犬の老衰 その症状と必要な介護について

犬の老衰 その症状と必要な介護について

老衰とは加齢により心身の能力が衰えることです。今は若く元気なワンコもやがては訪れるであろう避けては通れない道。老衰期を迎えた犬たちに私たちができる最善のケアとは何か?犬の老衰と介護について考えます。

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記事の監修

  • 獣医師
  • 平松育子
  • (AEAJ認定アロマテラピーインストラクター・ペットライター )

獣医師・AEAJ認定アロマテラピーインストラクター・ペットライター
山口大学農学部獣医学科(現:共同獣医学部)卒業。2006年3月~2023年3月 有限会社ふくふく動物病院 取締役・院長。ジェネラリストですが、得意分野は皮膚疾患です。
獣医師歴26年(2023年4月現在)の経験を活かし、ペットの病気やペットと楽しむアロマに関する情報をお届けします。

犬の老衰について

犬種や体型、生活環境によっても異なりますが一般的に老衰は、小・中型犬であれば7歳頃から、大型犬であれば5~6歳頃から徐々に始まります。そして小・中型犬では10歳を超えたあたりから、大型犬ならば7歳ごろから衰えが加速していくと言われています。この衰えは見た目、骨格、脳など様々な部位にあらわれ、心身の機能の衰えは行動にも大きく影響していくことになります。

犬の老衰によりあらわれる様々なサインとは?

こちらでは見た目、行動、体内にわけ老衰によりあらわれる症状についてまとめてみました

寝そべるビーグル

見た目の変化
  • 顔(目、鼻、口まわり)から白髪がでてきた
  • 白内障による黒眼の白濁(眼の奥が白く濁って見える)
  • 歯周病により口の中や息が匂う
  • 様々な部位にできるイボやシミ
  • 基礎代謝の低下による肥満など体型の変化
  • 筋肉量の減少によりお尻が小さくなる
  • 新陳代謝の低下やホルモン分泌量の変化により被毛が薄くなる
  • 皮脂の分泌量が減少することによる皮膚の乾燥でフケがでる
行動の変化
  • 歩幅が狭くなるこによる歩き方の変化(トボトボと元気なく歩くなど)
  • 聴力の低下により名前を呼ばれても反応が薄くなる
  • 体の衰えや痛みにより遊びにさそっても無関心になる
  • 足腰の衰えにより階段などの段差を避けるようになる
  • ホルモンの分泌量の変化により睡眠時間が増加する
  • 視力の低下や足腰の衰えなどにより行動に時間がかかる
  • 体の衰えや痛みなどにより散歩の途中で立ち止まったり行きたがらない
  • 膀胱に尿をためておけなくなり失禁してしまったりシートへの排泄の失敗が増加する
体内の変化
  • 基礎代謝量の低下
  • 消化機能の低下
  • 筋肉量の低下
  • ホルモン量の低下
  • 免疫機能の低下

犬が老衰したときに必要な介護について

老衰期を迎えた犬を介護するにあたってのポイントと注意点を症状別に解説していきたいと思います。

ドーベルマンの足

白内障などによる視力の低下

視力の低下した犬たちはそれまでの経験や嗅覚を頼りに生活をすることになります。ですから部屋においてある家具などを移動させると犬はそこに家具があるとは思わずぶつかって転倒する恐れもあり危険です。視力が低下してからの家具の配置換えはなるべく行わないようにします。
また、現在置いてある家具で角が丸くないものは幼児用の安全カバーを取り付けることでぶつかってケガをすることを予防できます。犬が歩く目線の高さに危険な角や取っ手などがないかよく確認することが大切です。

足腰の衰えなどによるふらつきなど

硬いフローリングは足腰に衰えがでてきた老犬には大変負担となります。滑り止めを塗ったり、できれば犬が歩くスペースでけでもよいのでコルクマットなど敷き詰めるなど負担の少ないものを利用するようにしましょう。
敷物の素材によっては犬が転倒するリスクが高まるものがあります。フワフワのクッションは足がおぼつかない犬には向いてません。パイル生地や暑さ対策のためのすのこは爪を引っ掛けてしまったり隙間に足先を挟んでしまうことも考えられます。パイル生地のものは避けるようにし、すのこには布をかぶせるようにしましょう。
また、室内にあるソファやお出かけの際の車での段差にはスロープをなどを利用することで上り下りが楽になります。階段はセーフティガードを設置するようにし、上り降りの際はなるべく抱っこをするなど飼い主さん自らがサポートしてあげてください。
お部屋とお部屋のあいだのちょっとした段差であっても老犬にとってはつまずきの元となります。カーペットやマットなどを使用して段差をなくすようにしましょう。

カラーをつけた犬

歯周病などによる歯の衰えや体の衰えによる食事制限

歯の衰えた犬にはぬるま湯でふやかしたフードやウェットタイプのフードを与えるようにします。ふやかしたフードやウェットタイプのフードは水分摂取の増加も見込めるため水分不足になりがちな老犬に適しているといえます。
体の不調など犬も年を重ねると食欲の低下により自発的に食べてくれないこともあるでしょう。そんなときはフードを人肌程度に温めたり、脂肪分やタンパク質を増やすと嗜好性が増して食べてくれることがあります。ただし、脂肪分は消化管を通過する時間が長いため腸の機能が低下している場合には注意が必要です。
また、寝たきりの犬の場合、寝たままで食事をさせると誤嚥を起こしやすくなります。飲食の際には必ず首を支えるなど頭の位置が高くなるように上体を支えます。食後は、胃酸が食道に逆流する逆流性食道炎を予防するためにも頭の位置を少し高くしておきましょう。この場合犬は寝たままの姿勢で大丈夫です。

体の衰えによる排泄困難

犬も年を取ると膀胱の筋力が弱りトイレが間に合わないなどの排泄の失敗が起こることがあります。また排便をする際は、しゃがんで下腹部に力を入れて踏ん張るわけですが、老犬では足腰など体の衰えによりこの踏ん張りがきかなくなることも起こりえます。
そんなとき便利なのがオムツです。オムツはペット専用のもが販売されていますが、人の新生児用のオムツを利用したほうが尿漏れしにくくとても経済的です。
排泄物でお尻が汚れることも考えられますが、タオル拭きだけで済ませてしまうと匂いが残りやすく汚れが落ちきれないため衛生的にもよくありません。陰部やお尻周りの毛はできるだけ短くカットし、汚れた箇所だけで良いので必ずその都度ぬるま湯で流すようにしましょう。

犬の老衰まとめ

ハート

老衰と介護についていかがでしたか?
現在、犬たちの長寿高齢化により愛犬に介護が必要となるケースがと増えています。体が不自由になった愛犬との生活はけして楽なものではなく飼い主さんの負担はとても大きなものです。かけがえのない大切な家族の一員だから最後まで精一杯のことをするのは飼い主としての当然のこと…。
しかし、一生懸命になるあまり飼い主さんが一人で全てを抱え込んでしまう介護は、飼い主さん自身だけでなくワンちゃんにとっても良いものとは言えません。必ず信頼できる動物病院などまわりの方々へ相談や協力が得られる環境が必要不可欠です。
最近では、ペットの介護サービスを実施している病院や施設も増えてきています。愛犬にいつもと違う刺激を与えるという発想の転換を持ち飼い主さんが無理をしない介護を心掛けることが大切です。

また、年を取ると、どうしてもケガや病気が増え、動物病院にかかる回数も増えてきます。老犬になる前にペット保険に加入しておくと、終身で治療費を補償してくれるペット保険がほとんどなので、若くて元気なうちにペット保険に加入しておきましょう。

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ユーザーのコメント

  • 投稿者

    40代 女性 さくら

    うちの愛犬も、様々な老化現象が出ています。無理はさせたくないけれど、遊びたそうな感じを見せたらそれに乗って一緒に遊んだりしています。気持ちの面で、若さを保ってほしいですからね。
    ]近所に高齢の犬がいるのですが、その犬の変化を見て、その飼い主さんの家族が一緒に対応している行動を拝見して、いつか来る変化を家族で受け止めることが大事だと思いました。
  • 投稿者

    30代 女性 ちびまま

    犬の寿命は、本当に短くあっと言うです。しかも、愛犬のチビは体が弱く毎月病院に行っていてもしかしたら介護も早いので無いかと考えてしまいます。健康が一番だとつくづく思います。
  • 投稿者

    50代以上 女性 ミロ

    うちの愛犬が15才になり、状態はまさに記述通り。老衰はリアルタイムで進行中です。
    深刻な持病もなく、年の割に元気な方ですが、ある時を境にかくんと活動レベルが落ちました。
    が、老衰で動かない分、飼い主の習慣を心得て穏やかに一緒にいられる相手になってきたのも確かです。
    思い通りにならない体を抱え、渋々病院通いをし、頑固で我が儘。この調子で長生きして欲しいですね。
  • 投稿者

    30代 女性 あんず

    愛犬も7歳になり、シニアと呼ばれる歳になりました。
    昔に比べるとヒゲも毛も白くなってきて、走り回って遊ぶことも少なくなり、ちょっとずつ老いを感じる事もありますね。
    柴犬は痴呆になりやすいと言われているので今までサプリとか全然頭になかったけど、これからは色々考えてあげたいなと思っています。シニア犬向けのグッズも色々販売されてて、ゆくゆくは参考にしたいです。
    老犬介護はみんな口を揃えて大変だよって言いますが、それを言ってる飼い主さんはとても明るいんですよね。それは、長生きしてくれてる愛犬への愛情からくるものだと感じました^^

    まだまだ先の事ですが…私も見習いたいと思います!
  • 投稿者

    30代 女性 asami

    私もたま~に考えます。うちのわんこさんは、まだ3歳だけどいつかはおじいちゃんになって、介護が必要になるんだろうな~って。
    この記事を読んで老衰の兆候など知らないことが書いてあったので勉強になりました。今は、ずっと一緒だよ!なんて言ってますけど、いつかは、死んじゃうと思うと寂しいです。

    これからは、将来に備えて少しずつ、わんこの老後も考えていけないなって考えさせられる記事でした。
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