犬に「不安」という感情はあるのか?

犬に「不安」という感情はあるのか?

犬に不安という感情はあると思いますか?犬には豊かな感情があり、もちろん不安という感情もあります。不安な気持ちが強くなることで発症する病気もあったりします。なるべく愛犬を不安にさせないようにしてあげたいですね。

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記事の監修

東京農工大学農学部獣医学科卒業。その後、動物病院にて勤務。動物に囲まれて暮らしたい、という想いから獣医師になり、その想い通りに現在まで、5頭の犬、7匹の猫、10匹のフェレットの他、ハムスター、カメ、デグー、水生動物たちと暮らしてきました。動物を正しく飼って、動物も人もハッピーになるための力になりたいと思っています。そのために、病気になる前や問題が起こる前に出来ることとして、犬の遺伝学、行動学、シェルターメディスンに特に興味を持って勉強しています。

犬は不安を感じるのか?

不安な表情の犬

犬は不安を感じる生き物

結論から先にいいますと犬は不安を感じます。犬にとって不安や恐怖は、自分の安全や生存が脅かされていると思った時に生じる感情であり、留守番をしているときや、ペットホテルなど慣れない場所に預けられているときなどに感じているでしょう。信頼している飼い主と一緒にいないときや知らない場所に来たときなどに不安な気持ちになる犬が多いみたいですね。この人と一緒にいれば安心と思っている人がいなかったり、知らない場所なのでここが安全かどうか分からなかったりするからです。

他にも、犬にとって初対面やよく知らない人と一緒にいたり、苦手な場所にいることでも不安な感情は芽生えます。初対面やよく知らない人は、犬にとっては「何をするか、どんな人か分からない」ので、安全を脅かす可能性がある人だからです。特定の人や場所が苦手な犬もたくさんいますが、「苦手」というのは過去に犬が危険を感じたことがある、または危険を感じたことがある人や場所と同じ特徴を持っているということになります。

例えば、病院で診察されるのを嫌がる犬は多いと思います。犬は病院がどういう場所か、何のために来ているのかは分かりませんので、「見慣れない服を着た知らない人がいっぱいいる」「普段かがないようなにおいがする」「ここで痛いことをされたことがある」「今日も何をされるか分からない」「痛いことをまたされるのではないか」という不安を抱えてしまうのです。

不安が起こす病気として知られている『分離不安症』

犬の不安が過度になることで発症する有名な病気『分離不安症』というのはご存知ですか?主に、飼い主に依存しすぎてしまった犬で、飼い主がいなくなった時に不安な気持ちが異常に強くなることで、様々な症状を引き起こす病気として知られています。常に飼い主に依存していると、飼い主がいないと安心安全だと感じることができなくなるのです。その他にも、犬がなにかしらのトラウマを持っていてトラウマと同じ環境になってしまったときに、不安な気持ちが異常に強くなると分離不安症と同様の症状がでることがあります。いずれも、過度の不安から犬はどうして良いか分からず混乱した状態となっています。

症状としては、パニックになってずっと吠え続けたり、色々なところでトイレをしたり、物を壊したりすることも。犬は過度の不安から極度の興奮状態になっていますので、普段の様子からは考えられないような破壊行動を起こすこともあります。物を破壊する以外にも、不安な気持ちから自分の体(特に手先)をずっと舐めたりしっぽを噛んだりすることもあるそうですよ。

分離不安症の治療には、飼い主への強い依存心を取り除いて、飼い主がいなくなると愛犬が感じる不安な気持ちを少なくしていき、安心して一人で過ごすことができるようにしてあげることが必要です。トレーニングによる行動療法の他にも薬による治療法もあるそうなので、愛犬が分離不安症かもしれないと思った場合は獣医師と相談することをおススメします。

不安を感じさせないためにできること

リラックスしている表情のヨークシャテリア

自分のライフスタイルに合った性格の犬種、犬を選ぶ

人でも、一つの出来事や状況に対して不安を感じる人と感じない人がいますが、犬も同様です。そして犬には、個体ごとの性格の他に犬種として生まれ持った傾向や特徴があります。数多くの犬種がありますが、どの犬種もその犬種が作られた目的や歴史があり、見た目だけではなく性格や性質の傾向が違うのです。見た目の好みだけで犬を選ばずに、その犬種の典型的と言われる性格が自分のライフスタイルに合っているかを考えて飼う犬を決めてください。ミックス犬の場合には考えられる祖先の犬種や両親の性格を参考にしましょう。犬種や候補の犬が決まったら、最後にその犬自身の性格を見極めます。これは見た目からどんな犬種を祖先に持つか全く分からないミックス犬でもできることです。

なぜこれが犬に不安を感じさせないようにできることなのかと言いますと、例えば防衛本能が強く飼い主や自分の財産を守ることを大事だと考える犬の場合、知らない人や犬と会うことは、いちいち「こいつは大丈夫なやつなのか?」と警戒心を抱かせ、その警戒心が解けるまでは不安を感じ続けさせることになることがあるからです。そのような犬を、飼い主が毎日のように違う場所に連れて行ったり出会う犬みんなと友達になろうとさせたりしたらどうでしょうか?飼い主はドッグランに行って犬を楽しませたい(自分が楽しみたい)と思い、犬と一緒に色々な場所へおでかけして満足するのかもしれませんが、犬にとっては緊張や不安の連続であるだけです。

防衛本能が強い犬でも、子犬のころから様々な環境に慣れさせ、さらに飼い主に十分な力量があれば、知らない場所へおでかけしても、知らない犬や人に会っても犬を安心させることができます。しかしそれには、それなりの勉強と経験が必要となります。

これから犬を飼う場合には、なぜ犬を飼うのか、犬と何をしたいのか、自分の生活はどういう生活かをよく考え、それに合った性格の犬を選ぶようにしましょう。既に飼っている犬がいて、自分の飼い方が犬に不安を感じさせているかもと思う場合には、犬の性格を尊重した生活を送らせてあげるよう、日々の過ごし方を見直してみましょう。

依存しすぎないようにする

犬が飼い主に依存するほど、飼い主がいなくなった時に感じる不安が大きくなってしまいます。飼い主がいない状態では安全を感じることができず、どうしたら良いか分からないのです。ですので、普段から飼い主も犬に依存しすぎないように、犬を飼い主に依存させすぎないように接することを心がけましょう。

例えば、家にいる間中ずっと愛犬を構ったり飼い主の後をついてまわるのを許すのではなく、構う時間とほったらかしにする時間をつくってメリハリをつけて接するようにしましょう。ほったらかしにするとは、愛犬を無視することではなく、愛犬が飼い主とは別に一人で安心して過ごす時間のことです。クレートに入って好きなガムを噛んでいてもいいですし、お気に入りのベッドでのんびりしていても良いでしょう。とにかく、飼い主がいてもいなくても愛犬が一人で安心して過ごす時間をつくることによって、飼い主への過度の依存をなくしていきます。

飼い主に過度に依存させないためには、夜寝る時は愛犬と一緒に寝ない方が良いという話もあります。これは、一日中一緒にいて愛犬が過度に飼い主に依存するようにならないか心配でしたら別々に寝かせれば良いですし、夜一緒に寝ていても何の問題もないのでしたら一緒に寝れば良いのです。もちろん、犬が飼い主と一緒に寝たがっても、飼い主がそれを望まなければ飼い主が我慢をしてそれを受け入れる必要もありません。

飼い主がいない時間をつくる

飼い主が家にいても愛犬が一人で過ごす時間を作り、愛犬が飼い主に過度に依存しないようにすると同時に、飼い主がいない時間(留守番)にも徐々に慣れさせていきます。

よく知られている方法としては、少しずつ飼い主がいない時間をつくるというもの。はじめは数分といったごく短時間だけお留守番をさせ、愛犬が慣れてきたら15分、30分、45分、1時間、といった具合に少しずつお留守番をさせる時間を長くしていきます。あせらずに少しずつ慣れさせてあげることで、愛犬も少しずつ不安な気持ちにならずにお留守番できるようになっていきますよ。お留守番をさせる時は、何か特別なことをしたり言ったりせずに出掛け、帰って来た時も大げさにほめたりして犬の興奮をあおることはやめましょう。飼い主がいなくなるお留守番は何ともないこと、と犬に思わせましょう。

飼い主のニオイがするものを置く

愛犬が飼い主と離れることに慣れたとしても、寂しい気持ちを持つこともあると思います。ですので、少しでも愛犬がリラックスして過ごせるために、飼い主のニオイがするものをそばに置いてあげるのも良いかもしれません。犬はニオイに敏感で飼い主のニオイというものを認識しているので、飼い主のニオイがするものと一緒に過ごしてると気持ちを落ち着かせることができる場合があるようです。

まとめ

落ち着いて眠るチワワ

愛犬が不安になっている姿を見たことがある、という飼い主はたくさんいると思います。できれば、愛犬の不安な気持ちを取り除いてあげたいですよね。不安を取り除くには、なぜ不安になっているかを突き止め、飼い主がその不安を取り除いてあげられる存在になってあげましょう。また、分離不安症を疑う場合には、行動学に詳しい動物病院を受診しましょう。

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