老犬が起き上がれない原因とは?介護を楽にする対処法や寝たきり対策

老犬が起き上がれない原因とは?介護を楽にする対処法や寝たきり対策

老犬が突然起き上がれない時は、できるだけ早めに動物病院を受診することが大切です。この記事では、老犬が起き上がれない原因と、寝たきりになった時に知っておきたい対処法についてお伝えします。

老犬が自力で起き上がれない原因 

ベッドから見てる犬

老犬が自力で起き上がれない原因には、老化による筋力や体力の低下の場合と、病気による場合があります。

老化による筋力低下は少しずつ進むため、飼い主は変化になかなか気づけません。病気の進行に気づかず突然起き上がれなくなり、緊急治療になったり、急速に寝たきりになったりすることもあります。

普段から老犬の行動や姿勢、表情にも気を配り、行動の変化をよく観察しておきましょう。そのためには、かかりつけの動物病院を探しておくこと、日常的に動物病院で健康チェックをしておくことをおすすめします。 

老化による筋力や体力の低下 

老犬が10歳から12歳の高齢期になると、次のような変化があります。

  • 散歩中に立ち止まることが増える
  • 階段を上がれなくなる
  • よく眠るようになる
  • 歩く速度や立ち上がりが遅くなる
  • お尻が下がる
  • 食事を座って食べ始める
  • 排泄の際にかがむ姿勢がとれずにふらつく
  • 以前ほどおもちゃで遊ばなくなる
  • 食事量が減る

老化による筋力低下は、まず後ろ足から現れます。後ろ足の筋力低下が進むと、立ち上がりが困難になり、次に、支えれば立てるが数歩で行き倒れてしまうような状態になります。

そして徐々に前足にも力が入らなくなると、自力で立ち上がれなくなり、寝たきりになってしまいます。

骨や関節の病気による痛み 

老犬が起き上がれなくなる原因の一つに、骨や関節の病気があります。代表的な病気は、変形性関節症です。

変形性関節症になると、荷重のかかりやすいひじ関節、股関節、ひざ関節等に痛みを伴います。足をひきずって歩いたり、関節が腫れたり、変形したりする慢性的な病気です。

痛みのある関節を飼い主が触ろうとすると、唸ったり怒ったりすることがあります。

完治はしませんが、早めに治療を始めることで、痛みと炎症を緩和し、病気の進行を遅らせることができます。

脳神経系の異常による運動失調や麻痺 

突然起き上がれなくなる脳神経系の病気には、てんかん発作を起こす脳腫瘍があります。また、徐々に進行する病気には変形性脊髄症、椎間板ヘルニアがあります。

てんかん発作では、突然四肢を硬直させて倒れ、痙攣を起こします。発作は2〜3分程度で収まることが多いので、飼い主は落ち着いて発作がおさまるまで見守りましょう。発作が落ち着いたら速やかに動物病院を受診しましょう。

変形性脊髄症では、後ろ足の麻痺のために、足を引きずって歩くようになります。徐々に進行し、前足まで麻痺が広がると起き上がれなくなります。痛みは伴いませんが、最終的には呼吸困難になり死にいたる病気です。

椎間板ヘルニアでは、背中の痛みや足の麻痺といった症状があるため、抱っこした時にキャンと鳴いたり、足元がふらついたり、引きずるような歩き方になります。胴長の犬種で多くみられ、肥満を解消すると、症状の緩和に効果的です。

平衡感覚の異常 

老犬に多い突発性前庭疾患は、平衡感覚を失ってしまう病気で、ふらつきや首を傾けたように頭が斜めになる斜頸、眼球が意思とは関係なく小刻みに揺れる眼振、一方向にぐるぐる回ってしまう旋回などの神経症状があります。

立ち上がれずふらついて転倒するなど、二次的に発生しやすい怪我に注意が必要です。

老犬が起き上がれないときに観察すべきポイント 

女性と犬

老犬が突然起き上がれないと、飼い主はパニックになってしまうかもしれませんが、まずは落ち着いて観察しましょう。

可能であれば、起き上がれない様子を動画で撮影したり、様子をメモしておくと、獣医師への説明に役立ち、病気の早期診断につながります。

大切なのは、できるだけ早く動物病院を受診することです。病気が関わっていることが多いので、獣医師に原因を見つけてもらいましょう。

老犬になると、症状に気づいていなくても病気が進行している場合があります。普段からかかりつけの動物病院で定期的に健康チェックを行っておくと安心です。また、急な体調変化に備えて、救急病院を調べておくこともおすすめします。

以下に、老犬が起き上がれないときに観察すべきポイントをまとめました。

病気が原因ではないかを疑う際の目安にすべき症状や行動の変化 

  • 徐々にではなく、急に立てなくなった
  • 歩行はできてもまっすぐ歩けない
  • 斜頸や眼振が見られる
  • 痛みが強く、触ると唸ったり怒ったりする
  • 元気がなく食欲もない
  • 呼びかけに反応せず、ぼーっとしている

老犬は若い頃に比べて、歩行がゆっくりになり、立ち上がりに時間がかかるようになります。初期症状として麻痺があったとしても、高齢だからと判断してしまい見逃してしまうことも多いです。

徐々に病気が進行し、痛みを感じるようになると、痛みがあることを隠そうとして、飼い主に唸ったり怒ったりすることもありますので、老犬の性格の変化も見逃さないようにしましょう。

老犬が自力で起き上がれない時の対処法 

おむつ犬

自力で起き上がれなくても歩行自体はなんとかできる場合は、老犬の起き上がりや踏ん張りを補助することができる犬用の介助グッズ・介護グッズがおすすめです。

起き上がりや踏ん張りを補助する犬用介助グッズ

  • 歩行補助ハーネス

持ち手付きのベスト型ハーネスと下半身を支える後足用ハーネスがあり、その両方を組み合わせて使うこともできます。老犬の起き上がりと歩行補助ができます。

持ち手を使って老犬の体重を支えるので、楽な歩行姿勢が保てます。飼い主が補助をして散歩を続けてあげることで、老犬の筋力低下を防止します。

  • 滑り止め靴下

足に麻痺があったり、歩行時にふらつきが見られる場合、滑り止め靴下を利用すれば安心です。踏ん張って起き上がる時にも滑らず、怪我防止にもなります。

足の関節痛のある老犬には、足をなめたり噛んだりするのを予防できます。

老犬が立ち上がった後に転んで助けを求めて鳴く場合の対処方法

  • 全身を支えて立位をキープできる歩行器

飼い主がつきっきりでいられない時に便利なのが、老犬を立位をキープできる歩行器です。
ハーネスではつきっきりで補助してあげる必要がありますが、歩行器にのせることで飼い主のストレスも軽減できます。

老犬の足の状態にもよりますが、立った状態でいられることで、歩行補助やリハビリだけでなく、老犬の歩きたい気持ちに寄り添うこともできます。寝たきり予防にも効果的です。

  • 姿勢サポートクッション

老犬を姿勢サポートクッションにのせてあげることで、飼い主の負担も減ります。

姿勢サポートクッションは動物病院や老犬の介護現場でも利用されています。食事の際に利用すれば、誤嚥のリスクも減り、介助するストレスも軽減できます。

立位姿勢でいられることで老犬の気分転換や床ずれの防止もでき、足を床につけることにより四肢のリハビリにも効果的です。

老犬が起き上がりやすいベッドに変更する

軽度の筋力低下であれば、柔らかいベッドよりも、高反発素材などでできた固めのベッドに変えるだけで、寝起きの老犬が自力で起き上がれるようになります。

低反発のベッドは起き上がる時に体が沈み込んでしまい、起き上がれずにもがいてしまうことがあります。

  • 高反発マットレス

踏ん張れば立ち上がれる時期におすすめなのは、高反発マットレスです。体圧分散機能をもつマットレスであれば、床ずれ防止にもなります。

室内環境を見直して滑りにくい床にする

  • タイルカーペット

老犬が滑りにくく、起き上がり踏ん張りやすい床材にはタイルカーペットがおすすめです。クッション性も高く、耐久性もあり、汚れた箇所だけを洗うこともできます。リフォームの必要がなく手軽に準備できます。

  • コルクマット

コルクは滑りにくく摩擦に強いため、しっかりとした歩行感が得られます。老犬の足腰への負担を軽減し、グリップが効くため踏ん張る力のサポートにもなります。

ジョイント式のコルクマットを使えば、交換することで清潔を保つことができます。

  • クッションフロア

クッションフロアは動物病院でも使われていることが多く、衝撃を吸収し、体への負担が少なく、老犬が足を踏ん張りやすい床材です。張り替えが必要なため、タイルカーペットやコルクマットのような手軽さはありませんが、水や汚れにも強く、さっと拭き掃除するだけで良いためメンテナンスが楽です。

散歩や筋トレで寝たきりを防ぐ

老犬は自力で立ち上がれなくなると、歩きたがらなくなることが増えます。しかし、運動をやめてしまうと筋力はどんどん低下して、関節や靭帯、筋肉が硬くなり、あっという間に寝たきりになってしまいます。

老犬のQOL(生活の質)を維持してあげるためにも、無理のない範囲で散歩に連れて行ってあげましょう。

老犬に散歩をさせるメリット

  • 脳が刺激されて認知症対策になる
  • 昼夜逆転や夜泣き対策になる
  • 体重管理に役立ち、関節への負担を減らす
  • 飼い主も一緒に気分転換できる

老犬が鳴いてしまう時は、身体に痛みがあったり、ベッドが不快であったり、認知機能の低下で不安を感じていると考えられます。

散歩やストレッチ、筋トレの際に身体をさわって声をかけてあげると不安を取り除きストレスを減らすことができます。

室内でできるストレッチ

老犬は寝ている時間が長く、筋肉が硬くなりがちです。歩きたがらない時や、雨で散歩に行けない時には、室内で足の関節をゆっくり曲げ伸ばしするストレッチをしてあげましょう。散歩前にストレッチすると怪我の予防にもなりおすすめです。

筋トレ

起き上がりが難しくなった老犬には介助用ハーネスを使って、いつでもサポートできるようにして自力で歩かせてあげましょう。ゆるやかな坂を上ったり、砂浜や芝生を歩いたりすると下半身の筋トレに効果的です。

他にも、「おすわり」「まて」「ふせ」をさせるのも筋トレになります。食事やおやつ、遊びの時間に取り入れてみましょう。

老犬が起き上がれず寝たきりになった時の対策

スプーンと犬

老犬が自力で起き上がれないだけでなく、歩行もできずに寝たきりになってしまった場合は、介護が必要になります。

老犬の介護が始まると、飼い主自身の生活を変えなければならないため、ストレスを感じてしまうかもしれません。老犬介護に対応しているデイケアサービスや、訪問シッターサービスについて調べておき、上手に利用しましょう。

寝たきりになった老犬に対し、QOL(生活の質)を保つためにしてあげられることや、飼い主が日常生活で注意しておくべきことをまとめました。

床ずれ防止対策の体位変換

床ずれ防止のためには、2〜3時間ごとに寝返りを打たせてあげるとよいとされています。

しかし、一日中付き添うことは難しいため、マットレスの上で、老犬が上体を少し起こした姿勢でいられる大きめのクッションを使うと身体の負担が少なく、床ずれ防止になります。

食事の介助を行う

口から食べられなくなると、臓器や各種機能の低下が早まります。また、食欲がなくなると、食べ物の好みが変わったり、すぐに飽きてしまったりします。

寝たきりになっても、食事の際は上体を起こしてできるだけ自分で食べられるようにしてあげましょう。自分で食べられる時期はピューレ状、食事を口に入れて食べさせてあげる時期はなめらかなムース状のものがおすすめです。

排泄の介助を行う

後ろ足の筋力低下とともに尿漏れや排便の失敗が増えます。立って排泄していたころの姿勢になるように介助したり、マッサージで排泄を促してあげましょう。また、おむつを利用する場合は、排泄後に速やかに交換し、清潔に保つことも大切です。

排泄が困難になることは、老犬自身もストレスを感じます。失敗を怒らずに、寄り添ってあげましょう。

マッサージやストレッチで関節や筋肉をほぐす

マッサージやストレッチで老犬を触ってあげるメリットはたくさんあります。

  • 関節の動く範囲を維持できる
  • コリをほぐして痛みを和らげる
  • 床ずれ防止になる
  • 安心してよく眠れる

老犬にアイコンタクト、声がけをしながらゆっくり触ってあげましょう。血行促進やツボ刺激ができる肉球マッサージは、寝たきりのままできるのでおすすめです。肉球が乾燥している時は白色ワセリンを塗ってあげましょう。

留守番は短時間に留める

老犬を留守番させるのは心配です。それでも留守番をさせないといけない時は、できるだけ短時間に留め、寝たきりの犬が快適な環境(温度、湿度、床ずれ防止等)で過ごせるように整えてあげましょう。

心配な場合は、留守中の老犬の状態がわかるモニターカメラを設置したり、老犬介護に対応しているデイケアサービス、訪問ペットシッターサービスを利用しましょう。

まとめ

ベッドで伏せる犬

老犬が起き上がれなくなることは珍しいことではありません。

老犬が起き上がれなくなった時や介護が必要になった時、病気や介護の知識を持っていると安心です。また、老犬は寝たきりになってしまうまでが想像以上に早いと知っておくと、心の準備ができます。

そのために、普段から動物病院で定期的に健康チェックをし、老犬の体調変化をよく観察しておきましょう。病気の早期発見により、老犬との時間を増やし、より親密なコミュニケーションができるかもしれません。

老犬が元気な頃のQOLを維持し、幸せに生きられるように寄り添ってあげられるといいですね。

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