犬の車酔いの原因は?
犬が「車に酔うなんてことあるの?」と疑問を抱いた人も少なくないとおもいますが、実は犬にも車酔いが存在します。
普段の生活上においても、万が一の際の動物病院への道のりや、家族旅行など、犬と乗り物は切り離せない関係です。今回は、犬の車酔いの主な原因についてご紹介します。
車の揺れによって受ける刺激
一般的に言われている車の揺れで起こる車酔いは、三半規管への影響や空腹時、満腹時の場合など、いくつか挙げることができます。
三半規管とは、耳の奥の内耳と呼ばれている部分に存在する平衡感覚を司る器官です。この三半規管が車による揺れや、目まぐるしく変わる街の風景などで脳に伝わる電気信号にズレが生じると、車酔いを起こしやすくなると言われています。
これは車に限らず、条件がそろえば電車や飛行機、バスなどでも同じ現象が起こります。
次に空腹時や満腹時に車に揺られた場合ですが、これは自律神経が過敏になるため、人でも気持ち悪くなることがあるように、犬にもまた同じようなことが起こります。
芳香剤やタバコなどの車内に満ちた強いニオイ
犬の嗅覚に影響を及ぼす、芳香剤やタバコ等の強いニオイも、犬の車酔いに関係する場合があります。
人がニオイを感知するセンサーである嗅細胞は、おおよそ3cm²で1円玉と同じ大きさと言われており、一方、犬の嗅細胞はおおよそ150cm²で1,000円札と同じ大きさとされています。
この違いから解るように、人に比べて嗅覚がとても優れている犬にとって、芳香剤やタバコ等の強いニオイが充満した車内は、体に大きな影響を与えてしまうため、車酔いになる可能性があるのです。
車内の臭いを完全に消臭することは難しいものですが、犬を車に乗せる際に強いニオイで紛らわす方法は避けるようにしましょう。
車酔いの記憶や外出への不安からくるストレス
犬が車に乗った際、苦しい思いや嫌な思いをした記憶があると、車に乗ることに不安を感じて車酔いを起こしてしまう場合があります。
この原因は、まだ完全に三半規管が発達していない子犬などに多く、後々強く影響してしまうと言われているため、子犬を車に乗せる時は注意が必要です。
子犬の頃に車に乗せなければならない場合には、空腹時や満腹時を避けて、体質にも気を付けながら、嫌な経験にならないように気をつけましょう。
犬が車酔いをすると起きる症状
犬にも車酔いしやすい子と車酔いしにくい子が存在します。また、車酔いするタイプの子の症状も個体によってそれぞれ違いますが、車酔いをしてしまった場合、どのような症状が起きるのでしょうか?
初期の車酔い症状
犬による車酔いには、主に下記のような初期症状が現れます。
- 急に吠え出す
- そわそわする
- 落ち着きがなくなる
シートの上に犬を乗せ、動き回れるような不安定な状態の場合、そわそわと落ち着きなく歩き回ります。これらの症状は、ストレスや不安を感じている状態ですので、場合によっては車を停車して落ち着くまで様子を見てあげましょう。
中度の車酔い症状
初期症状からさらに症状が進むと、次のような症状があらわれます。
- 生あくび
- 体の震え
- ヨダレを垂らす
ヨダレは人でいう生唾が出る状態になります。
このような症状が長く続いてしまうと、犬にとって相当つらいものだと思います。気づいた際には、車を止めて安全な場所で外に出してあげるなど、できる限り早めの対処を心がけましょう。
重度の車酔い症状
- ぐったりする
- パンティング(荒い息遣い)
- 嘔吐をする
このような症状は、犬にとっては我慢の限界に近いかもしれません。嘔吐をしてしまう前に停車し、速やかに休憩をさせましょう。
車酔いそのものによる死の危険性はありませんが、子犬などは嘔吐による低血糖や脱水症状が起こる危険性が十分考えられます。軽く考えずに、しっかりとした対処が必要です。
犬の車酔いの予防対策
犬の車酔いの予防対策にはどのようなものがあるのでしょうか。
犬用の酔い止め薬を獣医師に処方してもらう
一番手っ取り早い方法としては、酔い止め薬を医師から処方してもらうことです。
犬に使われる酔い止め薬の多くは、主に鎮静剤が使われており、犬を落ち着かせてパニック症状を起こしづらくする効果が期待できます。
ただし、薬の効き目は6時間ほど持続するものが多く、短時間でのお出かけの場合には向かないかもしれません。また、心臓の弱い子などは処方は控え、獣医師の指示に従いましょう。
クレート等に入れて揺れの影響を最小限にする
クレートなどの決められた範囲に入れることで、揺れの影響を最小限にし、三半規管に負担をかけない対処方法もあります。
用意するクレートは、その犬が方向転換出来る程度がちょうど良い大きさです。愛犬のサイズにあったクレートを車内に設置しましょう。
また、クレートの扉は車の進行方向に向けた方が酔いにくいと言われていますので、その点も意識してみてください。
まずはクレートに入ること自体に慣れることはもちろんですが、運転中の急発進や急ブレーキにも気をつける必要があります。揺れの影響や安全性を考慮して、クレートは必ずシートベルトなどに固定するようにしましょう。
車内にニオイがこもらないよう換気する
車内は車特有のニオイなどがこもらないようにこまめな換気をするのも大切です。
芳香剤やタバコ臭などは、嗅覚の優れた犬にとっては刺激が強く、吐き戻しを繰り返してしまう可能性も考えられるため、こまめな換気を怠らないように注意してください。
食事のタイミングを変更し運動でほどよく疲れさせておく
事前に出かける予定が決まっているのであれば、食事のタイミングをずらしたり、散歩時間を伸ばしたりすることも車酔い対策には効果的です。
食べた直後のドライブは、吐き戻しやすい原因となってしまいます。食後は4~6時間ほど間を空けて、食べる量も1/3程度に留めた上で犬を車に乗せるようにしましょう。
また、食べた後は普段よりも少しだけ運動量を増やすと、車内で犬が眠る可能性が高くなりますので、長めの散歩をしてみるように心がけてください。
犬が車酔いしてしまった時の対処法
対策を行なったにもかかわらず、それでも車酔いをしてしまった場合の対処法をご紹介します。
どんなに気をつけていても、車酔いをしてしまう子はいるものです。もし、少しでも車酔いの前兆を確認した時点で対処するようにしてあげましょう。
車を停めて車外で休憩させる
犬は車酔いをした場合、落ち着かなかったり、あくびを繰り返したり、鼻を舐めたりする仕草やパンティングを頻繁にします。
その場合には、できるだけ早いうちに車を安全な場所に停めて、愛犬に外の空気を吸わせてあげましょう。また、気分転換のために少し散歩させるのもおすすめです。
高速などで直ぐに車を停められない場合には、車内の窓を開けて換気だけでもすると良いでしょう。
犬の吐き気が治まるまで何も与えない
気持ち悪そうに愛犬がぐったりしていると、気を紛らせるためにおやつをあげたくなるかもしれませんが、落ち着くまで固形物は与えないようにしましょう。
また、吐いてしまった場合にも、すぐに水を与えずに吐き気が落ち着いてから与えるようにしましょう。症状がなかなか改善する気配がない場合は、近くの動物病院などで診てもらうことをおすすめします。
犬が車に慣れるためのトレーニング方法
犬は比較的車酔いをしやすい動物と言われています。
中でもポメラニアンやフレンチブルドッグなどは平衡感覚が優れているため、車の揺れに過剰な反応をしてしまい、車酔いをしやすいと言われています。
個体差もありますので、犬種に関わらず、愛犬の様子に注意を払いながらトレーニングをしてあげてください。
車を発車させずに車自体に慣れさせ良い経験を積ませる
犬に車に慣れてもらう方法として、まずは車自体に慣れてもらうことから始めましょう。
- エンジンをかけずに車に慣れてもらう
- 落ち着いているようなら愛犬の好きな物(こと)をしてあげる
- ある程度慣れたら車のエンジンをかける
- 変わらず落ち着いていたら愛犬の好きな物(こと)をしてあげる
段階を踏んで、犬に車が怖いものでは無いことを教えてあげましょう。
トレーニング中におびえるような素振りや、体の震えなどが見られた場合は、無理をせずに犬を落ち着かせ、一度休憩をさせてましょう。そして時間を置いてから再度挑戦してみましょう。
車のエンジンに慣れたら近距離ドライブで実践トレーニング
犬がエンジンのかかった車に慣れることが出来たら、いよいよ実践でのトレーニングです。
近所にある公園でも良いですし、もちろんドッグランでも構いません。犬には「車に乗れば、楽しいところに連れて行ってもらえる」という認識を持ってもらいましょう。
〈刷り込みの例〉
- 愛犬が好きな近場のスポットに車で出かける
- 愛犬が大人しくしていられたら、そのスポットで遊ばせてあげる。
- 帰る車中でも大人しくしていられたら、愛犬の好きな物(こと)で記憶の定着をさせる
もし、途中で車酔いをして吐いてしまっても、怒ることなく安全な場所に車を停め、愛犬に休憩をさせてあげてください。
生活の中で必然的に車に乗る機会が多ければ、慣れてくれるようになりますが、無理強いをさせてまで慣れさせる必要性はありません。長い目で車に慣れる機会を作ることが大切です。
まとめ
犬の車酔いは個体差があり、すぐに慣れてくれる子もいれば、車酔いが治らないという子もいます。
犬の祖先と言われている狼は、元来目の「前」の獲物を追いかける生活をしていたため、視野が狭く取られています。そのため、犬も乗り慣れない車から見る「流れる景色」は車酔いをしやすいものだと言われているようです。
犬は車酔いをしやすい動物だということを念頭に置きながら、車酔い克服のためには、焦らず、無理させず、少しずつ慣れさせてあげましょう。