犬の前立腺がんについて 症状や原因、治療と予防法

【獣医師監修】犬の前立腺がんについて 症状や原因、治療と予防法

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犬の前立腺がんとはどのような病気なのでしょうか?早期発見や予防につなげられるよう、犬の前立腺がんの症状などを詳しくご紹介します。前立腺がんと診断された時、医療費はどのくらいかかるのか?末期の宣告を受けた時の残された時間は?飼い主さんがより良い選択ができるよう、予備知識を備えておきましょう。

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記事の監修

山口大学農学部獣医学科卒業。山口県内の複数の動物病院勤務を経て、ふくふく動物病院開業。得意分野は皮膚病です。飼い主さまとペットの笑顔につながる診療を心がけています。

犬の前立腺がんの症状

おしっこをする犬

犬の前立腺がんは初期症状が分かりづらく、かなり進行してから発見されることが多いです。未去勢で高齢犬の場合は排尿障害や排便障害、後ろ足をかばうように歩くなどの症状がでると前立腺疾患が疑われます。それぞれの前立腺がんの症状を詳しく見ていきましょう。

犬の前立腺がんが疑われる主な症状

  • 血尿
  • 失禁
  • 排尿の姿勢を繰り返すが排尿されない
  • 排便の姿勢を繰り返すが便が出ない
  • 便が少しずつしか出ず、苦しそうに力んでいる
  • 後ろ足が不自由そう、痛そうに歩く

血尿

犬の前立腺がんの症状で血尿は、排尿時だけでなく、床にポタポタとたれ落ちた血痕が見つかることも多いです。犬が完全に、外での排せつの場合は血尿の発見が遅れてしまいます。

失禁

犬の前立腺がんの症状で、尿の量はそれぞれ差があります。いつもはトイレが完ぺきにできるのに、間に合わず排尿してしまった、犬が寝起きに失禁してしまったとき、症状が現れます。

排尿の姿勢を繰り返すが排尿されない

犬の前立腺がんの症状で、完全に尿が出ない場合もあれば、少量の尿が出て止まる、残尿感があり、何度も少量の排尿を繰り返す、身震いをするといった症状が現れます。

排便の姿勢を繰り返すが便が出ない

犬に痛みがあり、排便のための力が入れられない、便意はあるものの便が出ないため、何度も排便姿勢を繰り返すといった症状が現れます。

便が少しずつしか出ず、苦しそうに力んでいる

犬の前立腺がんの症状で細い便が少量出る、力んでいるがひも状の便が少量やっと出てくる、といった症状が現れます。

後ろ足が不自由そう、痛そうに歩く

犬の前立腺がんの症状で、犬が後ろ足に何かついているのか?と感じるような足の運び方、引きずるような歩きかた、後ろ両足を同時に着くような歩き方、足の震えなどの症状がみられます。

さらに上記の症状に加えて犬の食欲がなくなる、ぐったりしている、体を丸めて動かない、下腹部を触られるのを嫌がる、などがあげられます。

犬の前立腺がんが進行すると全身に現れる症状 

  • 嘔吐
  • 下痢
  • ごはんを食べず水ばかり飲む
  • 排尿の姿勢を繰り返すが排尿されない
  • 排尿が増える
  • ぐったりと動かない
  • 呼吸が荒くなる
  • 睡眠不足
  • 体重減少
  • 腹部の張り
  • お腹や腰など触られるのを嫌がる
  • 怒りっぽくなる

犬の前立腺がんが進行してくると、嘔吐や下痢、ごはんを食べず水ばかり飲む、排尿が増える、ぐったりと動かない、呼吸が荒くなるといった症状に、睡眠不足、体重減少、腹部の張りと全身に症状がみられるようになってきます。

犬の前立腺がんが進行すると痛みを伴い、歩くことから、お腹や腰など触られるのを嫌がり、怒りっぽくなる、触られることが嫌になりさらに痛みで呼吸が荒くなる、など全身の症状が出てきます。

また、体の不調から犬が睡眠不足、不快感が重なって急に怒りっぽくなる、ぐったり生気がなくなるといった症状がでてしまいます。

犬の前立腺がんの原因

高齢の柴犬

犬の前立腺がんは早期発見が難しいですが、その原因もはっきりと解明されていません。ですが前立腺がん(悪性腫瘍)は、発見が遅れれば治療や根治が難しく、命にかかわる恐ろしい病気です。

考えられる犬の前立腺がんの原因

はっきりとした原因は解明されていないものの、考えられる犬の前立腺がんの原因としてあげられているものが複数あります。

  • 加齢によるホルモンバランスの乱れ
  • 免疫不全
  • 食事バランス

犬も年齢を重ねると免疫力の低下や、ホルモン分泌が減り、バランスを崩しやすくなります。免疫力の低下により、犬の体に現れる症状は前立腺疾患だけではありません。様々な犬の体の、変化の一部として前立腺がんの症状が少しずつ現れてくると、飼い主さんも発見が遅れてしまうのです。

また、早期に去勢を行うと前立腺の病気の発生率が下がるといわれています。しかし100%発生しないとは言えません。前立腺肥大の場合は去勢手術により、ホルモンの分泌がなくなると前立腺は縮小します。

直接的な原因としては解明されていませんが、免疫力低下に食事内容や、ストレスなども関係しています。犬に化学調味料をたくさん使った食事や、偏った食事を長年続けていると、高齢期になるにつれ自己免疫力の低下が早まってしまいます。

また、過度なストレスを強いられる環境で生きている犬は、自己免疫力が著しく低下し様々な病気を発症します。

犬の前立腺がんの症状は見逃してしまうことが多い

犬の前立腺がんの症状を見逃してしまう理由として次のことがあげられます。

高齢犬になって若いころより食欲や元気がなくなっている、加齢のための変化で病気ではないと飼い主が思ってしまうことや、庭に犬を「散歩にいってらっしゃい」と自由に放して排せつをさせ、外飼育で毎回の排尿のチェックができていない環境のであること

その他に、犬の排せつ習慣が、お散歩のときだけあり、尿の色が確認できない、犬に生まれつきの歩行障害や、股関節の疾患があり歩くのが嫌い、など、様々に見逃してしまうのです。

犬の健康管理で、もっとも分かりやすいのが排せつ物の確認です。排せつ行動(排せつをする前に見せる行動、クルクル回る、体をすくめるなど)の変化は、日々チェックしていないと少しの変化にも気が付くことができずに見逃してしまいます。

犬の前立腺がん発見時の多くの場合は、症状が現れてから病院へ行くことが多く、既にかなりの病状が進行してから発見となるケースがとても多いです。排泄状況の変化、歩き方が不自然などに気づけば早めに受診することをお勧めします。

犬の前立腺がんの治療法

獣医師と柴犬

犬の前立腺がんの治療選択と費用

犬の前立腺がんは明らかな症状が出ている場合、すでに病状が進行していることが多く、完治が難しい病気です。がん転移の確率が高く、外科的手術をしても完治が難しい病気の1つです。

  • 前立腺切除による治療費用…150,000~300,000円程度
    (術後6泊7日程度の入院の場合)
  • 放射線による治療費用…100,000~150,000円程度
    (放射線照射複数回の合計)
  • 投薬による治療費用…8,000~20,000円程度
    (1投薬につき)

前立腺切除による治療

犬の前立腺がんの治療方法として、前立腺の切除をする治療方法があります。悪い所を切除すれば再発の心配はなくなります。しかし前立腺は、排せつにも大きな役割を担う臓器の1つで、前立腺を切除するには前立腺内を通っている尿道を切断してつなぎなおす必要があります。そのため手術後の管理が難しいと言われています。

前立腺切除の費用は、150,000円~300,000円程度で、術後6泊7日程度の入院の場合の値段ですが、犬の大きさや入院日数によっても異なります。

放射線照射による治療

前立腺がんが発見されるのは、多くの場合高齢犬です。そのため手術を選択できない場合や、リスクを考えると化学療法の選択をされる飼い主さんも多くいます。

放射線治療は複数回行いますので治療費の合計は100,000円~150,000円、麻酔費用などを含み、犬の大きさによっては金額が異なります。

放射線治療の場合は、積極的な治療と緩和治療とで照射回数やスケジュールが異なります。犬の前立腺がんの進行状況や、多臓器への転移の有無によって、放射線治療の選択も難しい場合もあります。

投薬による治療

犬の前立腺がんの治療では、手術や化学療法の治療と並行して様々な薬の投薬があります。抗がん剤治療の費用は、1投薬につき8,000円~20,000円で、抗がん剤の種類は、犬の大きさによって金額が異なります。抗がん剤投与前には血液検査を必ず行いますので、その費用が追加になります。

抗生物質、消炎剤、痛み止め、ステロイドなど投薬費用は1種類1週間分で、2,000円~15,000円、前立腺がんの治療、症状に合わせて様々な薬が処方されます。

また、がんの進行によって体中に現れる様々な症状に対処するための投薬もあります。犬の大きさによって、同じ薬でも投薬量が変わりますので、金額が異なります。薬の種類によっても高額になることもあります。

犬の前立腺がんの特定や診断、検査の費用

様々な症状や定期検査によって疑われる場合に、病気の特定診断のため、検査が必要になります。犬の前立腺がんの治療について詳しくみていきましょう。

  • レントゲン検査費用(小型~中型犬)…4,000~15,000円程度
  • レントゲン検査費用(大型~超大型犬)…8,000~20,000円程度
  • 尿検査費用…2,500~5,000円程度
  • 血液検査費用…8,000~10,000円程度
  • 前立腺液検査費用…15,000~30,000円程度
  • 直腸検査、前立腺の触診検査費用…5,000~12,000円程度
  • 超音波、高エコー検査…8,000~25,000円程度

犬のレントゲン検査、CT検査、MRI検査

犬の前立腺がんの特定を行うため、多くの場合はレントゲン検査を含む様々な検査をして、CT検査やMRI検査までは行われないことが多いようです。しかし病院によっては、検査をすすめられる場合もあります。

CT検査やMRI検査は、すべての動物病院で受けられる検査ではないため、検査のため設備の整った病院を紹介されることがあります。費用はレントゲン検査と比べ高額になります。

CT検査やMRI検査は全身麻酔で行います。費用は約70000円前後になる病院が多いでしょう。予約制になりますので事前に確認が必要です。

撮影枚数や鎮静処置の有無によっても金額は異なります。

犬の尿検査、血液検査、前立腺液検査

犬の前立腺がん確定診断には、血液検査と前立腺液の検査はとても重要で、特定診断には欠かせない検査です。

尿検査費用は2,500円~5,000円、血液検査費用は5,000円~8,000円、前立腺液検査費用 15,000円~30,000円、初診・再診料を含む平均的な費用です。血液検査の項目は検査機関、地域によって金額は異なります。

犬の直腸検査、前立腺の触診

肥大した犬の前立腺は、直腸検査による前立腺の触診なども確定診断に行われることがあります。

直腸検査、前立腺の触診検査費用は5,000円~12,000円、初診・再診料を含む平均的な費用です。その他の検査で特定診断をする場合や、犬によって触診が難しい場合は、とくに最重要で行われる検査ではありません。

犬の超音波、高エコー検査

犬の超音波検査では、肥大した前立腺の確認をします。また超音波でガイドを取りながら生検(バイオプシー)を行い、前立腺疾患かの診断特定ができます。レントゲン検査とは違い、超音波検査は臓器の状態が動きとともにリアルタイムで確認できます。

超音波、高エコー検査初診・再診料を含む平均的な費用は、8,000円~25,000円です。

犬の前立腺がん診断確定のため、検査費用の総額は、約35,000円~120,000円程度です。もちろん犬の、前立腺疾患の特定治療を始めるため、初診・再診料を含む、レントゲン検査、血液検査、超音波検査など、一般的な費用の平均総額です。

病院によっては犬の前立腺がんなど、より詳細な検査をして細胞を検査機関に送る検査が必要になることもあります。かかりつけの病院設備によっては、十分な検査ができない場合もありますので金額は異なります。

前立腺がん治療の難しさと効果

犬の前立腺がんと診断されて末期だった場合、多臓器への転移も可能性も有り、緩和治療などを行って余命は3ヶ月~半年未満と言われています。早期発見であった場合でも、手術を行い完全な完治は難しく、術後の管理も難しいことから、余命1年程度と宣告を受けることもあります。

進行した前立腺がんの場合、前立腺の切除と一緒に、周辺の臓器の摘出も必要になる場合があります。犬の尿道、生殖器を一緒に摘出した場合に、その後尿管確保の手術などが必要になり、その後ずっとオムツを着ける介護生活となります。

犬の前立腺がん手術を受け、それでも多臓器に転移がある場合は、抗がん剤治療が必要となり、転移したがんの経過観察も必要となります。犬の前立腺がんは完治が難しく、内科的治療では再発の可能性もあります。有効な治療方法も確立されていないため、それぞれの症状や状態に合わせた治療となります。

また症状によっては、対症療法となり、飼い主さんの不安が大きくなることもあります。

犬の前立腺がんの予防法

健康診断を受ける犬

犬の前立腺がん、前立腺疾患は、適切な予防方法というものも解明されておらず、予防の手段としては早期の去勢手術が有力でしょう。

前立腺疾患には、犬の去勢手術が有効な予防方法とも考えられていますが、100%の予防ではありません。去勢済みの犬が前立腺がんを患うこともありますが去勢しない場合に比べると確率は低くなるでしょう。直接的な原因が分からないので100%の予防方法はありませんが、早期発見が犬の命を守ることにつながります。

定期検診は前立腺がんの予防と早期発見

犬の前立腺がんの原因として、加齢による免疫力低下や、ホルモンバランスの変化が考えられています。犬が高齢になると前立腺がんだけでなく、目に見えない内臓の異常も現れてきます。そんな時、犬の健康を守るために必要なのが定期健診です。

若いうちから定期的に検診をうけ、体の状態やデータを把握しておくと、小さな変化や異常にもすぐに気が付きます。とくに犬が高齢期に入ったら定期検診は必ず受けるようにしましょう。

犬の前立腺がんの発症率は低い

犬の前立腺疾患は大きくわけて4つあります。前立腺とはオス犬の膀胱の下に位置し、生殖器の一部の臓器で男性ホルモンの影響を大きく受けています。また、排尿補助としても大きな役割があるため、前立腺疾患の症状は排尿や性器、下腹部などに現れます。

  • 良性前立腺肥大…良性ではあるが前立腺組織が肥大する疾患
  • 前立腺嚢胞…前立腺の中でたくさんの嚢胞が形成され前立腺が肥大する疾患
  • 前立腺膿瘍…前立腺の炎症により前立腺内に膿瘍が形成されることで、ズキズキと痛みが出る疾患
  • 前立腺がん…前立腺にできる悪性腫瘍、進行が早く転移のリスクも高い疾患

これら前立腺疾患全体のうち、前立腺がんと診断される犬は、5%~8%程度といわれています。つまり、犬が悪性の前立腺がんになる確率はそれほど高いものではないと考えられています。

まとめ

年老いたゴールデンレトリバー

犬の前立腺がんは、かかる確率が高くないものの、予防方法や有効な治療方法も確立されてなくとても恐ろしい病気です。

犬が高齢になってくると、若いころのような食欲も落ち着き、行動も落ち着いてのんびりしてきます。排せつの異常や食欲など、小さな変化になかなか気が付くことができず、前立腺がんが進行してしまうのはとても怖いです。

どんなに犬の健康に気を付けていても病気になってしまうこともあります。誰のせいでもありませんが、できれば早く気が付いて、苦しい思いをさせない治療を選択してあげたいものです。犬の前立腺がんは去勢済み、未去勢にかかわらず、オス犬にはリスクがあることを忘れずに、定期的な健康診断を受けさせてあげましょう。

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