フレンチブルドッグは飼って後悔する犬種なの?
独特の風貌と愛すべきキャラクターで人気上昇中のフレンチブルドッグは、日本ケネルクラブの犬種別犬籍登録頭数でも、2019年から3年連続第5位にランクインしています。
フレンチブルドッグは、その名が示すとおり、ミニチュアブルドッグ(オールドイングリッシュブルドッグの小型犬種)にパグやテリアを交配させて生まれたフランス原産の愛玩犬です。
短くつぶれたような鼻、バット・イヤーとよばれるコウモリが羽を広げたような大きな立ち耳、ほぼ振ることができない短い尻尾、胸幅が広いがっちりとした体つき、といった身体的特徴を持つフレンチブルドッグは、一般的に小型犬に分類されますが、中型犬に分類されている場合もあります。
フレンチブルドッグの被毛は、短く滑らかで、黒地に差し毛の入るブリンドル、明るい褐色から暗い褐色までの単色のフォーン、白地に黒や褐色の斑の入るパイド、人気の高いクリームなどの色があり、珍しいところでは、ブルー系の色が混ざった個体もときどき見かけます。
あまり見かけることはありませんが、白一色の個体は、難聴のリスクがあるため、繁殖には適さないとされています。
鼻ぺちゃ犬ならではの魅力があふれる人気の犬種
フレンチブルドッグの魅力は、愛嬌のある容姿だけではありません。しぐさや行動においても、私たちをとらえて離さない魅力を持っています。
フレンチブルドッグの性格は、明るく陽気、活発で遊び好き、フレンドリーで愛情深い、穏やかで利口、神経質な面は少ない反面、頑固な部分も持ち合わせています。
家族の側にいることを好み、犬より人間が大好きという個体も多いようで、小さな子供のいる家庭でも飼育することは難しくありません。
普通、犬は自分の感情を尻尾で表わすことが多いですが、尻尾が短いフレンチブルドッグは、表情に感情が表われることが多く、その豊かな表情も魅力のひとつとなっています。
さらに、しぐさや行動が実にユニークで、とぼけたような表情と相まって、私たちを和ませてくれるのです。
飼育にはお金や手間がかかりやすい一面もある
フレンチブルドッグの大きな魅力のひとつである独特の容姿は、自然にできたものではなく、人間により作り出されたものです。
その結果、犬種特有の身体的リスクを他の犬種に比べて、多く抱えることになってしまいました。
たとえば、短い鼻の短頭種であるために温度変化に弱く、暑い時期の冷房や寒い時期の暖房など、温度調節には充分に注意しなければなりません。
さらに、犬種特有の疾患も多く、個体差はあるものの、思いかけず医療費がかかってしまうこともあります。フレンチブルドッグを飼育する場合は、それらのことも心に留めておく必要があります。
フレンチブルドッグを飼って後悔してしまう理由
魅力溢れるフレンチブルドッグですが、一緒に生活していると、楽しいことばかりではありません。
フレンチブルドッグを家族として迎え入れる前には、考えもしなかったことが起こることもあり、ときには「こんなはずじゃなかった」と思わせられることもあります。
次に、フレンチブルドッグを飼育するにあたり、発生する可能性があるトラブルの内容を見ていきましょう。
抜け毛が多く体臭が出やすい
フレンチブルドッグは短毛ですので、比較的お手入れが簡単と考えられがちですが、短毛でも毛が生え替わるため抜け毛が多く、お手入れを怠ると臭いの原因となってしまうほか、皮膚病の原因にもなりかねません。よって、こまめなブラッシングやシャンプーが必要です。
また、顔のしわの間に汚れが溜まりやすく、お湯で拭くなど、常に清潔に保っておくことが不可欠です。
さらに、アレルギーをおこしやすい犬種ですので、もしアレルギーを発症した場合には、よりいっそう入念な皮膚の手入れが必要になることを覚えておきましょう。
病気のリスクが高い犬種のため医療費がかかりやすい
先述しましたが、フレンチブルドッグは、特有の疾患が多い犬種です。
注意しなければならない疾患として、皮膚の病気、足や関節の病気、呼吸障害(短頭種気道症候群)、眼病、尿石症(シスチン)、軟口蓋過長症、鼻腔狭窄症、食物アレルギーなど、実にさまざまなものが挙げられています。
また、この犬種は、食欲旺盛ですので、食事の管理がしっかりできていないと太りすぎて心臓に負担がかかり、心臓の病気になってしまう可能性もあります。さらに、鼻が短く体温の調節が苦手ですので、熱が体に溜まりやすく、熱中症にも要注意です。
犬種特有の疾患として注意しなければならない病気が、これだけたくさん挙げられています。
もちろん、個体差はありますが、他の犬種に比べるとこれらの病気にかかるリスクが高いと考えられ、万が一病気になってしまった場合は、それなりの医療費を負担しなければならないことを覚悟しておきましょう。
マイペースで頑固な一面があるためしつけには根気が必要
普段は、ユーモラスな行動で私たちを和ませてくれるフレンチブルドッグですが、意外にマイペースで、頑固な一面を持ち合わせていますので、しつけをするときには少々根気が必要です。
しっかりとしつけをしないと、噛む力が強いので、甘噛みによるケガや、家具へのいたずらで困る、などのトラブルに発展しかねません。
比較的、無駄吠えの少ない犬種ですが、要求吠えなどを許していると、将来鳴くようになるかもしれませんので、注意が必要です。
フレンチブルドッグを飼って後悔しないための対策
他の小型の愛玩犬に比べると、注意しなければならないポイントは幾つかありますが、フレンチブルドッグは、決して飼いにくい犬種ではありません。
事前の準備を怠らなければ、始めて犬を飼う方でも、充分飼育可能です。フレンチブルドッグを迎え入れるために、どんな点に気を付ければよいのか挙げてみました。
飼育前に事前の情報収集をしっかりと行う
フレンチブルドッグを飼うと決めたら、まず、事前にフレンチブルドッグについての情報をしっかりと集めましょう。
性格や特徴、健康面や一緒に生活するうえでの(経済的なことも含めた)注意点などを、ネットや本を使って調べ、フレンチブルドッグについての理解を深めておくことが大切です。
また、専門家の意見を聞くことも情報収集の有効な手段です。
ブリーダーやドッグトレナーなどは、犬のことをよく理解しているうえに経験も豊富ですので、それらの方のお話を聞くのもよい勉強になります。さらに、実際にフレンチブルドッグを飼っている方のお話も、飼育するうえでの参考になるといえるでしょう。
注意しなければならないのは、ペットショップの店員さんは、フレンチブルドッグのプロではないという点です。
一般の人より犬と接する機会ははるかに多いかもしれませんが、実際にフレンチブルドッグを飼っている店員さんでない限り、詳しい説明を聞くことはできないことがほとんどです。
中には、犬についてよく勉強されている店員さんもおられるようですが、最近のフレンチブルドッグの繁殖事情など詳しい情報まで知っている人はまずいないと思ってよいでしょう。
フレンチブルドッグに限らず、生き物を飼う場合は、事前に情報収集をしっかりとして準備しておくことが大切で、「目と目が合って、運命だと思ったから」などと、その場で即決するようなことは、絶対にするべきではありません。
子犬の頃からきちんと必要なしつけを教える
フレンチブルドッグは、愛情深く家族が大好きなので、常に家族の側にいて甘えたがります。
そこが可愛いところでもあるのですが、際限なく甘やかしてしまうと、わがままになり手が着けられなくなりますので、しつけはできるだけ早い時期から始めることが大切です。
さほど神経質ではありませんが、頭が良いだけに、しつけ方をまちがうと、落ち込んだりすねたりすることがありますので、「褒めて伸ばす」を心がけるとよいでしょう。
さらに、人間が大好きなうえに遊ぶ事も大好きなので、ゲーム感覚でしつけを行なうと、喜んでよく覚えてくれますので、無理なく身に付けさせることができます。
人間と生活するうえで、必要最低限のことは必ず教える必要がありますが、とくにフレンチブルドッグには、以下のようなことをしっかりと覚えさせる必要があります。
- 興奮しやすい性質なので、落ち着かせる練習
- あごが強く噛む力が強いので、たとえ甘噛みでも噛み付いてはいけないもの、とくに人間の手や足には絶対に噛み付かせない練習
- 食べる物に強い執着がある個体が多いので、食事中に人間が手を出しても怒らせない練習
- 体はさほど大きくはありませんが、筋肉質で比較的体重があるので、人間に飛び付かせない練習
- お手入れのために、全身を触ることに慣れさせる練習
- ひとりでお留守番をする練習
フレンチブルドッグは愛玩犬ではありますが、プードルやチワワと違って、筋肉質で体重もあるうえ力も強いので、しっかりとしつけておかないと、事故につながる可能性もあり、たいへん危険です。
ただ単に可愛がるだけでなく、人間と犬が共に快適に暮すためのしつけをすることも、犬への愛情であるということを心に留めておきましょう。
犬のお世話に向き合う余裕ができてから飼う
フレンチブルドッグに限らず、生き物と共に生活することは、私たちの暮しに彩りや潤いを与えてくれます。
しかし、その反面、経済的な面や時間的な面で、大きな負担が生まれてくることを理解しておきましょう。
事前に、仕事や家事、育児、住宅の環境、家族全員の賛成は得ているか、などのことを充分に考え、いろいろな意味で犬を飼う余裕があるかを判断し、しっかりと情報収集、準備をしてから、犬を迎え入れることが大切です。
ことばを発することはありませんが、犬は大切な家族で、生き物です。迎え入れた以上、最期まで飼い主さんには、犬に対する責任がついてまわることを忘れてはいけません。
近年、さまざまな事情で里親の元に引き取られていく犬が増えていますが、くれぐれもそのような事態に陥ることがないように、犬を迎え入れる前には、まずしっかりと考えて判断し、それから行動しましょう。
まとめ
フレンチブルドッグは、容姿、キャラクター共に、魅力溢れる犬種です。独特の風貌と、しぐさや行動で、私たちを楽しませてくれます。
しかし、犬種特有の疾患や、しつけの面など、飼育するうえでいくつかの注意するべき点もあります。
飼育する場合は、事前にまず、自身の生活全般を見直して、フレンチブルドッグを迎え入れるのにふさわしい状態であるかどうかをよく確認し、そのうえで、フレンチブルドッグのことをよく理解しておくことが大切です。
人気上昇中の犬種ですが、さまざまな事情で里子に出されるフレンチブルドッグも、最近増えてきているようです。
「事前の情報収集や準備を充分にし、一旦家族として迎え入れたら、最期まで責任を持って大切に育てる」その覚悟があれば、あなたにもきっと楽しい「ブヒライフ」が待っていることでしょう。