ピレニアン・シープドッグの特徴
大きさ(体重・体高)
- 体高:オス 42~48cm・メス 40~46cm
- 体重:8~15kg
- 分類:中型犬
ピレニアン・シープドッグは、ピレネー山脈の牧羊犬として活躍していました。原産国となるフランスでは、最も古い起源を持つ超古代犬種と言われています。
おじいちゃんのような外見と活動的な性格を特徴とし、現地では主に「ベルジェ・デ・ピレニ」との名前で呼ばれます。
「ピレニアン・シープドッグ・ロングヘアード」と「ピレニアン・シープドッグ・スムースヘアード」の2種類が存在していますが、JKC(ジャパンケネルクラブ)の登録上は同じ犬種として扱われています。
元種であるロングヘアードには「ロング」「セミロング」があり、この2種と他の牧羊犬を交配させたのがスムースヘアードです。
原産国であるフランスを始めとしたヨーロッパでは広く親しまれていますが、日本ではまだまだ頭数が少ないレアな犬種です。
被毛(毛色・毛質)
- 毛質 :ダブルコートの中~長毛種
- 毛色の種類:グレー、フォーン、ハールクイン
ピレニアン・シープドッグは、長く硬い毛質で毛量も多めです。いわゆる羊毛状の毛質をしており、背中部分にはややウェーブがかかっています。
ロングヘアードに属する「ロング」「セミロング」ともに長毛種であり、目が毛で覆われていることが特徴です。一方でスムースヘアードは顔と脚先の毛が短く改良されていますが、ロング同様ダブルコートで毛量は変わりません。
毛色の基本はグレーですが、頭部や胸、足に白い毛が入ります。フォーンであれば、胸や前足に黒や白の差し色が入っている場合もあります。
その他にブラック、ブリンドル、ハールクインといった毛色がありますが、差し色や斑点の入らない単色がベストと言われています。
体の特徴
ピレニアン・シープドッグは、たくましく引き締まった体が特徴。筋肉量も多く、中でも大腿部は特に発達しています。小さめの中型犬でありながら非常に頼もしい体型からよく走る牧羊犬であることを窺わせます。
小さめの頭部は三角形のような形をしており、マズルはやや短め。目は綺麗なアーモンド型のダークブラウン、目の縁と鼻が黒いのが特徴ですが、毛色によってはブルーアイが発生することもあります。
途中で折れたような垂れ耳も特徴的ですが、かつては作業効率アップのため断耳・断尾されていたことも。サーベル型の垂れた尾には豊かな飾り気が備わっています。
ピレニアン・シープドッグの性格
- 勇敢で活発
- 動きが機敏
- 賢く決断力が高い
- 用心深い
- 警戒心が強い
- 家族に忠実
ピレニアン・シープドッグは、基本的に勇敢で活発な性格をしています。決断力が高く頭がいい一面もあり、訓練に向いている犬種です。また非常にタフで忍耐力があり、牧羊犬として培ってきた特性がしっかりと残っています。
飼い主に従順な性格をしていますが、一方で知らない人や初めての場所には強い警戒心を示します。この用心深さもピレニアン・シープドッグの大きな特徴となっており、警戒した相手に対しては強く吠えたてることも多いです。
「ピレニアン・シープドッグ・スムースヘアード」は、この神経質な性格が概ね改善されていると言われています。警戒心・攻撃性ともにロングヘアードよりも少なく、より一般家庭で飼いやすいと言えるでしょう。
ピレニアン・シープドッグの歴史
ピレニアン・シープドッグの正確な起源は明らかになっていません。一説によると紀元前7~6000年頃にクロマニヨン人に飼われていたと言われ、実際にフランスの古い地層から先祖犬種の骨が発掘されています。
古くからピレネー山脈の牧羊犬として活躍しており、同じフランス原産の牧羊犬であるグレート・ピレニーズとペアを組んで、ピレニアン・シープドッグは羊の管理・誘導担当、グレート・ピレニーズは護衛担当として働いていました。
第一次世界大戦の際には、持ち前の賢さと機敏さから伝令犬、偵察犬、救護犬など幅広い大役を担いましたが、戦争への参加により絶滅の危機にさらされてしまいます。
戦後、羊飼いや愛好家がフランス国外へ送り出したことによって危機を免れました。
20世紀初めには正式な犬種として認知され、飼い犬としてのみならずショードッグやアジリティなどでも活躍しています。ただし、現在のヨーロッパでも多くは牧羊犬としての飼養です。
ピレニアン・シープドッグの価格相場
ピレニアン・シープドッグは日本国内では希少な犬種ですので、販売価格は平均を出せるほどに至っていませんが、ヨーロッパでは800~1200ドル(日本円で約108,000円から163,000円)で販売されており、一般的な中型犬種の価格の範囲内と言えるでしょう。
ただし、犬の販売価格は迎え入れ元によって大きく変動します。基本的には繁殖元であるブリーダーから直接入手するのが最も安価です。
ブリーダーからオークション、そしてペットショップへと移動していきますので、ペットショップに購入する際には、同じ個体でも価格が上がっています。
また、優良な個体のみを選んで繁殖させるブリーダーであれば、価格は総じて高く設定されているでしょう。ピレニアン・シープドッグの価格は、犬自身の血統やしつけの有無などでも変わってきます。
ピレニアン・シープドッグを迎え入れる方法
ピレニアン・シープドッグの日本国内での登録数は、JKC犬種別犬籍登録頭数2021年で1頭、(2022年以降は登録無し)と非常に少なく、入手が難しい犬種です。近年では専門ブリーダーも少しずつ増えていますが、基本的には輸入で迎え入れる形となるでしょう。
その他の方法としては、里親募集でピレニアン・シープドッグに出会える可能性があります。里親とは、事情があり飼えなくなった犬の引き取り手となることです。
各地の保護施設やボランティア団体などが、行き場のない犬の引き取り手を募るサイトを立ち上げています。飼養頭数が少ないピレニアン・シープドッグが保護される確率は非常に低いのですが、まめに募集をチェックしてみるのもひとつの方法です。
ピレニアン・シープドッグの飼い方
ピレニアン・シープドッグは飼い主に従順な性格をしており、家族と良好な関係を築けます。ただし知らない人に吠えたてる個体も多く、子犬のころからのトレーニングが必要となるでしょう。
また、チャームポイントである長毛の定期的なお手入れも必要です。他にもいくつか飼い方のポイントがありますので、順に解説していきます。
運動量
ピレニアン・シープドッグは牧羊犬のため、毎日の散歩は欠かせません。出来れば朝晩の1日2回、30分ずつの散歩が望ましいでしょう。時間のあるときにはドッグスポーツで遊びを取り入れながら運動するのもおすすめです。
自立心が強い犬種ですので、飼い主がリーダーシップを取ってお散歩することが大切です。また、寒い土地に慣れており日本の蒸し暑さには非常に弱いため、真夏の長時間散歩は控えましょう。
お手入れ
ピレニアン・シープドッグは長毛でダブルコートのため、こまめなブラッシングが必要です。2~3日に1回の頻度で毛玉やもつれを防ぎましょう。
シャンプーやトリミングは最低でも1か月に1回、顔周りや脚周りなどの長すぎる毛はカットすると、高温多湿な環境でも皮膚を保護出来ますよ。
しつけ
初めての人や場所に警戒心を抱くことが、ピレニアン・シープドッグの特徴です。無駄吠えや散歩中の威嚇につながりますので、様々な刺激に慣れるしつけが必要となります。
しつけは社会化期である子犬のころから始め、なるべく様々な人や場所と接する機会を作りましょう。同じ経験を繰り返すことで、少しずつ初めて見るものに対する警戒心が解けていきます。また刺激に慣れておくことは、犬自身のストレス対策にもなります。
食事
子犬やシニアなどライフステージに合わせた総合栄養食を与えましょう。ピレニアン・シープドッグは活動量が多いため消化に良い食事がおすすめです。
また皮膚の疾患になりやすいため、EPAやDHAなどのオメガ3系不飽和脂肪酸を多く含む食事で予防するといいでしょう。
ピレニアン・シープドッグの寿命
ピレニアン・シープドッグの平均寿命は15~17歳。一般的な中型犬の平均寿命は13歳のため、長生きしやすい犬種と言われています。病気に対する抵抗力が強く、老齢期まであまり大きな病気をせず生きる個体が多いのも特徴です。
ちなみに、現在犬の年齢を人間に換算する方法として最も一般的なのは、小型犬・中型犬は1歳で人間に換算すると20歳程度になり、その後1年ごとに人間の4年分成長するとされています。
大型犬は2歳で人間に換算すると20歳程度、その後は小型犬・中型犬より成長スピードが速く、犬の1年は人間の7年として考えられています。
ピレニアンシープドッグがかかりやすい病気
- 角膜腫瘍
- 膿皮症
ピレニアン・シープドッグは病気に強いと前述しましたが、外見の特徴により疾患が出やすいのが皮膚と目です。量の多いゴワゴワとした毛は、高温多湿な日本では皮膚疾患の原因となります。
例えば、皮膚の細菌感染によって起こる膿皮症は、ピレニアン・シープドッグの発症しやすい病気と言えるでしょう。また顔を覆う豊かな毛は目に入りやすく、眼球や目周辺のトラブルも注意が必要です。
角膜に腫瘍が出来る疾患の他、お手入れを怠ると目への細菌感染や目ヤニの増加にもつながります。特に夏場は顔の長い毛はカットし、通気性のいい状態にしておくといいでしょう。
まとめ
超古代種であるピレニアン・シープドッグは、野性味の残ったたくましい体型と個性的な毛並みが魅力です。
日本ではまだ頭数の少ない希少犬種ですが、飼い主には忠実で家族以外に警戒心を持つという特性は、柴犬を彷彿とさせるところがあります。
また多くの牧羊犬がそうであるように、ピレニアン・シープドッグも非常に賢く機転の利く性格です。神経質な一面もありますが、この頭の良さによってトレーニングをスムーズに行えることでしょう。
小さめの中型犬ですので日本のコンパクトな家でも室内飼いしやすく、毎日の運動とお手入れ、そしてしつけを欠かさなければ人間のよきパートナーになります。
専門ブリーダーの数はまだ少なく、迎え入れるのは容易ではないですが、家族として深い信頼関係を結べることでしょう。