犬の薬の種類に合わせた上手な飲ませ方
薬には主に錠剤、粉末や顆粒、カプセル錠、シロップなどそれぞれの目的に合わせた様々な形状があります。
錠剤は、粉を固めた薬でコーティングすることで飲みやすくしたものや、中身が腸まで届いてから吸収されるように層状になっているものがあります。
粉末や顆粒は、錠剤などの固形に比べ、体内に早く吸収されて効き目も出やすいです。
カプセル錠は、液状や粉状の医薬品をシートや容器で包んだもの。シートや容器は、体内で溶ける原料(ゼラチなど)で作られており、錠剤よりも吸収が早いです。
シロップは液状で薬に甘みをつけたもの。粉薬などと比べて苦味が少なく、犬にとって飲みやすいかもしれません。
ここからは、薬の種類ごとの飲ませ方をご紹介します。
「錠剤」の薬を犬に飲ませる方法
- 指で口を開けて飲ませる
- 投薬器を使う
- フードに混ぜる
- 投薬用おやつに入れて食べさせる
薬のタイプで最も多いのが錠剤。抗生物質などは粉状にするとかなり苦味を感じてしまうことが多いため、錠剤の方が与えやすいといわれています。
錠剤は、以下の手順で与えましょう。
- 右手の人差し指と親指で薬を持つ
- 左手で犬の顔の上から左右の犬歯の後ろの隙間に親指と中指を入れる
- 右手の中指で口を下に開ける
- すぐに薬を舌の奥に押し込むように入れる
薬が舌の上にあるままだと苦かったり薬を出してしまうので、最初は戸惑うかもしれませんが、とにかく奥に薬を押し込むのがポイントです。
犬が薬を噛んでしまう場合は、ペット用投薬器を使って飲ませましょう。
フードに混ぜたり、投薬用おやつに入れて飲ませる場合は、お腹が空いている時間帯にフードよりも先に薬をお皿に置いてしまうのがおすすめ。
「粉末」「顆粒」の薬を犬に飲ませる方法
- ウェットフードやちゅーるなどのおやつに混ぜる
- 水やシロップに混ぜた物をシリンジで与える
犬が、ウェットフードやちゅーるなどのおやつを好んで食べるなら、それらに混ぜると味や食感をごまかせます。また、薬を水やシロップに混ぜたものをシリンジに入れ、犬歯の後ろの隙間からシリンジを横向きにして飲ませる方法もあります。
ただし、シリンジで飲ませる場合は、誤嚥(ごえん)の危険性があるため、少しずつ飲ませるように注意するのが大切です。初めての場合は、動物病院でやり方を教えてもらうなどしてからにしましょう。
「カプセル」の薬を犬に飲ませる方法
- 口を開けて飲ませる
- カプセルの中身をウェットフードやちゅーるなどのおやつに混ぜる
カプセルの場合、薬の成分が消化管まで届くようにコーティングされているので、基本的には錠剤と同じように犬の口を開けて与えるのが望ましいです。
カプセルは、喉や口の中に付着したままだと付着部分が濃い濃度の薬に長い間さらされてしまい、炎症を起こしてしまうことがあるので、投薬後は水をしっかりと飲ませることが重要です。
口を開けて与えるのが難しい場合は、カプセルの中身をウェットフードやちゅーるなどお気に入りのおやつに混ぜるという方法もあります。
ただし、カプセル剤の中には、薬剤によって中身を出して与えてしまことで、胃腸障害を引き起こしてしまう薬もあります。中身を出しても問題ないか、まずは獣医師に相談しましょう。
「液体シロップ」の薬を犬に飲ませる方法
- ウェットフードやちゅーるなどのおやつに混ぜる
- シリンジで与える
シロップは、甘く感じるように作られていることが多いので、そのままおやつやフードに混ぜたり、シリンジで吸って少しずつ飲ませてもペロペロと舐めてくれる場合が多いです。
シリンジで与える場合は、誤嚥させないようにゆっくりと少しずつ与えましょう。シリンジが初めてや、慣れていない飼い主さんは動物病院で取り扱い方を確認してからが安全です。
犬の薬の飲ませ方に関する注意点
犬に薬を与える際には様々な注意すべき事や避けるべきポイントがあります。これを守ることでよりスムーズに薬を与える事に繋がり、人も犬も良好な関係を維持できます。
今回は注意点を4つ、理由とともに解説します。
嫌がる犬に無理やり飲ませて薬嫌いにしない
子犬に無理やり薬を飲ませる経験をさせると、その時は何とか薬を飲めても、トラウマになって成犬になっても薬を見たら逃げるようになったり、顔を触られること自体が嫌になったり、飼い主さんに攻撃的な行動をとってしまうなどさまざまなリスクがあります。
また、老犬や呼吸器系や心臓の疾患を抱えている犬などの場合、無理に与えられて興奮することで体に負担をかけて急変するリスクも。
飲ませるために犬と向き合う時間はできるだけ短くして、難しい場合は他の方法で飲ませるなどしてみましょう。
飲ませる薬の形状や投与のタイミングを変えたいときは獣医師に相談する
薬にはそれぞれ効果が有効な時間が決まっており、その時間も考慮に入れた上で獣医師が処方しています。
投与のタイミングを独断で判断してしまうと、薬の持続時間、作用してほしい場所などが変わってしまい薬の効果が低下してしまう可能性があるので、タイミングを変えたいときは獣医師に必ず相談しましょう。
人がリラックスした状態で飲ませて失敗しても犬を叱らない
飼い主が緊張していると、その緊張が犬にも伝わります。失敗した時に叱ってしまったり、残念な様子をみせてしまうとストレスをかけてしまいます。
お互いストレスを感じながら投薬をするのが続くのはとても大変ですよね。上手くいかないと感じた際には、無理せずに動物病院に相談してみましょう。
薬を飲ませるタイミングや状況は時々変化させる
いつも同じ時間や、同じフードに混ぜて与えていると「この時間になると薬を飲ませられる」「いつもこのご飯に入っているから食べないようにしよう」と、犬が感づいて警戒してしまうことがあります。
薬の作用時間を考えると同じ時間になってしまうことが多いですが、同じ時間でも違う部屋で与えたり、違う人が与えるなど状況を変えてみるのがおすすめ。
また、フードや投薬用おやつに薬を混ぜて与えている場合は、薬を混ぜずにフードや投薬用おやつだけを時々与えてみましょう。状況をランダムに変化させることで薬だと気づきにくくすることもできます。
犬が薬を嫌がって飲ませ方に困った時の対処法
コツや注意点に気をつけて薬を与えようとしても、犬が嫌がる場合はどのようにしたらよいのでしょうか?
毎日薬を飲む必要がある病気の犬は、最初は上手く飲めていても次第に嫌がって以前までの方法では飲めなくなる可能性もあります。
ここからは、薬をどうしても飲んでくれない場合の対処法をご紹介します。
犬が飲みやすい薬の形状や種類に変える
錠剤をフードやおやつに混ぜている場合、粒が大きいと犬が気づいてしまう可能性が高まるので、薬を砕いて混ぜてみるという方法もあります。
薬を砕いて混ぜた場合、全てを食べたのかを必ず確認しましょう。処方された薬の容量が少ない場合、効き目にも影響することがあります。また、錠剤によっては、砕いてはいけないものも。砕いても問題ないのか事前に獣医師に相談するのがおすすめです。
また、メーカーによって薬の大きさが違ったり、口の中で溶けやすく出来ている薬もあります。他の薬の選択肢がないか、動物病院で相談してみましょう。
薬を与える方法を経口投与以外にしてもらう
例えば、フィラリアやノミマダニ予防の薬を経口で与えられない場合、背中の皮膚につけるスポットタイプの薬もあります。抗生剤などは、注射で代用できるものも多くあり、1回で2週間ほど効果が持続する薬もあります。
塗り薬や吸入薬など、経口投与以外で代用できないのかを獣医師に相談してみましょう。
まとめ
この記事では、
- 薬の種類別の飲ませ方
- 注意点
- 嫌がって飲まない時の対処法
を紹介しました。薬には、症状などに応じたさまざまな形状があり、それぞれに適した飲ませ方やコツがあります。
また、状況やタイミングを変化させる、薬が嫌いになる前にやめる、飼い主人もリラックスするなどのポイントもあります。コツやポイントをつかむことで、飼い主も愛犬もストレスが少なくなり、薬の効果を高めることにもつながるでしょう。
どうしても犬が薬を飲まない場合は、無理せずに経口以外の方法や与え方などについて、獣医師に相談してみましょう。