フロントラインプラスとは?
フロントラインプラスは、犬の体に寄生するノミやマダニなどの外部寄生虫を駆除・予防するための動物用医薬品です。獣医師の指導の下で使用することを推奨する医薬品として動物病院で処方されるほか、一部のペットショップやオンラインストアでも購入が可能です。
使い方は、犬の首筋(肩甲骨の間)の皮膚に直接、ピペットに入った薬液を垂らすだけのスポットオンタイプと呼ばれる形式で、手軽に投薬できる点が特徴です。多くの飼い主さんに長年使用されており、高い信頼性を持つ寄生虫対策の選択肢の一つとされています。
フロントライン(旧商品)とフロントラインプラスの違い
現在、主流となっている「フロントラインプラス」は、旧商品である「フロントラインスポットオン」を改良した製品です。両者の最も大きな違いは、有効成分にあります。
特徴 | フロントラインスポットオン(旧商品) | フロントラインプラス |
---|---|---|
主な有効成分 | フィプロニル | フィプロニル、(S)-メトプレン |
ノミへの効果 | 成ノミの駆除 |
成ノミの駆除に加え、卵・幼虫の発育阻害
|
マダニへの効果 | 駆除 | 駆除 |
この表から分かる通り、フロントラインプラスは旧商品が持っていたフィプロニルによる「成ノミ・マダニの駆除効果」はそのままに、新たに「(S)-メトプレン」が追加されています。
この改善により、犬の体に寄生している成ノミを駆除するだけでなく、そのノミが産み落とした卵が孵化したり、幼虫が成長したりするのを防ぐ効果が加わりました。
ノミのライフサイクルそのものを断ち切ることが可能となり、室内環境でのノミの再発生をより強力に抑制できるようになった点が、最大の進化と言えます。
フロントラインプラスの効果
フロントラインプラスは1回の投薬で、犬に寄生する主要な外部寄生虫に対して包括的な効果を発揮します。
ノミの駆除と寄生予防
投薬後、犬の体に寄生した成ノミを24時間以内にほぼ100%駆除します。さらに、新たに寄生しようとするノミに対しても、約1ヶ月間にわたり駆除効果が持続するため、継続的な寄生を予防します。
マダニの駆除
犬に寄生したマダニを48時間以内に駆除します。マダニは重篤な感染症を媒介することが知られているため、その駆除は犬の健康を守る上で非常に重要です。マダニに対する駆除効果も約1ヶ月間持続します。
ノミの卵と幼虫の発育阻害
フロントラインプラスの特長的な効果です。犬の体にいるノミが産み付けた卵の孵化や、孵化した幼虫の成長を妨げます。これにより、ノミのライフサイクルを断ち切り、家庭環境内での再寄生サイクルを防ぐことに貢献します。
シラミ・ハジラミの駆除
犬の被毛に寄生するシラミやハジラミも駆除する効果があります。これらの寄生虫は、かゆみや皮膚炎の原因となります。
フロントラインプラスの成分
フロントラインプラスの効果は、2つの有効成分の働きによるものです。それぞれの成分が異なる役割を担うことで、寄生虫に対して多角的なアプローチを可能にしています。
フィプロニル
ノミやマダニなど、寄生虫の中枢神経系に作用する殺虫成分です。寄生虫の神経を過度に興奮させて麻痺させることで、最終的に死に至らしめます。
この成分は、犬などの哺乳類にはほとんど影響を与えない一方で、寄生虫には強力に作用するという選択毒性の高さが特徴です。主に成虫の駆除を担当します。
(S)-メトプレン
昆虫の成長を抑制する成分(昆虫成長抑制剤)です。ノミの成虫には直接作用しませんが、ノミが産んだ卵の孵化や、幼虫からサナギへの変態を阻害します。これにより、ノミが次世代の成虫となって繁殖することを防ぎます。
フィプロニルが今いる成虫を駆除し、(S)-メトプレンが未来の成虫を増やさない、という二段構えの対策を実現する重要な成分です。
フロントラインプラスの使い方
フロントラインプラスは正しい手順で使うことで、その効果を最大限に引き出すことができます。ここでは具体的な使い方と、注意すべきポイントを解説します。
使い方の手順
投薬は非常にシンプルで、ご家庭で簡単に行えます。
1. ピペットを準備する
パッケージからピペットを1本取り出します。先端が黄色い線で示された部分を折り取れるようになっていますので、その部分を完全に折って開封します。この時、薬液がこぼれないように、先端を体や顔から離して上に向けてください。
2. 犬の被毛をかき分ける
犬の首の後ろ、肩甲骨の間の毛をしっかりとかき分け、皮膚が直接見える状態にします。この場所は犬が自分で舐めることができないため、安全に投薬できる最適なポイントです。
3. 肩甲骨の間に薬液を垂らす
露出した皮膚にピペットの先端を直接つけ、薬液を全量、ゆっくりと垂らします。1点に絞り出すように投薬するのがコツです。大型犬の場合は、肩甲骨の間から背骨に沿って数カ所に分けて滴下すると、より効果的に成分が広がります。
注意点とポイント
効果と安全性を確保するために、いくつかの注意点があります。
投薬直後のシャンプーは避ける
有効成分は皮脂腺に蓄えられ、そこから皮脂とともに全身の皮膚へ広がっていきます。そのため、投薬後1日(24時間)はシャンプーや水浴びを避けてください。皮脂が洗い流されると、成分の広がりが不十分になり、効果が薄れる可能性があります。
皮膚に直接垂らす
薬液が毛の上に付着してしまうと、有効成分が皮膚に吸収されにくくなります。必ず毛をかき分けて、皮膚に直接薬液が付くようにしてください。
完全に乾くまで触らない
投薬した部分が完全に乾くまで、犬や他のペット、そして人が触れないように注意しましょう。特に、小さなお子様がいるご家庭では、投薬後しばらくは犬と接触させないよう配慮が必要です。
体重に合った製品を選ぶ
フロントラインプラスは、犬の体重別にパッケージが分かれています。必ず愛犬の体重を正確に測定し、対応する製品を選んでください。体重に合わない製品を使用すると、効果が不十分であったり、過剰投与となったりする可能性があります。
フロントラインプラスとジェネリック商品の違い
フロントラインプラスには、ジェネリック医薬品(後発医薬品)も存在します。ジェネリック医薬品とは、新薬(先発医薬品)の特許が切れた後に、他のメーカーが同じ有効成分を用いて製造・販売する医薬品のことです。
有効成分が同じであるため、ノミやマダニに対する基本的な駆除・予防効果は同等であるとされています。開発コストが抑えられているため、一般的にジェネリック医薬品の方が価格は安価になる傾向があります。
違いとしては、有効成分以外の添加物が異なる場合があります。添加物は薬の安定性を保ったり、皮膚への吸収を助けたりする役割を持ちますが、この違いが薬の広がり方や、ごく稀に皮膚への刺激などに微細な差を生む可能性はゼロではありません。
どちらも国から承認を受けた安全な動物用医薬品ですが、長年の販売実績とブランドへの信頼性を重視する場合は先発品のフロントラインプラス、コストを重視する場合はジェネリック品という選択が考えられます。どちらを選ぶか迷う場合は、獣医師に相談することをおすすめします。
フロントラインプラスのおすすめ通販
フロントラインプラスは、愛犬の体重に合わせて適切な製品を選ぶ必要があります。ここでは、オンラインで購入可能な各サイズの商品について、その特徴と対象となる犬種の目安を紹介します。
フロントライン プラス ドッグ 犬用 XS
超小型犬用の製品で、体重5kg未満の犬が対象です。体が非常に小さい犬種のために設計されており、薬液の量が適切に調整されています。チワワ、ヨークシャー・テリア、ポメラニアン、トイ・プードル(タイニー・ティーカップサイズ)などの犬種に適しています。
初めてノミ・マダニ駆除薬を使用する子犬(8週齢以上)にも、まずこのサイズから始めることが多いです。
フロントライン プラス ドッグ 犬用 S
小型犬用の製品で、体重5kg以上10kg未満の犬が対象です。日本で飼育されている人気の犬種が多く含まれるサイズ帯です。
ミニチュア・ダックスフンド、シーズー、パピヨン、少し大きめのトイ・プードルやポメラニアン、豆柴などが主な対象となります。活発に動き回る小型犬を、散歩中の寄生虫リスクから守ります。
フロントライン プラス ドッグ 犬用 M
中型犬用の製品で、体重10kg以上20kg未満の犬が対象です。このサイズには、日本犬の代表格である柴犬や、人気のフレンチ・ブルドッグ、ウェルシュ・コーギー・ペンブローク、ビーグル、ボーダー・コリーなどが含まれます。
ドッグランやアウトドアなど、活動範囲が広がる中型犬にとって、マダニ対策は特に重要です。
フロントライン プラス ドッグ 犬用 L
大型犬用の製品で、体重20kg以上40kg未満の犬が対象です。体が大きく、屋外で過ごす時間も長くなりがちな大型犬をしっかりと守るために、十分な薬量が含まれています。
ゴールデン・レトリーバー、ラブラドール・レトリーバー、シベリアン・ハスキー、スタンダード・プードルなどがこのサイズに該当します。
フロントライン プラス ドッグ 犬用 XL
超大型犬用の製品で、体重40kg以上の犬が対象です。非常に体の大きな犬種に合わせて設計されています。
グレート・ピレニーズ、バーニーズ・マウンテン・ドッグ、秋田犬、セント・バーナードなど、体重が40kgを超える犬には、必ずこのXLサイズを使用してください。適切な薬液量でなければ効果が全身に行き渡らない可能性があります。
フロントラインプラスが効かない場合のチェックリスト
「フロントラインプラスを使っているのにノミを見かける」という場合、いくつかの原因が考えられます。薬の効果を疑う前に、以下の点を確認してみてください。
1、投薬方法が正しいか?
薬液が毛に付着してしまい、皮膚に直接塗布できていない可能性があります。有効成分は皮膚の表面にある皮脂腺から吸収されるため、毛をしっかりかき分けて、皮膚に直接垂らすことが最も重要です。
2、投薬前後にシャンプーをしていないか?
投薬の直前や直後にシャンプーをすると、皮膚の皮脂が洗い流されてしまい、有効成分が全身に行き渡るのを妨げてしまいます。投薬前後2日間は、シャンプーや激しい水浴びは避けるようにしてください。
3、使用期限が切れていないか?
医薬品には使用期限があります。期限が切れた製品は、成分が劣化して十分な効果を発揮できない可能性があります。必ずパッケージに記載されている使用期限を確認してください。
4、飼育環境(屋内・屋外)でノミが大量発生していないか?
犬の体にいるノミは、飼育環境全体のノミのわずか5%程度と言われています。残りの95%は、卵や幼虫、サナギの状態でカーペットやソファ、犬の寝床などに潜んでいます。
薬で犬の体のノミを駆除しても、環境中にいるノミが次々と寄生してくるため、「効いていない」ように見えることがあります。
チェックする際のポイント
これらのチェックリストの中でも特に重要なのは、「正しい投薬方法」と「環境対策」です。薬が効かないと感じた場合、まずは投薬手順を再確認し、同時に掃除機をこまめにかけたり、犬の寝床を熱湯消毒したりするなど、環境中のノミを減らす努力を並行して行うことが解決の鍵となります。
それでも改善しない場合は、動物病院に相談し、異なる成分の駆除薬を検討することも一つの方法です。
まとめ
フロントラインプラスは、犬に寄生するノミの成虫だけでなく、その卵や幼虫、さらにはマダニにも効果を発揮する、信頼性の高い外部寄生虫駆除薬です。2つの有効成分が多角的に作用することで、愛犬を寄生虫の脅威から守り、家庭内での再繁殖を防ぎます。
その効果を最大限に発揮させるためには、愛犬の体重に合った製品を選び、肩甲骨の間の皮膚に直接、全量を塗布するという正しい使い方を遵守することが不可欠です。
もし「効果がない」と感じた場合は、投薬方法や環境に問題がないかを見直し、必要であれば動物病院に相談してください。大切な家族である愛犬の健康を守るため、適切な寄生虫対策を継続していきましょう。