犬のかゆみ止めに人間用の薬は使えるの?
「動物病院へ行ったら、犬に人間の治療薬と同じものを出された」という経験はありませんか?
「本当に使っても大丈夫なの?」「家に同じ薬があるけど使っても良いのかな?」と、さまざまな疑問が出てきますよね。
今回は、犬のかゆみ止めに人間用の薬を使うときの注意点や、安全に使う対策法などを解説します。愛犬が皮膚のかゆみに悩んでいるという飼い主さんは、ぜひ参考にしてみてください。
犬のかゆみの原因によっては人間用の薬も有効
まず、「犬のかゆみ止めに人間用の薬は使えるの?」という疑問にお答えします。結論からいうと、「使うことはできます!」人間のかゆみを止める成分は、犬にも有効なことがわかっています。
ただし!人間用の薬をそのまま犬に使うことには、多くのリスクがあり注意が必要です。犬に人間用の薬を使う前に、リスクを知り、理解しておきましょう。
リスクをご紹介する前に、なぜ犬に人間用のかゆみ止めを使っても大丈夫なのか、解説していきます。
犬のかゆみ止めに有効な成分は人間用とも共通点が多い
犬のかゆみ止めに使われている有効成分には、人間用のかゆみ止めとも共通点が多くあります。例えば、次のような成分は、犬用と人間用の両方の薬に用いられています。
- プレドニゾロン
- トリアムシノロン
- アモキシシリン
プレドニゾロンとトリアムシノロンはいわゆるステロイドで、皮膚の炎症や、かゆみを抑える作用があります。アモキシシリンは細菌に対して有効とされる、ペニシリン系の薬です。
また、薬だけでなく、犬の皮膚のかゆみに有効とされるサプリメントにも、人間のものと同じ成分がよく使われています。
- セラミド
- ビタミンA
- ビタミンE
- 不飽和脂肪酸
- 亜鉛
- 乳酸菌
セラミドなどは、化粧品にもよく使われていますし、他の成分も聞きなじみのある栄養素ばかりですよね。このように、犬用のかゆみ止めと人間用のかゆみ止めには、同じ成分がよく使われているのです。
動物病院では人間用の医薬品を多く取り扱っている
実は、動物病院の薬は、人間用の医薬品を取り扱っている場合もあります。なぜ人間用の薬が、動物病院で使われることが多いのでしょうか?
前述のとおり、犬用の薬と人間用の薬の多くは、成分に同じものが使われています。
動物専用の薬品を開発、製造するのにはコストがかかってしまいますし、動物用として販売するには特別な許可も必要です。コストがかかった薬品は、販売価格も高くなり、飼い主にとっても負担となってしまいます。
動物用の薬は人間のものと比べて需要も少なく、同じ成分のものを、わざわざコストをかけて作るメリットが製薬会社にはありません。
これらの理由から、動物専用の薬が少ないため、動物病院では人間用の薬を使用しているのです。
症状によっては人間用のかゆみ止めを処方されることもある
犬のかゆみの症状によって、獣医が適切だと判断した場合は、犬に人間用のかゆみ止めを処方することがあります。かゆみ止めには、主に3つの種類があります。
- 内服薬
- 外用薬
- 注射
内服薬とは、いわゆる飲み薬のことで、価格が安く効果が出るのが早いといわれています。デメリットには、副作用がでやすい点が挙げられます。
今まで塗り薬が使われていた外用薬は、毛のある犬にはベタついて使用が困難でした。最近では、スプレータイプの外用薬が普及し使用しやすくなっています。
犬用インターフェロンγという注射は、近年用いられるようになった治療法です。効果が持続するため、飼い主の負担を減らすことができます。しかし、嘔吐や下痢の副作用が出る可能性があったり、症状がでた時だけ薬を使う頓服的な使用には向いていません。
内服薬、外用薬、注射の中から、どの治療薬を使うのかは、獣医が判断します。人間も治療をする時には、塗り薬を選んだり、一度で済む注射を選択したりしますよね。
動物病院でも同じように、飼い主の希望や、犬の症状と性格に合ったタイプの薬を、獣医が選んで処方してくれるのです。
薬の使用に抵抗がある飼い主には、サプリメントや、薬用シャンプー&トリートメントを使う方法が勧められることもあるでしょう。ただし、薬用シャンプーを使う方法は、頻繁に犬をお風呂に入れる必要があるため、飼い主にとっては少し大変かもしれません。
犬のかゆみ止めに人間用の薬を使う時の注意点
犬用と人間用の薬は共通の成分が多く、動物病院でも人間用の医薬品が使われていることを解説してきましたが、犬に人間用のかゆみ止めを使用するのは、もう少し待ってください!
「動物病院でも使われているなら、人間用の薬は犬に使っても安全なんだ!」と思っている人もいるかもしれませんが、犬に人間用の薬を使うことは、絶対に安全だとは言えないのです。
ここからは、犬に人間用の薬を使用するときに考えられるリスク、注意点を解説していきます。人間用のかゆみ止めを犬に使うまえに、リスクをよく理解しておきましょう。
人間と犬では効果的で安全な薬用量が異なる
人間と犬は、体のサイズはもちろん、皮膚の厚さ、体内に入った薬の代謝にも大きく違いがあります。そのため、人間用の薬をそのまま犬に投与してしまうのは大変危険です。
薬は、適量を使用すれば効果として現れますが、量や使い方を間違えると毒にもなり得る危険性があります。
自宅にある人間用の薬品を「だいたい半分かな?」などと適当に犬に与えてしまうと、症状が悪化したり、中毒を起こしてしまうかもしれません。
「ほんの少しの量なら大丈夫でしょ」と思うかもしれませんが、アメリカでは、皮膚がんに使う塗り薬を犬が少量なめただけで死亡してしまった、という事故も起きています。
薬を使う際には、使用量だけでなく、犬が薬を誤飲しないように気をつけなくてはいけません。
また、薬だけでなく人間用のスキンケア用品も、犬にとっては刺激が強すぎる場合があります。皮膚の保湿をしたい場合には、犬専用のものを使うか、成分に気を付けて商品を選ぶようにしてください。
薬は、使い方を間違えば毒にもなり得る、ということを理解しておきましょう。
かゆみの原因に合わない薬は犬の症状を悪化させる
「犬が体をかゆそうにしていたから、家にあった薬を適当につけたら治った」という飼い主さんの声を耳にすることがあります。
しかしこれは、たまたま犬の症状と、家にあった塗り薬の相性が良かっただけだと考えられます。
犬のかゆみの原因は、外傷性の炎症であったり、アレルギーや真菌による病気など様々です。原因に合わないものを使うと、薬は成分によってそれぞれ効能が違うので、かえって症状を悪化させてしまいます。
犬が体をかゆそうにしていたら、まずは動物病院へ行って、かゆみの原因はなんなのかを調べましょう。
いつも使っている薬であっても、症状が改善しない場合には、薬が合っていない可能性があるので、獣医に相談することをおすすめします。
人間用よりも使いやすい動物用医薬品が存在する場合もある
人間用の医薬品やサプリメントを犬に与えようとすると、ほとんどの場合、薬の量を減らす必要があります。
量を減らすためには、錠剤を小さく割ったり、粉状にしたりしなくてはならず、液状のもは薄めなくてはいけません。犬に薬を飲ませるたびに、これらの作業をするとなると大変ですよね。
動物病院では、犬の体重から薬の量を計算し、その犬に合った処方をしているので、飼い主が量を調整する必要はほとんどの場合ありません。調整する必要がある場合でも、飼い主が簡単にできるような工夫がされていることが多いでしょう。
また、人間用の医薬品を、犬に与えやすいようなサイズに改良した動物専用の医薬品が存在する場合もあります。
動物病院へ行くのが面倒、お金がかかるといって、人間用の薬を使っている飼い主もいるかもしれません。しかし、自宅で人間用の薬を使うリスクや手間を踏まえて比較すると、動物病院で薬を処方してもらった方が安心ですし、飼い主の負担も減ります。
そもそも、多くの獣医師は、飼い主の独断で人間用の薬を犬に使うことは推奨していません。犬になにか症状がある時には、自分で対処しようとせず、動物病院へ行った方が良いでしょう。
犬に人間用のかゆみ止めを安全に使うための対策
ここまで、犬に人間用のかゆみ止めを使うのはリスクがあることを解説しましたが、「人間用だけど犬に処方されたものと同じ薬が家にある」など、人間用のかゆみ止め薬を使いたいという場合もありますよね。
もし犬に人間用のかゆみ止めを使う場合、安全に使う為にはどうすれば良いのでしょうか?
犬がなぜかゆがっているのか原因を探る
犬が体をかゆがる場合には、いくつか原因が考えられます。
- アレルギー
- アトピー
- 感染症
- 虫刺され
- 怪我による炎症
- 甲状腺疾患
原因によって治療に使う薬は異なりますので、かゆみの原因を探ることが重要になります。
特に皮膚の疾患は、原因を突き止めるのが難しいといわれており、動物医学の知識がない人が症状から原因を判断するのは難しいでしょう。動物病院では、症状から考えられる疾患を推測し、必要な検査を行います。
検査で原因がハッキリすれば、その原因に合う成分が入った治療薬を使用できます。もし原因が判然としない場合は、さまざまな治療法を行いながら、原因を突き止めていくことになるでしょう。
適切な治療をするためには、飼い主が勝手に原因を判断せず、まずは動物病院へ相談することが大切です。
市販薬は犬に使ってもいいかどうか獣医師に相談する
かゆみの原因が判明し、治療薬が人間用の市販薬にも存在するという場合には、まず獣医に相談してみましょう。場合によっては、使用しても良いと判断されるかもしれません。
何度も述べていますが、犬に人間の薬を使うことにはリスクが伴います。決して独断で薬を使用せず、獣医に薬の名前、成分を伝えて、使ってもいいかどうか判断してもらってから使うようにしてください。
薬の適正な使用量や使用方法は獣医師の指示に従う
人間用の薬を犬に使う際には、適正な量や使用方法を守らなくてはいけません。
飼い主の「なんとなく」という感覚で量や使い方を決めてしまうと、治りが遅くなる、症状が悪化するなどのリスクがあります。必ず獣医に薬の適正な使用量、使用方法を確かめてから犬に与えるようにしましょう。
また、治ってきたらから量を減らす、投与をやめる、というのも勝手に判断せずに獣医へ相談してください。問い合わせするのが面倒だからと適当にしてしまうと、犬の健康に大きく影響を及ぼす可能性があります。注意してください。
まとめ
『犬のかゆみ止めに人間の薬は使えるの?』という疑問について解説しました。犬の体のかゆみは、放置してしまうと
掻く→炎症が起きる→かゆみが出る→掻く→炎症が悪化→かゆみが出る
このように負のスパイラルに陥ってしまいます。犬が体をかゆそうにしていたら、早めに治療を開始することが大切です。
人間用のかゆみ止めを犬に使うことは、手軽で早く対処ができる反面リスクが多く、あまり推奨はされていません。
もし人間用のかゆみ止めを使用するときには
- かゆみの原因がはっきりしている
- 獣医から使用許可を得ている
- 用法容量を確認している
- リスクがあることを理解している
以上のことをクリアしている場合のみ、使うことをおすすめします。
もし使用して、犬の様子に異変があれば、すぐに動物病院へ行くようにしてください。薬のことで疑問がある場合には、決して自分だけで判断せずに、獣医師と相談するようにしましょう。
薬は正しく使用し、大切な愛犬の健康を守っていきましょう!