老犬介護に「完璧」を求めてはいけない。

老犬介護に「完璧」を求めてはいけない。

若く元気だった愛犬も10年も過ぎれば老犬となります。介護が必要になった時、自分ができる限りの事をしてあげたいと強く思い、完璧な介護を目指しそれにより自分を追い詰めてしまう事もあります。

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記事の監修

日本獣医生命科学大学卒業。北海道の大学病院で獣医師として勤務。一般診療をメインに行いながら、大学にて麻酔の研究も並行して行う。「動物と飼い主さんに寄り添った治療」を目標に掲げ、日々診療に励んでいます。

介護に完璧は求めない。

くつろいでいる老犬

よく老犬の飼い主さんで、「私がやってあげなければ!ちゃんとしなければ」と思い込み自分を追い込む飼い主さんがいます。しかし、それは間違いです。

私達は犬と話せません。私達がいいと思ってやっている事が、それを犬が望んでいるとは限りません。じゃあ、どうしてあげれば良いのか。それは飼い主さん自身が介護を楽しむこと。それが愛犬の満足に繋がると思います。

無理せず時にはサボる事も大切。

ソファーで寝ている老犬

どんなに介護を頑張っていた飼い主さんでも、最後に病院に挨拶に来られる時は「もっといろいろしてあげたかった」「これで良かったのか」そう自問自答される方が多くいます。

そんな時どう答えるべきかいつも悩みます。私達からしたら十分すぎるほど介護されていたのに、それでも最後は後悔が残ってしまいます。

答えがない難しさ。それが介護だと思います。もし正解があるのなら犬にとっての幸せは、飼い主さんと過ごす穏やかで暖かい時間です。無理をせず、苦しい時には誰かに頼る事も必要です。それに介護の時間はどれだけ続くかわかりません。

すぐにお別れが来る事もあるし、一年以上続く事もあります。「みんなやっていることだから頑張らないと」ではなく、体の力を抜いて時にはサボる事も大事です。

例えば、薬を飲まない日もあります。「何で飲まないの!」ではなく「飲みたくない日もあるよね。また後で頑張ろうね」でいいと思います。

どうしても無理なら、かかりつけの病院や他の飼い主さんに相談してみて下さい。飲みやすい薬に変更出来る事もありますし、飲みやすくなるよう液体にしたり粉にしたり方法はあります。1人で抱え込まず誰かに相談してみて下さい。

悲しい顔は愛犬にはみせないであげて下さい。

笑顔の女性と犬

犬は飼い主さんの事をよくみています。飼い主さんが悲しい顔をしていると犬は悲しくなります。それが自分のせいだとわかると元気がなくなり生きる力を奪います。偶然かもしれませんが、笑って介護している飼い主さんのところのワンちゃんは長生きしている気がします。

確かにいつか来る別れを考えると、涙が出てきます。だからと言って泣いてばかりではいけません。ずっと私達に笑顔をくれた愛犬の為に悲しい顔をみせない努力はしてあげて欲しいと思います。

当たり前の日常に喜びを。たくさん褒めてあげて下さい。

例えば

  • ご飯食べなかった子がご飯をしっかり食べてくれた。
  • 目も見えず、耳も遠くなった愛犬を呼んだらこっちに来てくれた。
  • 薬も嫌がらず飲んでくれた。
  • 普段歩くのがやっとの子がお散歩で嬉しそうに歩いてくれた。
  • スヤスヤと安心して眠る姿をみれた。

そんな当たり前の日常に喜びを感じる事が出来るのは、老犬ならではの特典です。たくさん声を掛けて褒めてあげてください。聞こえなくても見えなくても、その雰囲気を察するのか。

ご飯を少ししか食べない子に褒めながら食べさせると完食してくれる事がよくあります。ご飯を食べるという当たり前の日常が、いなくなって思い出す一番の思い出になったりします。そんな毎日を大切に笑って過ごしてあげて下さい。

最後に

手を握る犬と人

実は我が家にも15歳の老犬がいます。目も見えず、耳も遠く、足も弱くなり歩くのもやっとです。多くの病気を抱え毎日の投薬は欠かせません。時々何もないのに吠えたり、部屋の隅に入り込み痴呆の症状も出てきています。この記事を書く事で私自身も自分に言い聞かせている部分もあります。

飼い主さんとの会話で、我が家の老犬の話をすると「飼い主さんが動物看護師さんだったら、病気のケアや介護もちゃんとしてあげられるからワンちゃんも幸せですね」とおっしゃる方もいますが、はっきり言って私はそんな立派な飼い主ではありません。

仕事から疲れて帰って、床や布団がおしっこやウンチまみれになっていると、老犬だから仕方ないと思っても、ため息をついてしまったり怒ってしまう事もあります。自己嫌悪になる事もよくあります。

そんな時は家族や友人、仕事場の仲間と話す事で、少し気持ちも落ち着き「また明日から頑張ればいいか!」という気持ちになります。そして次の日の朝、横でスヤスヤと眠る愛犬をみてまた頑張れる。それが私の日常です。誰も完璧な飼い主さんはいません。無理をせず、時にはサボる。それが長く老犬を介護することのコツだと思います。

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ユーザーのコメント

  • 投稿者

    40代 女性 ひまわり

    現在、16才のミニチュアダックスを介護中です。
    介護が必要になって、1年半が経ちます。
    最初は夜中に鳴かれて眠れない日ばかりで、ノイローゼになりそうなこともありました。
    主人はまったくノータッチで、うるさい、と怒るだけです。
    私一人で介護するしかなく、他に3匹のワンコもいたので毎日が忙しく仕事に介護に元気なワンコの世話で、ヘトヘトでした。
    倒れそうになることがしばしばあり、寝不足と疲れで笑顔も消えました。

    ある日、なぜ介護中のワンコが鳴いているか気付くことができました。

    トイレがしたい。水が飲みたい。体の向きを代えたい。お腹が空いた。寂しい。動きたい。

    ワンコは機械ではありません。寝る前にトイレをさせたからといって、トイレは夜中にだって行きたくなることもあります。決まった時間にトイレをするわけではありませんよね。

    それからは、穏やかな目で見ることができました。イライラすることもなくなりました。
    だって、もし自分が動けなくなったら、動けないもどかしさや、何かしてほしい時は声をあげますよね。

    そしたら、夜鳴きもほとんどなくなりました。

    昼間は誰かがいると、訴えるために鳴きます。主人はいまだにうるさい、と怒りますが、その度に何かしてほしいんだよ、自分が動けなかったら同じでしょ、と伝えます。

    寝たきりになってすぐは、もう長くない、と言われていましたが、言われ続けて1年半。
    仕事場にも理解をもらい、家に頻繁に戻る時間も作らせてもらいました。
    疲れた時は無理せず仕事をズル休みして、みんなでだらだら寝て過ごします。

    あといつまで頑張ってくれるかわからないけど、生きたい、と言っている気がします。
    今まで元気な時は、決して良い飼い主ではありませんでしたが、今はその時間を取り戻す時だと思っています。

    家族の協力がなくても、自分の気持ちひとつで楽になりました。
  • 投稿者

    50代以上 女性 匿名

    介護が終わった1月 旅立ってしまいました 寂しくて まだ忘れられずにいます
    もっと楽しんで介護すればよかったです
    介護中に読みたかったです
    頑張って下さいね〜
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