ステロイドとは?
動物病院でいただくお薬、それがどんなものか知っている飼い主さんは少ないかもしれません。
ちょっと気になって調べてみたら実はそれは「ステロイド」だった!
なんて、こんなふうにびっくりして問合わせてこられる、飼い主さんはとても多かったりします。
ステロイドは、どのような場合に処方されるのか、どのような副作用があるのか。
獣医師としての経験と、飼い主さんから多い質問をもとになるべくわかりやすく説明してみましょう。
ステロイドの働き
ステロイドは、あくまでも通称です。
獣医さんでもらうステロイドの大半が「副腎皮質ホルモン」というものです。
その名のとおり、腎臓のそばにある副腎という臓器でつくられるホルモン(微量で効果をもつ化学物質のこと)。
副腎で作られたステロイドは、体のなかでいろいろな働きをしています。
- 体のなかで起きる炎症をおさえる
- 体にエネルギーを取るように指令する
- 異常な免疫反応をおさえる
健康な犬は、体内の副腎でつくられる天然のステロイドで上手に体をコントロールしているわけですね。
ステロイドは怖くない
このように、ステロイドはもともと体の中で作られるものを人間が人工的に作っているだけです。
薬として飲んでも作用は同じなので、けして飲んで毒になるということはありません。
獣医師の診断と判断のもと、キチンと量と回数を守って飲ませれば、治療の役に立つ薬だということを理解していただきたいと思います。
ステロイドが使われる病気
愛犬にステロイドが処方される病気は、いろいろな種類があります。
先ずはそのなかでも代表的なものについて簡単に説明してみましょう。
いろいろな皮膚炎
動物病院では、皮膚炎でステロイドを処方することが一番多いですね。
皮膚炎といっても原因は様々。
アレルギー性皮膚炎・細菌性皮膚炎・外耳炎・免疫性皮膚炎などが主な病気になります。
アレルギー性皮膚炎は、とくに長くステロイドを処方されることが多いので、不安になる飼い主さんも多いですね。
なので、後でもう少し詳しく説明しようと思います。
激しい胃腸炎など
獣医師の判断にもよりますが、激しい胃腸炎が続く場合、炎症を早く止めるためにステロイドをいただくこともあります。
腫瘍の治療
「ステロイド」が一番活躍するといっても良いのが、腫瘍の治療。
人間でも同じように、腫瘍の再発と進行を抑えるためにステロイドを飲みます。
この場合のステロイドは、非常に量が多くなるのでキチンと管理して投与する必要があります。
腫瘍に対しての効果は期待できますが、抗がん剤の効果が弱くなる場合がありますので慎重に投与する必要があります。
心臓の病気
人間ではあまりないようですが、犬の場合心臓の病気で、治療のために少量のステロイドを使うことも。
その理由は、ステロイドの効果にある、「水分の排出作用」にあります。体内にたまりやすい水分を尿にして排出し、心臓の負担を減らす役割を持っています。
ステロイドの怖い副作用
病気の治療に欠かせないステロイドですが、量や回数・服用期間を間違えると副作用が起きることが知られています。
次は、副作用が起きる理由と、気をつけたい点についてわかりやすく説明しますね。
ステロイドのせいで体が怠ける
一般的に人間より犬の方がステロイドに対する耐性が高いと言われています。
でも、ステロイドを長期間服用することで副作用が起きる場合が・・・。
薬としてステロイドを飲み続けることで、副腎は「ステロイドは充分足りているから作らなくて良い」と勘違いしてしまうのです。
医原性クッシング症候群
ステロイドを長期間服用すると、お腹がふくれたような体型になり、左右対称に毛が薄くなることがあります。
その場合たくさん水を飲んで異常な食欲があるケースが考えられます。
ひどい場合は、皮膚がたるんでハリがなくなったり安静時なのにハァハァと粗い行きをするようになってしまいます。
重症のアレルギーなどで、長期間ステロイドを飲むことになった場合には充分気をつけましょう。
なお、医原性クッシングは、ステロイドの服用をやめることで徐々に治っていきます。
しかし、重症のアレルギーということは強いかゆみや皮膚の炎症があるということ。
ステロイドをやめると、炎症やかゆみがぶり返し皮膚炎が悪化します。
ステロイドの効果と副作用、しっかり見極めて上手に量と服用期間をコントロールすることが大切ですね。
肥満と糖尿
ステロイドを飲ませると、飼い主さんが慌てて病院に駆け込んでくることがあります。
「お薬を飲ませたら、お腹がすいてしかたないしオシッコばかりしているんです」
実はこれはステロイドの副作用。
ステロイドを飲むと、体はカロリーを必要だと判断します。
さらに、体内から水分を排出する働きがあるため、おしっこの回数が増え、喉が乾くことも多いのです。
ここで一番注意したいのが「食事の量」。
お腹がすいて仕方がない愛犬に、食べるだけ与えてはいけません。
加えて、普段と同じ食事であってもカロリーを効率よくエネルギーに変えてしまうため、肥満の危険性が高まってしまいます。
アレルギーなどで長期間のステロイド投与が必要な場合は、肥満に気をつけましょう。
肥満と同時に起きやすいのが糖尿病です。
長期間ステロイドを続けていて、食事も普通の量を食べているのに痩せてきているという場合は、来院してご相談されることをおすすめします。
ステロイドと上手につきあう
副作用のお話を読むと、なんだかステロイドが怖くなってしまいますよね。
そこで、ステロイドと上手につきあう秘訣を獣医師としての経験から、例をあげてお話しようと思います。
飼い主さんが薬を決めるのは要注意
私が仕事をしていた動物病院の常連さんだったAさん。
愛犬がアレルギー性皮膚病を繰り返すので、治療のために抗生物質とステロイドを処方していました。
あるとき、「このお薬を7日間飲ませて、そのあと病院につれてきてくださいね」とお伝えしました。
でもAさんが愛犬を連れてきたのはなんと1ヶ月後・・・。
わんちゃんはかゆみと皮膚炎で、見るも無残な姿になってしまっています。
Aさんは、ステロイドを愛犬に飲ませるのが怖かったので、3日間飲ませてかゆみが収まったようにみえたので薬をやめてしまっていたのです。
たしかに、ステロイドを長期服用することは副作用の原因になります。
その長期というのは、1ヶ月~半年とステロイドの量によっても変わってきます。
獣医師としては、1週間しっかり飲ませていただいてアレルギーをしっかり抑え、その次の診察でステロイドを減量して再発を遅らせたいと考えていたのです。
飼い主さんが薬を飲ませる、飲ませないの判断をして良い場合はかならずそのことを説明します。
「次回見せてくださいね」と獣医師がいう場合は、「次回の状態で薬を減らすつもりでいる」と思っていただけると嬉しいですね。
プロのような飼い主さん
動物病院の受付で、Bさんと受付担当の看護師がトラブルを起こしていました。
Bさんは「薬だけください」とおっしゃるのに、受付担当は「診察しないと薬をだせません」と押し問答。
ワンちゃんの状態をお聞きすると「毛が抜けて痒がっている」とのことでした。
でも、毛が抜けて痒がる病気にもいろいろありますよね。
細菌性皮膚炎だったら抗生物質をしっかり選びたいですし、アレルギー性皮膚炎ならステロイドの量の加減も重要です。
一番怖いのは、真菌性皮膚炎です。(真菌とは一般的にいうカビのことです)
真菌性皮膚炎の場合、ステロイドを飲ませると劇的に悪化してしまうのです。
他にも強烈な痒みが出てしまう「疥癬」という外部寄生虫が原因で痒がり脱毛が起きている場合も、ステロイドを投与すると劇的に悪化してしまいます。
獣医師は、ただ見たり触ったりしているように見えますがその中でさまざまなチェックを行っています。
「お薬だけ」という飼い主さんの判断は、危険を招くことがあることを理解しましょう。
免疫の病気
再生不良性貧血は、自分の赤血球を敵と認識して破壊していまう病気です。
ステロイドは、このような体に害になる免疫反応をおさえる働きがあるので、治療に用いられますね。
急性アレルギー・アナフィラキシーショック
ハチに刺されたり、蛇に噛まれたりするとその毒素に体が反応して強い炎症反応を起こします。
その際に、ステロイドを使って炎症をおさえます。
ワクチンで顔が腫れたり、呼吸がしづらくなりやすい体質のワンちゃんには、アレルギーの発症を予防するためにステロイドを処方するのは必要なことなんですよ。
アレルギー性皮膚炎
人間では塗り薬でステロイドを処方されることがほとんどです。
ですが犬の場合、素敵なフサフサの毛が邪魔ですし薬を塗っても舐めとってしまうことが多いので塗り薬はあまり使いません。
そこで、ステロイドの内服を処方するのが一番スタンダードな治療法になっています。
ただし、アレルギー性皮膚炎はアレルゲン(アレルギーの原因物質)に触れたり食べたりすることで常に起こり続けます。
ずっと、ステロイドを飲み続けないためにアレルゲンの特定や、食事によるアレルギーの緩和も重要な治療法になってきます。
アレルギー性皮膚炎でのステロイド治療は、しっかり炎症をおさえるまでステロイドを通常量飲み、そのあとは少ない量のステロイドで再発を防ぐのがベスト。
上手にステロイドの量をコントロールすることで、皮膚炎を抑え副作用なく治療が可能であることを知っておきましょう。
ステロイドが重要な病気もある
ステロイドが、非常に重要な病気があります。
それは腫瘍の化学療法による治療です。
腫瘍の治療の主な流れを説明しますね。
腫瘍を手術で取り除いて、組織検査という検査で腫瘍の種類を調べます。
次に、良性の腫瘍の場合はそのまま様子を見るように指示されます。
しかし、腫瘍が悪性の場合は転移や再発の危険性があるということ。
そこで、化学療法で小さな転移や、ガンのとりのこしをやっつけてしまう治療を行います。
そのために使うのが「化学療法剤」と「ステロイド」です。
化学療法剤は、活発に生きているがん細胞を毒で殺すようにガンを抑えてくれます。
ステロイドは、ガンの成長をおさえる働きがあるため、必ずと言って良いほど使われます。
この際のステロイドの量は、びっくりするほど多いです。
しかし、それは必要であるということを理解してください。
悪性の腫瘍の再発をおさえ、なるべく長く幸せに暮らしてもらいたいから、不安がある場合はかならず獣医師に相談しましょうね。
まとめ
ステロイドの善し悪しについて、いろいろ説明しました。
ステロイドはとても効果が高く安価で治療に役立つ薬です。
だからといって、ステロイドばかり出す獣医も考えもの…。
もし、「この薬を飲ませて、うちの子は大丈夫だろうか?」と思うことがあったら
- 処方した獣医師本人に「なぜ」この薬をこの期間飲ませるのかを説明してもらいましょう
- 説明に納得できない場合、ほかの動物病院に薬を持って行ってセカンドオピニオンを受けましょう
とにかく、飼い主さんが納得いくまで説明できる獣医師。
愛犬のために信頼できる判断をできるかかりつけ医と、二人三脚で愛犬の健康を守っていけると良いですね。
ユーザーのコメント
50代以上 女性 ソナタ
でも、記事を読んでステロイドはもともと体の中で作られるものを人間が人工的に作っていることを知って怖くないことを知りました。
これからは獣医師の先生方の説明を信頼して、一緒に愛犬の健康を守っていこうと思いました。
30代 女性 KEI
はじめは肉球の指間に皮膚炎を起こして、普段通っている獣医さんで抗生物質の飲み薬と塗り薬を処方してもらいました。しかしなかなか改善しないので、セカンドオピニオンとして実家の犬の通う獣医さんに連れて行きました。
そこで色々な検査後に言われたのが「ステロイドを使用すると反応する症状だと思います。」ということでした。そしてそこからステロイドでの治療が始まりましたが、一気に量を多めにして徐々に減らしていく事が大事とのことでした。
確かにそのプログラムで皮膚炎は改善されました。しかし、それは改善されたように見えただけでした。薬を減らして止めてから、また同じ症状が出てきました。
先生は「ステロイドは完治させるのではなくて、落ち着かせるものだから、繰り返し症状が出る事はある。」とのことでした。不安はありましたが、今はその治療しかないと思い、再びステロイドに頼ってしまいました。
結果、皮膚炎は以前より悪化しだして、線維化という状態になり(硬く盛り上がってきました)これではいけないと思い、様々な獣医さんの情報を調べて「皮膚専門医」の扉を叩きました。そこで愛犬の肉球の症状を見て一言、「酷いですね。ステロイドはストップして下さい。ただ、量を飲んでいたのなら徐々に減らしてゼロにしてください。」とのことでした。
そして、抗生剤と皮膚の洗浄という方法での治療に変えました。一時は、指ごと切除した方がいい位の悪化した状態でしたが、見る見る症状は良くなっていきました。ただ、血液検査ではやはり長い間ステロイドを飲んでいたので、肝機能の値が悪くなっていました。
でも、今現在はやめてから時間が経っているので、元気も出てきて安定しています。今回お伝えしたいのは、どうしてもステロイドが必要な病気や症状もあるかもしれませんが、出来る限りそれに頼らない方法を実施している獣医さんを探してほしいということです。
ステロイドはパッと見すごく良く効く薬ですが、根本を治しているのではなく落ち着かせる簡単な方法なので、安易にそれに頼る獣医さんは信頼出来ないのではないかと感じました。 ◯
30代 女性 大夏木
でも、必要なものをただ、人工的に作っているだけで心配はいらないと説明してもらえると飼い主さんも安心して愛犬に使うことができますよね〜
女性 匿名
50代以上 女性 匿名
50代以上 女性 ぽぽ
女性 まる
ここひと月ほど、週に1度ほどの嘔吐が始まってしまいました。
ステロイドに対しては色々な考え方もありますが、うちの犬は14歳という年齢も考えて、少しでも穏やかに幸せに暮らして欲しいと考えています。
30代 女性 パピヨン
膵炎から始まり腎臓の数値がみるみる悪化。もう図りきれないほど悪くなり。腎不全に。。。
点滴入院をし、数値後下がったので退院。
しかし数日後には入院前よりも悪くなってしまうことに。
色々てを尽くしたが、治療としては選択肢としてステロイドしかない。とのこと。
というのは、糸球体腎炎の可能性が高いとのこと。
ただ、副作用が気になるところであること。肺水腫等が起こることもある。
もう、すでに半月は食事ができていない。免疫力を落とすことは怖いが、このままでは尿毒症になり毒が回り死にいたる。
もしくは点滴を刺したまま病院生活になる。
今やるか、このまま衰弱するのを待つのか…
厳しい選択となりました。
先生と話し合い。ステロイドを使用しました。
それは
その日の夜から
異変が現れました。まずは左目が開かないほど充血し痛みだしたこと。
からだがよろけ始めたこと。
夜間病院へも行き、つぎの日の朝ぐったりとする我が子を病院へ。
即入院でした。肺に少し異常が出てきた。
副作用の、肺水腫だ。
そう思っていましたが、次の日には肺炎だと判明しました。肺炎を良くするよう懸命な処置をしてくださりましたが…
悪化する一方…
次の日の朝電話がなり。私はその時なぜか、覚悟をして電話に出た。
もうあぶない。と、、、。
その2時間後には自宅で息をひきとりました。
あのステロイドさえしなければ。と何度も悔やみました。が、これは正しい選択だったのでしょうか。
我が子を思う一心でしたが~。。。ただ苦しませただけだったのでしょうか。
寂しいです。
40代 女性 MaMa
ステロイドの治療の流れを説明せずに飲ませるのは心配ですよね。自分自身が病院に行って薬を処方されて、説明なしに服用できるでしょうか?病院に連れて行くのをズラしたり、お薬を途中でやめさせてしまったりして悪化してしまうというケースもあるようです。獣医さんに1週間後に来てください、と言われただけでは不安になるでしょう。その薬の作用、副作用、そして治療の流れをキチンと説明してもらうのが絶対に必要だと思います。動物相手だからでしょうか?説明不足の獣医さんが本当に多いと感じます。誤診を防ぐ為にもセカンドオピニオンも必要だと思いますね。
40代 女性 こはさん
静岡のブリーダーから成犬を購入しました。お腹を下しやすいとは言われましたが、まさか病気だったとは。うちに来てしばらく下痢か続き、何回か通院してさすがにこれだけ治らないのはおかしいと血液検査。総蛋白、アルブミンの数値が低く診断は蛋白漏出性腸症。
先生はとても親切で犬の体の事を考え、ステロイドはなるべく使いたくないと。食事療法でなんとかしたいと仰っていただきました。
しかし半年位食事療法を続けましたが完全によくはならず、一時的にステロイドを使用することになりました。不安そうな私に先生は、ずっと続ける訳ではない、一時的に腸を良くしてその間に合う餌を見つけましょうと説明してくれました。
今は飲ませ始めたばかりですが、すごく体調がよくなりました。
しかし、薬に頼らずこの子の負担が減るのを願うばかりです。
50代以上 女性 匿名
50代以上 女性 匿名
50代以上 女性 leon
ところが2年近くして急にものすごく体調が悪くなりました。別の獣医さんに行き、血液検査で肝臓がびっくりするくらい悪くなっていたことがわかり、毎日点滴に通って1か月半、一時は死を覚悟しましたが肝臓はやっと正常値になりました。初めて出されていた薬の一つがステロイドだったことがわかりました。こんなに長期に検査もなしに出すなんて、と現在も通院中の獣医さんにも驚かれましたが一気にやめると食欲がまったくなくなって下痢してしまいます。高齢でもあるし、まだ様子を見ながら調整しての闘病です。
40代 女性 匿名