アナトリアンシェパードドッグとは?特徴・歴史・性格・飼い方

アナトリアンシェパードドッグとは?特徴・歴史・性格・飼い方

「シェパード」と名の付く犬種は、世界中に60種類以上も存在するといわれており、日本では、馴染みのない犬種の方が多いかもしれません。今回は、その中から「アナトリアンシェパードドッグ」についてご紹介します。

アナトリアンシェパードドッグってどんな犬? 

伏せるアナトリアンシェパードドッグ

アナトリアンシェパードドッグは、トルコ原産の超大型犬種です。

「shephred(シェパード=羊飼い)」が、羊を世話する人という意味であることから、羊を世話する犬、すなわち牧羊犬のことを「シェパードドッグ」といわれています。シェパードドッグと名の付く犬種は世界中にたくさん存在します。

一般的に牧羊犬といえば、放牧している羊の群れを誘導している姿を思い浮かべますが、アナトリアンシェパードドッグは、羊の群れの誘導や管理をしているわけではありません。

アナトリアンシェパードドッグは、羊などの家畜をオオカミ、クマ、ジャッカル、チーターなどの害獣や泥棒から護る「護畜犬」として活躍している犬種です。

ちなみに、アナトリアンシェパードドッグは、トルコ語で「コバン・コペック(牧羊犬)」という意味です。

日本ではあまり馴染みのない犬種ですが、世界的に見ると愛好家も多く、大変人気の高い犬種です。

筋肉質で貫禄のある見た目の超大型犬

アナトリアンシェパードドッグの平均的な体格は、

  • 体高:オス:74~81cm・メス:71~79cm
  • 体重:オス:50~65kg・メス:40~55kg

護畜犬らしく貫禄のある頼もしい姿をしており、体高や体重からもかなり大きな犬であることがわかります。

オオカミなど、どう猛な害獣から家畜を護るために作られた犬なので、骨太で筋骨隆々のたくましい体つきをしていますが、超大型犬でありながら俊敏性と持久力に優れ、強い忍耐力を持ち合わせています。

幅広で丸みを帯びた大きめの頭部が特徴的ですが、よく目立つ大きな三角形の垂れ耳は、地元トルコではかなり短く断耳されることもあるようです。首や顎も太くて強く、とくに顎はきょう靱で、非常に噛む力が強い犬種です。

優れた身体能力を発揮する体全体は、どう猛な害獣と戦えるほど発達した筋肉でできており、極寒や極暑のような極端な気候にも対応することができます。

毛色はさまざまで厚い二重構造の毛を持つ短毛種

アナトリアンシェパードドッグの被毛は、ダブルコートの短毛で尾はふさふさとして垂れています。

頭部は、マズル(目元から鼻先・口の部分)や耳などが黒いブラックマスクが一般的ですが、体全体はフォーン(子鹿色とも呼ばれるゴールド味がある明るいブラウン)や、ウィートン(小麦色)などさまざまな種類があり、斑点など柄のある個体もいます。

かつて遊牧民とともに移動生活を送りながら、家畜を護る仕事をしている段階で、オオカミなどの害獣に気付かれにくくするため、姿形が家畜に近い個体を選んで繁殖させているうちに、現在のような大きさや毛色になったようです。

アナトリアンシェパードのワイルドで堂々とした雰囲気と、穏やかな表情は多くの人を惹き付けるほど魅力的で、現在ではショードッグとしても大変人気があります。

アナトリアンシェパードドッグの歴史

首輪をしたアナトリアンシェパードドッグ

アナトリアンシェパードドッグは、トルコを中心に飼育されている犬種で、祖先は約6,000年前から存在していたといわれるジョパン・コペギ(Coban Kopegi)という超古代犬種。

ジョパン・コペギから枝分かれして、トルコ西部原産のアクバシュ、中部原産のカンガール・ドッグ(カラバシュ)、東部原産のカルス・ドッグなどの犬種が誕生しました。これらの犬種は約2,000年の歴史を持つといわれています。

家畜を護る犬として古くからトルコ周辺に存在した

アナトリアンシェパードドッグは、1,800年頃、カンガール・ドッグをベースにカルス・ドッグや、アクバシュなどを先祖に持つトルコ原産の護畜犬種や、モロサスタイプ(がっしりとした体格を持つマスティフ・タイプの犬のこと)の犬や、ワーキング・コリーなどが自然交雑することにより出来上がった犬種とされています。

ベースとなったカンガール・ドッグとは、姿形がとてもよく似ていますが、アナトリアンシェパードドッグの方が走るスピードはやや劣るものの、サイズが大きく、力の強さでは優れているといわれています。

カンガール・ドッグは、原産地トルコでは作業犬としてだけでなく、国宝としても扱われている犬種です。

アナトリアンシェパードドッグは、トルコ中部アナトリア地方原産であることからこの名が付けられ、遊牧民の家畜をオオカミなどのどう猛な野生動物や泥棒から護る護畜犬として、また、嗅覚を使って狩りをするセントハンドや軍用犬として重宝されていました。

やがてアナトリアンシェパードドッグの勇敢で忠実な性質や、高い身体能力が認められ、トルコを訪れた西欧人により西欧諸国に輸入されるようになりましたが、この時点ではまだ正式に犬種として登録されていたわけではありません。

ごく最近になって欧米で犬種として登録された

1950年、はじめてアメリカに輸入され、コヨーテなどの害獣から家畜を守る護畜犬として使われていましたが、その頃はほとんどアナトリアンシェパードドッグの存在を知られることはありませんでした。

1967年、2頭のアナトリアンシェパードドッグの子犬をトルコに駐在していたアメリカ兵が、アメリカに連れ帰ってブリーディングを始めました。

この2頭から派生した犬を、1996年にアメリカンケネルクラブ(AKC)が「アナトリアンシェパードドッグ」として登録し、正式に犬種認定したことから、1970年代後半~1980年代にかけてようやく広く人々に知られるようになります。当初は外観上の美しさや性質ではなく、護畜犬としての実用性のみに焦点があてられていました。

その後、勇敢で忠誠心があり番犬にもなるということから、この犬種に注目が集まるようになりました。

現在、アメリカでアナトリアンシェパードドッグとして販売されている犬のほとんどがアメリカでブリーディングされた犬の子孫たちです。

日本にも個人で輸入した子犬を飼育する愛好家が少数おられますが、これらの犬は日本国内で生まれていないため、国内登録頭数には数えられていません。

アナトリアンシェパードドッグの性格

こっちを見つめるアナトリアンシェパードドッグ

アナトリアンシェパードドッグは、護畜犬にルーツを持つ犬なので今でもその性質を色濃く残しています。

筋骨隆々としたワイルドな見た目からはほど遠い性質も兼ね備えていることから、見た目と中身のギャップがこの犬種の大きな魅力のひとつでもあります。

警戒心や防衛本能が強く番犬向き

アナトリアンシェパードドッグは、かつて家畜を護るために働いていた犬なので、防衛本能や警戒心が非常に強くとても勇敢。

見知らぬ人や見慣れないものはしっかりと観察し、少しでも異常を感じ取ると迷うことなく攻撃します。

一方で、忠実で穏やか面も兼ね備えており、飼い主に危害を加える心配がないと判断した場合は友好的に接することもできることから、番犬としては最高のバランスを持つ犬種であるといえます。

小さな子供やネコ、予想外の行動を取りやすい人や動物には、強い警戒心を抱き、それらの急な動きに驚いて攻撃してしまうことがあります。アナトリアンシェパードドッグのテリトリーに入って行く場合は注意が必要です。

家族には忠誠心が強く穏やかに接する

アナトリアンシェパードドッグは、優秀な番犬になり得る犬種ですが、防衛本能が強いというだけで、本来は攻撃的な性格ではありません。

普段は見た目とは違い、おっとりとして穏やか、とても愛嬌のある扱いやすいキャラクターです。何より飼い主には従順で忠実、愛情深くフレンドリー。

しかし、これは子犬の時期にしっかりとしつけ、訓練されている場合にいえることで、中途半端なしつけや訓練しかされていないと、問題行動を起こしてしまうことも。これはアナトリアンシェパードドッグに限ったことではなく、全ての犬種にいえることです。

護畜犬特有の自立心の強さから、飼い主には強いリーダーシップが求められますが、一度リーダーと認めると、非常に忠実で従順です。

知能が高く利口な犬種なので、正しいしつけ、訓練ができる飼い主にとっては、飼育しやすい犬種であるといえます。

判断力がありひとりで行動することが好き

アナトリアンシェパードドッグは、かつて自分のテリトリーや飼い主、家畜を自分の意志で護ってきたという歴史を持つ犬なので、時には自分の判断で行動し、飼い主の指示に従わないこともあります。

その点を踏まえて、専門のトレーナーに相談しながらできるだけ早い時期からしっかりとしつけをしておくことはとても重要です。

さらに、単独で仕事をこなしていたことから、ひとりで行動することを好む傾向が強いことも。自由に過ごせる時間や場所を作ってあげることも大切です。

アナトリアンシェパードドッグを飼う時のポイント

女性とアナトリアンシェパードドッグ

アナトリアンシェパードドッグは、性格面からも決して飼いにくい犬種ではありません。しかし、超大型犬であること、護畜犬にルーツを持つ自立心が強い性質から、正しいしつけや訓練が行えていないと事故に繋がってしまうことも。

しつけに自身がなかったり、知識がない場合は、無理せずに専門のトレーナーの協力を得ながら正しいしつけを行い、愛犬と信頼関係を築くことができれば家族にとってとても頼もしい存在となってくれます。犬の飼育初心者の方や、小さな子供がいる家庭には、おすすめの犬種ではありません。

犬がのんびり動ける広い飼育スペースを用意する

アナトリアンシェパードドッグを飼育するには、犬専用の広いスペースが必要です。

超大型犬であることに加えて、色濃く残る護畜犬の習性から、犬がゆっくりと落ち着いて過ごせる場所とは別に、犬が自由に歩き回れる屋外の広い敷地を確保することで、犬がストレスを溜めるのを防ぐことができます。

さらに、高い身体能力を備えているので、脱走防止の柵を設けるなどの準備が必要です。

激しい運動は足腰に負担をかけやすいので避ける

アナトリアンシェパードドッグには、やや多めの運動量が必要。散歩は1日少なくと1時間以上行うことが大切です。

ただし、体重が重く足腰に負担がかかりやすいのであまり激しい運動はおすすめできません。飼い主さんと遊びながらコミュニケーションをとるなど、関節や腰に負担がかからない工夫をすることが大切です。

換毛期の抜け毛は多いため丁寧にブラッシングをする

アナトリアンシェパードドッグの被毛は短毛ですが、ダブルコートなので抜け毛が多く、少なくとも週に1~2回のブラッシングが必要です。

さらに、換毛期には大量の抜け毛が発生するので、毎日のブラッシングで抜けた毛を取り除き、常に清潔に保つように心がけましょう。シャンプーは最低でも月1回行い、皮膚を清潔に保つことも忘れてはいけません。

定期的に健康診断を受けさせる

アナトリアンシェパードドッグの平均寿命は10~13才くらいで、超大型犬の中では比較的長いといわれています。

護畜犬らしい頑丈な体をしていますが、大型犬特有の股関節形成不全症や、眼瞼内反症を発症しやすいため、定期的な健康診断を受けさせることで、病気の予防にもつながります。

また、垂れ耳の犬種は耳の炎症を起こしやすいため、日頃のお手入れもかかさないように心がけましょう。

ただし、耳掃除をしすぎると皮膚のバリア機能が損なわれる危険性があるので要注意。特に、綿棒を使用しての耳掃除はデリケートな外耳道の皮膚を傷つけたり、せっかくの自浄作用で外に出てきた汚れを耳の奥に押し戻してしまう恐れがあるので禁物。耳かきも耳を傷つけるのでNGです。

アナトリアンシェパードドッグを迎え入れる方法 

アナトリアンシェパードドッグ子犬

現在、ジャパンケンネルクラブ(JKC)には、アナトリアンシェパードの登録はありません。
また、日本国内でナトリアンシェパードのブリーダーも存在していません。

では、アナトリアンシェパードの子犬を迎え入れるにはどうすればよいのでしょうか?

海外から犬を個人輸入する方法が一般的

日本国内でアナトリアンシェパードを飼う場合は、海外からの輸入が一般的です。

しかし、海外のブリーダーを見つけて個人で輸入する場合、金銭面や輸入方法などに関する様々なトラブルに注意する必要があり、現実にはなかなか難しいのが現状のようです。

とはいえ、日本国内にアナトリアンシェパードが1頭もいないわけではなく、個人で輸入して飼育している愛好家が、ごく少数ですがいらっしゃるので、その方々から、入手方法などのアドバイスを受けるのがよいでしょう。

犬の輸入価格は高額になることが多い

一般的に、海外から犬を輸入する場合、運輸費用や各種手続き費用などがかかるので輸入価格は高額になることがほとんどです。

アナトリアンシェパードの場合も例外ではなく、個人輸入で購入する場合、取引方法にもよりますが1頭50~100万円程度はかかることを覚えておきましょう。

個人で海外のブリーダーを見つけて直接取引をすれば、多少安く入手できるかもしれませんが何の保証もなく、トラブルになる可能性も。

その点、仲介業者を通した取引であれば手数料が発生した分、購入価格は上がりますが安全性を高めることはできるでしょう。

海外の良いブリーダーを見つけるには、実際にアナトリアンシェパードを飼育している飼い主さんから、有力な情報を得るのが一番安全で安心な方法でしょう。

まとめ

笑顔のアナトリアンシェパードドッグ

アナトリアンシェパードドッグは、ワイルドな容姿や見た目とギャップのあるおだやかな性格など、さまざまな魅力を備えているので、この犬に心奪われる方も多いのではないでしょうか。

しかし、飼育環境やその他いろいろな点で、アナトリアンシェパードドッグを日本で飼育するのは、容易なことではありません。

アナトリアンシェパードドッグを気に入り、飼いたいと思う方は、実際に飼育されている飼い主さんからブリーダーや輸入方法、飼育上の注意点など、詳しい情報やアドバイスを聞いてみることをおすすめします。

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