ポインター(犬種グループ)とは?
ポインターは、主に鳥猟で活躍する猟犬の犬種グループです。獲物である鳥などを見つけると、その方向を鼻先で指し示してハンターに知らせるような能力を持っているのが特徴の1つです。
ポインターは、「鳥猟犬(ちょうりょうけん)」を中心に集められており、血統書の発行団体であるJKC(ジャパンケネルクラブ)で第7グループの「ポインター・セター」に分類されます。主にガンドッグ(銃猟犬)として活躍してきた歴史をもちます。
非常に高い「運動能力」、優れた「嗅覚」、そして猟に対する「強い集中力」が特徴の犬種グループです。
「ポインター」の名前の由来
ポインターという名前は、その特徴的な行動である「ポインティング」に由来します。これは、獲物を見つけた際に、片方の前脚を上げ、体を静止させて鼻先と尻尾を一直線にし、獲物の方向を指し示す行動のことです。
この姿勢でハンターに獲物の位置を正確に教えることから、「指し示す者(Pointer)」と呼ばれるようになりました。
「セッター」との違い
ポインターと同じく鳥猟犬である「セッター」との最も大きな違いは、獲物を主人に知らせる際の姿勢にあります。ポインターが立って「指し示す(ポイント)」のに対し、セッターは伏せて「身構える(セット)」姿勢をとります。
これは、かつて銃ではなく網を使って鳥を捕らえていた時代に、犬が網の邪魔にならないように伏せるよう訓練された名残です。また、一般的にポインターは短毛種、セッターは中毛~長毛種が多いという外見上の違いもあります。
ポインターに属する犬の種類
「ポインター」というと、イングリッシュ・ポインターを指すことが多いですが、他にもその名を持つ犬種や、同様の能力を持つ犬種が存在します。ここでは、日本でも比較的知られている代表的な犬種を紹介します。
イングリッシュ・ポインター
ポインターの代表格ともいえる犬種で、均整のとれた筋肉質な体つきと、流線形の美しいフォルムが特徴です。鳥猟犬としての能力は極めて高く、驚異的なスタミナとスピード、そして獲物への強い集中力を持ち合わせています。
家庭犬としては、飼い主に対して愛情深く、穏やかな一面も見せます。
ジャーマン・ショートヘアード・ポインター
ドイツ原産のこの犬種は、ポインティングだけでなく、撃ち落とされた獲物の回収(レトリーブ)もこなす、非常に多才な鳥猟犬です。陸地でも水中でも活躍できる万能性を持ち、家庭犬としても人気があります。
ブラウン(レバー色)の単色や、レバー色に白い斑点が入った柄などが特徴的で、知的で訓練性能が高いことでも知られています。
ジャーマン・ワイアーヘアード・ポインター
ジャーマン・ショートヘアード・ポインターをもとに、他の犬種を交配させて誕生した犬種です。最大の特徴は、名前の通り硬くゴワゴワしたワイヤー状の被毛で、悪天候やいばらの多い茂みから体を保護する役割を果たします。
より頑丈で耐候性に優れており、厳しい環境でも猟をこなすことができる犬種です。
ワイマラナー
「ワイマール地方のポインター」という意味の名を持つドイツ原産の犬種です。「グレーゴースト」の愛称で知られる滑らかで美しいグレーの被毛と、琥珀色やブルーグレーの瞳が神秘的な印象を与えます。
元々はドイツの貴族だけが飼うことを許された犬種で、非常に賢く、飼い主への忠誠心が強いことでも有名です。
ポインターの歴史
ポインターの起源は17世紀頃のヨーロッパに遡ります。スペインやポルトガルにいたポインター種の犬がイギリスに渡り、猟犬として改良されていきました。当時はまだ銃が発達しておらず、網や鷹を使った猟が主流でした。
18世紀に入り、鳥撃ち猟が銃で行われるようになると、獲物の位置を正確に指し示すポインターの能力が非常に重要視されるようになりました。スピードとスタミナ、嗅覚を向上させるため、フォックスハウンドやグレーハウンドなどの血が加えられ、現在のイングリッシュ・ポインターの基礎が築かれました。
ポインターに属する犬の特徴
ポインターグループに属する犬は、猟犬として獲物を追いかけるために必要な、非常に高い身体能力を持っています。
引き締まった筋肉質の体を持ち、長時間の運動にも耐えうる圧倒的なスタミナが特徴です。
その運動欲求は家庭犬となっても変わらないため、毎日の長時間の散歩や、ドッグランなどで思い切り走らせる機会が不可欠です。
また、優れた嗅覚と強い狩猟本能も共通しており、散歩中に鳥や小動物に強く反応することがあります。
ポインターに属する犬の性格
ポインターグループの犬は、総じて知的で訓練性能が高い傾向にあります。
飼い主に対しては非常に忠実で愛情深く、家族と過ごすことを喜びとします。猟の場では非常に高い集中力を見せますが、家庭では穏やかで落ち着いた一面も持っています。
ただし、非常に多くのエネルギーを内に秘めているため、運動不足や刺激不足になると、ストレスから問題行動を起こす可能性もあります。
子犬の頃からの適切なしつけと社会化、そして有り余るエネルギーを発散させてあげることが、共に暮らす上で非常に重要になります。
ポインター犬の値段の相場
ポインターに属する犬種の価格相場は、犬種や血統、ブリーダーの評価などによって大きく変動します。以下は、日本国内における一般的な子犬の価格相場をまとめたものです。
犬種 | 価格相場(円) |
---|---|
イングリッシュ・ポインター | 20万円~30万円 |
ジャーマン・ショートヘアード・ポインター | 30万円~50万円 |
ジャーマン・ワイアーヘアード・ポインター | 35万円~60万円 |
ワイマラナー | 30万円~40万円 |
この価格はあくまで目安であり、親犬がドッグショーのチャンピオンであったり、有名な狩猟犬の血統であったりする場合は、相場よりも高くなる傾向があります。逆に、ペットタイプとして繁殖されている場合は、比較的迎えやすい価格になることもあります。
ジャーマン・ショートヘアード・ポインターやジャーマン・ワイアーヘアード・ポインターは、国内でのブリーダーの数が少ないため、イングリッシュ・ポインターやワイマラナーに比べて高価になりやすいです。価格だけでなく、犬舎の環境やブリーダーの方針などをしっかりと確認することが大切です。
ポインターに属する犬を迎える方法
ポインターに属する犬種を家族として迎えたいと考えたとき、出会うための方法は主に3つあります。それぞれに特徴やメリット・デメリットがあるため、ご自身の状況や考え方に合わせて最適な方法を選ぶことが大切です。
ペットショップ
ペットショップは、気軽に子犬を見に行けるという利点があります。しかし、ポインター系の犬種は大型犬であり、運動量も非常に多いため、一般的なペットショップで常時展示されているケースは稀です。
もし見かけた場合でも、どのような環境で生まれ育ったのか、親犬の情報などが分かりにくい場合があるため、慎重な確認が必要です。
ブリーダー
特定の犬種を迎えたいと決めている場合、その犬種を専門に扱っているブリーダーから直接迎える方法が最も一般的です。ブリーダーは犬種の特性を深く理解しており、飼育環境や健康管理について専門的なアドバイスを受けることができます。
親犬や兄弟犬に会うことで、子犬の将来の姿や性格をある程度予測できるのも大きなメリットです。信頼できるブリーダーを探すことが、良いパートナーと出会うための鍵となります。
里親募集
動物保護団体やNPO法人が、様々な事情で飼い主を失った犬の里親を募集していることがあります。成犬であることが多いですが、性格や特徴が既に分かっているため、自分のライフスタイルに合う犬を見つけやすいという利点があります。
純血のポインター種と出会える機会は少ないかもしれませんが、ポインターの血を引くミックス犬などが保護されている場合もあります。新しい家族を待つ犬に、もう一度家庭の温かさを提供する素晴らしい選択肢の一つです。
まとめ
ポインターグループの犬たちは、優れた身体能力と知性、そして家族に対する深い愛情を兼ね備えた、魅力的なパートナーです。その美しい姿と賢さから多くの人々を惹きつけますが、彼らが本来持つ狩猟犬としての本能と、有り余るほどのエネルギーを理解することが不可欠です。
毎日の十分な運動と、愛情あるコミュニケーションを通じて深い絆を築くことができれば、アクティブなライフスタイルを送る家庭にとって、これ以上ない最高の相棒となってくれるでしょう。