「タン・マーキング」とは?
まず、犬の毛色の種類に「タン」と呼ばれるものがあります。「タン」とは茶色や黄褐色のことで、その名前は本革製品のなめしに使用するオークの樹皮であるタナム(タンナム)に由来すると言われています。このように「タン」という言葉は色を指す言葉ですが、「タン・マーキング」と言うと、タン以外の地色(ブラック&タンだったらブラック)を持つ犬で眉(目の上)やマズル(口吻)の側面、胸元、四肢などに特徴的に入るタン色の模様(マーキング)のことを言います。
タン・マーキングの出る場所
このように、タン・マーキングは眉だけの模様ではありません。
- 眉(目の上)
- マズル(口吻)の側面、頬
- 手足の内側と手先、足先
- 胸元
などに、体の大部分を占める地色とは違う色であるタンの部分として現れます。目の上のタンの模様は、まるで丸い眉毛のようなので、タン・マーキングを持つわんちゃんは麻呂眉があるように見えます。
身体の色とタンの色
「ブラック&タン」や「チョコレート&タン」などが、よく聞くタン・マーキングを持つ色の種類です。このブラックやチョコレートという部分の色が体の大部分を占める地色で、そこにタンの模様(タン・マーキング)があるよ、という意味です。地色にはブラックやチョコレートの他にもフォーン(薄い茶色)やマール(大理石)模様のある色の場合もあります。また、遺伝子によってはマーキングの色がタン以外の色になることもあります。
タン・マーキングを持つ毛色がある犬種
人気の家庭犬の中でタン・マーキングを持つ毛色がある犬種は、
- ミニチュアダックスフンド
- ドーベルマン
- 柴犬
- チワワ
- ミニチュアピンシャー
- パピヨン
- ビーグル
- アメリカンコッカースパニエル
- ジャーマンシェパード
などです。
タン・マーキングではないタンの色を持つ犬もいて、ヨークシャー・テリアやイングリッシュ・セッター、様々なハウンド種(ビーグルやバセットハウンドなど)などで、タン・マーキングではないタンの被毛を見ることができます。また、トライカラー(黒、白、茶の3色)の犬ではタン・マーキングがあることもあればタン・マーキングは持たずに茶色の部分を持つこともあります。
ブラック&タンの毛色を持つ代表的な犬種であるドーベルマンでは、マーキング部分の色は一般的なタンよりも濃い色で、英米では「ラスト」や「ラストレッド」と呼ばれます。ラストとは「錆」のことです。ですので、ドーベルマンのカラーでは「ブラック&ラストレッド」や「レッド&ラスト」という表現も見られます。
柴犬の麻呂眉
日本原産である柴犬のカラーを表すとき、日本では「レッド」「ブラック」などの英語は使わず、和名の「赤柴」「黒柴」などと呼んでいます。黒柴は黄褐色のいわゆるタン・マーキング、麻呂眉があり、他の色の柴犬とは違う特徴です。
赤柴にも白い麻呂眉はのような模様が現れることがあるようです。黒柴の日本的な凛々しいお顔立ちと麻呂眉はよくマッチしていますよね。
「四つ目」は縁起が悪い?!
「四つ目」とは?
麻呂眉があると、まるで目が4つあるように見えることから「四つ目」と呼ばれることもあります。特に柴犬の場合は毛色を和名で表現するので、「タン・マーキング」、「麻呂眉」と呼ばれているものは正式には「四つ目」と呼ぶそうです。
「四つ目は縁起が悪い」と言われたワケ
ご年配の方の中には「四つ目の犬は縁起が悪いから飼うな」とおっしゃる方もいるようです。これは昔のジンクスのようなもので、
- 目が4つあるようで不気味
- 飼い主を喰ってしまう
- キツい性格をしている
- 飼い主を短命にする
などと信じられていたようです。もちろんこれらは迷信ですが、ご年配の方や住む地域によってはタン・マーキング、麻呂眉に対して、今でもこのように言われることもあるようです。
麻呂眉模様の仕組み
色や模様は遺伝子で決まる
動物の模様を決めるのは遺伝子の情報です。何色になるか、単色か複数色か、ブチ模様かなどは、すべて遺伝子の情報によって決まります。これにより、麻呂眉模様の「タン・マーキング」を現す遺伝子を持って生まれた犬が眉麻呂になります。
タン・マーキングを出現させる「アグーチ遺伝子」
「アグーチ遺伝子」とは、毛色の基本となる2種類のメラニン(黒と茶)の発現具合を決める遺伝子です。アグーチ遺伝子は4種類あるため「アグーチシリーズ」と呼ばれており、どのアグーチ遺伝子を持っているかで出てくる色や模様が違います。このアグーチシリーズの1つにタンを出現させる「at(タンポイント)」という劣性遺伝子があり、この遺伝子をペアで持っている子がタン・マーキングを持つことになります。
ただし、他の遺伝子との兼ね合いによってタンの部分がもっと薄い色になったり、模様がはっきりとは見えなくなったりすることもあります。
まとめ
犬にある麻呂眉のような模様は「タン・マーキング」と呼ばれるものです。タン・マーキングの模様が現れるには「アグーチ遺伝子」の中のat(タンポイント遺伝子)をペアで持つことが必要で、さらに色を決める他の遺伝子の影響も受けて、どんな色のマーキングがどの様に現れるかが決定します。麻呂眉の模様は目が4つあるように見えるため柴犬では「四つ目」とも呼ばれます。昔は「四つ目の犬は縁起が悪い」などという迷信があり、タン・マーキングを持つ犬は飼ってはいけないと言う人もいました。今ではすっかり人気のカラーパターンとなったブラック&タンなどのタン・マーキングのある毛色は、様々な犬種で見られます。違う犬種なのに同じ麻呂眉があると、何だか不思議に感じますね。