マルチーズの適正体重は?
マルチーズの成犬時の適正体重は、一般的に2.0kgから3.2kg程度が目安とされていますが、これはあくまで平均的な数値です。
骨格や筋肉量、性別、両親の体の大きさなどによって個体差が大きいため、数字だけを過信するべきではありません。
大切なのは、その子自身の骨格に見合った理想的な体型を維持することです。
体重を把握する第一歩は、定期的に体重を測定する習慣をつけることです。ご家庭で簡単にできる方法をご紹介します。
犬用の体重計で測定する
最も正確に測定できるのは、ペット用の体重計を使用する方法です。
赤ちゃん用のスケールでも代用でき、数十グラム単位の細かな変化も把握できるため、特に成長期の子犬や、厳密な体重管理が必要な犬には最適です。
人間用の体重計で測定する
人間用の体重計でも、工夫次第で測定が可能です。まず飼い主様だけが体重計に乗り、数値を記録します。
次に、愛犬をしっかりと抱っこした状態で再び体重計に乗り、数値を記録してください。
後から測定した数値から、飼い主様のみの体重を差し引いたものが、愛犬の体重となります。
測定中は愛犬が動かないように、優しく声をかけながら行うと良いでしょう。
マルチーズの適正体重の目安とチェック方法
体重の数値と合わせて、必ず行いたいのが体型チェックです。ここでは、世界中の獣医師が用いる「BCS(ボディ・コンディション・スコア)」という指標を使って、愛犬の体型が理想的かどうかを判断する方法を解説します。
BCS(ボディ・コンディション・スコア)とは
BCS(ボディ・コンディション・スコア)とは、犬の見た目と体に触れたときの感触から、体型(脂肪の付き具合)を評価するための世界共通の指標です。一般的に「痩せすぎ」から「肥満」までを5段階、または9段階で評価します。
体重計の数値だけではわからない、その子の骨格に合った適正な肉付きかを客観的に判断することができます。
理想的な体型(BCS3)のチェックポイント
5段階評価において、最も理想的とされるのが中央の「BCS3」です。ご家庭で愛犬の体を優しく撫でながら、以下のポイントを確認してみましょう。
見た目のチェック
まず、愛犬を真上から見てみましょう。肋骨の後ろから腰にかけて、なだらかなくびれが確認できるのが理想です。
次に、横から見てください。お腹が胸のラインから後ろ足の付け根に向かって、緩やかに吊り上がっていれば適正な体型です。
くびれが全くなかったり、逆にお腹が垂れ下がっていたりする場合は肥満の傾向があります。
触った時のチェック
愛犬の胸のあたりを、手のひらで優しく撫でてみてください。
薄い脂肪の層を通して、肋骨(あばら骨)の感触が程よく伝わってくる状態が理想です。
もし、力を入れなくても骨がゴツゴツと浮き出てわかる場合は痩せすぎ、逆に少し力を入れても骨の感触が分かりにくい場合は肥満のサインと考えられます。
マルチーズの体重推移(月齢別)
子犬期は一生のうちで最も成長が著しい時期です。
日々の体重変化に一喜一憂してしまうかもしれませんが、成長スピードには個体差があることを理解しておくことが大切です。以下の表は、あくまで一般的な目安として参考にしてください。
【マルチーズの月齢別 体重推移の目安】
月齢 | 体重の目安 |
---|---|
生後2ヶ月 | 0.5kg ~ 1.0kg |
生後3ヶ月 | 1.0kg ~ 1.5kg |
生後4ヶ月 | 1.3kg ~ 1.8kg |
生後6ヶ月 | 1.8kg ~ 2.5kg |
生後8ヶ月 | 2.0kg ~ 2.8kg |
1歳(成犬) | 2.0kg ~ 3.2kg |
この表の数値から多少外れていても、BCSが理想的な範囲内であり、元気に成長しているようであれば過度に心配する必要はありません。成長曲線が緩やかに右肩上がりになっているかどうかが重要です。不安な場合は、かかりつけの動物病院で相談しましょう。
マルチーズが「肥満・痩せすぎ」のリスク
適正体重を維持することは、マルチーズの健康を守る上で非常に重要です。肥満や痩せすぎは、様々な病気のリスクを高めてしまいます。
肥満が引き起こすリスク
肥満は「万病のもと」と言われるほど、体に多くの悪影響を及ぼします。特にマルチーズのような小型犬は、骨や関節が華奢であるため注意が必要です。
増えた体重を支えるために足腰への負担が大きくなり、膝のお皿が外れてしまう「膝蓋骨脱臼(パテラ)」を悪化させる一因となります。
また、心臓や気管への負担が増加し、呼吸器系の疾患につながることもあります。さらに、糖尿病や高脂血症といった代謝性疾患のリスクも高まります。
痩せすぎが引き起こすリスク
痩せすぎもまた、健康上の問題を引き起こします。体脂肪が少なすぎると、体力を維持するためのエネルギー源が不足し、疲れやすくなります。
栄養状態が悪化することで免疫力が低下し、感染症にかかりやすくなる可能性も否定できません。
また、筋肉量が減少して骨がもろくなったり、体温を正常に保つことが難しくなったりと、生命活動の維持に支障をきたす恐れがあります。
マルチーズの適正体重を維持する方法
愛犬の適正体重を維持するためには、「食事」「運動」「健康チェック」の3つの柱が基本となります。
食事管理のポイント
フードのパッケージに記載されている給与量は、あくまで一般的な目安です。愛犬の年齢、活動量、そして何よりBCSを確認しながら、その子に合った量に調整することが最も重要です。
おやつを与える際は、1日の総摂取カロリーの10%以内にとどめることを心がけましょう。カロリー計算が難しい場合は、普段与えているフードを数粒取り分けておき、おやつとして活用するのも良い方法です。
適切な運動
マルチーズは室内犬として人気ですが、心身の健康のためには適度な運動が不可欠です。1日2回、それぞれ15分から20分程度の散歩が理想的です。散歩は単なる運動だけでなく、外の匂いを嗅いだり、他の犬や人と触れ合ったりすることで、社会性を育みストレスを発散させる良い機会にもなります。
雨の日などは、室内でおもちゃを使って一緒に遊んであげるだけでも良い運動になります。
定期的な健康チェック
少なくとも月に1回は体重を測定し、記録する習慣をつけましょう。体重の変化を記録しておくことで、健康状態の異変にいち早く気づくことができます。また、年に1回から2回は動物病院で健康診断を受けることを強く推奨します。
定期的な診察は、病気の早期発見・早期治療につながり、愛犬の健康寿命を延ばすための最も確実な投資と言えるでしょう。
体重増減と関連するマルチーズの病気
適切な食事管理と運動を心がけているにもかかわらず、体重が急に増えたり減ったりする場合は、何らかの病気が隠れている可能性があります。
体重増加につながる可能性のある病気
食欲は変わらない、むしろ落ちているのに体重が増える場合、「甲状腺機能低下症」の可能性があります。これは、体の代謝を司る甲状腺ホルモンの分泌が減少し、元気がなくなり、太りやすくなる病気です。
また、お腹だけがぽっこりと膨らむように太り、水をたくさん飲む、おしっこの量が増えるといった症状が見られる場合は、「クッシング症候群(副腎皮質機能亢進症)」が疑われます。
体重減少につながる可能性のある病気
たくさん食べているのに痩せていく場合は、「糖尿病」や「消化器系の疾患」が考えられます。特に糖尿病では、多飲多尿といった症状を伴うことが多くあります。
また、食欲不振とともに体重が減少していく場合は、「腎臓病」や「心臓病」、「腫瘍(がん)」など、様々な病気のサインである可能性も否定できません。原因不明の体重減少に気づいたら、様子を見ずに、できるだけ早く動物病院を受診してください。
まとめ
マルチーズの健康管理において、適正な体重を維持することは何よりも重要です。体重計の数値だけに一喜一憂するのではなく、BCS(ボディ・コンディション・スコア)を用いて定期的に体型をチェックする習慣をつけましょう。
子犬の頃から成犬、そしてシニア期に至るまで、そのライフステージに合わせた食事管理と適度な運動を継続することが、肥満や痩せすぎを防ぎ、様々な病気のリスクを遠ざけます。
日々の丁寧な観察と定期的な健康診断が、言葉を話せない愛犬の小さなサインに気づくための鍵となります。この記事で得た知識を活かし、大切な家族であるマルチーズとの幸せな毎日を、一日でも長く育んでいきましょう。