犬のお腹がキュルキュル鳴る主な原因
愛犬のお腹から聞こえる「キュルキュル」という音は心配になりますが、多くは一時的な生理現象です。ただし、しっかり観察して原因を確認することが重要です。
お腹が空いているサイン
犬のお腹が鳴る最も一般的な理由の一つは空腹です。人間と同様に胃や腸が食事に備えて動き出すことで音が出ます。食事時間が近づくと「ご飯まだ?」というサインとして鳴ることがあり、健康な証拠です。
食事が体に合っていない
毎日食べているフード(食事)が愛犬の体に合わない可能性もあります。特定の原材料に対する食物不耐症(アレルギーとは異なる消化の問題)や、フードを急に変更した場合、また品質の低いフードを与えていると消化不良が起き、お腹がキュルキュル鳴ることがあります。トイ・プードルやミニチュア・ダックスフンドなどデリケートな消化器を持つ犬種では特に注意が必要です。
ガスが溜まっている
お腹にガスが溜まることも、キュルキュル音の原因です。食事の際に空気を飲み込む「空気嚥下症(くうきえんげしょう)」や、消化しきれない食べ物が腸内で発酵してガスを発生させることが考えられます。早食いや、マズルの短いパグやフレンチ・ブルドッグなどの犬種は、空気を飲み込みやすい傾向があります。
ストレスを感じている
犬は繊細で、環境の変化や不安、恐怖などによるストレスが消化器の調子を乱すことがあります。引っ越し、長時間の留守番、雷や花火の音、新しい家族やペットの登場などがストレスとなる場合があります。日常的に愛犬のストレスサインを観察しましょう。
胃腸機能の低下(運動不足)
適度な運動は消化管を健康的に動かすために重要です。運動不足が続くと胃腸の蠕動(ぜんどう)運動が鈍り、消化不良や便秘になりやすく、ガスが溜まりお腹が鳴ることもあります。特に室内飼育が多いチワワやポメラニアンなどの小型犬は、意識して運動を促しましょう。
異物誤飲
犬がおもちゃの破片、布、石、ビニールなどの食べ物でないものを飲み込んでしまう「異物誤飲(いぶつごいん)」にも注意が必要です。消化管内で異物が詰まったり刺激したりすると腸の動きが異常になり、お腹がキュルキュルと鳴るだけでなく、腸閉塞や腸穿孔、腹膜炎など重篤な症状を引き起こすこともあります。異物誤飲を疑ったらすぐに動物病院を受診してください。
犬のお腹がキュルキュル鳴るときに考えられる病気
お腹の音が長く続く、音が大きい、他の症状が伴う場合は病気が隠れている可能性があります。自己判断をせず早めに動物病院を受診することが大切です。
胃腸炎
胃や腸の粘膜に炎症が起きる病気で、犬のお腹のトラブルで一般的です。ウイルスや細菌、寄生虫、食べ慣れないもの、ストレスなどが原因で、嘔吐や下痢と共にお腹のキュルキュル音が出ることがあります。
膵炎(すいえん)
膵臓に炎症が起きる病気で、高脂肪食のほか遺伝的要因や薬剤投与など複合的な要因で発症します。激しい腹痛、繰り返す嘔吐、下痢、食欲不振、お腹の異常な動きが現れます。特にミニチュア・シュナウザーやコッカー・スパニエルは遺伝的に膵炎になりやすい犬種です。
腸閉塞
腸管に異物などが詰まり、内容物が通過できなくなる危険な状態です。主な原因は異物誤飲で、ほかにも腫瘍や腸重積(ちょうじゅうせき)で発症します。激しい嘔吐、腹痛、元気消失がみられ、腸が拡張して異常な音が聞こえる場合があります。腸穿孔や腹膜炎を起こす恐れもあり緊急手術が必要です。
巨大食道症
食道が異常に拡張して食べ物を胃へ送る機能が低下する病気で、食後に未消化の食べ物を吐き戻すことが特徴です。栄養不良や誤嚥性肺炎を引き起こすことがあり、消化管の動きが乱れることでお腹の音が聞こえる場合があります。
炎症性腸疾患(IBD)
原因不明の慢性的な腸管の炎症で、長期間の下痢や嘔吐、体重減少が特徴です。免疫系の異常が関係しているとされ、症状の良化と悪化を繰り返すことが多く、お腹のキュルキュル音が持続的に聞こえることがあります。
寄生虫
回虫、鞭虫、コクシジウムなどの寄生虫がいると、消化不良、腸粘膜の刺激により下痢や嘔吐、お腹の音がすることがあります。子犬では月齢に応じた定期的な駆虫と便検査が推奨されます。
アレルギー
特定の食べ物のタンパク質に体が過剰反応する食物アレルギーや、特定の成分を消化できない食物不耐症もお腹の不調を起こします。お腹の音や嘔吐、下痢のほか、皮膚のかゆみや赤みを伴うことがあります。
犬のお腹がキュルキュル鳴るときの対処法
愛犬のお腹がキュルキュル鳴っていても、普段と元気や食欲が変わらなければ自宅でできるケアがあります。ただし症状が長引いたり悪化したりした場合は、動物病院で診察を受けてください。
食事の回数を工夫する
一度に多くの量を与えると消化器に負担がかかります。1日の食事量はそのままで、食事の回数を2回から3~4回に分けて与えることで、消化への負担を軽減できます。
消化の良いフードを選ぶ
愛犬の年齢や体質、活動量に合わせて消化の良いフード(食事)を選びましょう。獣医師に相談し、高品質なタンパク質を主原料とし、適切な繊維質を含むフードを検討してください。新しいフードに切り替える際は約1週間かけて徐々に慣らすようにしましょう。
早食いを防ぐ工夫をする
早食いすると、フードと一緒に空気を飲み込み、お腹にガスが溜まりやすくなります。早食い防止用の凹凸付き食器(スローフィーダー)を利用するか、食事を何回かに小分けしてゆっくり与えるように工夫しましょう。
フードをぬるま湯でふやかす
ドライフードを与える場合、40℃以下のぬるま湯で少しふやかしてから与えると消化しやすくなります。特に消化機能が低下しているシニア犬や、歯が弱い犬にもおすすめです。ただし、ふやかしたフードは傷みやすいため、その都度新しく作るようにしてください。
優しくお腹をマッサージする
犬がリラックスしている時に、お腹を「の」の字を描くように優しくマッサージすると腸の動きを促すことができます。ただし、犬が嫌がる場合や、痛がる、腹部が膨らんでいるなどの症状がある場合はすぐに中止し、獣医師に相談してください。運動量を増やす
適度な運動は腸の蠕動運動を活発にし消化を助けます。散歩の時間を少し増やしたり、室内で遊ぶ時間を設けたりして運動不足を解消しましょう。食後すぐの激しい運動は避け、食後1時間程度は安静に過ごさせましょう。
苦手な刺激を避ける
ストレスが原因でお腹が不調になっている場合は、愛犬が苦手な刺激や環境から遠ざけましょう。雷、花火、大きな音、来客や他の犬との接触など、愛犬がストレスを感じる原因を特定し、その状況をできるだけ回避するよう工夫してください。
水飲み場を増やす
新鮮な水がいつでも飲めるようにしておくことは消化活動の健康維持に大切です。家の中に複数の水飲み場を設置し、いつでも水分補給ができるように整えましょう。
静かで安心できる場所を作る
犬には静かで落ち着ける専用スペースが必要です。クレートやベッドなど、愛犬が安心して休める場所を用意してあげてください。特にストレスを感じやすい犬や、環境が変化した場合には重要なケアになります。
いつ動物病院に連れていくべき?
愛犬のお腹がキュルキュル鳴っているだけなら様子を見てもよい場合がありますが、他の症状を伴ったり症状が悪化したりした場合は、すぐに動物病院での受診が必要です。
特に注意が必要な症状(危険なサイン)
以下のような症状がある場合は緊急性が高く、自己判断せず速やかに動物病院に連絡して指示を仰ぎましょう。
- 嘔吐や下痢が何度も繰り返され、止まらない
- 食欲が全くなく、ぐったりして元気がない
- お腹を触ると痛がる、お腹がパンパンに張っている
- 血便(鮮血、黒色便、ジャム状の便)が見られる
- 水を全く飲まない、または異常に多く飲む
- 呼吸が荒い、または苦しそうにしている
- 震えが止まらない
- 異物を飲み込んだ可能性がある、あるいは目撃した
- 虚脱(ぐったりして立てない)
- 歯茎などの粘膜が白っぽくなっている(粘膜蒼白)
子犬やシニア犬はより慎重に対応を
生後半年未満の子犬や、7歳以上のシニア犬、糖尿病、腎臓病、心臓病などの持病がある犬は体力や免疫力が弱く、症状が急激に悪化することがあります。少しでも普段と違う様子が見られた場合は、早めに動物病院を受診しましょう。例えば柴犬やゴールデン・レトリバーなど、高齢になるにつれて様々な消化器系のトラブルが増えやすい犬種は特に注意が必要です。
日頃から愛犬の様子をよく観察し、気になる症状があれば迷わず獣医師に相談することが、健康管理と病気の早期発見に繋がります。
まとめ
愛犬のお腹がキュルキュル鳴る原因は、空腹などの生理現象から、ストレス、消化不良、異物誤飲、膵炎や腸閉塞などの病気までさまざまです。
多くの場合は一時的なもので、元気や食欲が普段どおりならそれほど心配はいりません。ただし、音が頻繁に続く、嘔吐や下痢を伴う、お腹が張っている、血便や元気消失などの症状がある場合は、速やかに動物病院を受診しましょう。
日頃から愛犬の様子をよく観察し、小さな変化を見逃さないことが健康管理のポイントです。不安なことがあれば、いつでもかかりつけの獣医師に相談してください。