犬の抗生物質とは?
近年動物医療の発展で、薬や医療技術の発展は、著しい物です。特に身近なところでは、動物病院で「抗生物質」をもらう機会はとても多くなったと思います。
でも、抗生物質と一言でいっても百種類以上のお薬があり、その作用もさまざな事を知っていますか?
身近に使っているけれど、実は知らない事が多い「抗生物質」。そこで今回は、そんな抗生物質について簡単に説明していきたいと思います。
抗生物質は「細菌」対策の大事な薬
抗生物質には、主に「天然の構成物質」「合成した構成物質」の2種類があります。どちらにしても、抗生物質のある場所では細菌は活動するのが苦手であると理解しておいてください。
細菌性皮膚炎を例に挙げると、細菌が皮膚を傷めつけて炎症を起こしている場所に抗生物質を塗ります。
そうすることで、抗生物質が細菌の増殖と活動を抑えてくれます。その隙に、体の免疫機能がしっかり皮膚を守り回復が早まるのです。
抗生物質の意外な使い道
毎年、犬のフィラリア予防でいただくお薬。実は抗生物質の1種です。
フィラリアは、寄生虫ですがフィラリアの幼虫は抗生物質がとても苦手です。抗生物質を与えることで、フィラリアは生きていられなくなるのですね。
細菌もフィラリアも、生物の一種です。抗生物質は、動物には害が少なく寄生虫や細菌を弱らせて殺す作用のあるお薬だと理解してください。
犬に抗生物質が必要になる事例とその理由
抗生物質には、いろいろな使い方があります。注射・飲み薬・塗り薬・シャンプーもあります。
それぞれ、必要な場所や効果に応じて獣医師がきちんと選んでお渡ししています。この項では、日常に多い抗生物質の出番についてお話ししましょう。
お腹を壊したのに抗生物質?
獣医師として、仕事をしていて一番よく抗生物質を処方するのが下痢の治療です。
人間では、あまり頂く事はないので「不必要なんじゃないの?」と聞かれることもありますね。
獣医師が、ワンちゃんの下痢に抗生物質を処方するのは、かなり重度の腸炎であることが多いという理由があります。
人間と違って、オオカミを祖先にもつ犬は胃酸が非常に強く少々傷んだものを食べても平気です。その反面、肉食であるため腸がとても短く腸内細菌の偏りも大きいといわれています。
普段は、強力な胃酸の殺菌効果でめったに下痢をしない犬が下痢をする場合は相当の腸のダメージが予想されます。そのダメージを回復するためには、抗生物質をつかって腸内の細菌を一旦リセットするのが良いと考えられています。
抗生物質で、クリーンになった腸にもともと腸に住んでいた腸内細菌が復活することで下痢を直すことができるんですね。
皮膚炎に抗生物質は正解?
犬はもともと北の寒い地域が原産の生き物です。日本のような高温多湿の環境では、皮膚炎を起こしやすいと考えて良いでしょう。
人間では皮膚科に行くと、軟膏やクリームを処方されます。しかし、犬の場合はそうはいかないのが現実です。
「クリームはぬった瞬間なめてしまった」
「軟膏を塗ったら、余計に気にしてしまって悪化した」
という話もよく耳にします。
そこで、皮膚炎には飲み薬で抗生物質を処方することが多くなるわけです。抗生物質は、胃腸から吸収されて血液にのって皮膚のすみずみまで届きます。
抗生物質が皮膚炎の原因になっている細菌を叩くことで、回復が早くなるのですね。
犬の抗生物質の副作用について
抗生物質は、細菌や寄生虫を殺すことができる薬です。適切な量を、適切な回数飲むことで素晴らしい効果を表します。そんな抗生物質を使うときに気を付けたい点や副作用についてお話ししましょう。
飲むのをやめさせたほうが良い場合
抗生物質を処方して、トラブルが起きることがあります。抗生物質はあくまでも薬です。体質に合わない場合は、薬を飲ませるのをやめて病院に問い合わせてくださいね。
よくある抗生物質でのトラブルとしては
- 体質に合わず飲んで30分以内に嘔吐する
- 抗生物質を飲ませると、非常に体を痒がる
- 抗生物質を飲ませると下痢が止まらなくなる
抗生物質には、いろいろな性質があるため体質によっては合わない場合もあります。その場合は、お薬を交換して他の抗生物質で対応しましょう。
もらった薬は残さないで・・・
意外と多いのが、「処方された薬を全部のませない」ケースです。抗生物質は、体でトラブルの原因になっている細菌をしっかり抑えて回復を助けるための薬。
目に見えない細菌の有無もわからないのに、「良くなったように見えたからやめた」というのはよくありません。
きちんと飲み切って頂きたいのにはもう一つ理由があります。中途半端に抗生物質を飲むことで、細菌が抗生物質を学習し慣れてしまいより悪質で強力な細菌に成長してしまうのです。
「耐性菌」と呼ばれるこれらの細菌は、どんどん成長してどんな抗生物質でも倒せない菌になる可能性があるのですね。
抗生物質はオーダーメイド
獣医師があなたの愛犬に抗生物質を処方する。
この時、処方するされる抗生物質はオーダーメイドといっても過言ではありません。愛犬のその時の体重・体調・病状、すべてをしっかり診てきちんと量をきめてお渡ししています。
ですから、体重が変わったり、体調が変わって居る場合はその薬は使わないのがベストです。
他の犬の薬をもらって使うというのは、効かないだけでなく愛犬の健康を害する危険性もあります。抗生物質は、すべてに効くオールマイティの薬ではありません。獣医師の専門的な判断の上で、安全に使うようにしてくださいね。
子犬や老犬では、飲んではいけない抗生物質もある
抗生物質には、非常にたくさんの種類があります。その中には、子犬や老犬に飲ませると内臓に負担をかけてしまうものもあります。
獣医師は、薬理学においてそのようなことについて詳しく勉強しています。子犬がお腹を壊したから、といって同居の成犬の下痢の抗生物質を飲ませるのは非常に危険ですよ。
まとめ
抗生物質、というと怖い物のように思えてしまいそうですね。抗生物質は、人間が使い始めてから1世紀しか経っていません。それまでは色々な細菌でたくさんの人や犬が死んでいたということです。
抗生物質という武器を手に入れて、健康で長生きできるようになった私たち。この素晴らしい武器を、しっかり理解して正しく使うことが大事だと理解していただけると嬉しいですね。
「この抗生物質飲ませてもいいの?」
「先生にもらった抗生物質、どんな薬か不安」
「抗生物質があまり効いていない気がする」
こんな時は、悩まずかかりつけ医に気軽に相談してください。飼い主さんの不安や、お薬の効果を知ることも獣医師にとっては大切な仕事です。先生に薬のことなんて聞いたら失礼?なんて、思う必要はありません。
飼い主さんの観察眼と、獣医師の知識を合わせてベストの抗生物質を選んで早く病気を治していきましょう。
ユーザーのコメント
20代 女性 ましゅまろ
フィラリア薬も〝予防薬〟とイメージがありますが抗生物質なんですもんね。
調子が悪い時に動物病院で診察を受けると抗生物質を処方されることも少なくないので、現代ではなくてはならないものですよね。
わが家のわんこも治療中の病気があるため抗生物質などのお薬はかかせません。体重やその時の症状により薬の量を調節したりして下さっています。
処方された飲み方など守らなければ効果が落ちることもありますもんね。
分からないことや気になった事は獣医さんに質問していますが、人により聞きづらい人もいるんですよね。もう少し質問しやすい獣医さんが増えるといいなあと思います。
50代以上 男性 シリウス
30代 女性 愛犬を守れるのは飼い主
体重の2倍の薬が出ていた・・・という事もザラのようなので、信頼できる病院を見つけないといけません。
過剰投与は臓器不全に繋がります。
40代 女性 ワン子
30代 女性 チビ