犬へのしつけ
犬と人間は長い歴史を共に歩んできています。そんな中で犬との関わり方は変わってきています。犬にしつけをする方法も時と共に移り変わってきました。
「飼い主は犬からなめられてはいけない」という考えのもと、厳しいしつけで主従関係や上下関係を築く方法が主流となっていたこともありました。その際に用いられた方法として「体罰」があります。主人の言うことを聞かせるために体罰を行うというものです。
現代においては上下関係や主従関係ではなく「信頼関係」を築こうという考えのもと「褒めるしつけ」が主流になってきています。決して犬を甘やかすわけではなく、メリハリをつけながら褒めることを基本として物事の良し悪しを理解させるというものです。
犬のしつけ方についてはトレーナーによっても異なる点があるため、正解を言い切ることはできません。トレーナーによっては体罰が有効になることもある、という考えの人もいます。そんな中でも、少なくとも意味や愛のない体罰は決して行ってはいけません。
しつけを行う理由は何でしょうか?「犬を思い通りに従えるため」ではないですよね。「犬が人間社会で暮らしやすくするため」「犬が安心して飼い主と共に暮らすため」ではないでしょうか。その点を考えると、しつけを行う際には犬が飼い主に対して信頼感を持つことが何よりも大切なのではないでしょうか。信頼関係を作る際に体罰は本当に必要なのか。体罰を行ってはいけない理由から考えてみましょう。
監修ドッグトレーナーによる補足
体罰を行ってはいけない理由
1.犬を怯えさせ、自信をなくす
まず第一に体罰は犬に恐怖心を与えます。恐怖心が膨らんだ犬は次第に自信をなくし、臆病な犬になります。もちろん体罰をすれば犬は言うことを聞くようになるかもしれません。しかし、それは飼い主を信頼して従っているわけではなく、恐怖心で従っているだけです。犬をコントロールできたとしても、飼い主に不信感を持ち、恐怖心に縛られた状態が犬にとって幸せと言えるでしょうか。
2.体罰がなければ言うことを聞かなくなる
前述したように、体罰で犬が言うことを聞いているように見えるのは、あくまでも恐怖心から、その場を逃れるための行動です。何度叩いても言うことを聞かない、なんて飼い主さんがいたら、当たり前です。犬は叩かれることと、叱られている理由を結び付けて考えることができていないのです。結果として、犬が同じ行動を何度も繰り返し、飼い主はそのたびに体罰を加える。といった悪循環を繰り返してしまうのです。
監修ドッグトレーナーによる補足
3.人を怖がる
体罰は「人」への恐怖心も芽生えさせます。人間でも子供の頃に犬に噛まれたり、追いかけられたりした経験がある人は、犬自体へ恐怖心を抱きますよね。犬も同じです。人間は体罰をするものだと覚えてしまったら、人に対して常に怖がって暮らすことになってしまいます。結果として人を見ると恐怖心で呻る、吠える、噛みつくというような威嚇行動を繰り返してしまう危険性もあります。
4.飼い主の心への影響
体罰を行うことは、行う側の人間にも影響を与えます。体罰をしている時、興奮状態になっていることはありませんか?理由があったとしても、体罰をする動きは攻撃行動です。人間の心と体は互いに影響し合っています。攻撃行動を起こすことで、知らないうちに飼い主自身の心も興奮状態になってしまうのです。結果として、飼い主自身も自分をコントロールができずに犬に怪我をさせるほどに怒っていた、、なんてことが起きる可能性もあるのです。
監修ドッグトレーナーによる補足
まとめ
体罰を行ってはいけない理由や生じる危険性をご紹介しました。人間も体や心へ暴力をくわえるような人を尊敬できません。犬だって同じです。何より、犬は「暴力」を与えなくとも、人間と犬の間に信頼関係が築けていれば言うことを聞きます。万が一、体罰によるしつけで言うことを聞くようになったとしても、行わなくても暴力は行いたくないですよね。
暴力を与えるのでもなく、甘やかすのでもなく、どうやって信頼関係を作っていくべきなのか。改めて犬のしつけのあり方や方法について考えてみるといいかもしれません。