやすいよう穴を開けたり、耳の膨らむスペースをなくすために軟骨と皮膚を縫い合わせたりする方法が取られます。

犬の耳の病気の予防法

犬の耳の中を拭きとる

愛犬の耳を守るためには、日頃のケアが大切です。
最も大切なのは「耳をよく観察する」こと!

耳掃除をすることも1つの方法ですが、その目的としては「耳の異常に早く気づく」ため。
耳をめくって耳垢の量や臭いのチェックを行いましょう。

もしも耳垢が見えたら、専用のイヤークリーナー(耳洗浄液)を含ませたコットンで優しく拭き取ってあげてください。
綿棒を使うと耳垢を奥まで押し込んだり、思わず力が入って耳道を傷つけてしまうことがあるので逆効果です。

耳垢が溜まりやすい子であれば、月に1回など定期的に獣医師による耳の洗浄を行ってもらうのも良いですね。
同時に耳の奥の変化までチェックしてもらえるため、見えない部分の異常にも気づきやすくなります。

また、自宅でシャンプーをした後、川やプールで水遊びをした後には、愛犬の耳の中を乾いたコットンでしっかりと拭き取ってあげてください。
犬たちは自分で体を大きくぶるぶると震わせて、大部分の水を払うことができます。
ところが、特に垂れ耳の子では耳の中に残った湿気が蒸発しにくく、蒸れの原因になることがあります。
耳の環境が悪化する原因になるため、特に夏場は耳に湿気が残らないように注意して、楽しく水遊びをしてくださいね。

まとめ

なでてもらって笑っているような顔の犬

犬の耳の病気は、夏だけでなく年中発生するリスクを抱えています。
軽度であれば早く治まるところが、重度になればなるほど治療が大掛かりになったり、治るまでに時間がかかることが多いのが耳の病気の特徴です。
私たち人でも実感できるように、「かゆい」「痛い」といった感覚は、普段の行動ができなくなるくらい苦しいものだったりしますよね。
愛犬にとっても同じ事と捉えて、気になる仕草を見つけたらぜひ早めに治療してあげてくださいね!

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