犬を外で飼うと寿命が縮まる?

犬を外で飼うと寿命が縮まる?

50年前、犬の平均寿命は5~7歳と言われていましたが、現在は犬種によって多少の開きはありますが、大体13歳程度と、ほぼ倍の長さになりました。飼い犬の平均寿命が伸びた理由として、犬を外で飼う「外飼い」をする飼い主さんよりも、家の中で飼う「室内飼い」をする飼い主さんが増えたためとも言われています。では、実際に犬を外で飼うと、本当に寿命が縮まってしまうのでしょうか?

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記事の監修

日本獣医生命科学大学卒業。北海道の大学病院で獣医師として勤務。一般診療をメインに行いながら、大学にて麻酔の研究も並行して行う。「動物と飼い主さんに寄り添った治療」を目標に掲げ、日々診療に励んでいます。

なぜ、「外飼いの犬は寿命が縮まる」と思われるのか

パソコンを使って仕事をしている眼鏡をかけた犬

科学的な確証は一切ない

実は、「外飼いの犬の寿命が短い」と言えるような科学的な根拠は一切ありません。
長い間、日本の一般的な家庭では、よほどの犬好きか、経済的に余裕がある家庭でないと、家族として犬を飼うことはありませんでした。

犬を飼うのは番犬だったり、猟犬だったり、いわゆる「使役犬」として飼われていることが多かったと思います。
その頃の日本人の平均寿命が70歳前後だったことを考えると、犬だけでなく、人間の平均寿命も短かったワケです。
ですが、それを考慮せず、犬の飼育環境と犬の平均寿命が、今よりもずっと短かったことだけを判断材料としてしまうと、「昔の犬は、外で飼われていたし、ご飯も人間の残飯を食べていたら、寿命が短かった」という推測が成立します。

そのため、「犬を外で飼うと寿命が縮まる?」と言う説が浮上してきますが、それを裏付けるような科学的なデータは一切ないのが実情です。
とはいえ、やはり、室内飼いに比べて、外飼いには様々なリスクがあるのも事実です。

リスクが多い犬の外飼い

雪の日に外に繋がれている犬

外飼いの犬の寿命を縮めるリスクとはどんなことがあるのでしょうか。

逸走しても気づかない

鎖や丈夫なリードでしっかりと係留していても、雷などの大きな音に驚くなどして、パニックになり、そうなると人間の想像以上の力を出して、逸走してしまうことがあります。
家の外で飼っていたことで、犬が逸走していなくなっていたことに気づくのが遅れ、その分、捜索に時間が掛かってしまいます。
最悪の場合、道路に飛び出して交通事故にあったり、迷って家に帰ってこられないうちに、外で衰弱して死んでしまったりする恐れもあります。

天候、気候による犬の体への負担が大きい

雨風をよける屋根や、小屋があっても、外で暮らすと夏は暑いし、冬は寒いものです。
外で犬を飼うということは、当然、犬の体に大きな負担が掛かることになります。
季節によって気温や湿度が大きく変わる日本で、野宿生活が快適かどうか、長生きできる環境かどうか、簡単に想像できることですよね。

体調の悪化に気づきにくい

元気がなくてうなだれている犬

「室内飼い」の場合、ふだんよりも元気がない、歩き方がおかしい、食欲がない…など、愛犬の健康の変化に、飼い主さんが気付きやすいという点があります。
なぜなら、同じ生活空間にいれば、おのずとお互いが目に入りやすいためです。

外飼いの犬の場合、排泄物を片付けたり、食事を与えたりするときなどが、愛犬と飼い主さんが接触する時間です。もちろんそうじゃない場合もあるかと思いますが、生活環境が違うので、室内飼いのわんちゃんよりも接触する時間が少なくなってしまうのではないでしょうか。
そのときによほど注意してみていない限り、愛犬のほんの少しの体調の変化に気づきにくくなっているのではないでしょうか。
犬は、痛みに強い動物と言われていますので、病気の症状が出て、ぐったりしているときは、すでに病状がかなり進行している場合があります。
回復に時間が掛かるならまだマシで、最悪の場合、獣医さんに連れて行ったらすでに手遅れでどうすることもできない…と言ったことも起こりえます。
そういった点で、外飼いの犬は、室内飼いの犬よりも、寿命が短いと言えるかもしれません。

外飼いに向かない犬種 

カゴに入った小型犬たち

小型犬

体が小さいため、外の気温の変化に大きく体温が影響されます。
気温が低いと低体温のリスク、気温が高いと熱中症のリスクがあります。

寒冷地で産出された犬種

シベリアンハスキー、セントバーナード、グレートピレネーズなど、たとえ、生まれたのは日本でも、もともと産出された国は寒冷地である犬種は、寒さには強いけれど、暑さには弱いので、日本の夏の暑さは大きな負担になります。

足の短い犬

ダックスフンドや、コーギーなど、足の短い犬は、地面の温度の影響を受けやすく、外飼いには向きません。

長毛種の犬

ゴールデンリトリバー、ヨークシャーテリア、アメリカンコッカースパニエルなど、長毛種の犬種は、外飼いをすると体毛が汚れやすく、皮膚病を誘発してしまう場合もありますので、外飼いには向きません。

外飼いでも、寿命は縮まらないようにするためにできること

注意の看板を持ったパグ

体調の変化に気を配る

排泄物を処理するとき、食事を与えるとき、散歩に連れ出すときには、必ず愛犬の体調に気を配りましょう。
排泄物がいつもと違う形状をしていないか、ニオイ、形、内容物に異常はないかを観察します。
食事を与えるときも、ご飯を食べたらすぐに立ち去るのではなく、食べ始めの勢いがあるか、食欲があるのか、食べにくそうにしていないかを見守ります。

また、目の輝きはあるか、表情は冴えているか、体の一か所をやたらと舐めたり、搔いたりしていないかも、愛犬の姿を見るたびに必ずチェックしましょう。

しっかりと係留しておく

大型犬なら、檻などに入っている場合もあると思います。
施錠しているなら、鍵が外れないように日頃から整備しておきます。
鎖やリードで繋いでいるなら、錆びて強度が落ちていないか、擦れて切れやすくなっていないか、係留している柱やフックなどの金具も、損傷せずにしっかりと機能しているかを常日頃から、しっかりと確認します。
また、首輪もすっぽぬけたりしないように調節しておきます。

十分にコミュニケーションを取る

外飼いでも、飼い主の指示にしっかりと従うことを教えなければいけません。
むしろ、家の中でずっと一緒に暮らす室内犬よりも、外で飼育するのであれば、近隣の人に迷惑をかけないように、またより飼い主さんとの信頼関係を深くするためにも、しっかりとしたトレーニングをする必要があります。
ですから、一緒にいる時間は、しっかりと愛犬とコミュニケーションを取り、愛犬との信頼関係を築くことが大切です。

「愛されている」と犬が自信を持てるように接する

犬が孤独を感じてストレスを溜めることがないよう、一緒に過ごす時間は、愛犬のことを最優先で考えて、たくさん笑顔で話しかけて、「飼い主さんに愛されている」と犬が自信を持てるくらい、たくさんの愛情を注いであげてください。

まとめ

家のそばに繋がれて番犬をしている柴犬

現在の日本では、番犬や猟犬、牧羊犬などの使役のために犬を飼うことは、本当に稀なケースとなりました。
人間の寿命が、医学の進化と栄養状態の改善のために伸びたのと同時に、犬の寿命も飛躍的に伸びています。これは、人が犬との共存を望んだ結果だと言えます。

外飼いに不向きな犬種でなければ、常に健康に気を配り、愛犬が心地よく過ごせるように環境を整え、危険に晒されないように十分に注意して、なおかつ、しっかりと愛情を注げば、寿命は変わりないのではないでしょうか?

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