初めて犬を飼うときの心構え
犬を家族として迎えることは、新たな喜びや癒しをもたらします。しかし、その生活を幸せなものにするためには「犬との暮らしの現実」をしっかり理解しておく必要があります。
命を預かることの重大さを理解し、具体的な責任や日々の変化に向き合うための心構えを持ちましょう。
犬の一生を見守る責任
犬を飼うということは、その犬が寿命を迎える日まで変わらぬ愛情と責任を注ぎ続けることを意味します。小型犬であれば12〜16年、大型犬でも8〜12年程度と比較的長い寿命を持ちます。
その期間に、病気や介護、転勤や結婚、出産、家族の介護といった様々なライフイベントが起こります。どのような変化があっても犬を手放すことなく、生涯共に暮らす覚悟が必要です。
犬を迎える前に家族の同意が必須
犬は家族の一員として暮らします。家族間で意見が一致していないと、犬にとっても家族にとってもストレスが生じます。
家族全員が犬を迎えることに同意し、アレルギーの有無や世話の分担、緊急時の対応などについて事前に十分に話し合っておく必要があります。
犬の生涯に必要な費用を知る
犬を飼うには一定の費用がかかります。食費やペット用品、予防接種や病院代、トリミング費用など年間で小型犬は約10~20万円、大型犬なら20万円以上が目安です。
また、予期せぬ病気や怪我に備えて、ペット保険の加入や予備費用の貯蓄なども検討しましょう。自分の経済状況を冷静に判断し、無理なく継続して飼えるか確認してください。
日々の手間を前向きに受け入れる
犬は毎日の食事、トイレ、散歩、運動、ブラッシングなど、日常的な世話を必要とします。疲れていても、天候が悪くても世話を怠ることはできません。
その手間や時間を負担と感じず、犬とのコミュニケーションとして楽しむ気持ちが、犬との良い関係を築くために欠かせません。
しつけと社会化が将来を決める
犬が人間社会で快適に暮らすためには、基本的なしつけや社会化が必要不可欠です。
しつけは犬が守るべきルールやマナーを教えること、社会化とは幼少期(およそ生後3〜14週)の間に、人や他の動物、音や環境などに慣れさせることを指します。
この時期にしっかり社会化が行われることで、問題行動の少ない、落ち着いた性格の犬に育つ可能性が高くなります。
犬との暮らしは学びの連続
犬との生活は、迎えるまでの準備だけでなく、迎えた後も日々の健康管理、しつけやトレーニングの継続的な学習が欠かせません。
犬の行動や健康状態に変化があればすぐに対処し、飼い主として常に学び続ける姿勢を持つことが大切です。
初めて犬を飼うための事前準備
犬を迎えることが決まったら、快適な生活がスムーズにスタートできるよう、事前に必要なものを揃えておくことが重要です。また、法律上義務付けられている手続きや、万一の災害への備えも怠らずに行っておきましょう。
ここでは、犬を安心して迎えるための具体的な準備内容について紹介します。
犬を迎える前に必要な法的手続き
日本では犬を飼う際、居住地の市町村で「畜犬登録」を行い、毎年1回狂犬病予防注射を接種することが法律で義務付けられています。
また、登録後に交付される「鑑札」と「注射済票」を犬の首輪などに常に装着しておかなければなりません。さらに、2022年6月以降にペットショップやブリーダーから販売される犬には、マイクロチップの装着が義務付けられており、既存の飼い主にも装着が推奨されています。
譲渡や引っ越しなど、登録内容に変更があった場合は届け出が必要です。これらの手続きを忘れずに行いましょう。
災害時の同行避難に備える
災害時には犬と共に避難所へ同行避難することが推奨されていますが、そのためには日頃からの準備が欠かせません。
クレートやキャリーバッグに慣らしておくこと、フードや水、常備薬などを一定量備蓄し、定期的に入れ替える「ローリングストック」を行うことが重要です。
また、自宅周辺の避難所がペット同伴可能かどうか事前に確認し、万一に備えた避難経路や方法を家族と共有しておきましょう。
犬の安心できる居場所を用意する
犬が家庭で安心して過ごすためには、自分専用の居場所を用意してあげることが大切です。日常の安全確保や留守番時のいたずら防止のため、サークルやケージを用意します。
また、災害時や動物病院への移動時にも使えるクレートを寝床として日頃から慣らしておくと安心です。
快適で清潔な食事環境を整える
犬の健康を維持するため、食事環境も重要です。食器や水飲み容器は、重さがあり安定感のある陶器やステンレス製のものを選ぶと衛生的で扱いやすいです。
給水器については、長時間の留守が多い家庭ではケージに取り付けるタイプのボトル式が便利です。
室内トイレの準備方法とコツ
犬が家に来たその日からトイレトレーニングを始めるため、トイレトレーとペットシーツを事前に揃えておきます。トレーは犬が動いてもシーツがずれないタイプを選ぶと便利です。
オス犬の場合は壁付きのものを用意すると周囲を汚しにくくなります。シーツは吸収力やサイズなど、犬の大きさや使用頻度を考えて選びましょう。
犬の散歩用品を準備しておく
初めての散歩までに、首輪やハーネス、リードを準備します。首輪とハーネスは犬の体格や性格を考えて選び、サイズ調整をしっかり行ってください。
また、リードは一般的に1.2m程度が使いやすいですが、地域や公園によっては規定の長さがあるため、自治体の条例や公園のルールを事前に確認しておきましょう。
お手入れ用品と日常ケアのポイント
犬種によって異なりますが、ブラシや爪切り、犬用歯ブラシや歯磨きシートなど、日々の健康管理に必要なお手入れ用品を用意します。
柴犬やチワワなどトリミングが不要な犬種でも、定期的なブラッシングや爪切り、肛門腺のケアは必要になります。
安全で飽きない犬のおもちゃ選び
犬のストレス解消や知育のためにおもちゃを準備します。噛んでも壊れにくい耐久性のある素材を選び、犬の口に入らない大きさであることを確認しましょう。
また、定期的に破損箇所を点検し、安全が保たれるよう新しいものに交換することも大切です。
初めて犬を飼う人のための犬種の選び方
犬との暮らしを成功させるためには、自分の生活環境や家族構成に最も適した犬種を選ぶことが重要です。見た目だけでなく、犬種ごとの特性を理解し、自分たちのライフスタイルに適合する犬種を慎重に検討しましょう。
「自分の暮らしに合った犬種」を選ぶ
犬を選ぶ際には、まず自分自身や家族の生活スタイルを考えることが大切です。自宅が集合住宅か戸建てか、家族構成はどうか、日常的に犬のお世話に割ける時間やエネルギーはどのくらいかなどを確認しましょう。
また、自宅にいる時間が長いのか、日中は不在になりがちかという勤務スタイルによっても、選ぶべき犬種は異なります。
初心者には「性格が穏やかな犬種」がおすすめ
一般的に初めて犬を飼う方には、性格が穏やかで人懐っこい犬種が向いています。攻撃性が低く、友好的な性格を持つ犬種は初心者でも扱いやすく、飼育の難易度が比較的低いとされています。
代表的な犬種としては、トイ・プードル、キャバリア・キング・チャールズ・スパニエル、マルチーズなどがありますが、個体差も大きいため、迎える前には実際に会って性格を確認することが望ましいでしょう。
初心者には「トレーニングしやすい犬種」が安心
初めて犬を飼う場合、飼い主の指示を理解しやすくトレーニングがしやすい犬種を選ぶと安心です。学習能力が高く、しつけに対して前向きな姿勢を示す犬種であれば、初心者でも問題行動に困ることが少なくなります。
例えば、トイ・プードルやゴールデン・レトリバーなどは比較的トレーニングがしやすい犬種として知られています。
「抜け毛が少ない犬種」はお手入れが簡単
日常の手入れに時間や手間をかけるのが難しい場合は、抜け毛が少なく、比較的手入れが簡単な犬種を選ぶことをおすすめします。
トイ・プードルやマルチーズ、ヨークシャー・テリアなどは抜け毛が少ない犬種の代表格ですが、トリミングが必要となります。柴犬やチワワはトリミングが不要なものの、換毛期には多くの抜け毛があるため、日常のブラッシングなどのケアが欠かせません。
こうした特徴を理解し、自分にとって手間の負担にならない犬種を選びましょう。
「自分の住環境」を考慮して選ぶ
集合住宅に住んでいる場合、近隣トラブルを避けるために、比較的吠える傾向が少なく、小型で室内での運動量が少ない犬種が向いています。
例えば、チワワやマルチーズなどは集合住宅での飼育に向いていますが、個体差があるため、しつけは不可欠です。 一方、戸建て住宅で庭や十分なスペースが確保できる場合は、柴犬やコーギー、ゴールデン・レトリバーなど、中型から大型犬種も選択肢となります。
ただし、運動量が多い犬種の場合、運動時間や費用が多くかかることを覚悟しておきましょう。
家族に「子供」や「高齢者」がいる場合
小さな子供や高齢者がいる家庭、一人暮らしの世帯など、家族構成によっても適した犬種は異なります。子供がいる家庭では、ゴールデン・レトリバーやラブラドール・レトリバーのような、子供に対して寛容で優しい犬種が適しています。
高齢者がいる家庭では、運動量が少なめで穏やかなシーズーやキャバリアなどがおすすめです。また、一人暮らしの場合、比較的自立心があり、留守番に適応しやすいマルチーズやフレンチ・ブルドッグなどの犬種が向いています。
初めて犬を飼う前に知っておくべき散歩と運動量
犬を飼う上で、散歩は単なる運動だけでなく、犬の健康維持やストレス発散、社会化にも欠かせない日課です。しかし、犬種や年齢によって適切な散歩時間や運動量は大きく異なります。
自分が迎える犬に適した散歩や運動量を知り、無理なく続けられるよう準備をしておきましょう。
犬の散歩の目的
犬にとって散歩は体を動かし運動不足を防ぐほか、日々のストレスを発散させ、心身の健康を保つために欠かせません。また、散歩を通じて人や他の犬、外の環境に慣れることで社会性を養い、落ち着いた性格を育むことにもつながります。
散歩時間の目安
小型犬
チワワやマルチーズなどの小型犬は、1回15分から30分程度の散歩を1日に1〜2回が基本的な目安です。
ただし、小型犬でも活発な犬種や個体差により、30分以上の散歩やドッグランでの運動が必要になる場合もあります。犬の様子を見て、無理なく適度な運動を行えるように調整しましょう。
中型犬
柴犬やコーギー、ビーグルなどの中型犬は体力があるため、1回あたり30分以上の散歩を朝夕の1日2回が理想的です。散歩だけでなく、ボール遊びやフリスビーなど運動を取り入れることで運動欲求を満たすと、犬のストレス発散や健康維持に役立ちます。
大型犬
ラブラドール・レトリバーやゴールデン・レトリバーなどの大型犬は、1回30分から1時間程度の散歩を1日に2回行うことが望ましいとされています。
特にボーダー・コリーやジャーマン・シェパードなどの作業犬種や活発な犬は、散歩だけでは運動が不足するため、追加で自由運動やトレーニングを取り入れる必要があります。
散歩の頻度・季節による違い
犬にとっては毎日の散歩が基本ですが、暑さや寒さなど季節や気候によって時間帯や頻度を調整する必要があります。特に夏場は、アスファルトが高温になる日中を避け、早朝や日没後など涼しい時間帯に散歩をするよう心がけましょう。
散歩に行けない日はどうする?
天候が悪い日や飼い主が体調不良の場合でも、犬の運動やストレス発散は必要です。
室内で「持ってこい遊び」や知育玩具を使ったゲーム、ノーズワーク(嗅覚を使った遊び)などで、犬が退屈しないように工夫をしましょう。室内遊びは犬との絆を深める良い機会にもなります。
まとめ
初めて犬を家族として迎えるには、生涯にわたり犬の命に責任を持つ覚悟と、家族全員の協力が不可欠です。事前に必要なグッズや法的手続きを済ませ、災害時の備えも整えておきましょう。
犬種は見た目だけでなく、自分のライフスタイルや住環境、飼育経験に合ったものを選ぶことが大切です。また、犬の健康と社会性のためには、犬種や体格ごとに異なる運動量を理解し、毎日の散歩を欠かさないことも重要です。
十分な準備と学びを経て、犬との幸せな日々を始めてください。