ペットショップで段ボール箱に入れられた水頭症のチワワ
動物保護活動を行っている女性に届いた1通の相談メール
以前、わんちゃんホンポで記事にした滋賀県東近江市で個人で動物保護活動をされている”ぼくらはみんないきている”のchinatsuさんのことを覚えていらっしゃいますか?
詳細:しってください どうぶつたちのこと ~ぼくらはみんないきている~【動物保護活動】
2017年4月の某日、そのchinatsuさんの携帯電話にこんなメールが届きました。
あるペットショップの片隅に、何年も段ボールに入れられている水頭症のチワワがいます。見ていて辛いです。
自分は学生で家を出ており、金銭的にも厳しく救うことができない。
どこか受け入れてくれる団体さんなどはないですか?
▲実際に大学生から送られてきた携帯メール
悩んだ末に出した結論
その相談を受けたchinatsuさんは悩みました。
彼女が活動の拠点としているのは滋賀県です。でも、相談してきたのは岡山県に住む大学生でした。当然ですが関西地方と中国地方でかなり距離がありました。
私が動くことで、相談してきた子の、何とかしようとする学びを奪ってしまうのではないか? 交通費だってバカにならないし…状態によっては治療も必要になる。
本当に私が行くべきなのか、いろいろ考えてました。
そしてchinatsuさんが出した結論は
でも、犬のことだけを考えることにした。
段ボールの外の幸せを見せてあげたいと思った。
自分の感情の衝動に正直になろうと思った。
chinatsuさんは返信しました。
私は、どこもみんな保護動物で溢れ大変だし、あなたがどうにもできないなら私にできるのは、私が保護することしかできません。
救出
その後、相談してきた大学生とchinatsuさんは水頭症のチワワを保護する手順について何度かやり取りをしました。
その手順はこうでした。
まず、大学生がペットショップからこのチワワを譲ってもらう。
この子をペットショップから連れ出して貰う際、お金の取引は発生してないそうです。
この子に関しては、命に値札はついて無かったということです。
その後、そのチワワと一緒に大学生は友人宅に1泊させてもらい、翌日chinatsuさんと落ち合う。
きっと相談してきた子も、自分の良心に正直に、今出来る精一杯で、昨日ペットショップから連れ出し、友達の家に一晩泊めてもらい、私に渡してくれたんだろうと思った。
chinatsuさんは、チワワを引き取るために滋賀県から車で岡山県に向かいました。運転をかって出てくれた協力者の方が同行しました。
自由を掴んだチワワ
chinatsuさんはなんと往復7時間もかけてこのチワワを引き取ったのです。
大学生から引き渡されたチワワをケージに入れ、滋賀県の自宅に戻る途中に撮影された動画があります▼
Chinatsu Irieさんの投稿 2017年4月25日
大丈夫やで。帰ろな。良かったな。自由や、な、自由やで。自由やで。な。
chinatsuさんは帰りの車の中で、何度もチワワに話しかけています。
このチワワは何年も段ボール箱に入れられたままで、こうして外に出されたのは初めてだったのです。そのためか、chinatsuさんが優しく話しかけている間も、興奮して息遣いが荒いです。
この子はラッキーだ。
ペット産業の裏側で、たくさんの子の命が闇に葬られている。怖い話はたくさん知ってる。
ペット産業の裏側のとても怖い闇の世界をずっと見てきたchinatsuさんは、そうフェイスブックに書いています。
水頭症で売り物にならないと段ボール箱に入れられ餌だけ与えられていたチワワですが、それでも殺されずにそうやって生かされていたのは本当にラッキーでした。
岡山県はきびだんごだから、キビちゃんにしようか!
ということで、この子の仮の名前は『キビちゃん』になりました。
翌日
無事、滋賀の自宅にチワワを連れて戻ったchinatsuさん。
翌朝の様子をフェイスブックに投稿しています。
今朝のキビちゃん。
食欲は普通。落ち着いていると抱っこでウトウト…
そうでないときはかなりパニくってガブリンチョ。早速指やられたw
しかし足の爪。巻きに巻いてアンモナイト状態に。
動物病院で
保護した翌日は動物病院の休診日だったので翌々日に、恐らくキビちゃんにとって犬生初めてとなる動物病院へchinatsuさんは連れて行きました。
キビちゃんも病院です。
かなり興奮状態にあり、手当たり次第噛みつきチアノーゼが出るので必要最小限の検査のみにしました。 血液検査、便検査、爪が引っかかってパニックになるので爪切り。
血液検査は白血球が少し高め。 腎臓の数値が高めでした。
落ち着いてから再度検査してみます。 今のところ、発作などはでてません。
Chinatsu Irieさんの投稿 2017年4月26日
水頭症のキビちゃんは、同じところをグルグル回ってしまいます。
痙攣
発作は出ていないとこの時は書かれていましたが、その後痙攣発作を何度か起こしました。
【動画】痙攣の発作を起こしたキビちゃん
【動画】痙攣直後のキビちゃん
【動画】痙攣後抱かれて眠りにつくキビちゃん
chinatsuさんが優しく介抱しています。
キビちゃんはこの時、まだ噛みつくため抱くときはタオルで保護していました。
こんな痙攣をキビちゃんは、2年間もペットショップの段ボールの箱の中で、小さな体で、何度も繰り返していたのかと思うと、涙が出てきます。
怖かったろう…
辛かったろう…
寂しかったろう…
そんなキビちゃんのことを、chinatsuさんはとても愛おしく感じ、噛まれても怒らず恐れず、優しく介抱し続けました。
キビちゃんなかなかゆっくり寝られへんなー。
せやけどみんなも寝はったからもうおやすみやで╰(*´︶`*)╯
この子には、ゆったリズム、ゆっくりズムが一番のお薬やね╰(*´︶`*)╯♡
身体触られるのはキライみたい。特に背中やお尻。
Chinatsu Irieさんの投稿 2017年4月27日
「大丈夫やで~、大丈夫やで~」と中々眠りにつくことができないキビちゃんをchinatsuさんは耳元を優しく撫でながら囁き続け、キビちゃんを眠りに誘っています。
チワワに多い水頭症
犬の水頭症はチワワの代表的な先天性の病気として知られています。
症状は、痙攣、斜視、視力障害、異常行動、活動障害など様々です。
チワワの水頭症についての詳細▼
チワワは水頭症の症状や見分け方について
キビちゃんの笑顔
2年もの長い月日を、段ボール箱の中しか知らないで過ごしていたキビちゃに、青空を見せたい、新鮮な空気を吸わせたいと、chinatsuさんはキビちゃんを抱っこして外に連れ出しました。
その時の写真がとても印象的です。
いつも優しく接してくれるchinatsuさんと出会ったキビちゃんから、笑顔がこぼれるようになりました。保護した直後の緊張して息遣いが荒かったあの顔からは想像もつかないとびっきりの笑顔です。
その後、chinatsuさんが保護している他の犬たちともじゃれ合うまでにキビちゃんは落ち着きました。
Chinatsu Irieさんの投稿 2017年5月17日
犬は(猫も)接する人の愛情で、こんなに変わるのです。
朗報
7月のある日、キビちゃんに関する朗報が届きました。
今日は岡山のペットショップで水頭症だから売り物にならないと、2年間も段ボールの中に入れられていたキビちゃんの幸せへのトライアルの日でした!
キビちゃん、保護時は人の暖かさも知らず、触るもの皆傷つける状態で、ゆっくり横になって寝ることすらできない状態でしたが、日を重ねるごとに、身を委ね、横になってゆっくり休むことを覚え、仲間と遊ぶことも覚え、人間にも甘えられるようになりました。
キビちゃんの、手でもっと撫でて、もっと触ってと手でかいかいと要求する姿に感動した一人です。
水頭症ということもあり、もしかしたら長く生きられないかもしれない。
てんかん発作で苦しむかもしれない。
それでも、ありのままを受け入れ、キビちゃんに与えられた時間を、「楽しい、優しい、大好きな時間」を一緒に共有してくださる里親さんが見つかったらお願いしようと思っていましたが、なかなか見つからない現状でした。
見つからなければ、当たり前ですが私が責任と愛を持って面倒を見るつもりでした。
でも、ちゃーんと神様は見ていてキビちゃんにも、「家族」をプレゼントしてくださいました。
キビちゃんの里親として手を挙げて下さった方は、Mitsueさんというこれまでにも行き場がない保護犬たちの里親になられている方でした。Mitsueさんは、キビちゃんのことをchinatsuさんが保護した時からフェイスブックでずっと気にかけて見ていたそうです。
里親となられたMitsueさんに抱かれたキビちゃん、もうタオル無しでも平気です!
本日お宅にお邪魔しましたが、みんなみんなそれは優しくキビちゃんを受け入れてくれました╰(*´︶`*)╯♡みんなたっぷり愛情をもらってるんだなぁと感動♡
パパさんが、強く生きるようにと、キビちゃん改め「サスケ」というカッコイイ名前を用意してくださっていました♡
サスケ、よかったなぁ! 生まれてきてよかったやろ?
幸せになろな!って岡山の帰りに約束したやろ?
叶ったなぁ!幸せつかんだなぁ!!
Chinatsu Irieさんの投稿 2017年7月14日
相変わらずグルグル同じところを回っているキビちゃん改めサスケ君ですが、永遠の幸せを掴むことができました。
不思議なご縁
実は、Mitsueさんと同じように、キビちゃんのことは、筆者も保護された時からずっと見守り続けていました。そして、いつかキビちゃんのことをわんちゃんホンポで記事にしようと考えていたのです。
でも、それはキビちゃんに里親が見つかった時にしようと心に決めていました。永遠の家族を手に入れ、幸せを掴んだキビちゃんのことを書きたかったのです。
もちろん、chinatsuさんの元にずっといてもキビちゃんは幸せだったのでしょうが、chinatsuさんは今後もたくさんの犬猫たちと里親さんたちとの『幸せの架け橋』になる方なので、キビちゃんが誰からも受け入れがないためにchinatsuさんの元にとどまってしまうのはやはり違うと感じていたからです。
トライアルも成功し、キビちゃんはサスケ君として永遠の幸せを掴めたと今回確信できたので、記事にするために先日、里親になられたMitsueさんにメッセージを送りました。
Mitsueさんにとっては、筆者は何者かもわからない人間です。だから、わんちゃんホンポの過去の筆者の記事を添付して、「こんな感じで保護犬たちのことを記事にしているライターですが、キビちゃん改めサスケ君の事を記事にしてもいいですか?」とメッセし、フェイスブックでもお友達申請をしたところ…
「サクラさんの記事・・・わんちゃんホンポでずっと読ませて頂いてます。とても感動して楽しみにしてるんですよ(^ω^)お友達になれてとても嬉しいです。サスケに感謝ですね。」と、とてもビックリするような嬉しいお返事をいただきました。
Mitsueさんのフェイスブックにはサスケ君の写真と共にこう書かれています。
新しい家族のサスケです。みなさん宜しくです
愛ある行動を
助けが必要としている犬や猫がいたら、知らん顔をしないで助けてあげてください。自分で助けられない場合は、動物保護をしている人や団体に相談してみてください。
もちろん、どこの団体も犬や猫たちで手一杯になっています。筆者も過去、動物愛護団体に野良猫の保護のことで相談したことがありますが、そこは会員制のため、会員以外の方の相談は乗れないと断られてしまったことがありました。(結果、人に慣れていなかったその野良猫は捕獲することができず、いつの間にか姿を消してしまいました。)
そういう事もあると思いますが、今回のように滋賀県にいるchinatsuさんの元へ岡山県から届いた1通の相談メールから水頭症のチワワは救われました。
以前書いた佐賀県の唐津市で飼い主が亡くなった敷地内に2年も取り残されていたワンコたちは、大阪府在住の人から佐賀県伊万里市で活動しているNPO法人アニマルライブに相談されたことで救われました。(詳細:https://wanchan.jp/osusume/detail/6681)
今はSNSが浸透しています。全国各地からSOSはたくさん発信されています。そのすべてが誰かによって救いの手が差し伸べられるわけではありませんが、助けられた命も確かに存在しています。
一番怖いことは、明らかに助けを必要としている犬猫たちがいるのに、誰からも無視されることです。どうか、勇気をもって愛ある行動に出てください。
この写真は筆者とMitsueさんがFBのチャットでやり取りしていた時に、起き出してきたサスケ君の写真を撮影して送付してくれたサスケ君の最新写真です。
最後に
岡山のペットショップの段ボール箱の中しか知らなかった水頭症のチワワのことを知り、自由にしてやりたいと、幸せにしてやりたいと、車で往復7時間もかけて迎えに行ったchinatsuさんに改めて感謝です!
”ぼくらはみんないきている”で犬猫の保護活動を個人でされているchinatsuさんのフェイスブックページには、たくさんの愛と学ぶべきテーマが溢れています▼
https://www.facebook.com/chinatsu.irie0827?pnref=lhc.unseen
そして、里親募集というSOSも常に発信されています。
保護犬や保護猫を1匹もらい受けることで、2匹あなたは助けたことになります。
それは、あなたが引き取った犬や猫1匹の席が空くことで、また1匹保護することができるようになるからです。
※尚、この記事及び写真&動画の掲載は、chinatsuさんとMitsueさんの承諾を頂いて行っております。
追記
サスケ君の里親になられたMistueさんのFBで残念ながら以下のようなご報告がありました。
ペットショップの段ボール箱の中からchinatsuさんが救いだしてくれ、キビちゃんとして数か月、chinatsuさんの愛に守られて幸せに暮らしていました。
そして念願のキビちゃんの里親さんとしてMitsueさんが名乗りをあげられ、キビちゃん改めサスケとして、やっと永遠の幸せを掴んだところでした。
しかしながら、サスケ君には、生まれつきの水頭症という病気があり、長生きはできないかもしれないと言われていました。それがとうとう現実になってしまったのです。
でも、幸せだったと思います。虹の橋に渡った時間も何時何分と記されているということは、Mistueさんが最期の瞬間まで付き添っていらっしゃったということが判ります。
ペットショップの段ボールの箱の中で犬生を終えないですんだこと。短い間でしたが、数か月間、大きな愛に包まれた幸せな暮らしをおくれたこと。
きっとサスケ君は感謝していると思います。
ユーザーのコメント
40代 女性 こむぎ
40代 女性 買う人が大いに問題があります
スムースは元々がマズルが長く、くさび型でした。健全で丈夫な秘訣はそれだったと思います。ブーム後にスタンダードではないチワワが持て囃されて、ネット社会になりチワワらしくない顔がチワワらしいと世に知れ渡り、間違った認識が世に広まった印象です。
一般的に有名なブリーダーのチワワは世界的チワワのシリアスブリーダーの見解ではチワワではないと称されます。
最近でも海外のチワワブリーダー、ファンシャーがチワワの特に顔について議論なされていました。
家には長いマズルと称されるくさび形のチワワと、チワワらしいと呼ばれる
フレンチブルドッグのような顔立ちのチワワがいます。
前者は暑さ寒さにも強く8才過ぎましたが心臓も異常は出ていません。
後者は1才でチワワに多い心臓疾患と診断されました。
前者は元気がよくサークルもよじ登りそうになるし、いたずらもよくするし、走り回ってますが後者は子犬の時から動かず、じっとして飼いやすいと思っていました。前者は正直手がかかったと思ってました。
リサーチすると、同じようなマズルの詰まった頭の大きな丸いチワワ程
子犬の時は手が掛からずおとなしく動かず、ぬいぐるみのようで
飼いやすいと思うも、生後数ヵ月~1才未満でで突然死、水頭症、心臓病と診断されるチワワが多いことに驚かされました。
これはトイプードルやポメラニアン、ヨークシャーなどの人気犬種にも
共通することだと思います。
確かに丸くて短い顔、短い鼻に大きな頭はとても可愛く幼く感じます。
洋服もよく似合いますが、元々犬を飼うとはなんなのか
チワワを飼う皆さんの殆どが忘れているような気がしてなりません。
元々チワワを選ぶ人は犬好きではないように感じて残念です。
特にインスタグラムで見せびらかしのチワワやトイプードルブリーダーもあまりに程度が低すぎます、主婦の生活費稼ぎで安易に繁殖に手を染めないでいただきたい。
チワワは不健全犬種に成り下がりました。
流産、死産、生まれてもお星様、引渡し後も1才と育てられない、
ペットショップに卸されたチワワも年間かなりの数が死んでいます。
ショップは闇が深すぎますが、変えていけるのは選ぶ側の人間です
服を着せたいからチワワを買う。似合うから作り物のようなチワワを選ぶ。
本当にやめてほしい。
女性 ゴン吉
引き取られた時の怯えた表情が、青空の下の笑顔になるまで一気にたくさんのことを知ったと思います。ストレスもあったでしょうね。それでも笑顔になって新しい家族に迎え入れられて本当によかったです。家族ができてからとても短い期間でしたが、他の犬たちと遊んだり、甘えられる飼い主さんができたり、最後は幸せな旅立ちができたことは救われます。
昔と違い今はSNSという早い情報の発信源があります。上手く活用して、これから他にもたくさんいるであろうキビちゃんのような子が救われて、新しい家族の元で幸せになれたらいいなと思います。