大切なのは信頼関係の構築

犬の場合、「怒り」の多くは「拒否」や「自己防衛」の意思表示です。飼い主さんと愛犬の間には信頼関係が築かれるため、「嫌だ」とか「やめて」という意思表示のために怒りのサインを見せることはあっても、本気で激怒するようなシーンは滅多にないでしょう。
しかし、まだ信頼関係を構築している途中段階であったり、何かの出来事をきっかけに信頼関係が崩れ始めているときは、飼い主さんの悪気のないちょっとした行為が、愛犬を激怒させてしまうかもしれません。
何よりも大切なことは、愛犬を家に迎え入れたその日から、愛犬との間に深い信頼関係を構築し、日々深めていくことです。その過程で起こりうる、愛犬を怒らせてしまう飼い主さんの行動について見ていきましょう。
犬を怒らせる飼い主の行動

1.好きなものを取り上げる
愛犬と一緒に遊んでいるときに、「そろそろ終わりにしよう」と遊んでいるおもちゃを取り上げることはないでしょうか。まだ遊び足りないと、愛犬は「もっと遊んでいたいよ」という気持ちを飼い主さんに示すことでしょう。
特にそのおもちゃが愛犬のお気に入りであった場合は、「それは僕(私)のだ、返してくれよ!」と怒ることがあります。美味しく楽しく噛んでいたガムなどのおやつを「終わりね!」と取り上げられたときにも、同じように怒ることがあるでしょう。
こうした経験が繰り返されると、犬は「人が近づくと宝物が奪われる」と学習し、怒りやすくなることがあります。
2.意味もなく目をじっと見つめ続ける
飼い主さんと愛犬は、アイコンタクト(お互いの目を見つめ合うこと)で意思の疎通が図れるようになります。しかし、まだトレーニング中の場合は、飼い主さんが愛犬の目をじっと見つめ続けることで、怒り出すことがあるかもしれません。
犬にとって「相手の目を見つめる」という行為は、一触即発の「ケンカをふっかける」行為だからです。アイコンタクトの練習は必要です。しかしどんなに愛犬が愛おしいからといっても、長時間じっと見つめ続ける行為は避けた方が良いでしょう。
3.嫌がることを無理やりし続ける
愛犬の健康管理のために、ブラッシング、爪切り、歯磨きなどの日常のケアは欠かせません。しかし、これらが苦手な犬は少なくありません。また、抱きしめられると体を拘束されて自由を奪われるため、嫌がる犬も想像以上に多いのが現実です。
嫌なことが逃げられない状況で続くと、犬は防衛のために怒るようになります。愛犬のケアや安全確保のための抱き抱えは避けられませんが、できるだけ愛犬への負担を軽くできるよう、短時間で終わらせられるような工夫を凝らすことも大切です。
4.痛みのある患部を触る
愛犬の不調に気づかず、ケガや病気で痛みや不快感のある患部を触ってしまうと、愛犬を怒らせることがあります。この怒りは、飼い主さんに対する感情というよりも、痛みから自分の身を守るための行動です。
ちょっとしたことにも過剰に反応し、激しい怒りや攻撃を見せる場合は、背後にケガや病気が潜んでいる可能性があります。できるだけ速やかに、かかりつけの動物病院で診察を受けるようにしましょう。
5.強いストレスを与える
強いストレスを受けることで、犬は怒りやすくなります。特に慢性的なストレス状態が続くことで、愛犬は自分の気持ちのイライラをどうすることもできないもどかしさから、ちょっとした刺激にも過剰な攻撃性を示すようになる傾向があります。
些細なことにもすぐ攻撃的になったと感じた場合は、体調不良だけではなく、ストレス要因がないかどうかについても確認することをおすすめします。
愛犬を激怒させないための対策

日々のコミュニケーションを大切にする
愛犬を必要以上に激怒させないために必要不可欠なことは、飼い主さんと愛犬との間の信頼関係です。そのために何よりも大切なことが、日々のコミュニケーションです。
どんなに飼い主さんが愛犬に深い愛情を抱いていても、それが愛犬に伝わらなければ信頼は生まれません。決して一方的ではなく、愛犬の気持ちに寄り添った形で飼い主さんの愛情を示すため、日々のコミュニケーションを大切にすることが必要です。
家庭犬に必要なポジティブトレーニングを行う
「オスワリ」「マテ」などの基本的な指示に従えるようにするしつけは、愛犬の身を守ることができる、家庭犬に必須の基本的なしつけです。教える指示語の中に「ハナセ」を加えることで、咥えているものを手放せるようになり、お気に入りを無理やり取り上げることがなくなります。
「叱る」ことで従わせるのではなく、ご褒美や褒めることを主軸に置いたポジティブトレーニングは、怒りや恐怖を与えることがなく信頼関係の構築にも役立ちます。
環境変化にはアフターケアを行う
犬は環境の変化に弱く、室内の模様替えや引越し、家族の増減、生活習慣の変化などでストレスを受けやすいです。入学・就職などで生活に変化が起きやすい春や、結婚・出産などの家族構成に変化が生じた後などは、しっかりとアフターケアを行いましょう。
どんなに環境が変わっても、愛犬に対する飼い主さんの愛情が変わらないことを理解させられれば、ストレスを軽くすることができるはずです。
過保護にしない
怒りやすい、しかも激怒しやすい犬にしないためには、過保護にしないことも大切です。いつも愛犬の言うことを聞いていると、何らかの事情で愛犬の要求を叶えられないときに、「何で今日は意地悪するの?」と怒らせてしまうからです。
愛犬との間の信頼関係を築くことと、過保護にして何でも言うことを聞くのとは、本質的に意味が異なります。何が良くて何が悪いのかや、ときには我慢することも必要だということを教えることも、飼い主さんの責任の一つと言えるでしょう。
まとめ

怒らない犬にすることは、飼い主さんや周囲への安全確保のためでもあり、犬自身の心身の安定のためにも大切です。そのためには、意識して犬を怒らせるような行動をしないことです。そしてそれ以上に大切なのが、愛犬との間に信頼関係を築くことです。ポジティブトレーニングを通して、必要なことを教え、信頼関係を確立しましょう。



