犬が朝に吐く原因
愛犬が朝から吐く姿を見ると、とてもびっくりしますよね。犬の嘔吐はご飯の「前」か「後」かの2つのタイミングに大きく分かれますが、実は吐き気につながる理由には大きな違いがあります。
嘔吐物がどんなものかという点にも注目して、犬が朝に吐く原因を見てみましょう。
「食前」に白い泡や黄色い液体を吐く場合
犬がご飯を食べる「前」で、早朝に白い泡や黄色い液体を吐く主な原因は「空腹」だと考えられます。
犬が最後に食事をしたときから時間が経ち、空腹の時間が長くなると、分泌された胆汁が逆流して胃を刺激します。
そのため、黄色い液体(胆汁)が混じった胃液を吐いてしまうのです。胆汁の逆流はなく胃液だけを吐く場合は、白い液体や泡を吐きます。
このように、空腹になっている時間が影響してくり返される嘔吐を「胆汁嘔吐症候群」と呼びますが、内臓機能などに大きな問題が起こっているわけではないとされています。
しかし、何の対策もとらなければ毎朝吐くという犬もいるので、嘔吐を防ぐ予防策を取ってあげることが必要です。
「食後」にフードを吐く場合
犬が朝ご飯を食べた後に、食べたばかりのものや消化している途中のものを吐く場合は、以下の原因が考えられます。
- 一度にたくさんの量を食べ過ぎた
- 急いで胃に詰め込むような早食いをしてしまった
- 胃内のドライフードが水分を吸収して急激に膨らんだ
これらはドライフードのみを与えている場合に起こりやすいと言われています。
また、胃から十二指腸へ送り込めないような、大きすぎるものや硬すぎるものを食べた時も同様に、胃が刺激されて吐き気を催しやすくなります。
ただし、ご飯を口に入れた直後、食べ物が胃に到達する前、あるいは胃に入った直後に、食べ物が全く消化されずに勢いよく吐き出されるような「嘔吐」がある場合は、早食いだけでなく食道の問題である可能性があるので注意が必要です。
「オエッ」と気持ち悪そうにしてから吐く「嘔吐」とは区別しなければいけないので、どんな吐き方をしているかよく見ておきましょう。
犬が朝吐くときの対処法
犬が朝に空腹で吐く場合の対策は、大きく分けて6つの方法があります。
空腹の時間を短くする
犬が朝に白い泡や黄色い液体を吐くなら、空腹時間が長くならないような対策をとってみましょう。
- 朝ご飯の時間を早める
- 夜ご飯の時間を遅くする
- 1日の食事回数を増やす(※)
- 寝る前に少量だけ間食をさせる
早食いをさせない工夫をする
胃の中に急に朝ご飯が流れ込むと、胃がびっくりして対応しきれず吐くことにつながるため、胃を刺激しない食べ方になるよう見直してみましょう。
ご飯を食べることが好きすぎて、慌てて飲み込んでしまう犬には、ゆっくりと食べられるような工夫をすることで、朝に吐くことが減る可能性があります。
- 早食い防止食器を取り入れる
- 飼い主さんの手から少しずつご飯を与える
- ドライフードを平らで大きめのトレーに広げるようにして置く
- 同居犬と別の部屋に分けて食べさせる(※)
犬が朝に吐く対策として早食い防止を試してみたい時には、以下の記事も参考にしてみてくださいね。
胃にやさしいご飯にする
愛犬が朝に吐くのは、ご飯そのもので胃を刺激してしまっていることもあるため、食事内容にも注意しましょう。
- 熱すぎる・冷たすぎるご飯は避ける(常温やほんのり温かいご飯にする)
- 消化性の高いドッグフードを選ぶ
- ドライフードをぬるま湯でふやかす、ウェットフードも使ってみる
犬は、一度にたくさんの食べ物を胃に詰め込む習性を持っています。そのため、飼い主さんが意識して一度にたくさんのご飯を詰め込ませないように意識してあげてください。
また、冷蔵庫で保管していた缶詰の中身を温めないでそのままあげたり、暑いからといって氷をなめさせすぎるのは避けた方が良いでしょう。
また、朝に限らず犬が吐きやすい場合、フードが体質に合っていないことも考えられます。フードを変えると吐かなくなることもあるため、原材料が違うフードを試してみるのも良いでしょう。
食後はゆったりくつろぐ時間にする
子犬や活発な犬は、食べた後すぐにはしゃいで遊ぶことも多いですよね。しかし、朝ご飯を胃に入れたばかりで体を激しく動かすと、胆汁が逆流しやすくなったりして吐き気につながることがあるので注意しましょう。
また、大型犬や胸が深い(胸が縦に長い)犬種では、食事直後の運動によって胃拡張捻転症候群(胃がガスで膨らんでねじれる)が起こりやすくなるとも言われているため、のんびりと過ごす食休みの時間を作ってあげてください。ごはんを食べた後、運動直後の水のがぶ飲みも控えた方が良いでしょう。
胃拡張だけであれば吐くこともありますが、胃捻転まで起きてしまうと吐くことはできず「吐こうとするけど何も出てこない」という症状が見られます。
グレートデン、シェパード、セッター、ドーベルマン、ボルゾイ、スタンダードプードル、レトリバー など
※胃拡張捻転症候群は、上記以外のどんな犬種でもなる可能性はあります。小型犬でもなることはあり、特にミニチュアダックスフントで胃拡張捻転症候が多く見られるそうです。
胃が荒れないように保護する
食事内容や食べ方を変更して対策を見つけるまでの一時的な期間、消化液が胃を刺激しないように、胃粘膜保護の薬を動物病院で処方してもらうという方法もあります。
これまで毎朝吐くことを繰り返していた犬などは、食道や胃の粘膜が荒れている可能性もあるので、獣医師に相談してみてくださいね。
犬にとって危険度の高い嘔吐の見分け方
犬が朝に限らず、よく吐くことがあるという症状だけで病気を特定するのは困難です。
次のような様子が見られる場合は、愛犬にとっての「危険性が高い嘔吐」「診察を受ける必要がある状態」として、早めに動物病院で相談しましょう。
- 同じ日に何度も吐く
- 毎日吐き続ける
- 吐いたものに血や異物が混ざる
- 嘔吐物から便の臭いがする
- 吐く以外の症状がある
(下痢・よだれを垂らす・ぐったりしている など)
しばらく様子見をしてもいい症状
犬が朝に白い泡や黄色い液体を吐くようなことがあっても、その日の1回だけで吐いた後に食欲や元気があるようなら、いったん様子を見ても良いでしょう。
犬が朝に吐いてしまった後は、落ち着いてから少量の消化の良いご飯を食べさせてみて、食後しばらくは様子を見守りましょう。その後、犬に吐く様子がなく、元気があるのを確認できたら残りのご飯も与えてください。
しかし、元気や食欲があるように見えても吐くことが何日も続くようであれば、病気が隠れている可能性があるため、獣医師による診断をきちんと受けてください。
もしも、病気でなく早食いや空腹時間が長いから嘔吐が起きやすくなっているだけであれば、愛犬の食事習慣を見直してみましょう。
犬の嘔吐の原因として考えられる病気
犬が早食いや空腹以外で吐いてしまう原因には、さまざまな病気が考えられます。
- 消化器の問題(胃拡張、胃捻転、膵炎、消化管腫瘍など)
- 他の臓器の問題(腎不全、肝不全、子宮蓄膿症など)
- 免疫の問題(食物アレルギー、炎症性腸疾患など)
- 感染症(寄生虫感染、犬パルボウイルス感染症など)
- 異物の誤食(腸閉塞、中毒など)
- 熱中症
犬が朝だけでなく、時間を問わず繰り返し吐いてしまったり、吐くものに血が混ざったりといった場合は、命にかかわるような重い病気の可能性もあり、自宅で犬の様子を見ていても症状が改善することはまずないでしょう。
犬が嘔吐を繰り返したときの注意点
犬が繰り返し吐く場合は脱水が心配になりますが、水を飲むことで胃に刺激を与えてしまい、さらに吐いてしまう場合もあります。水分を口から取らせると吐いてしまう場合には無理せず、動物病院で点滴を行ってもらいましょう。
動物病院では、自宅での犬の様子を聞き、血液検査・画像検査などを行い吐く原因を診断します。診察を受ける際には、犬が吐いたものを持参したり、吐いた状況を整理して獣医師に伝えると原因特定に役立ちます。
まとめ
犬が朝に吐く原因とその対処法について、おわかりいただけたでしょうか。
犬は人と比べて吐くことの多い動物です。朝になると空腹で吐く犬の場合は、食事の時間や食べ方、食事内容を見直すことで吐き気が落ち着くのなら、自宅で様子を見ても良いでしょう。
それでも吐くことが続いていたり、犬の元気がない、嘔吐物に血や異物が混ざっているなどの様子がみられた場合は、早めに動物病院に相談しましょう。