柴犬は「外飼い」しても大丈夫?
結論から申し上げますと、現代において柴犬の飼育は「室内飼い」が主流となっています。
もちろん、適切な環境と管理が行われれば外飼いが不可能というわけではありませんが、室内飼いが推奨される理由が多く存在するのです。
かつて日本の家屋で番犬として飼われていた歴史を持つ柴犬は、「外で飼うもの」というイメージをお持ちの方もいらっしゃるかもしれません。しかし、近年では犬の飼育環境や考え方が大きく変化しており、柴犬に関してもその飼育方法の主流は変わりつつあります。
柴犬は賢く忠実な性格ですが、その一方で頑固な一面も持ち合わせています。また、家族に対する愛情が深く、孤独やコミュニケーション不足にストレスを感じやすい犬種でもあります。これらの性格や、後述する健康管理の観点から、家族と同じ空間で過ごせる室内飼いが推奨されることが増えています。
とはいえ、住環境の都合などで室内で飼う事が難しい方もいるでしょう。また、外飼いが推奨されているだけで、犬の健康管理やしっかりとした飼育環境を整えてげれば、パートナーとして長く付き合う事ができます。
これから紹介する「柴犬を外飼いするための基本情報」を学び、柴犬が過ごしやすい環境作りのヒントにしてみて下さい。
柴犬を外飼いする場合のメリット・デメリット
柴犬を外飼いすることには、メリットとデメリットの両面があります。それぞれの点を理解して飼育方法を検討しましょう。
メリット
柴犬を外飼いする主なメリットとしては、以下の点が挙げられます。
比較的広いスペースを確保できる
庭などの広いスペースで自由に動き回れるため、運動不足の解消に繋がりやすいと考えられます。
抜け毛の掃除の手間が省ける
柴犬は換毛期(季節の変わり目)に非常に多くの毛が抜けます。外飼いの場合、室内ほど抜け毛の掃除に手間がかからないと感じるかもしれません。
番犬としての役割
見知らぬ人が近づいた際に吠えることで、番犬としての役割を果たすことがあります。
デメリット
一方で、柴犬を外飼いすることには、無視できない多くのデメリットが存在します。
健康管理が難しい
後述しますが、気温や湿度による影響、寄生虫のリスクが高まるため、室内飼いに比べて健康管理が難しくなります。体調の変化にも気づきにくくなる可能性があります。
コミュニケーション不足に陥りやすい
家族との物理的な距離ができることで、犬とのコミュニケーションの時間が減少し、分離不安や問題行動に繋がることがあります。柴犬は家族との絆を大切にする犬種です。
防犯上のリスク
近年では、飼われている犬が盗難の対象となるケースも報告されています。高価な犬種である柴犬も例外ではありません。
近隣トラブルの原因となる可能性
無駄吠えなどが近隣住民とのトラブルに発展する可能性があります。特に夜間の吠え声は問題となりやすいです。
天候や気温の影響をダイレクトに受ける
日本の四季は寒暖差が大きく、特に夏の猛暑や冬の厳寒は犬の体に大きな負担をかけます。適切な対策をしないと、熱中症や凍死のリスクが高まります。
脱走や事故のリスク
敷地の囲いが不十分だったり、リードや鎖が外れたりすることで、脱走して交通事故に遭うなどの危険性があります。
感染症のリスク
外で生活する犬は、フィラリアやノミ、ダニといった外部・内部寄生虫に感染するリスクが室内飼いの犬よりも高まります。
フィラリア(犬糸状虫症)は、蚊を媒介として犬の心臓や肺動脈に寄生する寄生虫で、重症化すると命に関わる大変危険な病気です。ノミやダニも、皮膚炎やかゆみの原因となるだけでなく、他の病気を媒介することもあります。
これらの寄生虫から愛犬を守るためには、動物病院での定期的な予防(フィラリア予防薬の投与、ノミ・ダニ予防薬の投与)が不可欠です。
柴犬を外飼いする場合の暑さ・寒さ対策
日本の気候は年間を通して変化が大きいため、外飼いの場合は季節ごとの対策が必須です。
夏の暑さ対策
犬は人間のように全身で汗をかくことができないため、体温調節が苦手です。特に短頭種や老犬、子犬は熱中症になりやすいですが、柴犬も夏の閉め切った犬小屋の中では危険な状態に陥る可能性があります。
日陰を確保する
犬小屋は直射日光が当たらない場所に設置し、日中最も暑い時間帯にはタープなどを利用して広い範囲に日陰を作りましょう。
新鮮な水を十分に確保する
常に清潔で冷たい水が飲めるように、複数の水飲み場を用意します。
犬小屋の通気性を確保する
犬小屋の風通しを良くし、地面に熱がこもらないようにすのこなどを利用するのも効果的です。
ペット用の冷却グッズを利用する
暑さが厳しい時期には「クールマット」や「扇風機」などの冷却用グッズを活用し、熱中症を予防しましょう。
冬の寒さ対策
柴犬は日本の寒さには比較的強い犬種と言われますが、それでも限度があります。特に寒さが苦手な犬や、体調を崩しやすい犬もいます。
犬小屋の防寒対策を行う
犬小屋は北風が当たらない向きに設置し、断熱材を入れたり、入り口にカバーを付けたりして冷たい風を防ぎます。
犬小屋の保温性を確保する
犬小屋の中に毛布や犬用ベッドを入れて、暖かく過ごせるようにします。
地面からの冷え対策
犬小屋の下にブロックなどを置いて、地面からの冷えが伝わるのを防ぎます。
寒暖差に注意する(季節の変わり目など)
春や秋の寒暖差が大きい時期も注意が必要です。体調を崩しやすい時期なので、犬の様子をよく観察することが大切です。
柴犬を外飼いするならいつから?
一般的には必要なワクチン接種が全て完了し、体の大きさが安定してきた時期が推奨されます。
なお、子犬の時期はまだ体が十分に発達しておらず、免疫力も低いため、環境の変化に非常に敏感です。急な環境の変化は犬にとって大きなストレスとなります。
いきなり外飼いに移行するのではなく、少しずつ外の環境に慣らすなど、新しい環境に十分に慣れてから外飼いに移行しましょう。
外飼いの具体的な時期については、個体差や地域の気候によっても異なるため、必ずかかりつけの獣医師に相談し、アドバイスを受けるようにしましょう。
室内飼いと外飼いで寿命は変化する?
外飼いの場合、前述したように寄生虫のリスクや、気温・天候の変化による体調不良のリスクが高まります。
一般的には「外飼いの犬は寿命が短い」という話もありますが、全ての犬が外飼で寿命が短くなるとは言い切れません。
犬の寿命については飼育場所そのものよりも、「適切な健康管理が行われているか?」が、最も大きく影響します。
外飼いであっても、定期的な健康診断やワクチン接種、寄生虫予防をしっかり行い、食事、運動、精神的なケア(家族とのコミュニケーション)が適切に行われていれば、室内飼いの犬と変わらず健康に長生きすることは十分に可能でしょう。
重要なのは、飼育環境に関わらず、飼い主が愛犬の健康と安全に最大限配慮することです。
柴犬を外飼いする場合に必要な道具・レイアウト
柴犬を安全に外飼いするためには、生活に必要な道具を揃える必要があります。
犬小屋
雨風や直射日光、寒さをしのげる、犬の体に合ったサイズの小屋が必要です。地面に直接置かず、ブロックなどで隙間を作ることで通気性を良くし、地面からの熱や冷えを防げます。
リード・鎖
敷地内で係留する場合、適切な長さで丈夫なリードや鎖が必要です。犬が自由に動ける範囲で、絡まったり引っかかったりしないように配慮が必要です。
給水器・給餌器
常に新鮮な水が飲める給水器と、食事のための給餌器を用意します。夏場は水が腐敗しないようにこまめに取り替えが必要です。
日よけ、雨よけ
犬小屋の他に、日中の日差しや突然の雨をしのげるスペース(タープなど)があるとより快適です。
安全柵
庭全体を囲むなどして、犬が敷地外に脱走できないような柵を設置することが最も安全です。
レイアウトのポイント
柴犬を安全に外飼いするためには適切なレイアウトも重要です。
日陰と日向を確保する
犬が自分で快適な場所を選べるように、日陰になる場所と日向になる場所を作ります。
風向きの考慮
犬小屋は風通しが良い場所に置きつつも、冬場の冷たい風が直接吹き込まない向きに設置します。
地面の「水はけ」を考慮する
雨水が溜まらないように、排水の良い場所を選びます。
敷地内に危険な物がないか確認する
敷地内に犬にとって危険なもの(毒性のある植物、農具、コード類など)がないか確認し、撤去または対策を行います。
柴犬を外飼いする場合に必要なしつけ
外飼いの場合でも、基本的な社会化としつけは非常に重要です。特に以下の点に注意が必要です。
無駄吠え対策
外の刺激(通行人、車、他の動物など)に対して吠えやすい環境のため、無駄吠えのしつけは必須です。近隣トラブルの原因となる可能性が高いため、早い段階から取り組みが必要です。
脱走防止のしつけ
呼んだら戻ってくる「呼び戻し」のしつけや、「待て」「伏せ」といった指示に従えるようにすることは、万が一リードが外れた場合などの安全確保に繋がります。
他の犬と交流させて「社会化」を行う
他の犬や人との交流が少なくなりがちなため、定期的に散歩に連れ出したり、他の犬と安全に交流できる機会を設けたりして、社会性を保つ努力が必要です。
まとめ
柴犬は日本の犬として古くから親しまれてきましたが、現代の飼育環境では室内飼いが主流であり、多くのメリットがあることをご理解いただけたかと思います。
外飼いが不可能というわけではありませんが、その場合には健康管理(寄生虫予防、気温対策)や安全確保(脱走防止、防犯)、そして近隣への配慮といった、室内飼い以上に徹底した対策と注意が必要になります。特に夏の猛暑や冬の寒さは、犬の命に関わる危険性があるため、十分な備えが不可欠です。
柴犬との生活を始めるにあたっては、飼い主様のライフスタイルや住環境だけでなく、愛犬の健康と安全、そして幸福を最優先に考えることが何よりも重要です。安易に外飼いを選択するのではなく、室内飼いも含めて十分に検討し、柴犬にとって最も快適で安心できる環境を提供してあげましょう。