深刻な「老老介護」問題とは
ご存知の通り、日本は高齢化社会です。
それは今後益々深刻化していく事が予想されます。
そして今、寿命が伸びているのはペットたちも同じなのです。
昔の飼い犬は、人間の食べ残したごはんを与えられ、外で飼われることが普通でした。
それに比べ現在は、犬の健康のために手作りごはんを作ったり、無添加のおやつを与えたり、毎年の注射だけでなく、フィラリア予防の薬を飲ませることも普通の事として認識されてきています。
30~40年前はフィラリアなどの予防法が普及していない時代で、10歳以上の犬は珍しく、7~8歳で長生きしたといわれていたそうです。
そして今、人の高齢化とペットの寿命が伸びていることで問題となっているのが「ペットの老老介護」です。
老老介護とは、高齢者が高齢者の介護をすることを指す言葉ですが、ペットの老老介護とは、読んで字の如く高齢の飼い主が高齢のペットを介護することを指します。
子供たちが自立し、家から出て行った後に寂しくないようにとペットを飼うことを勧める場面はよくみる光景ですが、では、高齢でペットを飼った飼い主が、犬や猫を世話することは簡単なことなのでしょうか?
ここで「ペットの老老介護」問題を抱えていた、ある女性の話をご紹介します。
もう死ぬしかないと考えた…
今現在は関東の高齢者施設で暮らすその女性は、以前マンションで一人暮らしをしていたときに、知り合いの家で生まれた子犬を譲り受けたそうです。
その当時その女性は80歳を超えており、旦那様を20年以上前に無くされて寂しかったのでしょう、その子犬のことを実の子供以上にかわいがっていたそうです。
しかし、そんな愛犬も歳をとり、4年程前から行動に異変が起き始めまたそうです。
それまではちゃんとできていたおしっこを失敗したり、同じところをずっと回り続けたり、ついには夜鳴きまでし始めました。
夜鳴きをし始めると、叱っても口を押えても鳴きやまず、近所迷惑を考えわんちゃんを連れて外へ出ていたそうです。
それでも夜鳴きは止まらず、外でも「うるさい」と怒声を浴びながら、夜鳴きの止まる朝方まで外で過ごしていました。
このことを獣医さんに相談すると、「認知症になると昼夜逆転してしまうことがあるため、夜鳴きをしている可能性がある」と言われたそうです。
そして認知症の薬として、精神安定剤を渡されました。
飼い主の女性も高齢ですから、そんな夜中の散歩を続けることで飼い主自身が健康的にも精神的にも参ってしまい、愛犬と共に死んでしまおうかと考えた日もあったと言います。
さらに、近所迷惑に悩み保健所に引き取ってもらうことも考えたそうです。
しかし、そんな可哀想なことはできないと悩んだ末に出した答えは、声帯除去手術でした。
整体を除去しても全く吠えられなくなるわけではありませんが、吠え声はしゃがれた声になりあまり響かなくなります。
その手術の翌年、一人暮らしを心配した娘さんから勧められ、ペット同居可の高齢者施設に引っ越しました。
愛犬の声帯除去手術をしていなければ、恐らく引っ越せなかったことでしょう。
飼い主の女性は「ママと一緒にいれれば声なんていらないよね。」と、半ば自分に言い聞かせるように愛犬に問いかけたそうです。
きっとその女性は手術をすることは本心ではなかったのでしょうね。
あなたはこの話を聞いて、このわんちゃんことを可哀想と思いますか?
ペットが長生きすることで発生する身体的リスクと対策
ペットが長生きすることは共に過ごす時間が長くなり、飼い主としては当然嬉しいことですが、高齢による病気などのリスクは考えなくてはいけません。
そして飼い主が高齢である場合は、更に多くのリスクが発生します。
高齢者がペットを飼う時の懸念点
長生きすすればするほど、高額な医療費がかかる『がん』や『心臓病』などのリスクが高まります。
年金生活で自分たちの暮らしすら安心できない状態であった場合、果たして犬の治療費まで払い続けることができるでしょうか。
歩くことができず寝たきりになってしまった場合は、排泄の手助けや床ずれ防止のために数時間ごとに寝方を変えてあげなくてはいけません。
小型犬であればまだしも、中型犬や大型犬の場合は移動させるだけでも一苦労です。体力的にも辛くなってしまいます。
そんな介護が必要なペットを残して外出することも難しくなるため、自分自身のための時間もなくなります。
犬の介護は人と同じくずっと見て世話する必要があります。
それを理解し、できる覚悟と余裕がなければ犬を迎え入れることはできません。
犬の認知症
介護が必要になった犬の中でも、認知症になってしまった犬の介護は特に大変です。
犬も猫も認知症になることがあり、特に柴犬がなりやすいといわれています。
犬の認知症は、まだ効果的な治療法がなく、正確な診断が難しいのが現状です。
認知症の検査のためにCTやMRIを撮るには、麻酔をかける必要がありますが、老犬の場合だと麻酔によって命を落とす危険性があるため、検査が難しいという理由があります。
さらに、研究のために亡くなったペットを解剖することを了承する飼い主はほとんどいないため、研究が進んでいないのです。
もしあなたの愛犬が高齢になり、下記のような症状が出たら認知症の可能性があるため、すぐに獣医さんに相談しましょう。
- 夜鳴き
- 同じ場所を何度も回る
- 歩いているとき方向感覚を失っている
- 食欲が極端に増える
- 飼い主が呼んでも反応しない
- 昼夜逆転している様子がある
- 狭い場所を通ろうとすると引っかかる
- 失禁してしまう
- 寝ている時間が増える、ぼーっとする時間が多い
老犬の健康対策
人が歳を取ることで起きる症状は、犬にも起きます。
愛犬が歳をとっても快適な生活を送らせてあげたいなら、そのための対策が必要です。
歩行補助ハーネス
脚腰が弱ってしまい歩くことが困難な子のための補助道具です。
前脚用や胴体用、後ろ脚用の3パターンがあり、弱っている部分に合わせて選択できます。
補助ハーネスを愛犬に装着して、ハーネスの取ってを持ち上げるだけで歩行の補助ができ、散歩が困難な子でも無理なく歩くことができます。
散歩は犬たちの健康の元です。
歩くことが困難になってもできるだけ外の空気を吸わせてあげるようにして、気分転換させてあげましょう。
床ずれ予防マット
寝たきりになってしまった時に注意したいのが、床ずれです。
腰や肩、前脚や後ろ脚の関節部分などの、圧力がかかりやすい部分に発生しやすいです。
床ずれが起きた部分だけをクッションなどで保護したとしても、その部分が圧迫され血流が悪くなったり、別の場所に床ずれが発生したりすることがあります。
圧力が分散されるような素材のものを使用すると良いでしょう。
床ずれを防止するマットは種類豊富に販売されているので、愛犬に合った素材のものを選んであげましょう。
徘徊対策
認知症になると同じところをぐるぐる回ったり、狭い場所に挟まってしまったりします。
徘徊をしてケガをしないためにも、簡易的なサークルを用意するべきでしょう。
当たってもケガをしないような柔らかい素材を選んでください。
お風呂マットなどで代用することも可能です。
最近では介護用サークルも販売されているようです。
まとめ
老老介護は人の間だけで起きている問題ではありません。
人と犬との間でも実際に起きている問題です。
最近では保護犬譲渡の場合に、「70歳以上ではないこと」などの条件が記載されていることがほとんどです。
「喜ぶから」「一人だと淋しそうだから」という理由だけで、高齢の方にペットを飼育することを勧めるのは無責任なことです。
家族が増えることに対して、経済的、体力的、精神的に問題がないか確認して、最期まで世話できる覚悟があるか自分自身に問いかけてから迎え入れて欲しいです。
そして、ペットの介護については、全ての飼い主に知っておいて欲しいことです。
考えたくないことだとは思いますが、きちんと向き合って愛犬の介護について今から考えておきましょう。
ユーザーのコメント
50代以上 女性 匿名
実家の両親が家の中でチワワを飼っています。(80代の老父母、それぞれ要支援と要介護の認定)年々体が弱り、可愛がってきたチワワの世話が限界です。
主に世話し可愛がってきた母が横になっている時間が長くなりました。このようなケースではどのようにするのがいいのでしょうか。