【獣医師監修】マルチーズがなりやすい病気は?主な症状・受診の目安、予防・早期発見のポイントを解説

【獣医師監修】マルチーズがなりやすい病気は?主な症状・受診の目安、予防・早期発見のポイントを解説

マルチーズで注意したい病気について、流涙症や外耳炎、弁膜症、膝蓋骨脱臼、タンパク喪失性腸症などを解説します。病気で見られる体調の変化や受診の目安、シニア期に気をつけたいポイント、遺伝性・先天性疾患、日常の健康管理や定期的な健康診断など、予防・早期発見につなげるために知っておきたい情報も紹介します。

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記事の監修

麻布大学獣医学部獣医学科卒業後、神奈川県内の動物病院にて勤務。獣医師の電話相談窓口やペットショップの巡回を経て、横浜市に自身の動物病院を開院。開院後、ASC永田の皮膚科塾を修了。皮膚科や小児科、産科分野に興味があり、日々の診療で力を入れさせていただいています。

マルチーズで注意したい主な病気

台の上で伏せて獣医師に触診されているマルチーズ

マルチーズで注意したい病気には、流涙症などの目の病気、外耳炎、弁膜症、膝蓋骨脱臼、タンパク喪失性腸症などがあります。

国内の保険データでは、流涙症や弁膜症、タンパク喪失性腸症、複数の種類の外耳炎などで、マルチーズの請求割合のオッズが犬全体より高い結果が報告されています。

ただし、マルチーズだから必ず発症するわけではありません。病気によって年齢や体質、遺伝的な要因など関わる要素は異なるため、犬種だけで健康状態を判断しないことが大切です。

ここでは、マルチーズを飼ううえで知っておきたい主な病気と、それぞれの特徴を紹介します。

流涙症などの目の病気

マルチーズでは、流涙症をはじめとした目の病気に注意が必要です。国内の保険データでも、流涙症は犬全体と比べて請求割合のオッズが高い結果が示されています。

流涙症とは、涙が正常に排出されなかったり、目への刺激などによって涙の量が増えたりして、涙が目からあふれる状態です。

マルチーズの白い被毛では、目の下が赤褐色に変色する「涙やけ」が目立つことがあります。ただし、涙やけは涙によって被毛が変色した状態を指す言葉で、流涙症という病態そのものと同じ意味ではありません。

また、涙が多くなる原因は涙の通り道の問題だけではなく、結膜や角膜への刺激などさまざまです。目の周りの変化だけから原因を決めつけないようにしましょう。

外耳炎などの耳の病気

マルチーズでは、外耳炎をはじめとした耳の病気にも注意が必要です。国内の保険データでは、原因未定の外耳炎のほか、アレルギー性外耳炎やマラセチア性外耳炎でも犬全体より請求割合のオッズが高い結果が示されています。

外耳炎とは、耳の入り口から鼓膜まで続く外耳道に炎症が起こった状態です。アレルギーや寄生虫、異物などが原因となるほか、細菌やマラセチアと呼ばれる酵母が増えて症状を悪化させることもあります。

マルチーズは耳が垂れていますが、耳の形だけで外耳炎の原因を説明することはできません。また、耳掃除を頻繁にすれば外耳炎を防げるとは限らず、過度な耳掃除が刺激になることもあります。

弁膜症(僧帽弁閉鎖不全症など)

マルチーズでは、心臓の弁に異常が生じる弁膜症にも注意が必要です。国内の保険データでは、マルチーズは「弁膜症」の請求割合のオッズが犬全体より高い結果となっています。

弁膜症には複数の病気が含まれますが、犬でよくみられるものの一つが、僧帽弁に変化が起こる粘液腫様僧帽弁疾患(MMVD)です。

僧帽弁は、心臓の左心房と左心室の間にある弁です。MMVDでは、この弁が変性して閉じにくくなり、心臓が収縮したときに血液の一部が逆流します。僧帽弁閉鎖不全症と呼ばれることもあります。

初期には目立った体調変化がなく、健康診断などで心雑音を指摘されたことをきっかけに見つかる場合もあります。

膝蓋骨脱臼(パテラ)

膝蓋骨脱臼は、膝のお皿にあたる膝蓋骨が、本来ある位置から内側または外側へ外れる状態です。「パテラ」と呼ばれることもあります。

小型犬でよくみられる整形外科疾患で、海外の大規模な保険データでも、マルチーズは膝蓋骨脱臼のリスクが高い犬種の一つとして報告されています。

膝蓋骨が外れる程度や頻度には個体差があり、ほとんど異変が分からない場合もあれば、歩行に影響が出る場合もあります。

滑りにくい床にする、適切な体重を維持するなど、膝への余分な負担を減らす工夫は大切です。ただし、こうした対策だけで膝蓋骨脱臼そのものを予防できるわけではありません。

タンパク喪失性腸症

マルチーズでは、タンパク喪失性腸症(PLE)にも注意が必要です。国内の保険データでは、犬全体と比べて請求割合のオッズが高い結果が示されています。

タンパク喪失性腸症とは、消化管から血液中のタンパク質が過剰に失われる状態の総称です。一つの特定の病気を指す名称ではなく、さまざまな消化器疾患に伴って起こります。

原因となる病態の一つが、腸リンパ管拡張症です。腸にあるリンパ管が拡張し、タンパク質を含むリンパ液が消化管内へ漏れ出すことで、血液中のタンパク質が減少することがあります。

マルチーズでは腸リンパ管拡張症への犬種素因が報告されています。ただし、タンパク喪失性腸症と腸リンパ管拡張症は同じ病気ではなく、タンパク喪失性腸症にはほかにもさまざまな原因があります。

マルチーズの病気で見られる症状と受診の目安

犬用ベッドの中でうつむいているマルチーズ

マルチーズの病気を早く見つけるには、飼い主が病名を判断することより、普段とは違う体調の変化に気づくことが大切です。

同じ症状でも原因は一つとは限りません。たとえば、咳は心臓だけでなく呼吸器の病気でもみられ、歩き方の変化には膝だけでなく、ほかの関節や神経などが関係している場合があります。

症状だけから特定の病気を決めつけず、変化の程度や続いている期間、悪化していないかなどを見ながら、必要に応じて動物病院へ相談しましょう。

早めに動物病院へ相談したい体調の変化

いつもと違う状態が続いている、徐々に悪化している、いったん治まっても繰り返す場合は、早めに動物病院へ相談しましょう。

たとえば、食欲が落ちている、体重が減ってきた、下痢や嘔吐を繰り返すといった変化は、消化器の病気をはじめ、さまざまな体調不良でみられます。

咳が続く、以前より散歩ですぐ疲れるようになった、呼吸の様子が普段と違うといった変化についても、心臓や呼吸器などの状態を確認してもらうきっかけになります。

歩いている途中で後ろ足を上げる、スキップするように歩く、足をかばう状態が繰り返される場合には、膝やそのほかの運動器に問題がないか診てもらうとよいでしょう。

また、涙や目やにが急に増えた、目を細める、目が赤い、耳を頻繁にかく、頭を振る、耳のにおいや耳垢が普段と違うといった変化にも注意が必要です。

症状ごとに「何日までなら様子を見てよい」と一律に決めることはできません。症状が強い場合や日常生活に影響している場合、判断に迷う場合には、早めに動物病院へ相談してください。

すぐに受診したい緊急性の高い症状

呼吸が明らかに苦しそう、突然倒れた、意識がもうろうとしているなど、普段とは明らかに異なる状態がみられた場合は、速やかに動物病院へ連絡して受診してください。

とくに、呼吸困難、意識消失、反応が著しく乏しい状態、けいれんが長く続く・繰り返すといった症状は、緊急性が高い可能性があります。

こうした症状は心臓や呼吸器、神経系、代謝異常など、さまざまな原因で起こります。症状だけから病名を判断しようとせず、受診を優先することが大切です。

可能であれば、症状が始まった時刻や続いた時間、受診までの経過を伝えられるようにしておくと、診察時の参考になります。

シニア期のマルチーズで見逃したくない体調変化

ソファの上で伏せて休んでいるマルチーズ

マルチーズがシニア期を迎えると、若い頃より寝ている時間が増えたり、動きがゆっくりになったりすることがあります。一方で、体調の変化をすべて「年齢のせい」と考えてしまうと、病気のサインを見逃すことがあります。

とくに注目したいのは、これまで普通にできていたことが少しずつ難しくなっていないかという点です。散歩のペースが落ちた、階段や段差をためらうようになった、以前より休むことが増えたなど、愛犬自身の過去の状態と比べてみましょう。

食事量や体重、飲水量、排泄の様子などについても、「シニア犬だから変わって当然」とは限りません。以前とは明らかに違う状態が続いている場合には、加齢以外の原因がないか確認することが大切です。

また、心臓の病気のように、初期には飼い主が気づくような症状がほとんどなく、診察時の心雑音などをきっかけに見つかるものもあります。

年齢を重ねたマルチーズでは、ひとつの変化だけを見るのではなく、「以前と比べてどう変わったか」を意識することが、体調の異変に気づく手がかりになります。

マルチーズで注意したい遺伝性・先天性疾患

子犬に授乳しているマルチーズの母犬

マルチーズの病気を考える際には、「遺伝性」と「先天性」は同じ意味ではないことを知っておきましょう。

先天性疾患は、生まれた時点ですでに存在している病気や異常を指します。一方、遺伝性疾患は、親から受け継いだ遺伝的な要因が発症に関係する病気です。先天性であっても、必ずしも遺伝が原因とは限りません。

先天性門脈体循環シャント

マルチーズで注意したい先天性疾患の一つに、門脈体循環シャントがあります。

門脈体循環シャントとは、本来は肝臓へ流れる血液の一部が、異常な血管を通って肝臓を迂回してしまう病気です。そのため、肝臓で処理されるはずの物質が十分に代謝されないことがあります。

マルチーズでは、肝臓の外側に異常な血管ができる「肝外性門脈体循環シャント」について、遺伝的な要因が関係していることを支持する研究が報告されています。

ただし、すべてのマルチーズが発症するわけではなく、血縁関係のある犬を対象とした研究結果から、一般的なマルチーズの発症割合をそのまま判断することはできません。

門脈体循環シャントの確認には、血液検査や画像検査などが用いられます。血清胆汁酸を測定する検査もありますが、これは遺伝子そのものを調べるDNA検査ではなく、検査結果だけで特定の病気が確定するものでもありません。

必要な検査は犬の年齢や体調、診察で確認された所見などによって異なるため、気になる点がある場合は獣医師に相談しましょう。

病気の予防・早期発見につながる健康管理

飼い主にコームでお手入れされているマルチーズ

マルチーズの健康を守るためには、病気を完全に防ごうとするより、日頃から体調を整えながら、小さな変化に気づきやすい状態をつくっておくことが大切です。

遺伝的な要因や加齢が関係する病気など、日常生活の工夫だけでは防げないものもあります。そのため、家庭での健康管理と動物病院での定期的な確認を組み合わせていきましょう。

日常の健康チェックと体調管理

家庭では、体重や体型を定期的に確認し、愛犬に合った食事量と運動量を保つことが基本です。適正な体型を維持することは、膝などの関節や心肺機能への余分な負担を減らすことにつながります。

ただし、体重を適正に保てば特定の病気を防げるという意味ではありません。年齢や活動量、体調に合わせて食事内容や量を調整することが大切です。

ブラッシングや目元・耳のお手入れなど、普段のケアも健康状態を確認する機会になります。皮膚の赤みやしこり、目や耳の様子などを自然に確認できるため、普段の状態を知っておくと変化にも気づきやすくなります。

また、床で足を滑らせることが多い場合は、滑りにくいマットを敷くなど、足腰に余分な負担がかかりにくい環境を整えるのもよいでしょう。

食事やサプリメントについては、一つの食品や成分だけに頼るのではなく、栄養バランスのとれた食事を基本に考えます。持病がある場合や療法食・サプリメントを取り入れたい場合は、獣医師に相談して選びましょう。

定期的な健康診断

見た目には元気でも、診察によって家庭では分かりにくい変化が見つかることがあります。そのため、体調に問題がないときも、定期的に健康状態を確認してもらうことが大切です。

診察では、心臓の音を聴く聴診や、身体に触れて状態を確認する触診などが行われます。必要に応じて血液検査や尿検査、画像検査などを組み合わせることで、体の状態をより詳しく確認できます。

必要な検査や健康診断を受ける間隔は、年齢やこれまでの病歴、現在の健康状態によって異なります。愛犬にどのような確認が必要か、かかりつけの獣医師と相談しながら決めていきましょう。

まとめ

飼い主に抱っこされているマルチーズ

マルチーズには、目や耳、心臓、関節、消化器などで注意しておきたい病気があります。ただし、犬種だけで将来の健康状態が決まるわけではなく、実際の体調や変化を一頭ごとに見ていくことが大切です。

愛犬の普段の様子を知っていれば、小さな変化にも気づきやすくなります。体調の変化が続く、繰り返す、日常生活に影響している場合には、自己判断せず動物病院へ相談しましょう。

また、遺伝的な要因や加齢が関係する病気など、日々の工夫だけでは防ぎきれないものもあります。食事や体重、生活環境を整えながら、定期的な健康診断も取り入れ、早期発見につなげていくことがマルチーズの健康を守るポイントです。

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